坂元雅行の発言 (環境委員会)

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○参考人(坂元雅行君) 御紹介いただきましたトラ・ゾウ保護基金の坂元です。
 私は、種の保存法の改正に当たっての課題のうち、国際的なコンセンサスに対応するという重責を担った部分、すなわち象牙の国内取引管理について意見を申し上げます。
 現在、毎年二万頭から三万頭のアフリカゾウが象牙目的の密猟で殺され、結果、個体数が減少し始めました。昨年九月の国際自然保護連合、IUCNの発表によりますと、アフリカ大陸全体で二〇〇六年以来一万一千頭の個体数が減少し、二〇一五年時点で四十一万五千頭にとどまったということです。世界に象牙に対する需要がある限り、アフリカゾウの減少は加速し、遠くない将来絶滅するおそれがあると懸念される状況となっております。
 かつて一九七〇年代から一九八〇年代にかけて象を襲った密猟の危機は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称ワシントン条約による象牙の国際取引禁止によって一旦は鎮静化いたしました。それが二〇〇六年頃から再び息を吹き返したという状況にあります。
 この現在の密猟の危機をもたらす象牙需要の中心が中国にあることについて異論は聞かれません。しかし、二〇〇四年にワシントン条約会議で中国に追い抜かれたと言われるまでは、実は日本が世界最大の象牙消費国でありました。日本は、一九七〇年代の終わりに世界最大の象牙消費国になり、そして一九八二年には、当時世界一であった香港を輸入量でも追い越して世界一の輸入大国となりました。
 カラー資料の三ページを御覧ください。
 象牙取引禁止前の十年間に輸入された未加工象牙は、象の数にして十二万頭前後、約二千七百トンに上りました。青い部分、日本が輸入したものです。この量は、同じ期間にアフリカ大陸から輸出された象牙の量の約四〇%に当たります。赤い部分がアフリカ大陸から輸出された量です。しかも、日本についてワシントン条約が発効したのは一九八〇年十一月ですけれども、このときから一九八五年の三月までは、条約が求める輸出許可書の提出なしに輸入が許可されるという条約違反の状態が続いておりました。日本における主要な象牙製品は判こですが、当時の大量輸入の背景には象牙印のブームがございました。こうして一九八〇年代の僅か十年間にアフリカゾウの個体数は半減してしまいました。
 以上のような経過を考えますと、日本は今もその象牙市場、象牙取引について国際的に特別な道義的責任を負っていると言えると思います。
 アフリカゾウの現在の危機に話を戻しますが、事はアフリカゾウの絶滅だけの問題にとどまらないという国際的な認識が深まっております。どういうことかといいますと、野生生物犯罪、すなわち国境を越えた野生生物の違法取引、違法捕獲は人類の生存基盤である生態系に損失をもたらすだけではなく、国際的な安全保障をも危うくするということであります。
 アフリカでは、アフリカゾウの生息国を中心とする三十か国がアフリカゾウ連合を結成いたしまして、世界の国内象牙市場閉鎖を訴え始めます。
 先進国の中で国内象牙市場の閉鎖と野生生物犯罪の対策へと動いたのが米国です。世界最大の象牙市場を持つ中国と協議を行い、合法市場を隠れみのにした密猟象牙のロンダリングが現在の象の密猟を引き起こす原因となっているという懸念を共有するに至りました。そして、二〇一五年九月、米国と中国は両国の国内象牙市場を閉鎖することを合意いたします。これに続いて、二〇一六年には香港も国内象牙市場の閉鎖を決め、EU諸国の中ではフランスが象牙の国内取引を禁止する方針を打ち出しました。
 このような状況の中で、アフリカゾウ連合を代表するアフリカ諸国等が、百八十三か国が加盟するワシントン条約締約国会議に対して国内象牙市場を閉鎖する提案を行いました。
 カラー資料の六ページを御覧ください。
 締約国会議は、この提案を検討し、昨年十月三日、この第三段落にありますように、密猟又は違法取引の一因となる合法化された国内象牙市場を有する締約国はこれを閉鎖するよう勧告するとの決議を全会一致で採択いたしました。これがいわゆる国内象牙市場閉鎖決議です。
 この決議後、イギリスが象牙市場の閉鎖に向けて法整備に取り組み始めました。また、つい最近、象牙の主要な消費国の一つであるシンガポールが象牙市場の閉鎖を宣言しました。
 やはりカラー資料の五ページを御覧ください。現在、このように各国が市場閉鎖に向けた取組を進めております。
 象牙取引によってアフリカゾウが絶滅に瀕している問題については、日本国内でもマスメディアが大きく取り上げ、国民の関心が高まっています。報道記事のほとんどは、市場閉鎖の国際的動きに強い関心を寄せ、これに対する批判的な論調は皆無です。
 日本は、ここで改めてほかの象牙消費国と足並みをそろえ、市場閉鎖決議を遵守するよう迫られることとなりました。その中で、今般の種の保存法改正法案が象牙の国内取引について何をしようとしているのかが問われるわけであります。
 結論から申し上げますと、改正法案には、国内象牙市場閉鎖、つまり象牙の国内取引禁止に向けた規制強化は一切含まれておりません。むしろ、象牙市場をこれまでどおり維持し、象牙の製造、販売に制約を加えないようにしながら象牙を扱う業者への監督を強め、緊張感を持って業務に励んでもらおうというのがその内容であります。これでは到底国際的な理解は得られず、日本は条約決議の全会一致採択に参加しておきながらそれに違反しているというそしりを受けるおそれがあると言わざるを得ません。
 では、種の保存法によって国際的要請に対応すべき内容とはどのようなものでしょうか。
 国内象牙市場閉鎖決議においても、象牙の一切の国内取引を禁止せよとは言っておりません。例外も認められております。
 再びカラー資料の六ページを御覧ください。決議文ですね。
 この決議の第四段落は、何らかの品目についての狭い例外の設定は保障され得ることを認識すると定めています。これは、国内象牙市場を持つ国もそれぞれ事情があるので、例外的にごく一部の種類の象牙の取引を許容して、現実的な閉鎖を進めようという趣旨です。実際、市場閉鎖決議採択後に象牙取引の大幅な規制強化を進めているフランスやイギリスなどでは、いずれも市場閉鎖の勧告を受け入れた上で、狭い例外の範囲、すなわちアンティーク、家具の取っ手といった僅かな象牙を含む製品、こういったものを具体的に何を例外にするかを検討している状況です。その際、各国に共通するのは、新たに製品を製造するための原材料となる未加工象牙については禁止の例外は認めていないこと、また新たに製造される製品についても禁止の例外をほぼ認めていないということであります。
 一方、日本の種の保存法上の国内取引規制の方式は、規制対象の取引を原則禁止しておいて、登録を受けた場合に限り取引を許すというものです。
 したがって、市場閉鎖決議の趣旨に沿って種の保存法でなすべき象牙の国内取引に対する規制強化とは次のようなものになります。
 カラー資料の七ページを御覧ください。
 第一に、規制対象を象牙全般に広げてその取引を原則禁止にすることです。第二に、登録を条件に例外的に取引できる品目を厳正に絞り込むことです。もちろん、新しく製造される象牙印のように、単なる実用品で、しかも素材には象牙以外に豊富な種類のものがあるというような品目を例外にできないことは自明であります。念のためですが、現に所有している象牙印を所持し続けること、これは取引しない限りは規制の対象にはなりません。第三に、登録を許す品目について、品目ごとに登録要件、つまりどのような条件がそろえば登録できるかを定めることが必要です。第四に、象牙が登録申請されたら、登録機関などの公的機関が、象牙が本物かどうかの真贋鑑定を行い、登録要件が満たされているかどうかの客観的な証拠に基づく審査を行い、登録を行う場合は個体識別を行って象牙と登録票の両方に共通のマーキング、つまり印付けを行うことであります。このようにして、例外的に取引を許された象牙のトレーサビリティーが確保できます。
 日本は一刻も早く市場閉鎖決議に従うことを宣言し、そこで許された例外的な取引を厳正に行うための法整備に着手すべきであります。その作業にはこれから何年もの期間を要し、その間にもアフリカゾウは殺され絶滅の危機が高まっていくからであります。
 これらのことを提言させていただき、私の陳述を終了させていただきます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 坂元雅行

speaker_id: 18120

日付: 2017-05-18

院: 参議院

会議名: 環境委員会