池田心豪の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(池田心豪君) 御紹介いただきました池田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、厚生労働省の労働分野の研究所がこちらにあります労働政策研究・研修機構というところでして、そちらで主に均等行政、育児・介護休業法等に関わる調査研究をずっとしておりました。今日は、その私の研究の中から雇用保険法等の一部を改正する法律案のうち育児・介護休業法関係の改正案について、私が研究で得た知見をお話しさせていただきたいと思います。
 お手元の緑の帯が付いております資料、カラーコピーの資料に沿ってお話しさせていただきます。
 まず、一枚めくっていただきまして、四ページのスライドからお話しさせていただきます。
 今回の改正、育児休業の期間を子が二歳に達するまで延長可能にするという改正案でございますが、その背景には、一部の方は既に御承知のことと思いますが、特に都市部での深刻な保育所不足の問題がございます。この保育所不足を保育の拡充によって解消するとともに、育児休業とその保育、この連携をより一層強化するという、そういった観点から、子供が一歳六か月に達するまで現在育児休業延長可能ですが、その時点でまだ保育園が決まっていない場合には二歳まで延長できるという、そういった改正案になっています。
 この改正とともに、こちらに三ページありますが、労働政策審議会の建議では保育所の整備も一層進めるということで、保育と育休、どちらが拡充してということではなくて、共に拡充していく方向性、その中での今般の改正ということになっております。
 この中で、育児休業の役割というものが、もう一回どのようなものとして考えるかということが問題になるかと思いますが、育児・介護休業法では、育児休業の目的は、子の養育又は家族の介護を行う労働者の雇用の継続及び再就職の促進を図るということですので、趣旨としては、長く休んで家庭で子育てをする、そういったことも社会的には非常に重要な課題ではございますが、法律の趣旨としましては、やはり産後の女性の復職支援といったこと、そういったところに主に主眼が置かれている、そこに男性も育児休業を取って夫婦でキャリアと育児を分担していくといった、そういった考え方。あくまでも復職、就業というところから、今回の改正も、子が二歳まであらかじめ育休を取って子育てをするというよりは、復職の危機に直面した労働者が退職を回避できるようにするという、そういった趣旨の改正案として理解するのが妥当だというふうに考えております。
 何でこの六か月という期間の延長なのかということですが、お手元の五ページ目のスライドにありますが、現状、保育園に一番入りやすい月というのは年度が始まる四月なんですね。このときに一歳六か月という子供の年齢、月齢がちょうど四月を迎えるタイミングで来ればいいんですが、一年たって半年延長しても、例えば誕生日が上半期の子供の場合は年度途中で六か月来てしまいますから、その場合、結局六か月延長しても保育園決まらないという可能性があります。そういった場合、現状どうしているかというと、その前の、一歳になる前の四月の時点でゼロ歳児保育を利用して復職するというのが一番合理的な選択ということになります。
 そういった状況がゼロ歳児保育の需要につながっているというところで、育休取って一歳から復職するというところでいえば、子供の誕生日が何月であっても一歳クラスで復職するというふうにできるといったところが今回の改正、これによって、保育の観点からいえば保育需要が一定程度緩和されるということが期待できるかなという、そういった改正になっております。
 しかし、この改正に当たりましては、最近、女性活躍といった観点から、やっぱり女性が長く休むということが御本人のキャリアにとって良からぬ影響があるんじゃないかとか、特に企業は最近、なるべく早く復職して、キャリアの中断というか、休む期間あるいは短時間勤務で仕事をセーブする期間をなるべく短くすることでキャリアを歩みやすくしましょうという、そういった流れにちょっと逆行するんじゃないかといった御意見もあります。また、もう一つは、中小零細企業の場合、じゃ二歳まで取れますよといっても、現状そんなに長く取れるんですかといった問題があります。法律で認めても結局は早く復職するんじゃないですかといった問題があります。
 そういうふうにして女性がいつ復職するかといった問題、ここのときに代わりに男性が育休を取るようにもっとすることが大事じゃないかといった意見もありまして、労働政策審議会の中でもそういった意見が取り交わされたように記憶しております。
 この点について、客観的なデータからどういったことが言えるかということをこの後お話しさせていただきます。スライドめくっていただきまして、資料のスライド番号八ページ目から、まず女性の継続就業と活躍に育児休業はどういった形で関係しているのかということについて既存のデータからお話をさせていただきます。
 八ページ目は、これ極めて有名な図、グラフですが、第一子出産前後、出生前後の女性の継続就業率、これが八五年、ちょうど均等法が制定された年から直近の二〇一四年までどういった推移をしているかというところで表しております。
 下のピンクの帯が育児休業を取って仕事を続けたという割合ですが、趨勢として伸びてきているということで、特に育休を取らないで復職する人というのが近年でいえば減ってきていて、やっぱり育休取って復職といったことが一つの継続のパターンとして定着してきているという状況、そうなるとやっぱり就業継続にとって育児休業は非常に大事だということになります。
 趨勢としては上昇傾向にあるんですが、上の黄色い帯を見ていただければ分かるんですが、やっぱり妊娠・出産期に依然として半分近くの女性が仕事を辞めているという状況でして、女性活躍というと、まずはやっぱりキャリアの継続といった観点からまだまだ課題が多く、これについて育休が果たす役割は依然として大きいというふうに言えるんじゃないかと思います。
 じゃ、実際に妊娠、出産を機に退職した女性がどういった理由で辞めたのかということを九ページに示しておりますが、約四分の一の女性が、仕事を続けたかったんだけれども仕事と育児の両立の難しさで辞めたというふうに言っております。そのうちの、このピンクの囲みを見ていただきたいんですが、丸の七番、保育園に子供を預けられそうになかったないしは預けられなかったという回答をしている人が一七%ということで、今般の改正はこういった問題に焦点を当てた改正ということになります。
 全国的に見ると、保育園、この一七%という数字が大きいか少ないかということはまた議論の余地があると思いますが、特に都市部のところで局所的に保育園の問題が極めて深刻化しているというところで、保育の問題というのは、この地域のばらつきということを考慮して考える上で、この一七%に焦点を当てるということは決して意義が小さくないというふうに考えます。
 その上で、じゃ育児休業を実際に取れるんですかという問題ですが、先ほどもお話ししましたように、小規模事業所では、この十ページ見ていただくと分かりますが、やはり五人から二十九人といったような小規模の事業所では、育児休業の取得率が、それよりも大きいところに比べて依然として低いという状況があります。また、復職の時期を見ても、十一ページ、めくっていただきまして緑の数字のところ、三か月から六か月未満で復職する割合というのが、五人から二十九人のところは規模間で比較すると割合が高くなっております。
 そういう意味では、やはり人数が少ないところではそんなに長く休めないのかなというような印象を受ける数値なんですが、しかし、五人から二十九人のところでも赤い数値のところ、十か月から十二か月未満のところが二七・三%ありますので、これ、政策的な努力もありまして、小さいところでもだんだん長い期間の育児休業が取れるようになってきてはおります。
 そういう意味では、小規模事業所の問題がないわけではないですが、割合としては大きいとは言えないんじゃないかというふうに評価できるかと思います。
 もう一つ、今回のこの改正のポイントとして、青い数字で示しております、六か月から十か月ぐらいのところで復職しているという人が合計割合で二二・九%おります。これは規模の差というのがそれほど見られないんですが、これが先ほど言いました生まれ月によってゼロ歳のうちに復職している層というように解釈できるかと思います。この人たちがこの右側の数字にあります紫の十二から十八か月未満の人と大体近いような割合を示していますので、この一歳をちょうどまたぐときに、早く復職するか、もう少し長く取るかというところで差が出ているという状況にあります。今般の改正は、この青い数字の層に焦点を当てるものというふうに理解してよいのではないかと思います。
 そういうふうにして、じゃ長く育児休業を取ることがキャリアロスになって女性のキャリア形成にマイナスになるのではないかということが懸念されるわけですが、我々の機構で昨年、企業に向けて、百人以上の規模の企業を対象にして育児休業の制度ないしは取得状況と女性の管理職昇進の関係を集計、分析してみた結果が十二ページにありますが、こちらありますとおり、現行法定を上回る育児休業の制度を用意している企業において、女性の管理職昇進の割合が低いとは一概には言えないという問題があります。
 その一つの理由がなぜかといいますと、十三ページにありますが、法定を上回る育児休業を用意している企業というのは、それだけ女性の管理職登用比率の目標を設定してその登用に向けた取組をするといったように、女性活躍に対してやっぱり力を入れるというか、両立支援と均等政策というのは、どちらが大事ということではなくて両方やるということがやはり今大事で、育児休業というのはあくまでも、先ほど言いましたが、長く休んで子育てをする制度ではなくて、やっぱり離職防止、リテンションを高めるという観点では、やはり制度を充実させる、その中で離職を回避した従業員に対してきちっとしたキャリア形成支援をしていくというこの二段構えでやっていくことが大事ですので、育児休業を拡充したからキャリアにマイナスだという、そういう面はもちろんあるんですが、企業のリアクションとしてやっぱり残った従業員をきちっとキャリアにつなげていくということがうかがえますので、現在の女性活躍推進法との関係でいいますと、今般の改正が必ずしもマイナスに作用するとは言えないんじゃないかなというふうに思います。
 次に、残りの時間で男性の育児休業についてお話しさせていただきますが、依然として、御承知の方も多いと思いますが、男性の育児休業取得率自体は低い水準で推移しておりますが、傾向としましては上昇傾向にありまして、育休を取るということが男性にも徐々に浸透しつつあります。また、育児休業に限らず、企業が独自に設けている配偶者出産休暇あるいは未消化の年休といった形で子育てのために仕事を休むという男性も一定数おります。
 じゃ、なぜ育休を取らないのかということでいいますと、所得の問題というのが一つクローズアップされるんですが、やはり職場の環境、職場の雰囲気として取得しづらいといった問題があるということが次のページに示しております。今、パパ・ママ育休プラスということで男性も取れる育児休業枠というのがあるんですが、こちらに対するニーズも三割程度あるということで、男性の方で関心は高まっているけど、なかなか職場の問題で取りづらいといった問題があります。
 あともう一つ、男性の育児休業を考えていく上で、やはり妻のキャリアとの関係ということを考えていく必要があるかなというふうに思っています。こちらも、昨年度、一昨年、我々の機構で調査した結果ですが、育児休業取得率自体は一日でも取ればカウントされるんですが、じゃ具体的に何日取るんですかという話になりますと、妻が就業している場合と就業していない場合とではっきりとした差があります。女性のキャリア形成の代わりに男性が分担して取るということでいえば、やはり一か月以上の長期休業ということが問題になると思いますが、それには、まずその前提条件として、やっぱり妻がきちっとキャリアを積めているということが大事で、先ほど八ページのグラフに示しましたが、妊娠前に現在でも四分の一ぐらいの女性が仕事を辞めているという状況があります。そういった状況で男性が育休取りましょうと言っても、それはやっぱりどうしても短い期間になるということになりますので、女性のキャリア形成支援を同時にやっていくことが大事かと思います。
 以上のような形で、最後にまとめを示しておりますが、結論としまして、今般の改正によって懸念されるようなことが深刻な問題として影響を及ぼすというようなことは余りないんじゃないかということが目下の調査結果から言えることということで、私の報告を終わらせていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 119314260X00620170328_003

発言者: 池田心豪

speaker_id: 17238

日付: 2017-03-28

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会