駒崎弘樹の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(駒崎弘樹君) 厚生労働省イクメンプロジェクト座長で、内閣府子ども・子育て会議委員の駒崎と申します。
今日は、男性の育休というテーマでお話ししたいというふうに思っております。簡単に申し上げますと、このままだと二〇二〇年までに男性の育休取得率一三%というのは夢で終わるというふうな状況になっているということ、そして、それをどうやって解決していくべきかということをお話しできたらなというふうに思っております。
まず初めに、簡単に自己紹介なんですけれども、私どもは認定NPO法人フローレンスといいまして、小規模認可保育所、あるいは障害児保育、あるいは病児保育、そうした子育て支援サービスを行っているNPOを運営しております。それをしながら厚労省のイクメンプロジェクトというものを二〇一〇年からやっておりまして、イクメンという言葉を世の中に広げて、男性の家事、育児参加を促していこうということを厚労省と共にやってまいりました。
二〇一〇年当時は、家事、育児に関わる父親を表す言葉というのは存在していませんでした。今から思うと、ちょっと、えっというふうに思われるかもしれませんけれども、当時は父親というもののイメージにそうしたものはなかったわけですね。しかし、それがやっぱり世の中に広げていかなくてはいけない、父親であっても育児や家事に参加するのは当たり前であるという社会をつくっていかなくてはいけないということで、多少ふざけたネーミングなんですけれどもイクメンという言葉を出して、それが人口に膾炙して、三年前の調査ですけれども、イクメンの国民認知率もほぼ一〇〇%に近くなってきたというようなことがあります。そのような取組をしてまいりました。
個人的に、六歳の娘と四歳の息子がいるんですけれども、二人が生まれたとき、それぞれ男性の育休を取得しました。二か月間取得したんですね。もちろん経営者ですので、いわゆる労働者ではない分、育休ということではないんですけれども、二か月休んで、実際に家事、育児に専念したという経験も持ちます。そんな実際に自分で男性の育休を取った当事者としての知見も併せて今日お話しできたらなというふうに思っております。
まず、男性育休の現状です。こちらのグラフにあるように、女性の育休取得率が八割を超えているという状況にある中で、男性の育休取得率は二・六五%ということで、非常に低い水準にとどまっています。当初は〇・一二%とかですので、二十年前に比べたら頑張って右肩上がりで上がってきてはいるんですけれども、しかし、いまだにやはり目標数値の一三%というところには届かないという状況になっております。ここからあと数年で五倍にしていくというような状況なんですけれども、なかなか厳しそうな、暗雲が立ち込めているというような状況があります。
なぜ男性育休取得が進まないのかというところなんですけれども、これは阻害要因としては育休を取得しづらい職場の雰囲気というところを挙げられる方が最も多かったわけなんですね、雰囲気。なかなかそうしたことを言い出しづらい、あるいは男性が育休取りたいんですけれどもと、こう言い出すと、ああ、君は出世を諦めているんだねというようなコミュニケーションをされたりであるとか、この忙しいのに何を言っているんだいということを言われてしまったり、あるいはまた職場の中で一人も男性育休取っている人はいないよねというようなことがあったりということで、なかなか取りづらいというような状況があるということなわけなんですよね。
そこで、じゃ職場の雰囲気をつくっているのは誰かなといったときに、やはり言い出す相手、つまり上司ですね、上司の雰囲気や態度、姿勢というものを変えなくてはいけないだろうということで、イクボスという言葉を作りました。育児に理解があり、そして育児をハンディではなくて一つの大切な経験としてみなすような、そうした上司ですね、それをイクボスと定義して、イクボスを育てていこうというふうにしていったわけですね。
厚労省イクメンプロジェクトでは、イクボスアワードという賞をつくりまして、まさにこの人はイクボスだという個人、そしてイクボスを育てている企業を厚労省が表彰するということをして、その雰囲気をつくっていくということをしていったわけです。そうした啓発活動を行ってまいりました。
さらに、昨今、電通事件などもあって、働き方改革の雰囲気がかなり醸成してきているというふうに言えると思います。幾ら知名度のある企業でもブラック企業だったら勤めたくないですよねというような感覚になってきているんではないかなというふうに思いますし、また、男性で育休を取るということも決して常識外れなことではないというふうには徐々になってきてはいるんではないかなというふうに思うんですが、しかし、数値の方は、先ほども申し上げましたとおり二・数%ということで、非常に心もとない状況になっているということなんですね。
ですので、ここはより一層施策を加速していかなくては目標が達成できないというふうに思いましたので、ここで私の方から二点提案をさせていただきたいなというふうに思っております。
一点目は、男性産休をつくってみてはどうかなというふうに思っております。これは、まず男性育休取得者の取得期間を見てみますと、厚労省の平成二十七年度の調査によりますと、一か月未満が八割を超えているというような状況になっています。五日未満というのが一番多いですよね。短いんですよね。やはり、女性が一年取るのに対して、男性、育休といってもまだまだ短いというような状況があります。これは、男性が長期的に職場を離れるということに対しては、やはりまだ心理的に抵抗がある。これは、職場の同僚や上司もそうですし、また取る男性自身もあるというふうに言えるのではないかなというふうに思っております。
そうした状況がもし前提なのだとしたら、いや、もっと長く取ろうよというふうに言っていくのも一つだと思うんですけれども、そういう抵抗はありますよねと、あるんであれば、短くてもいいからまずは第一歩を踏んでみたらどうですかということで、その育休の手前にもう一つちょっと低い階段をつくっていってはいかがかと、これが男性産休のアイデアなんですね。
これは、実は諸外国に実例がございまして、フランスでは二〇〇二年に、十一日間、これは土日とか含めると約二週間ということになりますが、父親休暇という名称で、要は生まれたときに休暇を取る、男性産休を法制化したわけでございます。十年たってどうなっているかというと、約七割の対象者がこの父親休暇を取得したという状況になります。そのうち九五%、ほとんどが十一日間、全日数を消化しているというような状況になっております。
これが一体どのような影響を男性たちに与えたかといいますと、子育て作業の父母負担に関して父親産休の取得者数とクロス調査を行ったと。両者の間に相関関係がある、父親産休を取得した父親はその後も子供の世話により多く参加しているということがデータとして出てきたわけです。それを表すグラフが次のページにありますグラフになるわけなんですけれども、父親取得の有無に対する父親の育児タスクの参加スコアですね。父親休暇を取らなかった父親よりも、父親休暇を取った父親の方が子育てに関わる、実際に手を動かすようになるということになるわけであります。
これはフランスなので、いや、フランス人は日本人と違いますよねというようなこともあろうかと思うので、ちょっとここには書いていないんですけれども少し調べてきたのが、日本でもちょっと類似の事例があります。それが日本生命さんという生命保険会社さん、彼らは男性育休取得率が一〇〇%なんですね。これすごいなと思うんですけれども、ほとんどが一、二週間です。一、二週間でも育休というふうに言えてしまうので育休一〇〇%ということで、まあ短くてもそれは尊いことですのでいいんですけれども、ほとんど男性産休的なものになっているんですね。
一〇〇%男性が男性産休を取ったらどうなったかというと、アンケートを取りますと、家事、育児に積極的に関わろうと思うようになったという方が四二%もいらっしゃいますし、また、配偶者の愚痴や悩みを受け止めようと思うようになったという方が四一%。さらに、仕事の面でいうと、部下や後輩の個人的な事情に対してより配慮できるようになったという方が三五%ですし、早く帰るように業務効率を改善するようになったという方が二八%というように、家庭でも仕事でもいい影響がもたらされるようになった。
なので、フランスに限らず、日本でも同様に、男性に産休を取っていただくことで家事、育児参加するようになるし、仕事でも配慮するようになる、つまり雰囲気を変えられるようになるということが言えるようになってくるわけですね。
安倍総理は昨年の十二月、まず国家公務員の男性から全員男性産休をというふうに発言されていらっしゃいますので、そういった切り口から始めてはどうかというふうに思うわけでございます。実は、男性の国家公務員の方には配偶者出産休暇というのが二日ありまして、さらに育児参加休暇というのも五日あるわけなんですね。なので、それらをがっちゃんこして男性産休というパッケージにして取っていくということ、つまり既存の制度をいじらなくても、そういったある種見せ方というか、立て付けの形でやっていけるのではないかと。まずは、これを国家公務員の男性の方に一〇〇%取っていただいてというふうにしていけばいいんじゃないかと。今は三〇%なんですけれども、これを高めていくという形で役所から盛り上げていくということができるのではないかなというふうに思います。
いや、まあ、子供が生まれたときに休みづらいよってあるかもしれません。だけれども、よくよく考えますと、親族が亡くなったら忌引というお休みの制度があるわけなんですよ、忌引。これ、三日とか五日とか休むわけなんですね。だったら、親族が生まれたときも休もうよというふうに言っていくということは、不自然なことではないのではないかというふうに思うわけですね。クールビズもありますし、国がそういった雰囲気をつくっていこうということにある種肩を貸していくということはできるのではないかなというふうに思いますので、是非そういったところ、男性産休というところから始めていってはいかがというのが一つ目でございます。
また、二つ目の提案です。障害者雇用と同様に、男性の産育休に対しても、取らせない企業に関してはペナルティーを課していくということが必要なのではなかろうかなというふうに思っております。
皆さんも御案内のとおり、障害者の雇用に関しては法定雇用率というものが設定されていますね。それを下回ると、ペナルティーとして障害者雇用納付金というものを企業は支払わなくてはいけません。ですから、それを達成しよう、頑張ろうということで、障害者の方々を雇用しようということで頑張って、一大マーケットになっているというような状況があるわけなんですね。
この集められた障害者雇用納付金はどうなっているかといいますと、それを財源として、障害者雇用調整金であるとか報奨金、あるいは在宅就業障害者特例調整金、あるいは在宅就業障害者特例報奨金及び各種助成金の支給に使われているわけです。つまり、ペナルティーで集めたお金を、それでおしまいではなくて、きちんと推奨していく、推進していくための財源として使っていると、いい使われ方をしているわけなんですね。
これによって、この障害者雇用率やあるいは納付金という、ある種のあめとむちみたいなものかもしれませんが、こうしたものによって障害者の雇用者数というのが非常に増えていて、今四十七万人、過去最高数を記録しているわけなんですね。この制度は、本当に障害者の雇用に資する制度だというふうに言えると思うんです。
同様に、この男性の産育休というものも、ある一定水準以下の場合、つまり、明確にもう取らせていない、希望があっても取らせないオペレーションをしているという企業に関しては納付金というものを課して、それを財源に企業の子育て支援関連助成金を充実させていくというような形で、ちゃんとやっているところには助成金を、一歩踏み出そうと思っているところには助成金を、そうじゃないところにはペナルティーをというような形で進めていかないと、やはり一三%というところには行かないというふうに思われるわけです。
女性の育休を伸ばしていく、それ自体は結構かもしれません。しかし、女性の働き方と男性の働き方というのはコインの裏表です。女性の働き方だけ云々しようというのは無理です。男性が変わらなくてはいけない。女性の問題というのは女性だけの問題ではなくて、男性の働き方の問題でもあるんだということが言えるわけなので、是非この男性の働き方改革を推し進める意味においても、男性の産休、育休の推進というものを是非加速していくような施策を打っていただきたいというふうに思っております。
以上です。