田村綾子の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(田村綾子君) 日本精神保健福祉士協会の副会長の田村綾子と申します。よろしくお願いいたします。
初めに、短く自己紹介をさせていただきます。
私は、現在は聖学院大学人間福祉学部人間福祉学科におきまして精神保健福祉士等の養成に携わっております。その以前は、神奈川県内の精神科病院で、精神科ソーシャルワーカー、後に精神保健福祉士として十六年間勤務しておりました。その病院では、措置入院の方、医療保護入院の方、あるいは医療観察法での鑑定入院の方などもお引き受けしておりましたので、そういった方々への支援の経験を有しております。
また、私どもの所属しております日本精神保健福祉士協会は、全国に約一万一千人の精神保健福祉士が加盟している団体であります。その多くは、医療機関ですとか地域の福祉事業所、また行政機関等におきまして、日々精神障害のある方々への支援に携わっております。
その立場から、本日は精神保健福祉法の改正案に関する意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
まず、今回の法改正ですけれども、そもそも二十五年にこの法改正が行われたときに三年後の見直しということが最初から予定されておりましたので、その方針にのっとって検討されてきたものというふうに理解しております。
その二十五年の改正のときには、平成二十二年、障がい者制度改革推進会議が設置されまして、そこで障害者の権利条約の批准等の兼ね合いも含めて非自発的入院、強制入院の在り方等についても検討がなされてきたところかと思います。このときにも既に措置入院制度の課題というのは現に表現されていたと思いますが、前回の改正におきましては、保護者制度の見直しですとか、そのことに付随する医療保護入院の改正の方にどちらかというと論点が置かれた関係で、措置入院に関しては当時は置き去りにされたということではないかというふうに思っております。
今回の改正におきまして、国や地方自治体の責任が明確に示されたこと、これは評価できることだというふうに考えております。この点に関しましては、特に措置入院というのは、都道府県知事あるいは政令指定都市の長の命令による強制的な入院ということになりますので、その意味では、本来的には都道府県立あるいは政令指定市立の病院において医療が提供されるべきであるところを、多数の民間病院に一部委託する形で措置制度が行われているということにもう少し目を向ける必要があるのではないかと考えます。そのことからいいますと、今回、指定医の見直しが行われることは妥当だと思いますが、それ以外にも、実際には指定入院医療機関の要件等についても再検討をされる必要があるのではないかというふうに考えます。ですので、今回の法改正の後も継続的に、措置入院制度のありようについて、国はきちんと実態把握をした上で、その後の更なる改正に向かっていただきたいというふうに考えております。
また、措置入院制度のことに関しては、少し前の時点、例えば二〇一〇年度の時点でも、措置入院の方々のその後の調査というのが厚生労働研究で行われています。その中では、措置入院した方がそれ以前にその他の形で精神科医療の利用をしていた方が多いという結果も出ていますけれども、要するに、これは以前に精神科の治療ですとか保健福祉の支援対象であった方が、十分な支援がなされなかったために再度あるいは初めて措置入院になってしまった方というのもいらっしゃるということかもしれません。そういうことから考えますと、措置入院制度に限って今回は退院後支援計画を立てるという形になっていますが、全入院患者さんに対してこれはきちんと行うべきものではないかというふうに私どもは考えております。
今回、このように措置入院のことに関連して法改正が非常に大きく動くことになったのは、相模原事件がきっかけになっているというふうに思います。この間、多くの方々が御発言なさっていますし、私どもの協会でも何度か見解や要望などを出させていただいていますが、精神障害の有無と事件との間に因果関係があるかどうかが分からない中でのこの間の検討、そして今回の法改正の提案ということに関しては、これはやはり道筋が違ったのではないかというふうに本協会は考えているところです。また、今回の事件をきっかけにしなければ措置制度のずさんさが把握できなかったということにつきましても、これ自体がそもそも問題なのではないかというふうに考えます。今後は、実態把握をきちんとしていただくことが大事ではないかというふうに考える次第です。
それから、医療の在り方ということになりますけれども、措置入院の患者さんは、実際には、措置指定の入院機関において、その他の入院制度によって入院していらっしゃる方々と同じ病棟で同じような治療を受けることになります。ですので、その中で措置入院の方だけに手厚い支援を実行するというのは実際にはかなり医療機関においても労力を使うことになりますし、それを可能とするためにはそれ以外の精神医療全体の質の向上というものが求められるのではないかというふうに考えております。
現在、厚労省では、ガイドラインの作成によって、精神科の医療機関において診療ガイドライン等が作られる予定になっているかと思いますけれども、これらは措置入院制度の入院患者さんに限らないところで広く運用されるようなものになっていくことを期待したいというふうに思います。
その中ではチームアプローチということが非常に重要になってまいりますし、退院後の支援ということを考えますと、地域で孤立した生活にならないように支えるためには医療だけでは十分とは言えないというふうに考えます。といいますのは、医療というのは当然病気の治療ですとかその後の健康な生活というものを支援するものになりますけれども、人の幸せというのは、健康であればいいとか、病気が再発しなければいいというものではないと思います。その方がどんな暮らしをしたいかということや、何を好んでいて、どんなふうに自分らしく生きたいかということをきちんと聞くことから支援が具体的になっていくものであります。
私たち精神保健福祉士は、精神障害のある方々の自己決定の尊重ということを第一に大切に考えています。ですので、退院後支援計画の作成におきましても、必ず御本人の意思、御本人の希望というものをまず最初に確認し、それを実現するためにどのような支援をしていくことがよいのかという順序で考えていくことが必要だというふうに捉えております。
そのような支援を組み立てていくことができれば、御本人の方から支援を拒否するとか、こちらが提案した支援を受け入れないというときには、当然すり合わせが必要になります。そういうことを丁寧に行う、またそのマネジメントを行うためには専門職の配置ということが不可欠になります。今回、保健所設置自治体においてこのマネジメントをやられるということであれば、そこにはきちんと専門的な知識、技術を持った人を配置していただきたいというふうに考えております。また、そうしたことに関しても、自治体が中には民間医療機関等に委託することがあるかもしれないということを聞いておりますけれども、そこは安易な委託ということに至らないように、是非自治体の責任においてきちんとしていただきたいというふうに考えております。
それからもう一つ、ちょっと時間がないので少し省略させていただきますけれども、グレーゾーンというお話が出てきていたかと思います。
警察の関与ということも含めてですけれども、実際に現場においては、これは本当に精神科の医療が必要なんだろうか、それとももしかすると教育訓練、あるいは罰を与えてきちんと反省していただく、そしてそこから更生していっていただくことが必要なんだろうかということが悩ましい方に出会うことは多々あります。そのような方々を目にしたときに、警察官の方々も実際に現場でお困りだと思うんですね。一方で、そういった方々を連れてこられた医療機関の方も、短時間の措置診察の中でそれが実際に強制的な医療が必要かどうかを判断するというのは本当に難しいことだと思います。ですので、指定医の先生方の力量の向上というのは当然必要ですけれども、それだけに責任を負わせるのではなくて、警察の方々とともに考えていくということは欠かせないと思います。そういう意味で、調整会議の、代表者会議に警察官が入っていただくということや、地域の会議でも警察官と協議するということは必要だと思うのですけれども、個別の事例に関して、この場合は警察官を呼ぼうという判断にはしていただきたくないというふうに考えています。
まずは、精神障害というものをどういうふうに捉えていくのかとか、それから、社会の安定、安全を守るためにどういう仕組みが必要なのかということについて、この精神保健福祉法という法律の中だけではない枠組みにおいて検討していただきたいというふうに考えます。その点が相模原事件の検証チームにおいては残念ながら、山本先生をお隣にして大変申し訳ないんですけれども、ちょっと残念だったところがあるのではないかというふうに思っておりまして、できることならば再度こういった検証について行っていただきたいというふうに考えております。
時間が来ましたので、済みません、一旦ここまでにさせていただきます。
ありがとうございました。