辻本哲士の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(辻本哲士君) 本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。辻本です。
 基本的に、この配付している資料の一枚目、二枚目を御覧ください。後ろに説明の根拠となっている数字やポンチ絵、報告書その他の資料が付けられています。
 まず、私の立場ですが、精神医療センター、百二十床の県立の精神科病院に勤務している普通の臨床精神科医です。週二回の外来と月二回の当直をしております。
 精神保健福祉センター、地域精神保健福祉の中核となる公的機関の所長をしています。滋賀県のセンターでは、精神保健相談、自殺対策、引きこもり対策、知的障害相談、啓発活動、精神障害者手帳、通院公費負担、精神医療審査会、最近では、依存症対策、長期在院患者の地域移行支援、災害時心のケア等を行い、さらに精神科救急情報センターの業務を担っています。正規職員は二十一人で、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士、事務職その他、多職種で、医者は私一人です。全国精神保健福祉センター長会に所属し、全国のセンター長と情報交換をしております。
 精神科医の私が、医療と保健福祉、両方の領域、プラス県行政で活動している理由は、精神障害患者の支援には、医療、診断や薬物療法、精神療法、カウンセリングなどの治療だけでなく、保健福祉、人の関わりで健康を保ち、障害を補うことが重要だと考えているからです。そういう立場にある精神科医の意見としてお聞きください。
 措置入院患者のフォローアップと精神科救急。改正概要二を御覧ください。措置入院患者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備、いわゆる措置入院患者のフォローアップについてです。
 滋賀県では、数年前からモデル事業として、措置入院患者のフォローアップ体制を取っております。まだまだ不完全、不十分ではありますが、今回の法律案に近いシステムだと思っています。ただ、事業を始めた経緯は、相模原の不幸な事件をきっかけにした成り立ちとは異なっています。精神科救急システムとリンクして、精神障害者の地域支援の視点で始まっているのです。
 少し精神科救急の話をします。一般科では、例えば急な頭痛や腹痛で病院を緊急受診したいとき、全国どこでも電話で一一九番ダイヤルすれば、救急車が来て適切な救急病院まで運んでくれ、診察が受けられます。精神科では、急な精神不調が起こったときにどうするのか。これは、この対応は各自治体によって違います。滋賀県では、警察が介入せざるを得ないほどの精神障害のために自傷他害のおそれがある精神不調に対し、措置・緊急措置制度を活用して対応しています。警察等で保護された事例のところに行政職員が出向いていって、適切な調査を行い、必要に応じて警察等と連携を取りながら、協力いただいている民間公的精神科医療機関に搬送し、精神科診療を受けてもらっています。防犯ではなく、心病む精神障害者に一刻も早く適切な精神医療を受けてもらう目的で行っています。
 措置・緊急措置対応は、平日昼間は保健所が、夜間、休日は救急情報センターが受け持ち、精神保健福祉センターや保健所の職員が泊まり込むなどして二十四時間三百六十五日対応しております。平成二十八年度の実績ですが、措置・緊急措置の申請件数は二百二十九件、そのうち警察官通報は百五十七件、うち救急情報センター職員の調査の上、措置・緊急措置診察になった事例数は九十五件、措置・緊急措置入院となった事例数は六十三件となります。
 さて、精神科救急システムを平成二十一年から運用しているんですが、困ったことが起きます。措置・緊急措置入院を繰り返す事例があるのです。精神科救急として措置・緊急措置入院をしてもらっても、知らない間に退院して、また警察官通報が出て精神科救急システムに乗ってくる、入退院を繰り返す人が少なからずおられるのです。治療中断例が三七%、五回以上入院している事例も散見されました。退院しても、それからの日常の地域生活を応援していかないと病状悪化を来し救急化してしまう。言い方が悪いかもしれませんが、火消しばかりではなく、予防しないと患者のQOLは保たれないということが分かってきたのです。
 このような背景から、滋賀県では、精神保健福祉センターと保健所が協力して、措置入院患者フォローアップ体制をつくりました。今回の法改正案で想定される措置・緊急措置患者に対し、入院中に保健所等を中心として関係機関が協議し、退院後も患者が支援を受けられることのできる体制は、このように地域の援助ニーズから自然発生的に生まれました。
 夜間、休日の救急情報センターの当番職員として勤務している保健所保健師が、精神科救急による措置・緊急措置対応で精神科病院の入院時に患者と関わり、その患者が退院してからも保健所職員の立場で継続的に地域支援していることもしばしばあります。平成二十八年度の実績ですが、全ての措置入院患者五十九人のうち、入院中に精神保健福祉センター、保健所が何らかの関与、支援した患者は五十四人、九一・五%でした。
 今回の法改正が進まなくても、滋賀県の現場スタッフは措置入院患者フォローアップ体制を続けます。精神科救急と退院後の地域支援は車の両輪の関係にあると考えているからです。どちらが欠けても地域の精神保健医療福祉は前進しません。今回の法改正で、国としてより良い仕組みが整備されることを期待します。
 精神障害者の孤立を防ぐ。改正概要三、精神障害者支援地域協議会の設置についてです。
 なぜ措置・緊急措置入院を繰り返す患者がいるのか。精神障害者の病状悪化は、医学的要因だけではなく、社会的要因が大きいからです。生活困窮、就労、高齢・介護、教育、住居その他、様々のストレスが誘因となって精神不調を来し、治療を中断、誰にも相談しなくなって更に病状が悪化、自傷他害行為を起こしてしまう。孤立から精神不調を悪化させるパターンは、自殺、依存症、引きこもり、災害時のメンタル不調でも同様に起こり、精神障害全般で認められます。措置入院を繰り返す人は医療だけでなく社会からも疎外されていく、措置症状を出さざるを得なくなるのは社会からの孤立に対するSOSでもあります。
 患者が誰かと相談できる孤立しない体制づくり、これは精神科医療だけではできません。また、ストレスを生む社会問題に対し、精神科の薬やカウンセリングは必ずしも有効ではありません。医療機関だけでなく、様々な地域の関係機関が連携、協力して、継続して援助することが重要になります。
 今回の法改正における精神障害者支援地域協議会の設置は、後で述べる精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の基盤にもなります。協議会の活用は、措置入院患者の退院後支援にとどまらず、広く全ての精神障害者の社会復帰、自立、社会経済活動の参加につながると思っております。
 精神保健指定医に精神保健福祉指定医としての視点を。改正概要四、精神保健指定医制度の見直しについてです。
 臨床の精神科医として、指定医の資質向上は最重要だと思います。さらに、今までお話ししてきたように、精神科医が精神障害患者と接するには、医療と保健福祉、両方の視点が必要です。入院医療中心から地域生活中心へと、精神保健福祉施策の基本的方策が出されて十年たちましたが、現場では精神科医療と地域精神保健福祉はまだまだうまく連携できていません。医療も保健福祉も車の両輪の関係にあります。どちらが欠けてもうまくいきません。
 今回の改正の見直しで、厚生労働省令で定めるところにより行う研修で、精神科医に精神医学とともに地域保健福祉や人権擁護、公務員職務等に関する知識や技能が実務経験の中で身に付くことと確信しています。精神保健福祉指定医といった役割を担っていただけると有り難いです。
 精神保健医療福祉と地域包括ケアシステム、我が事・丸ごと、いい町づくり。
 これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会で、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が報告されています。これは、厚生省社会・援護局から出されている我が事・丸ごとの地域づくり、地域共生社会の実現にも関連しています。今回の法律は、精神障害者にとってもいい町づくりをもたらしてくれる、そういった法律の進展だと思っております。
 課題です。
 充実した体制を取るためには、医療にも保健福祉、精神保健福祉センターや保健所、地域の関係機関にも十分な予算と人員が必要です。体制整備にも時間が掛かります。医療、保健福祉の地域差も大きな課題です。拙速に進めることは事務処理だけが増え、かえって地域支援が形骸化し、地域差が拡大することになります。十分な検討が必要です。
 以上です。

発言情報

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発言者: 辻本哲士

speaker_id: 17622

日付: 2017-04-13

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会