桐原尚之の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(桐原尚之君) 全国「精神病」者集団運営委員の桐原です。本日はありがとうございます。
 全国「精神病」者集団は、一九七四年に結成した精神障害者の個人及び団体で構成される全国組織です。精神保健福祉法は精神障害者への強制的なものを含む入退院手続を定めた法律であり、私たち精神障害者の生活に大きく関わるものとして強い関心を持ってまいりました。精神保健福祉法の手続に基づき入院したり退院したりする当事者は精神障害者だけです。そのため、精神保健福祉法の改正に当たっては、精神障害当事者の声を聞き、尊重してほしいと思っています。よろしくお願いします。
 精神障害者の中には、強制的に入院され、数十年にわたって劣悪な処遇の精神科病院に入院している仲間が全国各地にたくさんいます。石郷岡病院での事件は記憶に新しいと思います。法律は人の人生に大きな被害をもたらすことがあります。そのため、私たちは、結成当初から精神保健福祉法、当時は精神衛生法、それ自体の廃止を求めて運動をしてきました。
 非自発的入院の廃止の主張は、世界に精神障害者の運動で共通しており、私たちのことを私たち抜きで決めるなの精神を反映してできた障害者権利条約の要請するところと一致しています。障害者権利条約第十四条は、障害を理由とした人身の自由の剥奪を禁止しており、精神障害者であることを要件とした非自発的入院制度は障害者権利条約に違反すると指摘されています。
 しかし、これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会では、障害者権利条約の趣旨や整合性を確認するための検討が一切なされませんでした。また、障害者権利条約では、障害当事者の政策の決定過程からの参画を求めています。しかし、精神障害当事者が少なく、障害当事者の声はほとんど反映されることはありませんでした。
 相模原事件の月命日は全国各地で障害者団体による集会が持たれ、相模原事件は差別と優生思想の問題であり、措置入院の問題ではないという主張が確認されてきました。しかし、この改正法案は、そうした障害者の声と真逆の方向を示していると考えます。本日、追加資料でお渡ししたんですけれども、各地で集会されたリストを挟みました。
 改正法案は、相模原市の障害者支援施設の事件の再発防止が改正の趣旨であるとされています。この間の塩崎大臣の答弁では、相模原事件の再発防止は目的ではなく、相模原事件の再発防止を契機に発見された課題を見直したものと答弁されていましたが、文字の配列を変えただけ、つじつま合わせなのではないかと、そういうふうに感じました。一般の国民が納得いく説明とは思えませんでした。
 おととし、私の同郷の友人が神奈川県下の精神科病院に警察官通報で措置入院になり、入院後五日目にして身体拘束中に死亡しました。彼は、面会に来た母親に対して、今すぐ退院させてくれないと殺されてしまうというふうに叫んで訴えました。これは前日訴えたんです。精神科病院において、こうした事件というのは比較的頻繁に起きています。
 本改正では、相模原事件の再発防止策として、措置入院者の退院後支援というのが規定されました。措置入院者に対して、原則として、入院中から警察関係者を構成員として想定した精神障害者支援地域協議会の関与の下、退院後支援計画を作成する制度が新設されます。これは兵庫県の継続支援チームなどをモデルにしたと思われますが、継続支援チームの介入をストレスに感じて再発した人や、たまたま評判の悪い病院に輪番で、精神科救急の当番であったため入院し、そのまま当該病院への通院を強いられて体調を崩した例などを仲間を通じて知りました。やはり、退院後フォローアップ、兵庫県のものは犯罪防止というような部分から出てきたような側面があります。実際の生活場面でも、精神障害者にとって日常生活の重圧になっている点で問題があると思います。
 厚生労働省は改正法案が監視ではないと言いますが、現行の精神保健福祉法の運用自体が既に社会防衛的であり、監視的な側面を持っていると思います。なので、より監視的になるという意味で、精神障害当事者の多くは措置入院者退院後支援を恐れています。措置入院になったらグレーゾーンと診断されて無期限に監視されるかもしれない、そうならないためにも、措置入院になる前に家族等に医療保護入院にしてもらおうかということを相談しておこうとか、そうすれば措置入院だけは回避できると、そういった形で、退院後支援に乗らないための具体的な方策が障害者団体員の中で話し合われたりしています。
 退院後支援計画は、必要に応じて本人を参加させ、極力本人が決定に携われるようにするという答弁がありましたけれども、そもそも無理やり措置入院にされた後、精神障害者は、自分の決定を大きく否定、無力化されているわけですから、退院後の計画について真に自由意思に基づいて同意できるような状態ではなくなっています。第一、退院後のこと自体が分からないし、何で計画を立てるのかも分からない。私たちに必要な支援は、こうした、決定はできないという状態からの権利の回復をするためのものでなければならないというふうに思います。
 私たちは、最低でも、支援と名を打つのであれば、退院後支援計画は本人の参加を原則とすること、計画期間に上限を設けて、周期を自分で決められるようにすること、それから、精神障害者支援地域協議会に警察関係者が入らないようにすることが必要だと思います。私は、たとえ自殺防止のためであっても、警察官には見回りに来てほしくないと思っています。
 措置入院者の退院後支援の立法事実は、相模原事件の再発防止において発見された制度的不備とされています。しかし、現時点で容疑者の行為と疾病の因果関係で裁判は明らかにされてはおらず、鑑定留置の結果では責任能力ありとされました。この事件は、警察が初動で施設側に犯行手順の書かれた容疑者の手紙を見せなかったために施設側の警備意識が高められず引き起こされた事件という側面があり、それが容疑者に措置入院歴があったことが報道されたことで、精神障害の問題にすり替えられたものだというふうに思っています。
 また、精神障害者の問題にすり替えられた原因は、措置入院という制度の構造に内在した問題に由来しているのではないかと思います。未来予測は科学をもってしても不可能な領域とされていますが、措置入院は、精神保健指定医がおそれを認められると仮定して成り立っています。それでも、完全に他害を防ぐことというのはできないわけですから、他害等が起きたとき、未来予測が可能であるという建前に立脚してしまった、その上での責任というものが発生するため、なぜ防げなかったんだという論点が生起してしまいます。この連鎖を断ち切るためにも、精神障害者に対する非自発的入院の廃止に向けた抜本的な見直しが不可欠ではないかというふうに思います。
 私は、精神障害当事者として、精神障害を理由とした非自発的入院それから行動制限、これは隔離、身体拘束が含まれますけれども、特に身体拘束というのは、されたら、とても人格を否定されたというような気持ちにさせられます。こういったものの廃止に向けた取組を求めるとともに、本改正法案に対しては審議を一から検討し直してほしいというふうに強く思っています。
 少し時間が余りましたけれども、僕からはこれで陳述を終わりにさせていただきたいと思います。

発言情報

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発言者: 桐原尚之

speaker_id: 7581

日付: 2017-04-13

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会