中山徹の発言 (総務委員会)

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○参考人(中山徹君) 奈良女子大学の中山と申します。
 私の専門は、法律というよりも町づくりとか都市計画、農村計画です。この間、地元で、奈良におりますので、奈良でいろんな自治体と地方創生等々にも取り組んでいます。そういう視点から、今回の地方自治法の一部改正、とりわけ地方独立行政法人との関係で私の考えを述べさせていただきたいと思います。
 今回の地方自治法改正の背景なんですが、ここにも書かれていますように、人口減少に適切に対応するためとなっています。人口減少への対応は重要ですけれども、そのことをめぐって、実際地域ではいろんな問題が生じています。その点について若干触れますけれども、多くの市町村が人口減少に対応しようとしていますが、そもそもその前提に非常に大きな問題があるのではないかな、そう思っています。
 市町村は、この間、人口ビジョンを作成し、総合戦略を立てています。その理由は、このまま人口が減って、社人研、国立社会保障・人口問題研究所の出している予測に沿って地域の人口が減ってしまうと大変なことになる、それを防ぎ、人口減少率を穏やかにしつつ、人口減少の弊害を少しでも少なくする、それが総合戦略であったかと思います。
 また、市町村の指針となったのが国の作成した長期ビジョンですが、それによりますと、社人研の予測では百年後には四千万人台、そこまで人口が減るということに対して、政府の作成した長期ビジョンでは今世紀後半では人口九千万人ぐらいで安定させたいと、そういう目安になっています。
 ところが、この間、市町村が策定している人口減少への対応、例えば立地適正化、いわゆるコンパクトシティーですけれども、若しくは公共施設等総合管理計画、これらの前提には社人研の予測を使っています。この原因は、政府が社人研の予測を使えと指示しているからなんですけれども、これは明らかにおかしなことです。
 社人研の予測によりますと、予測のようになると大変だから、政府から自治体まで総力を挙げて地方創生に取り組もうとしていたはずです。ところが、市町村は、自らが作成した人口ビジョンよりもより大きな人口減少率に基づいて公共施設の統廃合を進め、中心部への集中を進めようとしています。人口が大幅に減るから公共施設の総量を削減しないと財政がもたない、人口減少に対応して都市的な施設を中心部に集中させないと地域全体が衰退してしまう、そういった理由です。
 この間の市町村の動きを見ていますと、どちらかというと過大と言えるような人口減少予測に基づいて様々な開発計画を立てているのではないかなと思います。
 そのような開発や公共事業を進める財源ですが、大きく二つ想定されているかと思います。一つは、医療や福祉、市民向けの予算を削減するということ、それともう一つは、いわゆる行政改革、人件費の削減やアウトソーシング、そういったもので今後の開発、公共事業予算を生み出そうとしているのではないかなと、そのように読み取れます。
 残念ながら、今回の地方自治法の改正もこのような一連の動きの中にあるのではないかと懸念しています。人口減少を掲げて、市民生活に甚大な影響を与える自治体業務のアウトソーシング、そういったものを進めようとしているのではないかなと、そのように思います。
 今回の改正で対象としているのは窓口業務、関連業務ですが、この窓口業務というのは市民と行政の接点部分でして、市民にとっては非常に重要なところです。これを行政から切り離して地方独立行政法人が担えるようにするというのには二つの問題があるのではないかなと思います。
 一つは、市民にとっての問題です。窓口業務というのは、市民を市民にとって必要な施策につなげていける端緒ではないかなと考えます。もちろん、証明書の発行業務、そういった点もありますけれども、同時に、市民が初めて窓口に行くところでもあるわけで、そういった市民が必要な施策につなげられるかどうか、ここは非常に重要なポイントではないかなと思います。ところが、行政職員が担う業務と法人職員が担う業務が分断されてしまいますと、それが困難になりはしないかと、そのように考えます。
 もう一つは、地域にとっての問題です。地方独立行政法人が窓口業務を処理できるようにする、その大きな理由はコストの削減ということが目的ではないかなと思います。今回あらかじめ配っていただいた資料で先行的な事例として紹介されているところも、その効果というふうに挙げているのは経費の削減とかコストの削減、職員の削減になっています。ところが、さきに述べたように、削減した経費を新たな開発や公共事業予算に充てようとしているのではないかなと懸念されます。
 人件費は地元で消費される部分が多く、地域経済にとっては大きな位置を占めます。その部分が縮小され、大型公共事業や開発に回しますと、地域経済にとっては残念ながらマイナスになります。このような削減がトップランナー方式と連動しますと地方交付税の削減につながり、地域全体で動くお金そのものの減少ということが懸念されます。
 このようなことを、私、町づくりなんかやっていますと、どちらかというと一九九〇年代、その再来ではないかなと、そのように考えます。しかし、それ以上の結果も残念ながら想定できます。
 どういうことかと申しますと、一九九〇年代は、当時は過大な人口増加予測、需要予測に基づいて過大な公共事業を展開しました。その背景になったのは都市間競争ですが、都市間競争ということで、市町村は大規模な開発にのめり込んでしまいました。しかし、過大な需要予測に基づいたため、あちらこちらで事業が破綻し、また、事業は進んだものの想定以下の利用にとどまり、地域経済へのインパクトというのは限定的でした。また、当時は財源を起債に頼ったため、ところが、その後、税収増が起こらなかったため財政悪化を招き、その後、福祉や市民向け予算の削減、そういう事態を当時はもたらしました。
 今回は、過大な人口予測ではなくて、発端になっているのは自治体消滅論です。自治体消滅論があり、過大な人口減少予測を立て、それに基づいて過大な公共施設の統廃合、コンパクト化、そういったことが全国各地で進もうとしています。
 しかし、都心部を開発しても需要が増えるわけではありません。インバウンドに至っては、海外の需要に依拠しているわけで危険性は更に高くなります。一九九〇年代は財源を起債に求めて、その結果、財政が悪化し、結果的に市民向けサービスの削減へと進みました。今回は、財政状況から起債にかなりの部分を求めるのは難しいため、最初から市民向け予算を削減する、若しくは行政改革、アウトソーシングで予算を確保しようとしているのではないかなと思います。
 二十一世紀に入って、大都市圏を除きますと、大型公共事業はやや低迷していました。ところが、最近になって、人口減少を掲げた都心部の開発、インバウンド、そういったものが状況によっては暴走と言えるような事態に今生じ、入ろうとしています。特に目立つのは、リニアの新駅周辺とか長崎新幹線とか、そういった新しい鉄道が通るような駅周辺の開発、若しくは、グローバルMICE都市の指定が行われていますけれども、そういったところでもMICE施設整備の競争が起こっています。以前から国際展示場とかは造られていましたけれども、当時造られた国際展示場というのはその地域の周辺の需要というのを前提にしていましたが、今回は国際的な需要を取り込むような計画になっています。
 コンパクトシティーも同様です。立地適正化を作成した自治体は既に百二十を超えていますけれども、そのうち都市機能誘導区域のみを指定している自治体が全体の三分の一程度です。多くの自治体は、市街地の縮小というのではなく、むしろ都心部の開発を進めるために立地適正化を活用しようとしているのではないかなと思います。
 もちろん、誤解のないように付け加えますと、コンパクトシティーを否定しているわけではありません。人口減少とともに、市街地の拡大を抑えて人口密度を一定以上に保つという施策は重要です。元々ヨーロッパでスタートした考え方ですし、今日も来られていますが、富山市を始め、日本では様々な先駆的な事例もあります。そういったものを全て否定する気は毛頭ございませんけれども、ただ、現在生じている多くの事例というのは、市街地の拡大を抑えるというよりも都心部の開発を進める、そちらに力点があるような、そういう感じに見受けられます。地域によっては一九九〇年代の再来ではないかなと、そういうふうに思われます。
 一方、今回の開発や大型開発が成功する確率は一九九〇年代より低いと思います。一九九〇年代とは異なり、人口が減少し始め、高齢化が急速に進み、経済規模の拡大がかつてほど見込めないからです。駅前を中心に地域の需要を上回る公共事業を進めても、事業そのものの破綻が考えられます。仮に事業としては成立しても、周辺部から人や消費を奪うだけであって、周辺部の衰退が加速される可能性が高いと思います。公共施設は人々の日常生活を支える基本ですが、それが地域からなくなると人々の日常生活が成り立たなくなります。このようなことを進めますと、失われた二十年以上の結果がもたらされかねません。
 過大な人口減少予測、必要以上のコンパクト化、地域の公共施設の統廃合、市民サービスの低下、行政力の低下、それが市民生活の破綻、地域経済の衰退、更なる人口減少の加速化という、かつてでは見られなかったような悪循環に陥る危険性、この負の連鎖というのが今回の非常に大きな可能性ではないかなと思います。
 さらに、行政との関係で一点述べておきます。
 先ほど申しましたように、大型開発や大型公共事業の財源を確保するために行政職員の削減、アウトソーシングを進める、これについては非常に大きな懸念があります。むしろ、少子化対策を本気で進めていく、高齢化対策を充実させるためにはそれらの充実が重要です。人口減少が進みますと、民間企業の撤退も予測できます。本来であればこのような事態に行政こそがきちんと対応すべきですが、今の趨勢は、市民の助け合い、互助、そういったもので乗り切ろうとしています。
 では、どうすべきかというところで簡単にかいつまんで申しますと、人口が減少する時代、普通に考えますと大規模な開発は不要です。大型の公共事業は最低限必要な防災分野などに限定すべきです。今地域で起こっていることは、過度の人口減少を抱えて、コンパクトやインバウンドに代表されるような大型開発を進め、その財源を確保するために市民向けのサービスの削減、アウトソーシングを進め、市民にとって必要な業務は、地域包括ケア、地域運営組織などで市民に丸投げしようとしています。それに対して、医療、福祉、行政サービスの拡充をまず第一に考える。第一次産業や地元製造業、商業、再生可能エネルギーの発展などにむしろ予算を割き、その財源は政府の責任で、収益を上げている企業の内部留保若しくは富裕層に求め、市民と行政が話し合って協働し、事態を打開する、ここに地方自治を、地方政治をめぐる大きなポイントがあるのではないかなと思います。
 中心部の開発、地域活性化というような発想ではなく、地域資源を生かした地域経済の活性化を考える場合、市民、事業者、行政など、様々な主体の連携が重要になります。その要に座るのが行政です。そこをアウトソーシングなど安易な発想で弱体化させてしまいますと、地域の要が失われるのではないかなと思います。このことは、残念ながら、市町村合併で中心部に事実上吸収合併された周辺部を見れば一目瞭然ではないかなと思います。きめ細かな少子化対策を取らなければ人口減少の歯止めが掛かりません。急速に進む高齢化に対応しなければ介護難民が地域であふれ返ります。そのような対策を進める中心が行政であるべきです。そのような点から見ると、行政の力を低下させかねない今回の改正はもう少し慎重に考えるべきではないかなと思います。
 人口減少が生じるのは確実ですけれども、過大な予測は禁物です。政府が作成した長期ビジョン、自治体が作成した人口ビジョン、それを実現するのが重要であり、その要に座るのは行政です。そのような行政の弱体化につながりかねない法改正についてはもう少し慎重に検討すべきではないかな、そのように考えています。
 以上です。

発言情報

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発言者: 中山徹

speaker_id: 31643

日付: 2017-05-30

院: 参議院

会議名: 総務委員会