佐藤博の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(佐藤博君) おはようございます。秋田県の農林水産部長の佐藤でございます。
 まずもって、参議院農林水産委員の先生方には、日頃から本県農林水産行政の推進に多大なる御支援と御協力をいただきまして、この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います。
 本日は、主要農作物種子法の廃止法案の審議に当たりまして、現場で種子の生産、流通を担っている県の立場から意見を申し上げたいと思います。
 前段、本県農業の現状や振興方針等につきまして若干お話ししたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
 本県農業は、十二万四千ヘクタールの経営耕地面積で、約四万九千戸の農家が稲作を中心とした水田農業を営み、一千六百億円強の農業産出額を上げ、これまで我が国の主要な食糧供給基地としての役割を果たしてまいりました。しかしながら、農業産出額全体に占めます米の割合、これがかつては六割から七割、最近でも五割を超えておりまして、米に偏った生産構造となっていることから、今後の本県農業の持続的な発展を図るため、現在、園芸メガ団地や大規模畜産団地等の整備を全県展開するなど、複合型の生産構造への転換に向けた取組を集中的に進めているところでございます。
 こうした取組の推進に当たっては、国の産地パワーアップ事業や、それからいわゆる畜産クラスター事業、さらには生産活動の基盤となります圃場整備事業等をフルに活用させていただいております。おかげさまで、平成二十七年の農業産出額が全ての作目で増加しまして、前年からの伸び率が全国のトップとなりまして、二十八年も更なる拡大を見込んでいるところでございます。引き続き、地域農業の構造改革を後押しするため、こうした事業の継続と予算確保をお願いしたいと思います。
 一方、米につきましては、本県の基幹作物として、今後一層厳しくなります産地間競争に打ち勝っていかなければならないと考えておりまして、平成三十年以降の米政策の見直し後を見据えて、実需者、消費者との結び付きを強めながら、産地全体で販売を起点とした米作りに取り組んでいくこととし、現在、その指針となる県独自の新しい生産・販売戦略の策定を進めているところでございます。
 御案内のとおり、本県は、広大な水田、台風や冷害といった災害の少ない気候、豊富な水資源を背景に、全国有数の米産県として安定生産、安定供給に取り組んできておりまして、二十八年産の食用米生産量はおよそ四十万トンで、北海道、新潟に次いで第三位となっております。
 また、本県が開発しました主力品種のあきたこまち、デビューして三十三年目になりますが、これまで長きにわたりまして消費者や実需者の皆様から広範な御支持をいただいておりまして、そのブランド力は三十年をたった今でも健在であるというふうに思ってございます。全国的に業務用米が不足する中で、抜群の知名度と、食味が良く、値頃感があり、年間を通じて安定供給できるロットを有することから、最近改めて引き合いが強くなっておりまして、市場から需要に見合った供給をお願いされているところであります。
 近年、全国各地で良食味米の開発、デビューが相次いでおります。そうした中で、本県でも、今、将来の秋田米のプライスリーダーとなる新しい品種の開発を急いでおりますが、それと同時に、今後の米作りに当たっては、中食、外食など年々増加する業務用需要に対し迅速かつ的確に対応していくことにより重きを置いた取組を進めることが極めて重要であるというふうに考えてございます。
 こうした米作りの根幹を支えているのが品質の確かな種子の安定供給であります。水稲で申し上げますと、本県では、種子法及び関係通知等に基づきまして、ウルチ米では県が開発した七品種、それから他県、これは宮城県でございますけれども、開発されました二品種、それから酒造好適米とモチ米でそれぞれ二品種、計十三品種を奨励品種として採用し、原原種は農業試験場内で、原種は、近隣の農業法人の圃場を借り上げ、県の直轄の下、管理作業を当該法人に委託して生産を行っております。また、農家に供給される種子につきましては、県内十六か所、およそ七百ヘクタールの指定採種圃場で約三千トンの種子を生産、供給しております。
 本県は、過去に種子生産圃場で異品種混入問題が発生したり、ばか苗病が多発したことを受けまして、原種圃場を現在地に移転するといった苦い経験を有しております。このため、現在では、例えば種子を生産する圃場だけでなく、半径五百メートル以内の周辺圃場についても防除基準を設定したり、また異品種混入リスクを回避するため水田クリーニングを実施するなど、県独自の厳格な基準の下で種子生産に取り組んでいるところでございます。
 こうした中で、今般、農業競争力強化プログラムの一環として種子法廃止の話が出てきたわけでございますけれども、正直申し上げまして、現場とすれば唐突感が否めず、特に県内の農業団体や種子生産組合の方々からは、国も県も手を引くのか、これからどうなるのかといった不安の声が寄せられたことも事実であります。もとより、県とすれば、現在の体制を変更しなければならない必要性は特段感じておらず、県の産米改良協会と協議し、今の体制はしっかりと堅持するという考えを現場に早々にお伝えしたところで、現在はJA、農家ともおおむね冷静に受け止めているところでございます。
 農家やJA等の現場にとっては、これまでと同じように良質な種子が安定的に供給されるかどうかが最大の関心事であります。米産県である本県としましては、種子法の存廃いかんにかかわらず、これまでと同様、産米改良協会と連携しながら優良種子を安定的に生産、供給していくことが県の責務であり、引き続き、普及指導員やJAの適切な指導体制の下で手を緩めずに取り組んでいく考えであります。
 その一方で、仮に種子法が廃止され、原原種、原種の生産や奨励品種決定試験など県の義務がなくなるとすれば、これまで以上にマーケットの多様なニーズや生産現場からの要望にスピード感を持って柔軟に対応できる場面も出てくるのではないかと考えております。
 具体的な検討はもちろんこれからになりますけれども、例えば本県では、豊田通商さんが扱っているしきゆたかという品種、これは収量も多くて売る先も決まっているということで、JAを含めて十一法人、約五十ヘクタールで今栽培されておりまして、今後更に拡大することが見込まれております。このしきゆたかのように、農家の所得向上に資するような民間品種につきましては、例えば簡易な現地適応試験をもって奨励品種にすることで迅速に県内普及を図ることが可能となります。
 実は、豊田通商と農業法人とのマッチング、県が自らコーディネートしたものでございます。業務用は一定のロットが必要だということから、県がJAやそれから農業法人に声掛けをいたしまして、豊田通商さんに秋田に来てもらって説明会、商談会を開催したという経緯がございます。
 また、主要な米産県においては、奨励品種の数の増加に伴いまして原種等の維持生産コストが掛かり増しになっていることから、複数の県で共通する奨励品種については、種子生産や備蓄を例えば各県が分担して行うといった言わば種子の分業体制を確立することで、効率的な原種供給を行うことも考えられるのではないかというふうに思ってございます。
 更にもう一歩進めて、県と民間企業とがお互いの知見を持ち寄りながら、共同で新たな品種の開発を行うこともこれからは十分考えられるというふうに思ってございます。
 今、生産現場では、平成三十年以降を見据えまして、新たな販路を開拓したり、それから中食・外食事業者と複数年契約を結んだりといった実需者と結び付きを強める動きが加速化してございます。その際、前段申し上げましたように、業務用需要にスピーディーに対応するということが一つ重要なポイントになってくるだろうというふうに考えております。
 そうした観点から見ますと、県が全ての品種を自前で開発するのではなく、場合によっては他県や国の研究機関、民間が開発した品種を導入したり、これらの機関、団体と連携、共同して育種開発に取り組むといった柔軟な姿勢がこれまで以上に求められ、ひいてはそれが国内の米需要の維持、喚起にもつながるのではないかと考えております。
 以上、種子法廃止の受け止め方、それから本県の対応等について述べてまいりましたけれども、法が廃止されること自体はそれほど大きな問題があるというふうには思ってございません。また、先ほど申し上げましたような新たな取組が促進される可能性もありますので、廃止という判断も理解できるものであるというふうに考えてございます。
 しかしながら、優良種子の安定供給は農業生産の根幹であり、供給される種子の品質は農家の経営にとって何よりも重要でありますので、現場を預かる県といたしまして、廃止に当たり次の二点を申入れしたいというふうに思います。
 一点目は、安定供給への対応についてであります。
 今回の種子法廃止によって、間違っても全国的に不良な種子が生産されたり流通するといったようなことがないよう、国において、現行の種子法及び関係通知、これは基本要綱、運用等にあると思いますけれども、これの実質的な代わりとなりますガイドライン等を速やかに明示するなど、民間の種子を含めて流通する種子の品質保持に万全の措置を講じていただくことであります。
 その際、種子の圃場審査や生産物審査など、今現在、都道府県が行っております審査の実態を踏まえまして、これまでの取組を生かす形で柔軟な運用ができる仕組みとしていただきたいというふうに思ってございます。
 二点目が財政的な支援についてであります。
 主要農作物種子の生産、供給においては、これは各都道府県が中心的な役割を果たしていることから、その業務に対する地方財政措置、いわゆる地方交付税ですね、これにつきまして法のあるなしにかかわらずこれからも継続していただき、万が一にも地方交付税が減額されるといったことのないよう強く申入れしたいというふうに思います。
 あわせて、今後、国が提案しておりますような他県や民間企業と連携した取組、こうしたものの推進に対しまして、ソフト、ハード両面から助成制度を創設するよう要望しておきたいというふうに思います。
 最後に、国においては、現場の無用の混乱を招かないよう、主要農作物の種子政策に関して、今後、拡充強化することはあっても決して手を引いたり弱体化するということはないと、こういうことを様々な機会を通じて現場に伝え、不安払拭に努めていただきたいというふうに思います。
 本県としましては、種子法がもし仮に廃止された際には、それを一つの契機といたしまして、実需者、消費者から求められる米作り、それを支える優良種子の安定供給にこれまで以上に主体的に取り組んでいくことを改めて申し上げまして、私からの説明に代えさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 佐藤博

speaker_id: 25848

日付: 2017-04-13

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会