鈴木啓之の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(鈴木啓之君) 皆様おはようございます。今日は、このような場所にお呼びいただいてありがとうございました。
 じゃ、早速発言をさせていただきたいと思います。
 改めて、私、愛知県碧南市で農業経営をしております鈴盛農園代表鈴木啓之と申します。
 私は、非農家のため、新規参入で農業の世界に飛び込んでまいりました。二〇一二年に鈴盛農園を開業いたしまして、現在六年目です。また、北海道から沖縄まで全国約一万人の農業青年で組織される全国農業青年クラブ連絡協議会、通称4Hクラブで昨年度まで会長の職に就いておりまして、現在は顧問をしております。
 前職は愛知県内に本社を置く自動車企業の店舗の統括マネジャーという仕事をしておりましたので、実は農業には全く接点がなく、知識も人脈も何一つありませんでしたが、農業大学校や農業法人での研修を経て、農家世帯となることができました。
 経営概要を簡単に御説明させていただきます。
 現在、約二ヘクタール強の農地で、温室やハウスを使用しない露地野菜栽培をしております。碧南市は、海と川に囲まれているため、砂地のさらさらした土の畑が多く、ニンジンや芋類など根菜類の栽培と非常に相性の良い地域で、私どももやはりニンジン、タマネギ、サツマイモに里芋、ジャガイモを主力産物として栽培しております。
 碧南市というのは、農業の優良地帯でして、後継者も多く、耕作放棄地もほとんどありません。市内にはおよそ百五十軒のニンジン農家がいて、機械化による規模拡大に励み、県内で一番の産地となっております。ただ、私が農業を志して碧南に戻ったときを思うと、着実に高齢化の波が押し寄せているのもひしひしと感じております。
 ニンジン農家がひしめく中でどのように差別化を図るかということで、私どもは、黒、白、赤、紫、オレンジ、ベージュ、黄色の七色のカラフルなニンジンを育てて、自分のところの名物だというふうにしているほか、野菜に適切な濃度の塩を掛けて栽培することで糖度や食味を上げる塩農法という栽培方法を取っております。塩といえば、塩害という言葉があるように、農業においてタブーとされていましたけれども、国立豊橋技術科学大学や愛知県立農業大学校の協力も得て、畑にも、それからその下の地下水にも悪影響を与えずに、野菜に良い影響を与える濃度や散布回数を見付けることができました。
 生産した野菜及び野菜加工品は全て直売事業で販売しております。農園のウエブショップや農園ガレージを利用した直売所での販売のほか、道の駅や産地直売施設への出荷、スーパーとのプライベートブランド契約、県内外の飲食店への販売や大手農産物宅配会社など、販売先は多岐にわたります。全ての場所で鈴盛農園という名前や生産者、私たちの顔が見える販売方法を取っているほか、SNSであったりブログなどで作業風景を日常的に情報発信して、身近にいる分かりやすい農家となれるように意識しております。
 じゃ、早速ですが、今回の法案に対する私の意見を述べさせていただきます。
 まず、法案の第一条についてですが、良質で低価格な農業資材の供給及び農産物流通等の合理化に関して国として講ずべき施策を定め、その一環として事業再編又は事業参入を促進するための措置を講ずるというのが本法案の内容であると私は認識しております。
 こうした取組で農業の競争力の強化を支援するというのがこの法案の狙いであるということですが、まさに農業者の立場からは、資材のコストや流通のコストは所得の向上を目指す上で日常的に意識して削減に取り組まなくてはならないものであると思っております。これらのコストは、農業者の自己努力での削減を行うことはもちろん必要ですが、やはり取引相手との関係ですとか交渉で決まってくるものでもあるので簡単に削減できるものでないことも事実です。そこに国が自らの責務や講ずべき施策を定めて本格的に資材・流通分野の改革に取り組んでいくということで、農業者の所得向上に国として本気で取り組んでいくんだと、そういう意思を感じさせていただける法案であり、農業者の立場からは、その法案の目的に賛成し、また期待しております。
 続きまして、農業者等の努力規定の項目である第五条についてですが、法案では、農業者は、農業資材の調達や農産物の出荷、販売に際して、有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて農業経営の改善に取り組むよう努めることとされています。
 農業者が資材の購入や農産物の販売の際に有利な条件を提示する相手と取引を行うというのは、農業経営者としては当たり前のことであり、私自身としても日々行っていることでもあります。しかしながら、こうしたことを全ての農業者が行えているかというと、必ずしもそうでないのも事実かと思います。日々の農作業の忙しさに追われてなかなか価格の比較検討まで手が回らなかったり、これまでの付き合いやなじみから遠慮が入って、取引先が提示する価格をほかと比較して最も有利なところを選択すると、そういったことができていない農業者もまだまだ多いのかなと思います。また、そもそも有利なところを選択できるだけの選択肢が農業者にとって十分そろっていないという問題もあるのではないでしょうか。
 私どもでは、資材を購入する際も、例えばJAでは幾らか、ホームセンターでは幾らか、専門の業者では幾らか、インターネット通販最安値は幾らか、それを調査し比較検討しておりますが、どこの資材業者がどのぐらいの価格で資材を販売しているかといった情報を農業者が年齢や環境を問わずもっと手軽に入手できるような環境を整備していただくと、そういったことも重要であるかというふうに思います。そして、その中で有利な相手を選択するという意識が農業界全体に広がっていけば、当然競争原理が働き、資材の価格や流通の手数料は自然と下がっていくのではないかと思います。
 このように、農業者が意識を変えていくことと同時に、例えば農協さんを始めとする農業者団体もそれを後押しすることが重要であると思います。この法案には農業者団体の努力規定も盛り込まれていますが、農協は農業者のために存在する団体ですので、農業者が少しでも安い資材を購入しようとする努力に応えていただき、農業者と農協が一緒になって取り組んでいくことで選ばれる農協になっていくのではないかと考えております。
 以上のような点で、農業者と農業者団体が互いに努力をしていこうという規定は、資材や流通の改革を進める上で重要な意味を持つ規定であると考えております。
 次に、生産資材についてですが、法案では、肥料などの生産資材について、銘柄数が多過ぎることからそれぞれの生産量が少なくなり生産性が低い状況を改善していくということが指摘されています。また、銘柄数が多くなる原因となっている都道府県が定める施肥基準についての見直しの必要性が指摘されています。農薬に関しても、国際的な基準と調和したジェネリック農薬などの基準を定めることも規定されております。
 機械に関しては事業参入を促進するということですが、農業機械の業界は携帯電話の業界のようにガラパゴス状態になってしまっているように思えます。つまりは、トラクターなどにすごく様々な機能が付与されていて、確かに便利なのですが、一方で、めったに使わないような分かりにくい機能も装備されていて、これが農業機械の価格上昇の理由になっていると考えられます。ですので、こうした農業機械の業界においても新規参入を促して、適切な競争環境を整備しようとすることは重要であると思います。
 私もつい最近、新しくトラクターを購入しようとカタログを見ていました。同じ型のトラクターでも、オプションの差でやはり九十万円ほどの差があります。人間、より快適で効率が良く、楽ができる機械を選びたくなるものですし、農業機械は男のロマンという気持ち、私自身痛いほどよく分かります。ただ、上を見たら切りがありません。実際、機械の価格は年々上昇傾向にあります。よりシンプルな装備で、またシンプルであるからこそ耐久性の高い低価格モデルの農業機械という選択肢も選べるようになるとよいと思います。
 次に、農産物の流通についてですが、条文には生産者による直接販売を促進していくということも記載されていますが、これは非常に重要なことだと考えます。これまで農業者が積極的に手を掛けてこなかった部分でもあると思いますので、新しく直売に挑戦する農業者が例えば量販店による買いたたきなどでチャレンジを諦めるようなことがなく、農業者と量販店、販売店がウイン・ウインの関係になっていくことが重要だと思います。
 また、規模が小さく、栽培技術の未熟な新規就農者ほど、直接販売に力を入れ、顧客との関係性を構築すべきです。
 というのも、私も農業を始めて間もない頃、やはり栽培のノウハウも少なく、いわゆる規格外品のニンジンがすごくたくさん出てしまうこともありました。そういうニンジンをきれいに洗って選別して、大きなビニール袋に入れてちょうど十キロになります。それを市場に出荷したところ、付いた金額は何と五十円でした。一トン出荷しても五千円ですね。今になってみればその価格というのも何となく分からなくもないのですが、当初は非常に驚きました。このままでは経営が成り立つはずはない、良い農産物を作れるよう技術を磨くのはもちろん必要だけれども、農産物の価格決定権を持った農家にならなければ駄目だと強く痛感しました。
 その後、直売に力を入れ、農産物のブランド化、顧客との関係性を意識して行動してきた結果、当時五十円の価格が付けられた規格外のニンジンも今では二千円を超える価格で販売し、それでも注文の声が多く、おかげさまで供給不足になるような状態です。その価格差は実に四十倍以上です。
 様々な国の施策により新規就農者が着実に増えているというデータを目にしますが、その中でどれぐらいの農業者が五年、十年と生き残れるか、また、生き残れなかった農家はどのような販売方法を取っていたのか、どれくらいの規模で生産し、どれぐらいの単価で販売していたかということを調べていくと、直接販売の促進の重要性が浮かび上がってくるのではないかと思います。実際、私自身の経営においては、直接販売であったからこそ、離農率が高いと言われる最初の五年を生き延び、また経営拡大ができたのではないかなと強く言い切れます。
 肥料、農薬、機械という農業に必要不可欠な要素が抱える問題点は、農業者が自らの努力だけでは解決できない部分もある問題だと思います。業界再編などの取組を進めていくことは、農業者が資材コストを削減していく上でとても重要であると考えています。
 農業関連業界は、資材、機械、肥料、農薬など農業経営に係るコスト削減のため、根本的な問題の解決に取り組む。時には、新規参入によって業界の構図を変えるような大胆な改革にも切り込む。そして、競争原理によって生まれた低価格で良い資材、機械を買い、良い農産物を作り、直接販売で、売価を理解、共感してくださるお客様に自らが値付けした価格で買っていただけるよう農業者も努力する。この法案の中身を非常に端的にまとめるとこういうことになるのかなと思いますが、それはまさに所得向上につながる内容であると思います。
 最後に、農業者の立場から法案全体について意見を述べさせていただきます。
 これから日本の人口が本格的に減少していくことが見込まれる中、私のような若手農業者が今後三十年、四十年若しくは五十年と農業を続けていくためにはどうすればいいかと考えますと、やっぱり我々農業者が強く賢く、経営者としてのセンスを磨き続ける必要があります。コストを削減しながら付加価値の高い農産物を生産することで、外国の農産物に負けない競争力を付けて、縮小していく国内の市場だけではなく、むしろ拡大していく外国のマーケットに向けて農産物を売っていかなくてはならないと思います。
 私自身も今年四月、今月、カラフルなニンジンを、台湾への輸出を始めました。既に収穫が終わる時期でしたので試験的なスタートとなりましたが、現地商社の評価も非常に高く、来シーズンからは本格的に輸出を開始できそうです。
 我々農業者が競争力を高めていくためには、本法案が目指す資材コストの削減と流通コストの削減も欠かせないと思います。
 これまでは、資材や流通の問題はある意味では農業者だけではどうしようもできない部分もあると思いましたが、この法案で農業者の努力規定が盛り込まれているように、農業者が経営感覚を磨き、少しでも安く、品質の良い資材を求めるよう努力をすることで、そうした資材へのニーズが広がって、より良い資材を使えるような状況になっていくものだと思います。我々農業者と資材や流通の関連事業者が共に発展し共存共栄していくような関係をつくっていくことこそが、日本農業の持続的な発展にとって重要であると思います。
 私には幾つもやっぱり夢があります。その一つが、未来の子供たちの将来なりたい職業のランキングの一位が男子、女子共に農業経営者、そういう日本をつくるという夢です。農業が子供たちにとって憧れる職業、憧れられる職業へと昇華すれば、後継者問題も、食料自給率の問題も、耕作放棄地の問題も解決に向かっていくはずです。日本の農業は格好いい、稼げる、夢がある、この法案がそのような将来の実現につながることを切に期待しております。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 鈴木啓之

speaker_id: 18724

日付: 2017-04-27

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会