鈴木弥弘の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(鈴木弥弘君) 皆さん、おはようございます。
私は、宮城県の水田単作地帯から来ました。かれこれ、東京からUターンをして水稲を中心に稲作を始めて三十二年、今年三十三年目に入ります。しかし、勝率は六割ぐらいしかなっていません。つまり、自然を相手にやっているがために、毎年豊作を期待していろいろ作業を始めるんですが、秋に収穫してみれば、大体二十勝十二敗ぐらいの成績で終わっています。
というように、農業は、やっぱり農作物を育てて、それを販売し収入を得て、家族を養い、人間らしい生活を確保して、なおかつ生産手段である農地を保全して自然環境を守って、結果として国民の食料を生産する、そういう私は尊い仕事だなと、産業というよりはなりわいだなというふうに思っています。
こういった観点から今回の法案を見ますと、農業競争力というのが冒頭出てきます。随所にわたってそういう言葉が出てくるわけですが、そういう日々農村に住んで農業生産に携わっていたときに、この農業競争力というのは、一体誰と何を競争するのかというのが分からないんですね。納得できないです。私たち、自然を相手にしてやっているわけですから、自然を相手に成長したり、あるいは競争したりということはまず考えにくいわけですね。とすると、この法案の目指すところ、あるいは表題の目指すところは一体何なんだろうという素朴な疑問が湧いてきます。
私たちは、やっぱり水田とか何かいっても、たかだか先祖伝来の家屋敷そして農地というのは限られておりますから、極めてそこで生産されるものといっても農作物であり、それが販売ということでは商品になりますが、その商品生産者だからこそ、より有利にということで先輩たちが苦労して協同の力で何とか農業経営を守り、地域を守り、ひいては国民の食料を安定して生産していこうというふうになったんだというふうに思います。
そういう意味では、土と水と太陽で作物、生命を育むなりわい、産業としての私たち農家の立場、視点からやっぱり見ていくことがこの法案の持つ本質に迫れるんじゃないかと。そうすると、農業生産に関わる事業者と農業生産物を扱う事業者との間での競争力を強化する、それを国が支援するという法案なんだというふうにやはり私は見えてしまいます。
私の居住する地域は典型的な、私の住んでいるところは百六十戸、非農家も含めてあります。うち百二十戸が何らかの形で農業に携わっております。そういう典型的な農村地域、集落にあります。こういったところでは、生産資材を扱うところは農協だけではありません。ホームセンターもあり、名前は控えますが、五つ六つのやっぱりホームセンターが農業生産資材を扱っておりますし、農薬なんかも扱っている。あるいは農業機械は、農協を始め農機具メーカーも、いろんな日本の名立たるメーカーの農機具メーカーもそれぞれ支店を構えてあります。
農産物を扱うというところであっても、私、古川ですけれども、古川の卸売市場があったり石巻に卸売市場があったり、あるいはそれぞれ経営する直売所があったり、産直をしたり、あるいは農協の共販があったりというようなことで、それぞれ農家は選択をして、いい品質のものを、より廉価なものを買い求めながら自分の経営努力をしている。そして、業者さんは業者さんなりにそれぞれやっぱりお客さんを確保して、それぞれサービスを提供したり努力をしている。そういうことで地域では共存共栄をしている現状であります。
そういう中にあって、今回唐突に農業競争力強化支援法というのが出てきて、見ますと、今の時期、なぜ、誰のためにこの法案が必要なのかということは農家の立場から見ると非常に理解に苦しみます。冒頭、鈴木さんがおっしゃったように、それぞれ農家も個々の努力をしていますし、自分で販売の努力はみんなやっています。業者も言われるまでもなく、自分のところで職員を抱え、家族を養って、経営が潰れないようにそれぞれ努力はしているんですね。そういったことで、今、地域が共存共栄、成り立っております。それを何か違うものにつくり替えてしまうという意図がありありと感じまして、私は必要がないんではないかというふうに思います。
ですので、農業者という、農業という言葉は使ってありますが、農業者というよりも、農産物の生産物を扱う、あるいは農業生産物の流通に関わる事業者の競争力を強化して業界再編をする、それを促し支援する、それは国が行うんだというところに重点がある法案のように思えて仕方がありません。
そうだとするならば、じゃ、地域農村社会ではどうなるか。それぞれ頑張っている地域の関連業者、そういったところもそういった競争にさらされ、やっぱり体力の弱い者、経営のちょっとした不始末から倒産なんかになっていく可能性もあります。そういうことで、共存共栄していたものがなくなってしまう、継続が困難になってしまうということが十分想定されると思います。それは、この間の大店法の施行に伴う町の商店街がどうなったかということを我々生活者の立場で、地域で、現場で見ているわけですね。そういったものが、農業関連の地域のこれらの業者もやがてそうなっていくのではないか。
そうなると、ひいては農業者が一番困るわけなんですね。もちろん、我々の集落の中にも、どこどこの農機具メーカーに働いて家族を養っている人もいれば、どこどこのホームセンターに働いて家族を養っている人もいます。そういった人たちの働き先、行き場がなくなってしまうわけですね。そうすると、家族を養わなきゃいけないわけですから、やっぱりほかに出ていってしまう。そうすると、なおさら農村地域が人口が少なくなり、地域の衰退の傾向が、今でさえもあるのにかかわらず、それを加速化させてしまうことにこの法案は手を貸してしまうことになりはしないか、なるのではないかという危惧を非常に私は持っております。
最後になりますが、こういった農業競争力強化を国策で行うことによって、それぞれこの間、関連業者、農業者も経営努力を行ってきています。そして、様々な先進例も生まれています。新規就農者も含めて地域にも明るい話題も生まれています。そういったこの傾向、努力に対してやっぱり否定をしてしまう結果になりはしないかと。それをあえて、やはりこの法案を通すことによって、断じてそういう傾向を否定するような方向には行うべきではないというふうに思います。
そして、行うべきことは、日本の国土は地域に合った多様な農業が現在でもありますし、南北三千キロにわたる亜寒帯から亜熱帯までのこの緑豊かな日本の大地、自然に恵まれた大地から、やっぱり多様な農業者が農業生産をし、食料生産をして、もって農村地域社会を守っていくと、そして持続していく。そういう関係では、地域社会資本である農業協同組合はなくてはならない存在だというふうに思いますし、経歴にも若干書きましたが、私、農協の役員も行いましたし、あるいは土地改良の役員もしながら、地域にどっぷりとつかりながら農業を行っておりますし、また、時々の農政の確立のために農民連という立場で農民運動も、国会に様々な要請行動なども行ってきました。
そういった地域に住む農業者と、そして消費者、関連業者、こういった方々が共存共栄し、共に成り立っていくことを全体として国が後押しするということが大変大事なことなんだというふうに思います。それには、田代先生がおっしゃったように、所得補償、価格保証も非常に大事だし、生産費を割って生産を続けるというボランティアでは農家はありません。いずれ、そういうこと続けばもっともっと農業経営をする人間は少なくなっていくというふうに思います。
この法案をざっと見たんですが、前日に資料をいただきましたので、ただ、今我々農業者として生産資材の一番大きい金額のものは大型農業機械です、コンバインにしろトラクターにしろですね。こういったものはどのメーカーも、六条のコンバインとかというと一千四百万ぐらいと大体価格が決まっているんですよね。これって何なんだというふうに現場では思うわけです。それは農業機械の製造メーカーの独占的な価格体系なんじゃないのか。そのことに、これは、何かこの法案、どこにも出てこないんですね。そこをどうやって競争させるのかというのがよく分からないし、どう手を入れてもらえるのかなということもあります。
それから、今、量販店が地域にもうかなり進出をしてきております。我々農業者の出荷先にも量販店のインショップも含めてあるんですが、非常に目に余るものは、農産物の買いたたき現象がやっぱり非常に圧力になっています。こういったことが、国がちゃんと適正な価格を提示して、量販店などの買いたたきがあった場合にはちゃんと規制をしてもらえるのかなと思って見ましたが、どこにもそういうことは書いてありません。
つまり、今農家が必死になって頑張って、今の制度の中で様々頑張っていこうと言っているときに、最も金がさの張る大型農業機械の価格体系、あるいは大手量販店の農産物の買いたたき、農家からの買いたたき、これに触れていないというのは不思議でなりません。これこそメス入れるべきではないかというふうに思います。
私も就農して非常に打率、勝率が悪いんですが、農業は、冒頭申し上げたように、非常に自然を相手ですので、今年は九俵取ろう、豊作を期待してやるんですが、その後の天候とかですね、私は八・五の鹿島台というところで水害も経験していますし、地震も何回も経験していますし、直近では三・一一の東日本大震災の被災もしています。
そういうふうに、なかなか自然を相手ですので、そういったリスクと共存しながら、国民のために、そして家族を養うために、そして地域の環境、地域社会を守るために生活をしているものでありますので、是非そういった方向に国としても力添えをいただけるような、そういった法整備を一刻も早くお願いしたいというふうに思いますし、そういう観点からは、そういう方向にそぐわない今回の農業競争力強化支援法だというふうに思いますので、私の意見として申し述べさせていただきたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。