小此木政夫の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(小此木政夫君) ただいま二人の公述人から一々納得のいくお話がございました。私、お二人と意見が大きく違うものではございませんが、昨今の朝鮮半島の情勢というようなものを中心にお話ししてみたいと思います。
昨今の情勢は、一般に考えられている以上に私は深刻だというふうに思っております。幾つかの理由はございますが、しかし、情勢自体が相当に深刻で、先ほど宮家さんはサバイバルというような言葉を使われて、現在の国際政治がそれを中心に動いているとおっしゃられましたが、まさにそのとおりで、今、朝鮮半島で出現している状況というのは、やはり北朝鮮のサバイバル。それに、サバイバルを目指す北朝鮮にどうやって対処するか。そのサバイバルが平和的な方法であればそれはよろしいんですが、必ずしもそうではないということですね。情勢が急速に複雑化して、深刻化しているというような印象を持っております。
過去に例を取り上げるならば、もう一九九三年から九四年の第一次核危機の状況とかなり類似しておりまして、その当時を思い起こさせるところが多いのであります。まあ、今回は、昨年五月初めの朝鮮労働党の大会と前後して、北朝鮮指導部が二回の核実験と、その後数多くのまた各種のミサイル実験を繰り返しているわけですが、その当時はどうであったかと申しますと、やはり誕生したばかりのクリントン政権に対して北朝鮮側が、ちょうどチームスピリット、米韓合同演習というタイミングを狙ってNPT脱退という非常措置をとったわけでございます。これは大きな挑戦であったというふうに言っていいと思うんですね。まさに軍事力を伴った瀬戸際政策でありました。まあ、しかし、それによって彼らが要求したのは、合同演習終了後の米朝の直接交渉でありました。
今回もまた私は同じようなことを考えているのではないかというふうに思います。今回は、核開発を開始するぞというそういうメッセージではなくて、核、ミサイルが完成に近づいているぞと、もうここまで来たんだと、それでも交渉しないのかという、そういう種類の、何というんでしょうか、瀬戸際政策でありまして、先日打ち上げられました四発のほとんど同時に発射されたスカッドERミサイル、それからその前に打ち上げられました、かつてSLBMとして使われていたものの地上発射型でございますが、北極星二号と言われているミサイル、こういったものはそのまま核兵器を搭載することが可能な段階にまで来ているということでございますから、我が国にとっても韓国にとっても深刻な状況でございます。
北朝鮮の核、ミサイルがそういう段階まで達したということは、結局ソウルも東京も同じだということでありまして、今回は在日米軍基地という言葉を使いましたが、これまで全くそういう表現がなかったかというとそうではございませんで、彼らが公然と言っていたのは、第一の目標は青瓦台、大統領官邸と韓国の各種政府機関であると、第二の目標は在韓米軍基地、太平洋に存在する在韓米軍基地。それは日本という言葉が使われていなかっただけであって、その当時から在日米軍基地が標的であるということは公然のように言っていたわけです。
我々が一九九四年に経験した第一次核危機というのはどんなものであったのかということをちょっとお話ししてみたいというふうに感じるのでありますが、あのときには米国の側では、北朝鮮の核施設というものを外科手術的に破壊してしまおうではないかという、こういうペリー国防長官らの意見が台頭しておりまして、それが実行に移されるかどうかというそういう段階まで行ったわけであります。ペリーさんは後ほど回想録を書いていますのでそこに詳しく出ておりますけれども、報告書を提出する直前にカーター元大統領が平壌に訪問するというニュースが入ったと、このように言っております。しかし、我々は大量破壊兵器を使用する戦争の瀬戸際にあったというふうにも述べておりますし、北朝鮮からの先制攻撃の可能性も排除できなかったと、そこまで危機が進展していたということでございます。
今回はそういうところまで行くのかどうか、これはまだ未知数でございますが、北朝鮮側が非常に強い決意を持って今のこのチームスピリットというものを特別のものとみなして対応しているということは、どうも否定できないような気がします。
ですから、かつてであれば、チームスピリットの時期にミサイルの実験だとか核実験だとか、特にICBMの実験なんてやりっこないじゃないか、そんなことはできないだろうと言っていたわけですが、そういうところで瀬戸際のゲームを始めているわけです。米国としては、チームスピリットの最中に核実験をやられたりICBMの実験をやられたら、これはとんでもない話でありますから、それを容認できないということですから、そこで両者の目的が完全に交錯すると言ったらいいんでしょうか、非常に危険な危機状況が発生する、シナリオとしてはそういうことなんですね。
幸いにこの間、米国側は、国防長官や、これから国務長官も間もなく来られるようですが、厳重に半島情勢をウオッチしているようでございますから米国は分かっているんだなとは思いますが、思いますが、様々な対応措置が新政権の下で間に合うのかどうか、あるいは、何というか、過剰の反応や過小の反応というものがありはしないかというようなことを心配しているわけですし、特に心配は、北朝鮮の政権が三十代前半の若い指導者に指導されていること、あるいは韓国では現在、正式の大統領が存在しないような権力の空白の時期にあること、こういったようなことを考えますと、あるいはまた中国でも今年の秋には党大会が準備されているというようなことを考えますと、それぞれのリーダーシップがスタートしたばかりであったり十分でなかったり、あるいは成熟していなかったり、あるいはいろいろ拘束されていたりとか、様々な形でリーダーシップそのものに不安感が伴うということを否定できないわけでして、ここのところが大きな不安定要因になっているように思います。
さて、最後になりますが、韓国情勢について少しお話し申し上げたいと思うんですが、韓国と日本の関係は、様々な心理的な葛藤があるとはいえ、大変重要な関係であることは間違いないのであります。つまり、我々、アメリカとの海洋同盟だけで全て大陸の情勢に対応できるのかと言われると、やはり韓国という友好国との関係というものが重要になってくるわけでありまして、特に朝鮮半島が共産化するというようなことは絶対に避けなければならないわけでありますから、ですから、韓国との関係に対しては、非常に、何と言ったらいいでしょうか、細心の注意というものがやはり求められている、感情に任せてお互いに罵り合えばそれでいいということにはならないということではないかと思うんですね。
ただ、日本側も韓国側も、相手の政治がどういうふうに動いているのかということに関して、何というんでしょうか、よく分かっていません。韓国の政治というものがどういう構造を持ってどういう特徴を持っているのか、こういう状況の下ではどういうふうに対応してくるのかというようなことを意外に日本側は分かっていませんし、日本の政治の特徴に関しても韓国側は分かっておりません。
今の韓国の状況というのは、非常に簡単に言えば、彼らが制度圏の政治と呼ぶもの、つまり制度化されている政治、大統領府、それから議会、与党、野党というようなものと、運動圏の政治。そうではなくて、制度圏の政治が人格化されていくというそういう特徴を持っているとすれば、そういうものを拒否して正義を求める、社会正義をとことん求める、利害関係を無視しながらそれを行うという、ある種原理主義的な運動圏の政治が厳しく対峙している状況というのが今の状況だと思います。
朴大統領は歴代の大統領に比べて特に、何というんですか、非難される理由があるかというような疑問を持たれるかもしれませんが、たまたまそういう意味では、崔順実というようなよく訳の分からない友人を持って、そして財閥との関係、贈収賄関係を疑われたということが非常に大きな結果を呼び起こしているわけでして、運動圏の政治はこれを絶対に許そうとしません。
そして、日韓の慰安婦合意というのは、実は制度圏同士の合意なんですね、制度圏同士の合意ですから。ですから、韓国の大統領が批判されれば、運動圏の政治は日韓合意に対する非難に結び付いて、批判となって現れてくるわけです。日本の国内ではよくゴールポストを動かすとか動かさないとかというような議論があるんですが、そもそもゴールポストが固定されていなかったと、いないんだということ、彼らと合意するということはどういうことなのかというようなことについて、やっぱり我々の側にも理解の不足があったように思います。
大使や総領事が長期にわたって不在というような状況というのはやはり異常な状況でありますし、しかも朝鮮半島が北朝鮮との問題において危機的な状況が懸念される、そういう状況の下では、できるだけ早く今の状況というものを正常化してもらいたいと思うんですが、もちろん、これは外交ですから、ただ正常化すればいいというものではないでしょう。次の政権との間に新しい関係をつくるということが重要になってくるわけですが、次の政権との関係というものをどうスタートさせるかというのは政権当初の動きというものが重要だという意味で、やっぱり大使や総領事の不在というものはよろしくないのではないかというふうに私は考えております。
どうもありがとうございました。