小西雅子の発言 (環境委員会)
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○小西参考人 皆様おはようございます。WWFジャパンの自然保護室室次長をしております小西雅子と申します。
本日は、WWFにこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
WWFというのは、百カ国で活動している世界最大級の自然保護団体で、私のような専門オフィサーが、五千人が活動しております。
本日の気候変動の適応法案の意見としまして、本法案の重要性をまず述べさせていただいた後に、改善案としまして、まず、緩和策が大前提であること、そして、PDCAサイクルを回すときにやはり第三者機関の評価が必要ではないかという意見、その二点について述べさせていただきます。
最初に、きょうも暑くなっているんですけれども、ここのところのこの暑さ、国民の皆様もひしひしとこの温暖化の影響による異常気象のことは感じていらっしゃるんじゃないかと思います。お手元にあるパワーポイントに沿って説明させていただきますが、例えばアメリカでは、去年、過去最大の気象被害額、三百ビリオン、約三兆円の被害が出ております。
被害額はこれからふえる一方なんですが、今世紀末の気温変化として、このままでは四度上昇するという予測がIPCCからされております。これを二度未満に抑えるということが今パリ協定の中で各国の長期目標として共有されているわけですが、温暖化の主な影響としましては、日本を含めたアジアでは、洪水ですとか熱中症のリスク、干ばつによる水、食料不足が挙げられております。
このときに大事なのは、気温上昇は、四度上昇した場合と二度上昇した場合においては非常に大きな差があるということです。と同時に、たとえ二度の上昇でもこれは被害がかなり深刻でして、例えば洪水被害ですと、リスクは中程度の上となっております。
つまり、この温暖化の被害に対して軽減する努力をする適応努力というのは、緩和と同時にもうやっていかなければならない非常に喫緊の課題であるということです。
続いての次のページ。パリ協定、御存じのように、気温の上昇を二度に抑えるために、今世紀後半に人間活動による排出をゼロを目指す目標を持つ初めての国際協定です。
その中の第七条、適応において、適応のグローバルゴール、世界目標を設定すること、そして、全ての国は適応計画のプロセスに従事して、実施することが義務となっております。このように、パリ協定から要請されているわけですね。
あともう一つ、パリ協定の大きな特徴として、第八条に、損失と被害という項目が入りました。これは、気候変動の悪影響によって、適応をしたとしても既に防ぐことができないような、発生してしまう損失や被害に対して、国際的な対応の仕組みを強化していく、こういった新しい項目も入っております。これについては、ちょっと後でまた述べさせていただければと思います。
続いて九ページ。このパリ協定の大きな特徴として、五年ごとにこの目標を見直すということが決まっております。パリ協定で言う国別の目標というのは、緩和の目標だけではなく、適応の目標も入ることになっております。つまり、緩和と同時に、適応についても、五年ごとに実施計画を立て、進捗を評価し、そして改善点を見て、そして改善していくといった、PDCAサイクルを回すことになっております。
ということで、本法案、適応法案は、まさにパリ協定からの、国際社会からの要請を受けた時宜を得た法案ということが言えます。長期目標の設定ですとか、適応計画の実施、報告、そして定期的な更新、こういったものが含まれている本法案は、実に時宜を得た的確な法案であるということが言えると思います。
あともう一つ、この法案の重要なところは、国が率先して地方自治体の適応計画を方向づけるということが決められていることです。
次、めくっていただきますと、今まで、主に適応の主体というのは、地方自治体さんが大きな役割を果たします。
というのは、基本的には、異常気象に対する防災計画、治水計画、そして、各地の農業とか漁業とか、そういった産業の適応計画を進めるということは、既に、既存に行われている施策の中にこの適応の視点を入れていく、これを国際社会では適応の主流化と呼んでいますが、地方自治体さんに今までは適応の計画を立てましょうと私たちも申し上げてきても、ああ、でも、今、国もまだやっていないしということで、かなり二の足を踏む自治体さんが多かったんですが、二〇一五年に適応計画ができて、地方自治体さんに非常に弾みがつきました。
さらに、本法案によって法的根拠がここにできますので、主体化として、地方自治体さんにとって、非常に適応計画を立てるという重要性とともにその推進が図られることが期待されます。
自治体さんにとってやはり大きな課題は、適応計画を理解して、それを進める能力のある人材、この人材の不足といったことも挙げられますが、その点では、この法案において、例えば、この十一ページにありますように、情報収集が一カ所でできるような環境省さんの気候変動適応情報プラットフォームとか、あと、隣の自治体さんはどうしているかなということが日本の自治体さんとしては気になるところだと思いますが、適応計画をどういうふうに持っているかという自治体のこともすぐわかりますし、また、これからは日本の産業界にとっては適応技術が非常に大きなニーズとなってきます。その適応ビジネスというもののグッドプラクティスも一カ所でわかるようになっております。
また、気象庁によって、気象災害への備え、私も気象予報士なんですが、気象予報士を自治体に派遣して、こういった防災計画になるべく視点を入れて防災の強化を図っていこうといった、こういったことも進められていますが、こういったことが全て法的根拠を持ってできるようになりますので、非常に時宜を得た法案だと言えると思います。
ただ、その中でも、改善案としまして二つ申し述べさせていただきたいと思います。
というのは、本当は、この気候変動の対策というのは、皆様よく御存じのように、まず温室効果ガスの排出削減を行う緩和策が第一前提です。ただ、この緩和策の方は、まだ日本の中においては、パリ協定に沿った緩和策の法案というのは残念ながらございません。
ですので、この適応の法案が今回成立することは非常に喜ばしいことなんですが、本法案の第一条に、緩和と適応が温暖化対策の車の両輪であるということをぜひ明示していただいて、後々に緩和の対策について、なるべく早く法案ができるような形で、ここにうたっていただければありがたいなと思っております。
あともう一つ重要なことは、今まで御説明申し上げたように、これからの気温上昇が、四度になるのか、それとも、国際協力をなして二度未満に抑えることができるかによって、随分適応の必要性が変わってきます。四度上昇する世界にまっしぐらになるのか、それとも、二度に抑えられるのか。
パリ協定では二度未満ということをうたっていますので、本当でしたら、本法案の中にも、パリ協定に沿って二度未満に対策を強化していき、二度未満になっても、それでも起こってしまう対策に対して適応をやっていかなければならないといったような、本当はそういう形で目指すべき気温上昇の幅というものも書かれるべきなんですけれども、そこがないというのが非常に残念に思っております。
そこから考えますと、現状の日本がパリ協定に出している目標は、国際社会からは著しく不十分だとの評価を受けています。
本来は、気候変動対策の基本法を制定して、その中に緩和と適応法を位置づけるというのが本来の姿ではないかと思っております。
といいますのは、もし四度上昇した場合、日本は、世界が平均気温で四度上昇した場合は、緯度三十度にありますので四・五度ぐらい上昇する予測ですが、その場合、東京は大体、現在の屋久島の気候になると言われています。これは、気象庁が出した温暖化予測情報、これまで九回出しているんですが、この第九巻目に出された知見なんです。
ここで、気象庁は、今まで実は、ずっとこの温暖化の予測というのは中程度の予測を使用していました。ところが、今回初めて、四度上昇するRCP八・五と言われるシナリオに基づいた影響予測を出したんですね。といいますのは、次の十八ページにありますように、現実の世界の排出量というのは四度上昇するシナリオに沿っているんです。ですので、このままだと四度上昇してしまうということになります。
次のページへめくっていただいて、環境省さんも、もし四度上昇した場合と、そして二度未満に抑えた場合の、これは熱中症の患者の搬送数の例で持ってきましたけれども、その倍率も、例えば東京で厳しい温暖化対策をとった場合には二倍ぐらいなんだけれども、もし四度上昇した場合には四倍から八倍にふえるといった予測が出されています。つまり、気温上昇の予測によって準備するべき適応も変わってくるわけですね。
ですので、やはりここは適応法案としては、緩和法案と両輪で、しかも、どのレベルを日本として目指すのかということがぜひ本当は入ってほしいなと思っております。
パリ協定の主要な決定事項としては、二度未満に抑える、できるならば一・五度未満にと入っております。そのためには、今世紀末に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにということがうたわれております。しかし、今パリ協定に世界各国が出している目標では、気温上昇は大体二・八度、三度ぐらいになると予測されております。
ということで、本来は、緩和と適応の両方を含む気候変動の基本法があって、その上でこの適応法案が位置づけられるといいなと思っております。
そして、最後に、PDCAサイクルを回していくという、パリ協定に沿った非常にいい内容を持った適応法案なんですが、本当は、独立した第三者機関の評価が、今回の適応の進捗状況ですとか評価がどうであったということが入ってほしいなと思っております。
といいますのは、パリ協定に出す国別目標の中でも、こういった適応計画の評価の国際的妥当性というものも提出する必要がありますので、それのためにも、日本の適応法案の中にもこうした独立した第三者機関の評価と勧告の仕組みというものが入ったらいいなと思っております。
そのほか、御参考までにいろいろな資料も持ってまいりましたので、もしよろしければ、また質疑応答のときにでも聞いていただければと存じます。
ありがとうございました。(拍手)