若田部昌澄の発言 (議院運営委員会)

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○若田部参考人 早稲田大学の若田部昌澄でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、所信を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、早稲田大学とカナダ・トロント大学の両大学院で経済学を学んだ後、一九九八年から現在まで、早稲田大学政治経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとり、研究と学生の指導に当たってまいりました。
 私の専攻は経済学史ですが、主としてマクロ経済学の歴史、特に、一九三〇年代の大恐慌、一九七〇年代の大インフレ、一九九〇年代からの日本の大停滞、二〇〇七、八年からの世界的金融経済危機など、過去と現在の経済危機とそれに対するマクロ経済政策対応について研究を進めてまいりました。二〇〇三年ごろからは、現日銀副総裁岩田規久男先生やほかの研究仲間とともに、歴史的研究をもとに、日本経済、殊にデフレと金融政策についても研究を積み重ねてまいりました。
 このたび日本銀行の副総裁候補に挙がりましたが、国会の同意が得られましたならば、これまでの研究を金融政策に生かし、もうお一方の副総裁とともに総裁をお支えし、全力で職務を全うしたいと考えております。
 この所信表明では、現状についての理解と今後の課題について述べさせていただきます。
 二〇一三年から、日銀は、デフレ脱却を明確化すべく、物価安定の目標二%を掲げ、積極的な金融緩和政策を推進してまいりました。その後五年間で、失業率は下がり、有効求人倍率は上がり、就業者数はふえております。近年は男女ともに正規雇用の増加につながっております。こうした良好な雇用状況の結果、自殺率が下がり、貧困率も減少に転じてきました。また、実質賃金につきましては上下動を繰り返しておりますが、総雇用者報酬は、名目でも実質でも増加しております。今後、積極的な金融緩和政策を持続することで、実質賃金も上昇していくことが期待されます。
 物価につきましては、二〇一四年三月には消費者物価指数が前年同月比で一・六%近くまで上昇したものの、その後、二〇一六年九月にはマイナス〇・五%まで下落しました。ただ、近年、物価については持ち直しが続いており、二〇一八年一月には一%程度にまで回復しております。継続的に物価が下がるのをデフレとする意味では、現在は、デフレではない状況に達したと言えるかと思います。しかしながら、物価安定の目標である二%には到達しておらず、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数では〇・四%の上昇にとどまるなど、デフレからの完全脱却が依然として課題として残っております。
 次に、今後の課題について三点述べさせていただきます。
 第一に、何よりも大事なのは、デフレからの完全脱却を目指すというこれまでの五年間の金融政策の基本的なスタンス、レジームを継続することです。これまで得られた成果を改善し、日本経済を再びデフレに戻さないためにも、デフレからの完全脱却が必要であると考えます。
 第二に、二%の物価安定目標は依然として有効であり、有用であると考えます。
 金融政策の目的は、物価上昇率を中期的な目標としながら、最終的には国民経済の健全な発展に資することにあります。そこで重要なのが、雇用であります。経済学では、インフレを加速しない失業率という考えがございます。この失業率は、働きたい人がほぼ職を得られる状態に対応しておりますが、日本経済のそれは恐らく二%台半ばから前半であり、物価目標二%を達成することで、そこまでは失業率を下げることができると考えられます。
 第三に、リスクへの適切な目配りです。
 経済危機の歴史は、さまざまなリスクへの警戒が必要であることを教えてくれます。例えば、大恐慌時代の一九三七年、米国の政府と連邦準備制度理事会は、デフレから脱却したと思い、マクロ経済政策を引き締めましたが、その後、米国経済はデフレに逆戻りしてしまい、再び政策の再緩和に転じました。
 現在、世界経済の好調に支えられて、日本経済には追い風が吹いていると言われます。しかしながら、最近の状況を踏まえますと、この好機はどこまで続くか、慎重に検討する必要があると考えます。特に、時期尚早に政策を変更してデフレに逆戻りするリスクは避けなくてはなりません。デフレからの完全脱却の前にいわゆる出口政策を行うことは避けなければなりません。
 デフレからの完全脱却を達成するために、日銀はあらゆる手段を駆使すべきではありますが、政府と日銀が協力することも欠かせません。デフレ脱却と日本経済再生という原点に立ち戻り、金融政策、財政政策、成長政策、そして所得再分配政策のバランスのとれた連携が必要であると考えます。
 今は、日本経済のデフレからの完全脱却がかかっている極めて重要な時期です。この時期に日本経済再生のためのお手伝いをできる機会をお与えいただけましたならば、全力で職務に努めたいと考えております。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 若田部昌澄

speaker_id: 318

日付: 2018-03-05

院: 衆議院

会議名: 議院運営委員会