冨山和彦の発言 (経済産業委員会)
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○冨山参考人 おはようございます。冨山でございます。
本日は、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私の方から、お手元の「リスクマネーを巡る喫緊の重要課題」というレジュメをベースにして、とりわけ政府の、機関の側でいかにこのリスクマネーの問題に対峙していくかという点について、私自身の問題意識をお話ししたいと思っております。
まず一つ目ですが、「本格的なグロースキャピタルの不在」というふうに書いてございますが、とりわけ現在、今、それこそ第四次産業革命であるとかイノベーションの時代と言われております。
これは皆さん御案内のとおりで、現在、特にグローバル経済の経済圏で活躍している企業群あるいは産業群の成長の鍵というのは、圧倒的にイノベーションの力ということになります。そのイノベーションのドライバーというのは、やはり圧倒的にメガベンチャーということになるわけで、結局、特に上場企業の上の方のレベルの成長力を比較しますと、日米欧で見てみても、やはり日本は圧倒的にメガベンチャーがないんですね。アメリカはほとんどが、上位は全部メガベンチャーです。それから、欧州でもSAPのような会社が出てきております。
これをどうしていくかというのは、要は極めて産業マクロ的に大きな問題でありまして、今やベンチャーの議論というのは、マージナルな話ではなくて、むしろ産業の中核をどうするかという議論になってきております。
その上で、メガベンチャーをつくれるかどうかというのは、もちろんスタートアップの数をふやしていくことは大事なんですが、ここはゼロを一にする議論でありまして、問題は、この一を百にできるか、百を一万にできるかという百倍百倍のゲームになるわけでありまして、そうすると、今、おかげさまで、こういった皆さんのいろいろなサポートもあって、ゼロから一はかなり出てくるようになっています。問題は、一から百、百から千をどうするかなんですが、ここで、いわゆるユニコーンファイナンス、ユニコーンというのは一千億円を超える時価総額の未上場のベンチャーのことをいうんですが、こういった会社が、それこそウーバーとか、続々出てきているわけです。
要は、そこにどこまで早く持っていけるかというところが勝負でありまして、むしろ今、そこで上場しないのが一般的で、上場しちゃいますと、むしろ上場コスト、いろいろな手間もかかっちゃって、ある意味ではリスクをとれなくなっちゃうんですね。したがって、かなりまとまったお金をどんと入れて、プロのお金を入れて、むしろもっと大きくしてから上場するという流れに今はなっています。
これは、いわゆるラウンドB、ラウンドA、B、Cというのは、ファイナンスをするタイミングのことをA、B、Cというんですが、大体、ラウンドB、二回目の本格的なファイナンスで数百億円のお金をぼんと入れちゃうというのがむしろ今一般的でありまして、こういうお金というのは、数年で上場するということを想定していませんから、要は五年、十年という単位で数百億円のお金が寝るわけであります。
ということは、裏返して言っちゃうと、そういったお金を誰が出すんですかということになってくるわけで、今の日本のベンチャーキャピタルの普通のスタンダード、これはまず不可能です。というのは、ファンドのサイズが二百億円ぐらいしかないので、一発入れたら一社しか入れられなくなっちゃいますし、大体ファンドの期限が十年ですから、そうすると、一つの会社を持てるのが五年ですから、すぐIPOをしないといけないということになりますので、要は、こういった超長期のまとまったお金を誰が出すんですかという問題が非常にここにおいて大きな課題となります。
実際に私もユニコーンファイナンスをやったことがあるんです、我々の投資先で。我々がアーリーをやる、ラウンドAをやって、ラウンドBでやったことがあるんですが、結局どこから持ってくるかというと、アメリカのかなり大きな金融機関です。ゴールドマン・サックスとかモルガン・スタンレー、ああいうところですね。アメリカを除きますと、ほぼほかの国はソブリン・ウエルス・ファンドです。私どもが実際やったのはGICでした、シンガポールのソブリン・ウエルス・ファンドです。要は、ソブリン・ウエルス・ファンドというのは、超長期、期間は無限大でありますので、したがって、彼らはこういうゲームができるということであります。
これが今現状でありまして、要は、日本国内にこういうプレーヤーはいないという問題が今ございます。ですから、一番おいしいところを、結局、今の状況、もし仮に日本からすばらしいスタートアップが出てきて、このメガベンチャーになる過程で一番おいしいところは、多分海外のお金でやられてしまうという状況があるわけであります。
それから、次、二番目。もう一つのリスクキャピタルがある意味では機能していない領域というのは、エンゲージメントファンドというやつでありまして、これはどういうものかというと、物を言う責任与党株主です、わかりやすく言っちゃうと。要は、物を言うんだけれども、安定的に長期に株を持ってくれて、真面目にその会社に寄り添って、その会社に物を言う、そういうタイプの株主であります。これは、少なくとも日本以外ではどんどん存在感を増しております。
今、日本では、いわゆる持ち合い株の解消をしようという流れがあるわけです。この後問題になるのは、持ち合い株のいい面、悪い面があるんですが、いい面は、長期保有株であったということは私はいい面だと思っていて、ただ、問題は、持ち合い株というのは、長期保有なんだけれども、物を言わない、やや無責任与党みたいなところがあって、これがちょっと問題なんですね。そうすると、やはりちゃんと言うべきことを経営者に言う、そういう安定株主をつくっていかなきゃいけない。これがいわゆるエンゲージメントファンドのモデルであります。
要は、今いろいろな意味で企業統治改革をやっておりますが、会社の統治というのは基本的には資本民主主義であります。もうここにいらっしゃる皆さんには釈迦に説法ですが、やはり資本民主主義の質というのは、結局、最終的には、国民の民度であるとか、あるいはそこで選ばれてくる国民の代表の質で決まるわけでありますから、その最終的な担い手はやはり株主なんですね。
そうすると、株主の質を上げるということは極めて大事でありまして、今、持ち合い株を出していくのはいいんですが、それがいわゆる短期的な、投機的な株主のところに行っちゃいますと、非常にむしろ資本民主主義が不安定になりますので、こういうエンゲージメントファンドをやはり大きくしていくということは非常に大事な課題でありまして、これもまた、日本には余りないんですね。ないんです。少なくとも国内ベースではないです。
大体、今入ってきている、海外から来ている連中は、どちらかというとちょっとハゲタカに近い人、いわゆる物言う株主というか、どちらかというとグリーンメーラーというか、そういうタイプの人、日本は狙われやすいので。
普通、エンゲージメントファンドというのは、その国の企業、その国の産業のことをすごくよく知っている人がやりますから、普通、その地域にベースのものがやはり強くなるというのがベースです。ですから、やはり日本ベースのちゃんとしたエンゲージメントファンドをどうつくっていくかというのも、これも非常に重要です。
通常、こういったところというのは、言葉で言うと「「働く株主」「モノ言う責任与党株主」」と書いてございますが、大体、金融系の知見と、もちろん事業あるいは経営の知見の両方とも持っているような、そういう人たちでないとできない。欧米、ヨーロッパに結構多いんですけれども、大体そういうメンバーでやっているファンドになります。
その後ろにあるお金というのは、これは当然超長期でないとこういう投資はできません。私の経験で言っちゃうと、私は、オムロンという会社の、これは非常に優良な会社なんですが、この会社の役員を十年ほどやっていましたが、これは、残念ながら国内ではなくて、海外のこの手のファンドが一つ二つ、ずっとくっついていました。こういった会社は本当に長期保有です。私のいる間はずっと株主でした。やはりちゃんとしたエンゲージメントをやってくれていました。
ですので、彼らの背景にあるお金は、大体、年金基金とか大学のエンダウメントとか財団とかという、やはりすごく長期のお金を預かっているアセットオーナーがそういうところにお金を預けております。ですから、そういった仕組みをやはり日本で今後つくっていくというのは、非常に今のガバナンス改革の流れでいうと大事な課題だと思っております。
それから、最後に、これはやや非常手段的な話ですけれども、これは私が昔やっていた産業再生機構と同じモデルなんですが、やはり金融危機時にどう、いろいろな再編とかいろいろな企業のリシャッフルが起きるわけですが、そのときにどうリスクマネーを供給するかというのは、これは潜在的にあるテーマです。
要は、金融危機というのは今非常に起きやすい環境にありまして、かつ、これはグローバル化しやすいので、それが起きたときにどうするかという、一応、フォー・ア・レイニー・デー、いざというときのリスクマネーをどう用意しておくかという問題があります。
実は、前回のリーマン・ショックのときは、ここでも実はソブリン・ウエルス・ファンドが大活躍をしております。ですから、さっき申し上げたGICとかテマセクとかという会社が実は、要は市場のお金はこういうときにはなくなっちゃうんですね。ですので、ちょうど日本航空の問題もこのときに起きていまして、このときは政府のお金で再編、再生をしたわけですけれども、こういった問題も一応あるにはあります。
一応、この三つが恐らくリスクマネーをめぐる我が国の非常に大きな課題だと私は認識しております。
ということで、こういった状況を考えますと、繰り返しになりますが、こういうイノベーションが極めて経済成長を規定する時代、特に、破壊的イノベーションの時代において、ここで必要となるべきリスクマネー、これはアメリカが多分私は例外だと思うんですが、アメリカは異常に多種多様なリスクマネーが民間に大量に蓄積されています。ただ、これはもうほとんどアメリカだけと言っていいような例外的状況でありまして、欧州や新興国などでは、むしろ、より純粋なプレーヤーとしてのリスクマネーを扱うソブリン・ウエルス・ファンドというのが存在感を増しております。
ちょっと余計なことを申し上げると、孫さんがビジョン・ファンドというのをつくりました。あれは、実体はソブリン・ウエルスです。あれはアラブの、中東のソブリン・ウエルスのお金が入ってきているので、ああいう超長期のまとまった投資ができているんですね。民間の普通に集めてきたお金では、あれはできません。要は、そういうのが今の世界の流れだと思っていただいて結構かと思います。
裏返して言うと、今、官民ファンドに向けていろいろな議論があるんですけれども、私も産業再生機構のときにいろいろな議論をされましたが、ここまで民業圧迫論とか民間が絶対政府よりも優位であるという議論がされているのは、今や日本だけだと思います。ちょっと、ややナイーブな感じがいたします。
むしろ、重要な問題は、官か民かではなくて、どういう目的原理で、いかなる動機づけとガバナンス構造で組織と個人が機能するのかが鍵でありまして、要は、シンガポールってどっちかというと市場原理主義の国みたいに思われていますが、シンガポールのこういうリスクマネーの主役は、GICとテマセクという正真正銘の政府系のソブリン・ウエルス・ファンドであります。
ただ、彼ら、あのファンドは、世界で最もある意味では尊敬されているリスクマネープレーヤーでありまして、要は、超一流の人材が集まって、超一流の市場プレーヤーとしての機能を果たしておりますので、超長期にわたって高いパフォーマンスを上げている、そういうことであります。それが機械的にシンガポールの国富になっている、そういう構図であります。
ですので、むしろ大事なことは、これをどうしていくのかというのを、官か民かというある種原理主義ではなくて、どういう動機づけでどういう組織をつくっていくのかということが多分鍵なので、そこをどうしていくかということをやはり考えるべきだろうと思っています。
裏返して言っちゃうと、ちょっとまたこれも余計なことを申し上げますと、日本の民間企業の中には、必ずしもどうかなという、そういう意味で言っちゃうと、官よりも官っぽい民間の組織がいっぱいありますので、要は、出自が官か民かというよりは、むしろ、繰り返しになりますが、どういうふうにガバナンス構造、組織、あるいはそこで働いている人間の動機づけをデザインするか、こちらの方が私は重要だと思っております。
そういった意味合いでいうと、そこでいかに政府系の機関がどういう機能を果たしていくかというのは、検討すべき、検討する価値がありますし、実は、シンガポールにおいては、いっぱい民間のファンドもございます。民間の、世界でもかなりいい線をいっているファンドがどんどん出てきていますが、大体こういったファンドはGICとテマセクの出身者です。要は、まずGIC、テマセクで経験を積んで、やはり世界でそれなりに名をなしてから、スピンオフして自分でファンドをつくるというのが非常に典型的な流れになっております。
私は、どちらかというと、日本はそのモデルの方がフィットがいいんではないかなと個人的には思っていまして、自分が経験した産業再生機構もそういう性格を持ちましたので、ですので、その辺、ぜひぜひ前向きに御検討いただければというふうに思っている次第であります。
以上でございます。ありがとうございました。