福家秀紀の発言 (経済産業委員会)
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○福家参考人 駒澤大学名誉教授の福家でございます。
きょうは、法案の審査に当たり、意見を述べる機会を与えていただいて、大変光栄に存ずる次第でございます。
まず、私の問題意識といたしましては、お手元の資料に即してお話をさせていただきたいと思うんですが、アメリカのIT企業、この市場支配力の問題があります。
表の一、ちょっと字が細かくて、一枚の表にしたものですから、申しわけないんですけれども、GAFAと言われているグーグルそれからアップル、フェイスブック、アマゾン、それに加えてマイクロソフトのここ数年の営業実績を表にしてありますが、これをごらんいただいてもわかるように、各社とも売上高の伸び率というのは非常に大きい。二〇%は超えている。それから、売上高の営業利益率を見ましても、小売業のアマゾンを除きまして二十数%。我が国で、もうけ過ぎじゃないかといってたたかれることの多い携帯電話事業にしても、売上高の営業利益率というのは十数%、たかだか。これをはるかに上回る利益を確保している。いかに収益性が高いかということが御理解いただけるんじゃないかと思います。
この中でも、ちょっと付言しておきますと、グーグルとフェイスブック、これは広告収入に依存をしております。グーグルは、徐々に低下はしてきておりますけれども、やはり九割近い売上げは広告からだ。それから、フェイスブックに至りましては、ほぼ全額、これが広告収入。したがって、彼らが、個人データを収集してカスタマイズした広告を出そう、こういう戦略に躍起になるのは、こういう背景があるからだろうというふうに思っております。
同時に、広告をベースにしてこれだけ利益を稼いで、じゃ、それを何に充てているかというと、これからの新しい技術に対応したAI等最新部門に投資をしていっているわけでございまして、日本の企業でこういう余裕があるところは非常に少ないんではないかというふうに思っております。
アマゾンの場合は、利益率が低いと申し上げましたけれども、二重線の上にAWS、アマゾンウエブサービスというのを挙げておりますが、これはクラウドサービスなんですね。これは非常に利益率が高くて、アマゾン自体は、このウエブサービス、クラウド事業で稼いで、それで会社が存続していると言っても過言ではないというふうに思います。
それでは、どうしてこういう企業が稼ぐことができるのか、高い収益性を確保しているのかということに移らせていただきたいと思うんですが、ここでは、ネットワークの外部性、特に両面性市場と言われておりますが、英語ではツーサイディドマーケットと言っておりますけれども、この特徴をうまく利用しているということが言えると思います。
経済学では、ネットワークの外部性というのは、取引所の当事者以外に取引によって何らかの影響を与える、これを外部性というわけですが、これは、ネットワークに関して言われるときにはネットワークの外部性というふうに称しております。一言で申し上げますと、ネットワークの利用者がふえればふえるほど、そのネットワークの効用が増し、消費者にメリットがあるから、ますますネットワークが巨大化をしていく、こういう現象でございます。
その中でも特に特殊なのがツーサイディドマーケットでありまして、これはどういうことかというと、ある企業の顧客に二つのタイプがある、例えばグーグルでいいますと、検索サービスの利用者、それから一方で広告主がいるわけで、その両者の関係をうまく利用してビジネス展開しているわけです。ですから、検索サービスの利用者がふえれば、それを対象に広告を出していく、広告を出す人がふえればアマゾンは懐が潤いますから、検索サービスを充実させることができる、そうすると利用者がふえる、利用者がふえればますます広告主がふえてくる、こういう好循環が生ずるわけでございまして、GAFAはいずれもこういう関係を利用しております。
こういうことをなぜ申し上げているかと申し上げますと、革新的なデータ産業という場合に、こういう仕組みをうまく利用していくということも必要なことではないかというふうに考えているわけでございます。
ただ、一つ問題がございまして、ネットワークの外部性、これを利用してどんどん事業が大きくなってくると、寡占化、独占化という現象が生じます。そういうことになると、経営者全員が善人というわけではないので、この市場支配力を濫用していこうではないかということが生じる可能性がありますので、独占禁止法の観点から、すぐに規制するということでないにしても、監視を強めていく必要があるんではないかと考えております。こういう点で日本の公正取引委員会はいささか規制に及び腰ではないかという危惧を抱いているわけでございます。
アメリカのIT企業に規制適用に対して消極性ということで、今のとは直接は関係しないところでございますが、通信の秘密というものがございます。通信の秘密は、先生方は御存じのように、憲法で保障され、それを受けて、電気通信事業法で、電気通信事業者は通信の秘密を遵守しなければいけないということが定められているわけでございますが、ここで、何が、どういう企業が通信事業者かということでありまして、NTTのような通信会社、携帯電話会社、これは明らかに通信事業者なんですけれども、じゃ、グーグルはどうなんだということなんですね。
通信事業者の条件というのはいろいろありますけれども、第三者間の通信の媒介をしている、そうすると、グーグルのメールサービス、これは、皆様方がやりとりされる情報、これを媒介しているわけですから、通信事業者じゃないかということになるわけです。ところが、日本では、じゃ、これをどうするか。
グーグルは、例えば、行動ターゲティング広告と言っていますけれども、Gメールなどの内容を分析して、個々にカスタマイズした広告を出してきているわけですけれども、これはメールを見ているからなんですね。グーグル自体は、人が見ているんじゃない、機械が見ているから問題はないんだと称しているわけですけれども、これからAIがどんどん普及していってそういうことが言えるのかという疑問を持っているわけでございます。
これに対して、日本の、例えばヤフーが数年前にインタレストマッチという同様のサービスを提供しようとしたときに、これは通信の秘密の観点から問題があるということで、いろいろな条件をつけられたわけです。ところが、グーグルに対しては実質手をつけられない。こういうことが続きますと、ますます日本の企業の国際競争力、これをそぐことになるのではないか。やはり、日本のあるいはアメリカの企業の間で、規制の適用について非対称性があってはならないのではないかと思うわけです。
じゃ、これに対して世界ではどうかということになりますと、参考資料の二ページ目に表二というのがございますけれども、個別の御説明は省略させていただきますが、いろいろな機会を捉えて、日本の独占禁止法に相当する競争法に違反しているではないかと告発しているわけです。現実に、一番上の買物検索については、昨年六月に、二十四億二千万ユーロ、三千億円近い課徴金を課しているわけです。こういうことに対して沈黙しているのはいかがなものかというのが一つ、問題意識であります。
このことだけ言うとやはりまずいかなと思って、公正取引委員会も、最近、去年あたりから研究会で報告書を出したり、あるいは、先月末の日本経済新聞の記事によりますと、委員長がデータに関して独占禁止法の観点から検討すると言われておりますので、これは今後に期待したいと思うわけであります。
それからもう一つ、ネットワークの外部性にも関連するんですけれども、IoTあるいはビッグデータ、これをAIを活用して分析していくというときには必ずネットワークが使われます。そのネットワークが独占的になってきた場合に、これをどう考えるかということですね。
だから、いろいろなネットワークがあるときに、その間のインターフェースを標準化してやらないと競争が働かないという現象が生じます。例えば携帯電話ですと、三社のネットワークをお互いに接続をしているということで、先行事業者であるNTTドコモの独占力が働かないような仕組みが入れられているわけですけれども、これを考えていかなければいけないと思うんですけれども、なかなか厄介なのは、この分野というのは、そういう場合に標準化が必要になるんですが、公的な標準化がうまく機能するかというと、必ずしもそうではないわけですね。
グーグルの検索サービス、どこかが認めた標準かというと、そうではなくて、いろいろな人が圧倒的に使うからこれが事実上標準になってきている。そういう分野についてこれからどういうふうに考えていくか。これは単純な規制は難しいかもしれないけれども、やはり、監視をして、問題があれば是正をしていくということも必要になってくるのではないかと思います。
三番目に、次に、表が二つ、三の一と三の二とつけさせていただきましたが、我が国が個人情報保護の仕組みでやはりEUに立ちおくれているのではないかということでございまして、EUは、この二枚目のところに、九番目に、域外へのデータの移転という項目がありますけれども、EUと同様の個人情報の保護の仕組みが、個人データの保護の仕組みができていない国には個人データを移転してはいけない。
これは常に生ずるわけですね。日本企業がEUの利用者宛てにオンラインサービスを提供しようとすると、必ず利用者の情報がこちら側に来ないと提供できないわけです。そういう意味で、向こうのデータベースにあるデータをこっちへ持ってこようということではなくて、ビジネス展開する場合に必ず必要になってくる。
そういう意味では、ここで立ちおくれるということは、EUからEU向けのサービスを禁止されるおそれもあるということでありまして、特にどういうところが私が気になっているかといいますと、表の三の二に六から八までありますけれども、それから、その前のページに、五番目に、忘れられる権利、これは一番下にありますが、データが必要でなくなったり、要は、データを提供するという同意を取り消すとどうなるかというと、これは削除しなきゃいけないということになっておりまして、これは本当に真面目にやり始めているんですね。
先週も、SSRNという国際的な論文のデータベースを提供している機関があるんですけれども、そこからメールが来まして、おまえ、最近利用していない、今後も利用する気がないのならデータを削除する、利用する気があるのならその旨申し出よ、もう既にそういう行為をとっているわけですね。
次のページ、先ほど申し上げましたが、データポータビリティー、個人のデータを自分で取り戻してほかの企業に移転する、あるいはプロファイリングですね、AIで個人のデータを集めてきて、この人間はどういう人間だというのを分析をする、こういうことに対しても規制をかけている。それから、データの保護の責任者を置かなきゃいけないと言われているんですが、これは日本企業で本当に対応できているところはあるのだろうかということは危惧を抱いております。
しかも、十番目にありますように、違反に対しては巨額の罰金を科す、制裁金を科すということで実効性を高めているわけでございまして、この仕組み、日本ではここは対応がおくれている。おくれているからといってそれでいいのかというと、事実上ビジネスができなくなる可能性がありますので、しっかり対応していく必要があるのではないかなと思います。
以上に基づいて、まとめてでございますけれども、事業者が革新的な技術、ビジネスモデルの実証プロジェクトを行う際に規制のサンドボックス制度を設けるということがうたわれておりますが、これはどの分野でやるということは決められていないので、データを利用する可能性というのは非常に高まってくるわけです。あらゆる分野のデータが対象になる可能性がございまして、これを、いろいろな仕組みの中でセキュリティーを確保していこうということはうたわれておりますが、現実にはどうなるんだろうか。
この法律自体は三年の時限立法ということになっていますけれども、集めたデータ、データは皆様方御存じのように、フェイスブックで問題になっていますけれども、一旦集めてデータベース化されると、取り戻す、もとへ戻すということはなかなかあり得ないところでありまして、じゃ、そういうものをどうしていくんだというようなことも考えていかなければならないということであります。
そういうことを考えていきますと、フェイスブックもまずいな、年金情報も漏れていっているのはまずいなということで、利用者から見ますと、こういうデータの提供、利用について消極的にならざるを得ないわけです。
そうならないようにするというのは何が必要か。個人が安心して個人情報を提供できる仕組みをつくり上げていかなければならない。利用者の保護がやはり確保されて初めて革新的データ産業の育成という、競争力の強化につながっていくんだろう。
消費者の安心感、信頼性の確保、ここがまず産業競争力強化のベースになるんではないかということを強調いたしまして、私のまとめとさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)