山田久の発言 (厚生労働委員会)

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○山田参考人 日本総合研究所の山田でございます。
 本日は、大変貴重な機会を賜り、まことにありがとうございます。
 私の方からは、マクロの観点から、今回の働き方改革の意義とその推進に当たって重要だと考えることについて私見を述べさせていただきます。
 まず、そもそもなぜ働き方改革かということですけれども、私はこれには二つの理由があると思います。
 まず第一に、人口動態が非常に大きく変わってきている、これに対する対応ということかと思います。
 従来、日本の労働市場というのは、男性現役世代が中核労働力と考えられてきたわけですけれども、これが大幅に減少しております。そういう中で、多様な属性の人材の活用を可能にすることが重要になっているわけですけれども、残業削減と柔軟な働き方、これをセットで進めることが重要になっていると思います。
 加えまして、労働力が希少になる中、全ての人材の能力を最大限に生かすべく、異なる人材、働き方の間で差別をせず、公平に処遇をする必要が高まっているということかと思います。
 第二に、ビジネスモデルの転換の必要性ということでございます。
 我が国の生産性をめぐっては、物的な生産性は高いけれども付加価値生産性が低いという問題がございます。労働力の持続的減少により、物的生産性頼みの、いわば労働集約的な薄利多売型モデルというのが限界に近づき、付加価値労働生産性を高める知識集約的な高収益型モデルへのシフトが必要になっております。
 そのためには、人材をオペレーション要員としてではなく、付加価値の源泉として扱い、その能力発揮を図る必要があるということかと思います。
 次に、今回の働き方改革の進め方について、ある意味異例とも言える政府主導になっているということかと思うんですけれども、これに対する評価を申し上げたいと思います。
 本来、労働条件の決定というのは労使自治に任されるべきものであります。しかしながら、一九九〇年代以降、厳しい経済環境のもとで、総じて職場の労働環境は悪化しております。特にここ数年、企業収益が改善している割には、十分な改善が見られない。そういうところに、労使自治による労働条件の改善が十分でない、そこに政府の積極的な介入が正当化される十分な理由があるというふうに考えてございます。
 もっとも、最適な労働条件のあり方は産業や企業あるいは事業によって異なっており、最低限の底上げあるいは標準レベルの実現を政府主導で行うことは必要にしても、労使自治が機能する状況を生み出すことで、最終的には個別労使の決定に任せるということは極めて重要かと思います。
 その意味では、今回の法整備とともに、従業員代表制の導入や労働組合の横のつながり強化など、集団的労使関係の新たなあり方を構築していく、これを同時に推進していくことが極めて重要だと考えております。
 続きまして、今回の内容の妥当性と留意点ということに関して申し上げたいと思います。
 端的に言いましたら、今回の働き方改革の内容というのは、欧州型の働き方の要素を導入しようということかと思います。我が国が求められている働き方改革の方向性、既に説明しましたが、その二点を考えますと、基本的な方向性としては極めて妥当だと考えております。
 その半面で、ヨーロッパ社会と日本社会の間にはさまざまな違いがございます。雇用システムというのはそもそも社会の中に組み込まれている、そういうものでありますから、日本型にアレンジするということが重要だと思いますし、同時に重要なのは、関連システムの改革を同時に進めていくということかと思います。
 関連システムの改革とは、具体的には、まず、人材育成の仕組みの再構築ということであります。
 我が国は、企業内でのOJTが基本で、仕事と育成が一体化している側面がございます。一方で、ヨーロッパでは、学校教育において基礎的な実務能力が身につく仕組みがさまざまにあり、いわば短い労働時間でも人材育成が十分に行われる仕組みが存在します。
 これに対して、日本はそういうものが十分でない以上、人材育成のあり方をまずは企業が見直すとともに、政策的な支援、とりわけ学校教育との連携も含めて、人材育成のトータルなあり方を見直していく、ここが極めて重要かと存じます。
 それから、物的生産性よりも付加価値生産性の向上を追求する企業行動ということをやはりつくっていく必要がございますし、それを受け入れるために、取引慣行、消費文化というものを見直す必要があると思います。
 いい物を安くの企業行動と低価格が当然という消費社会では、低価格薄利多売型のビジネスが選択されやすく、その結果、業務量確保のために長時間労働が助長され、いわゆる非正規社員をコスト削減のための低賃金労働として活用しがちになります。
 これをいわば、ユニークな物を高くの企業行動と、良質であれば高価格が受け入れられる消費社会に転換し、企業が適正な価格を設定し、適正利潤を確保できるビジネス環境を整える必要があると思います。
 それにより、一定の業務量、すなわち一定の労働時間で十分な収益が確保でき、非正規労働者も含めた全ての労働者を付加価値創造の担い手として位置づける経営が誘発されるようになる、そういうふうに考えてございます。
 各論に関しまして申し上げたいと思います。
 先ほど言いましたように、今回の働き方改革というのは日本型のアレンジが必要だというふうに考えておりますが、そういう意味では、一定の配慮がなされるということでは妥当かと考えております。
 その中で、労働時間規制ですけれども、まず、ヨーロッパタイプの絶対上限を入れることは妥当かと存じますが、ヨーロッパに比べては緩めになっているのが実態でございます。それ自体は、とりあえずの導入としては妥当だと思いますけれども、これを出発点に、自主的な一段の削減ということが、特に企業が自主的に努力していくということが重要かと思います。
 今回は高度プロフェッショナル制度の導入もセットになってございますが、私自身は、これ自体は妥当かと存じております。非常に知識集約的な産業構造に変わっていく中で、こういう自律的な働き方をふやしていくということは重要かと存じます。
 ただ、重要なのは、適正な運用がなされる、このための十分な措置を講じていく必要がある。例えば、本当に自主性の高い労働者のみに適用するような仕組みを整備したり、あるいは過重労働を防止するような有効な健康管理措置を講じるということが要件になってくるということかと思います。
 同一労働同一賃金に関しましては、今回は、ヨーロッパのオリジナルの形ではなく、非正規労働者の処遇改善という、ある意味、日本独自の形で導入しているということかと思います。
 この点に関しましては、私は妥当だと考えますが、一方で、企業の中ではこれに関しやや混乱が見られますので、そこの趣旨を改めて政府としてしっかり伝えていくことが重要かと思います。
 実務的には、産業別の自主ガイドラインを策定したり、あるいは個別労使の対等な話合いによる自主ルールを尊重するような、そういう運用が極めて重要かと考えてございます。
 一点、これに関して補足したいのは、従来の日本型の能力主義的な評価、報酬制度と真っ向から対立するものではなく、むしろそれを補完するもの、そういうふうに考えております。それから、プロセスの公平ということで、労使のコミュニケーションをしっかり強化していくような仕組みも重要かということでございます。
 最後に、今回の働き方改革というのは、大枠妥当かと存じますけれども、あくまで改革の出発点にすぎない、ここをしっかり認識をする必要がある。今後も、当面は政府が引き続き触媒となって調整に乗り出していき、労使の背中を押していくということが必要なのではないかなと思います。
 ただ、最終的には、これは先ほど申し上げましたように、個別具体的なワークルールというのを政府が全て決めるのは無理であります。そういう意味では、働き方の改革は、改革の主役はあくまで労使であって、雇用社会のあり方を最終的に決めるのは労使の自主的な合意であるということを改めて強調したいと思います。
 そういう意味では、政府がやるべきことは、場の設定と話合いの推進です。具体的に言いますと、政労使会議を改めて再開し、産業レベル、地域レベルに裾野を広げながら、教育のあり方や商慣行、消費社会のあり方も含めて、広い分野について労使が各レベルで議論を重ねながら練り上げていくように政府が働きかけていくということが重要かと存じます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 山田久

speaker_id: 26943

日付: 2018-05-22

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会