山中朋子の発言 (厚生労働委員会)
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○山中参考人 おはようございます。全国保健所長会の会長をさせていただいております、青森県弘前保健所の山中と申します。
健康増進法の一部改正に係る審議において、このような機会を与えてくださいました委員長を始め関係皆様に心より感謝申し上げます。
喫煙は公衆衛生上の課題でありますことから、保健所は、市町村とともに、子供たちへの喫煙防止教育や住民への健康教育、妊婦への指導等を通した普及啓発、特定保健指導による個人への禁煙支援とともに、受動喫煙対策として、喫煙をする親に乳幼児健診等の場を通じて指導しましたり、施設内禁煙等を実施している施設や事業所の認証等、喫煙による健康影響から住民を守るさまざまな対策を実施しております。
さて、このたびの健康増進法の一部を改正する法律案は、既存特定飲食提供施設における喫煙を、別に法律で定める日までの間の措置として認めるという点で、不十分と言わざるを得ない内容であると考えております。
しかしながら、健康影響が大きい子供や患者様等に特段の配慮がなされている点、さらには、禁煙措置や喫煙場所を特定し掲示の義務づけをすることによって、確実に望まない受動喫煙をなくすことが可能となることから、まずはこの法案を早急に成立させることを優先すべきと考えます。
法律の成立により、国民や施設、事業所等に周知を図る過程や法に基づいた各般の取組が開始されることにより、国民の受動喫煙防止への関心が高まり、さらには、事業者等の管理権原者の理解も深まることによって、受動喫煙対策を講じる施設や事業所の裾野が着実に広がっていくものと考えます。
受動喫煙対策を早急に開始していただきたい理由についてです。
一つとして、喫煙による健康影響についてであります。
平成二十八年八月に、喫煙の健康影響に関する検討会報告書が取りまとめられております。この報告書では、たばこの健康影響については、疫学研究等の科学的知見をレビューし、特に疾患等との因果関係の判断においては、関連の一致性、強固性、時間的前後関係、生物学的な機序、量反応関係、禁煙後のリスク減少の有無などを総合的に吟味した上で、たばこと疾患等との因果関係を四段階で判定した結果が示されております。
喫煙者本人への影響、いわゆる能動喫煙としては、科学的根拠は因果関係を推定するのに十分であるとされるレベル一は、多くのがんや虚血性心疾患や脳卒中などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患、呼吸機能低下や結核死亡などの呼吸器疾患、また、妊婦の能動喫煙では、早産や低体重、胎児発育遅延や乳幼児突然死症候群とされています。さらに、未成年者の喫煙に関しては、喫煙開始年齢が若いこととの因果関係を推定するのに十分であると判定されたのは、全死因死亡、がん死亡、循環器疾患死亡及びがん罹患のリスク増加となっております。
一方、本人が喫煙していない受動喫煙においても、レベル一とされたのは、成人の肺がん、虚血性心疾患及び脳卒中、小児ではぜんそくの既往及び乳幼児突然死症候群となっております。
受動喫煙によるこれらの疾患の年間死亡数の推計値は、成人男性では四千五百二十三人、成人女性では一万四百三十四人、乳幼児突然死症候群による死亡は七十三人とされております。
このように、喫煙による健康影響は、能動喫煙による影響はもちろん、受動喫煙の健康影響も看過できるものではありません。
二つとして、国民の受動喫煙の現状です。
二〇一六年の国民健康・栄養調査によりますと、この一カ月間に受動喫煙の機会があったと回答している者の割合は、飲食店では四二・二%、職場では三〇・九%、行政機関では八・〇%、医療機関では六・二%とされております。
健康増進法で多数の者が利用する施設等における管理者の努力義務では、いまだに多くの施設や事業所において国民が受動喫煙による健康影響を受ける機会があり、このままでは、望まない受動喫煙から国民を守ることはできないものと考えます。
以上のことから、現行の健康増進法では、望まない受動喫煙を防止することは非常に困難であり、このたびの改正により管理権原者の義務とすることが、実効性のある対策に確実につながると考えます。
ただし、既存特定飲食提供施設において喫煙可能を選択した場合は、二十歳未満の客や従業員は立ち入ることはできないものの、二十歳以上の客や従業員は受動喫煙にさらされることになりますことから、法施行後、これらの施設の実態を把握するなどして、できるだけ早期に既存特定飲食提供施設の措置に関する方針を示すことが肝要と考えます。
また、加熱式たばこは、たばこのうち、当該たばこから発生した煙が他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでないたばことして厚生労働大臣が指定する指定たばこに位置づけられておりますが、今後、使用者の増加も懸念されますことから、早急な対応が必要と考えます。
次に、受動喫煙に対する社会の動きについて述べます。
国の未来投資戦略二〇一七において、健康寿命延伸産業の育成の一環として、一昨年度より経済産業省が健康経営優良法人認定制度の設計をしておりますが、昨年度は、全国で大企業では五百四十一事業所、中小企業では七百七十六事業所が認定を受けております。認定の基準の中に、これまでは選択であった受動喫煙対策の実施が二〇一九年度からは必須条件となるとのことです。
本県でも、昨年四月より、働き盛り世代の健康づくりを推進するため、健康経営に取り組む県内事業所を青森県健康経営事業所として認定する制度を創設しました。認定の必須要件の中に受動喫煙防止対策の実施と施設内禁煙を入れておりますが、これまで百五件の企業等が認定を受けております。
今後も、企業、事業所での従業員の健康増進の取組が一層広がっていくものと思われます。
また、自治体における受動喫煙防止に関する条例の施行や、喫煙や受動喫煙防止対策も盛り込んだがん対策の推進に関する条例、健康づくりの推進に関する条例等も施行されてきております。このことは、自治体住民等の受動喫煙への関心の高まりとともに、受動喫煙防止への理解も深まってきているものと考えます。
このような社会の動きの中では、受動喫煙防止の義務を課する法律案の提出は、むしろ遅い対応ではなかったかと思っております。
これまでは公衆衛生医師としての立場から意見を申し上げましたが、最後に、都道府県、保健所の立場から意見を申し上げます。
一部改正法案により、都道府県として、住民や施設、事業所等への周知や啓発、住民からの相談窓口の設置のほか、既存特定飲食提供施設の客席面積百平方メートルの把握、指導監督等の事務、喫煙禁止場所における喫煙や喫煙器具、設備設置等の違反行為に対する知事による勧告、命令、公表等の事務、さらには、指導や命令によっても改善が見られない場合の行政罰の過料を適用させるための知事から地方裁判所への通知事務などがふえることが見込まれます。
これらふえる事務を現在の保健所の体制では対応することは大変厳しいと考えており、事務を都道府県で行うための技術的な支援や財政措置を強くお願いする次第です。
また、法施行後に発出される政省令等で具体的な運用等が示されると思われますが、都道府県が具体的に準備ができるよう、発出の時期等に御配慮をお願いしたいと思います。
以上で参考人としての意見を終わります。(拍手)