西村直之の発言 (内閣委員会)
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○西村参考人 それでは、ギャンブル等依存症及びギャンブル等依存症対策基本法、ギャンブル依存対策基本法に関する意見を述べさせていただきます。
まず、本法案は基本法ですので、この問題に必要な対策をこの問題にかかわってきた私から見れば、過不足という感じはあります、正直。しかし、これはあくまでも基本法なので、この基本法が今後より有効に機能するために重要と思われる課題について、少し取り上げさせていただきたいと思います。
まず、用語の問題について少し触れさせていただきます。
国民に対して、現在、この法案の議論の中で、わかりやすい用語で議論するということはとても重要なことだというふうに考えております。しかし、議論の根幹となるいわゆるギャンブル依存症、ギャンブル等依存症というのは、今回、両法案の中ではその定義自体が異なったまま今日に至っております。定義の明確化というのは、やはりその対策をする者から考えると必須の課題というふうに考えています。
自公維の案では、ギャンブル等依存症は、海外の対策で標準的な考え方となっているプロブレムギャンブリング、いわゆる問題あるギャンブリングという、かなり幅が広いところを対象としております。一方、立憲、自由、社民案では、疾病と捉える、どちらかというと医学モデルというのが強く表現されております。
これはどちらがよいということではないと思うんですが、やはりモデルが、いわゆる問題ギャンブリングという障害モデルに立つか疾病モデルに立つかというのは、実は、今後対策をしていく上でどこに重点的に対策の力をかけていくかというところでかなり変わってくるんだと思います。大きく言うと、医療モデル型の対策になるのか、公衆衛生モデル型の対策になるかというのがここで大きく変わってきます。
この対策は、実は対策費用のかけ方に大きな違いが出てきます。費用面の異なり、違いというのは、今後の対策費をどう確保していくかということにおいても非常に大きな議論になりますので、やはり、納税者や事業者も含めたいろいろなステークホルダー、利害関係者が納得できる費用効果の達成というのが明確になる公衆衛生モデルの方が私はいいのではないかというふうに考えております。
次に、医学的には、精神医療分野におけるギャンブル依存症という病名というふうに使われているものは、実はごく限られたところで使われている通称のもので、明確に医学的な定義として、ギャンブル依存症という病名は存在していません。これはやはり政治用語であるというところからスタートをぜひしていただきたいと思います。
つまり、定義がはっきりせず、病的ギャンブリング、ICD10というWHOの定義ではこれは病的賭博という訳になっております、また、アメリカ精神医学会のDSM—5におけるギャンブリング障害はギャンブル障害と訳されていますが、これがやはりいつの間にか全て混在されて、ギャンブル依存症とされています。
さらに、この法案ではギャンブル依存症、ギャンブル等依存症となっていますが、実は、世界の中では、依存症、いわゆるディペンデンス、という訳が当たっているものは既に診断基準から消えておりまして、依存症であるかないかという線引き、それから、ギャンブルやアルコールが原因であるかないかという議論自体が、治療論、因果関係をおいて、まずは問題がある人たちにどのように早期に介入するかというのが今援助及び対策の中心課題になっているので、やはり、ちょっと世界の流れから考えると、今回の対策の中でより医療的なものが中心に出てきていることに関してはかなり違和感を持っております。
この点については、やはり海外の対策をしている人たち、研究者からも、なぜ、今新たな対策をするのに、一番コストがかかって費用効果の悪い医療モデルを使うのかというふうなことをたびたび聞かれて、返答に正直窮しているところです。
また、用語と関連する部分ではあるんですが、今回の中で、ギャンブル等依存症、昨日は患者という言い方がかなり出ていましたが、このギャンブル等依存症の問題を抱える人たちというのは一体誰を指しているのかというのがやはり曖昧なところがあります。
ギャンブルの参加者の中には、やはり実際、病的な依存状態に陥る、いわゆる本来の医学的水準の依存症レベルに陥る人たちがいることはもう間違いない事実で、これは非常に深刻な問題で、しっかりした対策が必要です。
ただ、実際、いろいろな数値があります。数値の中で、実際、ギャンブルの習慣を持つ人たちの中で重度の依存状態にある人たちは全体の一から三%程度ということで、決して数としては多くないということがさまざまな疫学検査でわかっております。
一方で、自分で何とかコントロールしながら、ギャンブリング習慣を、ギャンブルの習慣を何とかコントロールしながら若干問題を抱えている人たちというのがかなりの数います。この人たちがやはり参加者の五%から一〇%ぐらいはいるだろうというふうなことが世界的にも言われておりまして、この群がいわゆる問題ギャンブラーと呼ばれる人たち、プロブレムギャンブラーと呼ばれる人たちで、この方たちは必ずしも病的な状態に移行するわけではなくて、問題を抱えながら、割と長期間その状態をキープする。そういう意味では、その周辺の人たちには長いこと影響が出ることは間違いないので、これは対策が必要なわけです。
ただ、この方たちは、何らかのきっかけでかなりの人たちが自己回復しているというデータもまたあります。
そのようなことを踏まえて、世界の対策というのは、黎明期はより重篤な、いわゆる依存症レベルの治療介入を標的として始まってきたんですが、対策が進むにつれて、問題ギャンブラーへの早期介入と、どうやって依存症水準に進行させない自己制御を支援していくかというふうに対策がシフトしています。
昨日のこの会の中でもAMEDのデータがかなり使われたと思うんですが、あの中に、直近一年、七十万人がいわゆるギャンブル依存症の疑いということになっていますが、あれは一体何を指すかというと、多分、実際、病的水準はその数分の一で、七十万人のうちの多分九〇%ぐらいは問題ギャンブラーであって、いわゆる医学的依存症ではないということは、これはやはり注意しておかないといけないと思います。この方たちは、病院に連れていったからといって、必ずしも治療効果が、まあ、ないわけではないですが、極端に言うと、費用効果がかなり悪い支援になり得るということですね。ただ、数万人の深刻な問題を抱える人たちがいるということは、もう間違いない事実です。
さらに、問題ギャンブラーのレベルで見る場合というのは、実はアルコールや薬物の病的依存とやはりかなり病態が異なっておりまして、そのケアのやり方というのはもっともっと幅が広く、柔軟なものであった方がいいというふうに考えております。
つまり、病的な依存症レベルではない問題ギャンブラーをいかにふやさないか、いかに問題ギャンブラーを病的な依存状態に進行させないかを主眼とした予防対策というのが、やはりこれからやる対策としては非常に重要だと思います。
シンガポールなどもこの点を強調しておりまして、まずは予防できる人をして、その上で、その予防をすり抜けていく人たちに対して重点的に対策を行うというふうにしております。
この問題ギャンブラーは、本人から援助を求める行動がかなり期待できますので、やはりこちらの方をより重点的にやっていった方がいいと思います。
時間の関係で、少し飛ばさせていただきますが、もう一点、やはり、自助グループ、当事者活動に対しての支援ということに対して、これはとても重要なことではあるんですが、実は他の依存の問題でも、精神保健の行政が医療機関につないで、医療機関が、また精神保健の機関が単に自助グループに丸投げするという事態が、ずっとこれはアルコール、薬物の問題でも起こっております。これは実は支援の劣化というふうな問題を引き起こしておりまして、その途中にある、自分でコントロールできたり戻れる人たちの支援、それから、そうならない予防に対して、やはり、この法案の中では少し、両法案とも若干弱いように思います。その点はぜひ、より検討されていただきたいと思います。
特に、カジノの是非は別として、この対策については、やはり海外は日本より三十年ぐらいさきに取り組んでおりますので、特に事業者や向こうの対策のノウハウというのは非常に有効なものを持っておりますので、その点は、ぜひ活用していくべきではないかというふうに思っております。
以上です。ありがとうございました。(拍手)