田中紀子の発言 (内閣委員会)
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○田中参考人 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事の田中と申します。
私は、自分自身がギャンブル依存症からの回復者でもあり、また、祖父、父、夫と、家族に依存症者を持つ立場でもあります。それらの経験を生かして、現在では、ギャンブル依存症問題に苦しむ当事者と御家族の支援を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、短いお時間でございますので、三つの要点に絞ってお話ししたいと思います。
まず第一に、民間団体の役割と支援についてです。
二〇一六年十二月にIR推進法が通って以来、ギャンブル依存症がにわかに注目され、各地の精神保健福祉センターほか、行政の窓口や、公営競技、遊技の運営者側の皆様方も電話相談窓口などを設置されました。
その結果、早期に支援につながれる方たちもいる反面、重篤な案件に対しては、電話相談のたらい回しという現実も起きています。
例えば、お金を渡さないと、暴力を振るったり、近所に聞こえるようにわざと大声を上げる、首をつるなどしながら、今から自殺するぞと脅迫動画を送ってくる、暴れて家の中を破壊するので、家族が車上生活を強いられている、こうした案件に対し、行政、医療その他電話相談窓口に相談しても、本人を連れてきなさいとどこでも言われてしまい、家族にはなすすべがありません。また、警察に相談しても、当事者に対する説教で終わってしまっています。
これらの案件は、全て私どもが対処した事例です。私たちは、どこからの支援も受けられず、予算もつかないまま、同じ問題を抱えた家族同士で寄附を出し合い、こうしたハイリスクの案件に対応しております。こんなおばさんである私が、包丁を振り回したり、暴れている当事者の説得に向かい、医療や回復施設への入院、入寮を促し、自分の車で現地まで送っていき、その後、御家族の安全対策や自立支援を行っております。
御本人が自殺を図ったケースもあります。家族と連携し、何とか一命を取りとめ救急病院へ運んだにもかかわらず、救急から精神科への連携を拒否されてしまいました。私どもが懇願しても入院はかなわず、結局自死されてしまい、救えるはずだった命を救えなかったという苦い経験もございます。
現状の依存症対策は、こうした重篤な問題に対する支援が置き去りにされたまま、電話相談や数回の認知行動療法などの入り口対策ばかりが強化され、私たちの現実と対策が乖離しております。
御参考までに、現状の課題について図でお示しいたします。
第二に申し上げたいことは、連携の強化です。
カジノ議論とともにギャンブル依存症対策が取り上げられると、医療の強化ばかりが叫ばれるようになり、我々は困惑しております。ギャンブル依存症は、アルコールのように身体的健康が損なわれるわけではなく、また治療薬もない現状では、医療の果たす役割はわずかです。
むしろ、ギャンブル依存症は、多重債務などの金銭的な問題とそれに伴う犯罪によって介入されるケースの方がずっと多くあります。
例えば、動機にギャンブルの問題があった事件は毎日のようにニュース報道となっており、つい最近も、五月十八日、信金職員着服、三百五十一万、使途はパチンコ、五月二十一日、青果卸会社元課長代理、八年間で二億五千万円着服、使途はギャンブル、五月二十一日、小学校職員、給食費六百八十八万円着服、使途はパチンコ、スロットと報道がありました。
御参考までに、当会が二〇一八年一月以降ニュース報道で把握した事件を添付いたしております。
私どものもとにも毎日、横領、窃盗、万引きなどの相談が寄せられ、こういった事件の裏には悲しみに暮れる御家族がいます。
昨年十二月には、九十二歳の父親が、六十五歳になる無職で父親の年金をせびってギャンブルに行く長男をハンマーで殴り殺すという痛ましい事件もございました。
ギャンブル依存症は、弁護士や司法書士、警察との連携及び職場への正しい知識の啓発や予防教育がむしろ急務と感じております。
また、最近では、高校の養護教師から、家庭内にギャンブルの問題がある生徒が家に帰りたくないと言っているなどという相談も寄せられるようになったり、大学等の中退問題にギャンブル依存症が少なからずかかわっていることがわかっています。教育現場との連携も欠かせません。
さらに、ギャンブル依存症は、残念ながら当事者が回復しない場合も多くあり、その場合には、残された妻子が貧困状態に陥り、問題が子供の世代へと伝播していきます。一人親支援や子育て支援との連携も必要です。
また、医療と行政だけを強化することは、別の弊害も生みます。ギャンブル依存症の民間回復施設では依存症からの回復者が支援者として活躍しており、やりがいを感じ、生計を立て、納税者として社会復帰を果たしています。医療と行政に偏った支援は、このような回復した依存症者の居場所を奪うことにつながります。
ギャンブル依存症対策を考える際には、必ず、民間団体、民間回復施設、そして自助グループを含め、弁護士、司法書士、警察、児童養護施設、自殺対策、学校教育、企業教育、地域社会、もちろん行政、医療、ギャンブル産業といった幅広い連携が必要です。
御参考までに、多重債務や中退問題、養育問題に関するギャンブル依存症者の家族に対する筑波大学と当会との合同調査資料を添付いたします。
最後に、予算の現状です。
二〇一八年度、厚生労働省の依存症対策予算は六・一億円のうち、民間団体へ直接支援される助成金は、アルコール、薬物、ギャンブル全ての団体を合わせ一千八百万円です。
また、国と都道府県・政令指定都市が折半で行う地域生活支援事業による民間団体の助成では、ギャンブル依存症支援への助成を検討していると答えてくださった自治体は、当会及び他団体の電話調査によると、六十七分の十九自治体となっており、実施率は二八%、金額は三万円から二十万円となっております。その中でも、企画は全て行政が行うというものや、事業の半分だけ助成するという、実質的には利用できない助成金もございました。
そして、興味深いことには、早々にIRに名乗りを上げておられる北海道、東京都、横浜市、大阪府、和歌山県、長崎県は、この民間助成金にゼロ回答でございました。
ギャンブル依存症対策をしっかりやるという口約束ではなく、対策費拠出を含めた対策のあり方、また予算の規模などをお示しいただかないと、私たちは安心できません。相談電話の設置だけでは、対策を行ったとはとても言えない現状があるからです。また、どのような対策が必要なのか、ギャンブル依存症により現状起きている社会負担費などのコスト計算や実態調査を行う費用なども計上されておらず、本当にしっかりとした対策が行えるのか、不安です。
また、ギャンブル産業側が民間団体や研究者に直接助成することは利益相反の問題もあり、やはり、国が売上げの一部を税金などの形で管理し、依存症対策費として分担する制度を整備することが、世界的に見てもスタンダードな方式だと思います。ギャンブル依存症対策を整備する上で、いま一度御一考願えないかと思っております。
最後になりますが、このギャンブル依存症対策で最も大きな前進となり、今後基本計画を作成する上で重要な役割を果たすと思われる関係者会議が実現したことは、中谷先生を筆頭とした与党のギャンブル依存症対策PTの先生方、また、この問題にお詳しい野党の先生方に心から御礼申し上げます。
ギャンブル依存症問題により、悲鳴を上げ、助けを求めておりますのは、当事者そして家族でございます。どうか、当事者、家族の声を一つでも多く法案に取り入れていただけるよう、心からお願い申し上げます。
お伝えしたいことはまだたくさんございますが、あとは質疑応答の時間に御質問いただければと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)