三上理の発言 (内閣委員会)
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○三上参考人 弁護士の三上理と申します。
日本弁護士連合会のカジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの事務局長をしております。
本日、日本弁護士連合会の意見を二つ配付させていただきました。
二枚目からあるのが、二〇一八年四月十三日付、ギャンブル依存対策推進に関する意見書です。ここでは、ギャンブル依存対策の推進に当たって留意すべきと考えられることを述べております。
意見の趣旨として、まず、ギャンブル依存対策は、ギャンブル依存の問題が自己責任の問題ではないことを基本的な立脚点として、消費者安全の見地から考えられなければならないこと、また、ギャンブルとの物理的、精神的な近接性の排除をギャンブル依存対策の重要な柱の一つとし、厳格な入場制限が行われるべきこと、ギャンブル依存対策は全てのギャンブルを包括して行われるべきであり、そのために独立した司令塔が必要であることなどを述べております。
また、一枚目のところで、四月二十七日付、日本弁護士連合会の会長声明として、特定複合観光施設区域整備法案の国会上程に反対し、廃案を求める会長声明を出しております。ここでは、今カジノを解禁することについて、ギャンブル依存症対策が不十分であることなどを理由として、反対することを述べております。
これらの意見を踏まえて、以下、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
ギャンブル依存症対策においてまず一番に大事なのは、予防だと思います。
ギャンブル依存症対策とは何かということについて、今提出されている法案では、例えばギャンブル依存症の発症、進行及び再発の防止及び回復のための対策とされ、あるいはギャンブル依存症の発生、進行及び再発並びに問題の発生の防止等を図るための施策等とされています。
その中で、ギャンブル依存症になってしまった人の進行を防ぐこと、回復のための対策をし、支援すること、再発を防ぐことももちろん大事であり、必ずやらなければならないことであり、そういう深刻な現実があるからこそこういう法案が必要になってくるわけですけれども、やはり基本的な理念として一番大事なのは、ギャンブル依存症になる人を生み出さないこと、つまり、発症を防止することなんだろうというふうに思っております。間違っても、依存症になる人がこれから更にふえたとしても、その回復のための対策と支援さえ充実していれば大丈夫というふうになってはいけないというふうに考えます。
私は、これまで、弁護士として多重債務の問題にかかわってきました。かつて、多額の借金を抱えて返せなくなる多重債務者が二百万人とも三百万人とも言われ、貸金業法の改正がありました。そのとき、多重債務になってしまった人をどう支援するか、むしろ弁護士にとってはそういう場面でこそ活躍する機会があるわけですけれども、やはり一番大事なのは、そもそも多重債務になる人を生み出さない社会をつくることだと考えられたわけです。
今も同じだと思います。ギャンブル依存症の経験がある人が五百三十六万とも三百二十万とも言われる中で、ギャンブル依存症になってしまった人の回復と再発防止のための対策と支援、これを放置することはできないんですけれども、やはり基本的な理念として一番大事なのは、ギャンブル依存症の発症を防ぐことでなければならないと思います。
そのような観点から、ギャンブル依存症になってしまう人を生み出さない社会をつくるために、ギャンブルについて、時間的、場所的な近接性を排除することが必要であると考えます。
今、いつでもどこでもギャンブルが身近にあります。駅前にはすぐにパチンコがあり、テレビでは頻繁に競馬のCMが流れています。未成年者にとっても、ギャンブルが日常的に身近にあるわけです。
このようなギャンブルとの物理的、精神的な近接性を排除することが必要であり、そのためには、ギャンブル事業者の広告は禁止されるべきであり、ギャンブル施設への入場については厳格な制限が行われるべきであると考えます。
また、全てのギャンブルについて、包括的な対策が行われる必要があると思います。
現状では、競馬については農林水産省、競輪については経済産業省、競艇については国土交通省、パチンコについては警察庁と、所管が分かれています。
昨年八月二十九日、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議の「ギャンブル等依存症対策の強化について」、取りまとめが公表されましたけれども、そこでも、それぞれのギャンブルごとに、ばらばらに対策が検討されていました。全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策が見られないことは残念に思います。
そのような、一貫した包括的な対策の必要性という観点から、幾つか具体的に意見を述べさせていただきたいと思います。
例えば、射幸性の抑制という問題について。
パチンコについては、最近、出玉規制が強化されました。警察庁としては、依存症対策のために射幸性を抑えることが必要であると考えたわけです。
それでは、競馬、競輪、競艇はどうなのか。本来であれば、競馬、競輪、競艇等の公営ギャンブルについても射幸性の抑制が必要であるというふうに思いますし、今検討されているカジノについても、民間賭博であるという特性からしても、刑法で刑罰として禁止された賭博の違法性を阻却するためにも、射幸性を抑制することは不可欠であろうと考えます。
次に、入場回数の制限という問題について。
カジノについては、現在、週三回、月十回までの入場回数制限が検討されているようですけれども、それでも、パチンコには毎日通っていても問題はないというふうに言っていいのかどうか。週三日はカジノに通い、残りの四日はパチンコ、競馬に通うということができるのであっては、依存症対策にはならないのではないかという疑問があります。
パチンコについても競馬についても含めるような形で、全てのギャンブルについての入場回数制限が検討されるべきであると思います。
また、営業時間の制限という問題について。
パチンコについては、現在、風俗営業法と条例で、営業時間が朝何時から夜何時までと定められています。
これに対して、今想定されているカジノは、日本で初めての二十四時間営業のギャンブル施設です。三日連続で七十二時間、家に帰らず、ギャンブル施設にい続けることができるというのでは、依存症になってしまう危険性はかなり大きいと思います。
カジノについても、営業時間の制限は必要であるはずです。
さらに、ギャンブルのための資金調達という問題について。
現在、競馬場などでは、ATMのキャッシング機能を廃止したり、ATMを撤去することが検討されています。
しかし、カジノについては、一定の金額を預けた人に対してはカジノ事業者が貸付けを行うということが想定されています。ギャンブル事業者が顧客に対してギャンブル資金を貸し付けるというのも、日本で初めてのことです。
例えば、五百万円を預けたら三千万円分のギャンブルができるということでは、いわゆる信用取引、証拠金取引と同じです。射幸性は更に高まるのであり、大きな問題があると思います。
このように、それぞれのギャンブルについてばらばらに対策を考えると、ちぐはぐな、おかしなことになるという問題があると思います。独立した司令塔となる機関によって、全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策を考える必要があると思います。
この基本法案に基づいてこれからギャンブル依存症対策推進基本計画が定められ、その計画に基づいて各種の対策が行われることになるわけですけれども、その基本計画の内容、各種対策の内容について、全て推進本部に委ねるというのではなく、やはり国民の代表である国会として、今きちんとその青写真を描くということを議論して、検討していただきたいというふうに考えます。
その際、ギャンブル依存症の発症を防止するために、ギャンブル依存症になってしまう人を生み出さない、そういう人をできるだけ少なくする社会をつくっていくために、全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策が必要であるという基本理念を打ち出していただきたいというふうに思っております。
私からは以上です。(拍手)