新里宏二の発言 (内閣委員会)

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○新里参考人 日弁連のカジノ・ギャンブル問題検討ワーキングチームの座長をしております新里でございます。
 この機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 まず初めに、本法案を見まして、条文が二百五十一条、資料もいただきましたけれども、第一分冊が百七十六、それから第二分冊で二百三十三、大変な量でございます。十分に時間をかけた審議をしていただきたい。カジノ解禁推進法での拙速な審議が批判を浴びたところでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 私が所属しております日本弁護士連合会では、二〇一四年五月、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案、いわゆるカジノ解禁推進法案に反対する意見書を公表しております。カジノ解禁には、暴力団対策上の問題、マネーロンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響等、多数の弊害があることを理由にしておりまして、一貫してカジノ解禁に反対をさせていただいております。
 今回の法案につきましても、反対の会長声明を上げております。
 ちなみに、私自身は、弁護士三十六年、多重債務の問題はずっと取り組んでおりまして、その中で、ギャンブル依存症で命を奪う人の被害を見ている中で、今、ここに立っているということでございます。
 私は、今法案に反対の立場から、大きく分けて四点について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず第一は、国民的議論が尽くされていないこと。二つ目に、カジノ解禁について、負の影響の検討が不十分であること。三、カジノについて、世界最高水準の規制とは言えないこと。四、カジノ解禁について、違法性阻却ができるとは考えられないこと。以上でございます。
 まず、一の、国民的議論が尽くされていないことについてでございます。
 カジノ解禁推進法の衆議院の附帯決議十五によれば、十分に国民的議論を尽くすこととされております。これは、カジノ解禁推進法の議論が極めて拙速であったこと、カジノ解禁は、日本で初めて民間賭博を解禁することで国民の中に抵抗感が強かったことなどによると考えるところでございます。
 推進会議が二十九年七月三十一日に取りまとめました「「観光先進国」の実現に向けて」、本取りまとめと言いますけれども、に対し、昨年の八月一日から八月末までパブコメ、意見募集を行い、また、九カ所で公聴会を実施しまして、私も仙台の公聴会で参加させていただきました。
 パブコメの結果がやっと十二月十五日に公表されました。意見提出者数は千二百三十四名、提出意見は七千四十九となって、関心の高さがうかがわれました。
 それによると、本当に意外なことにと言ったら変ですけれども、カジノの存在を前提として観光振興を行うべきでない、日本の観光資源を生かした観光推進を図るべき、千二百五十一件、これが最多の意見でございました。IR導入による経済効果は期待できない、千百五十五件。推進法案に反対、カジノ賭博解禁に反対、八百二十九件。IRを導入すると社会的コストが生ずる、五百五十六件。高い収益性と世界最高の規制の両立について、両論から二百六十件、双方からの意見。また、不当取引取締り、犯罪対策、不正行為による犯罪組織の資金獲得及びカジノ周辺地域への犯罪組織の流入等に対する規制に言及がない、又はその実効性が期待できない、二百五十三件。IR周辺地域においても、暴力団や海外での犯罪集団等、反社会的勢力の関与による治安、風俗環境の悪化等のさまざまな問題や犯罪等の弊害が懸念されるため、徹底的に排除するような対策や規制を講じるべきである、二百四十四件等、軒並みカジノ解禁へ否定的な意見が強く寄せられております。
 他方、IR導入には経済効果がある、六十二件にとどまり、今回の意見表明ではカジノ解禁に反対が六七・一%に上るなど、これまでの世論調査とほぼ同様の結果があらわれたと言ってよいと考えます。
 また、本年三月の共同通信の世論調査でも、賛成二二・六%、反対六五・一%であり、日本で民間賭博を解禁するには国民の理解が不可欠でありますが、いまだ理解が得られていないままでの解禁は許されないものと考えるところでございます。
 二、カジノ解禁について、負の影響の検討が不十分な点でございます。
 推進会議や本法案でも、経済効果、地方への波及効果は述べられておりますけれども、負の影響についての金額的試算がなされておりません。したがって、経済効果から負の影響を差し引いて真に経済的効果が期待されるかは定かではないと言えます。
 例えば韓国では、ギャンブル産業による売上高が、〇九年に十六・五兆ウォン。他方、国家ゲーミング産業統合監視委員会のホームページの賭博問題の社会・経済的費用推計研究によると、経済と財政、雇用、犯罪、法律、及び、健康及び福祉についてそれぞれの金額を推計しております。賭博中毒者らの年間総社会・経済的費用として、七十八兆ウォンと指摘されております。
 負の影響が経済効果を大きく上回ることは、本当は、日本においてカジノを解禁する上での議論で極めて重要な点でございました。しかし、この点が十分検討されておりませんし、パブコメでの意見で明らかなように、国民の中で負の影響が経済効果を上回ることが反対の大きな理由となっていると考えられます。解禁を推進する側は、負の影響を試算することなどをすべきであり、国民の理解を得る努力を怠っていると言わざるを得ないと思います。
 三、カジノについて、世界最高水準の規制とは言えないことについて述べます。
 カジノ解禁実施法案は、ギャンブル依存症対策として、入場回数制限を、七日間で三回、二十八日間で十回までとし、入場料を六千円と定めております。
 日本が倣ったとするシンガポールでは、平成二十五年秋から、ガイドライン、ビジット・リミット・ガイドラインというそうですけれども、によって、依存国家評議会、NCPGから月六回以上の利用者に対し通知を出し、銀行口座などを自己申告させること、カウンセリングを受けることを通知するようになったと聞いております。協力的でない者に対しては、標準的な基準をもとに個別ケースで調整して、一カ月のカジノ入場回数を四回ないし八回に制限できることになっているとも聞いております。
 シンガポールではカジノの広告は一切禁止でございます。この部分でも、テレビ広告まで認めている日本の規制と違いは明らかだと思われます。
 賭博依存国家評議会の役割は大きく、単に回数制限、しかもシンガポールより緩い制限をする日本が世界最高のカジノ規制とは言えないことは明らかだと考えます。
 さらに、パブリックコメントに付した取りまとめの四十一ページで、カジノの面積について、絶対値でカジノ施設の面積規制を行うべきであるとして、当初の政府案では全体の三%案と一万五千平方メートルの案が出ましたけれども、新聞報道では三%案と落ちついたと伝えられております。
 本法案四十一条七号で政令に委ねられているとはいえ、シンガポールでも一万五千平方メートルの基準が維持されていること、この資料の第二分冊十九ページでも指摘されております、からも、シンガポールの水準にも及ばないことが明らかです。
 例えば、大阪のシンポジウムで、アメリカのサンズ社の役員から大変な異議が出たということでございました。参入業者の意向によって基準を緩めたと批判が浴びせられると言えましょう。
 世界最高水準のカジノ規制とは到底言えず、参入カジノ事業者側の収益アップのため、ゆがめられたのではないかと考えざるを得ません。
 四、カジノ解禁について、違法性阻却ができるとは考えられないことについて述べます。
 何度も議論されたかもしれませんけれども、日本では賭博は太古の昔から厳罰をもって禁止され、記録上確認できるのが持統天皇によるすごろく禁止令だということは国会の議論でなされているところでございます。
 現行刑法は、賭博及び富くじに関する規定、刑法第百八十五条以下を設け、他方、特別法、当せん金付証票法、競馬法、自転車競技法等により、賭博罪、富くじ罪に該当する行為を正当化する規定が置かれており、実際上は、これらの公認された賭博、富くじの枠外で行われ、違法行為を惹起し、暴力団等の資金源となり得るような賭博、富くじが処罰の対象になってきておりました。
 カジノについて違法性阻却を認めるかについて、法務省の説明によれば、八項目が示されております。これまで刑法を所管する法務省の立場から、例えば、目的の公益性(収益の使途が公益性のものに限ることを含む)、運営主体の性格(官又はそれに準ずる団体に限る)、収益の扱い(業務委託を受けた民間団体の不当な利潤を得ないようにするなど)、射幸性の程度、運営主体の廉潔性(前科者の排除等)、運営主体の公的管理監督、運営主体の健全性、副次的弊害(青少年への不当な影響等)の防止等に着目し、意見を述べてきたところであり、カジノの規制のあり方についても同様であるとされております。
 法務省のこれまで公営ギャンブルを容認してきた八要件のうち、目的の公益性、射幸性の程度、副次的被害の防止について検討が必要であろうと意見を述べさせていただきます。
 目的の公益性について、収益の使途が公益性のあるものに限られるとされることとの関係では、カジノという民間賭博は、多額を投資し、リターン、資金の回収、配当を求めるものであり、これまで民間賭博が八要件のもとで認められなかった大きな要因が、この目的の公益性をクリアできなかったことによるものと考えられるところでございます。
 ところが、今回は、IR地域の整備の推進によって、観光及び地域経済の振興に寄与し、財政の改善を図ること、カジノの収益の内部還元とカジノ収益にかけられる給付金を社会に還元することを公益と捉えているようでございます。
 しかし、現在、年間、海外からの旅行者が二千八百万人まで増加し、四兆円の消費があるとされていて、負の影響も十分検討することなく、それ自体で賭博解禁の公益目的を認めることには疑問なしとしません。
 今回、各地の計画においても利用が期待されているのは、多くは日本人でございます、そして、金融資産であると考えるところでございます。日本の個人金融資産は千八百兆、それがターゲットにされているのではないか。この点、各地の事業計画と政府の説明が異なっております。
 次に、本法案では、七十二時間、カジノ事業者が利用者に借金で賭博させることができることが、射幸性の程度、副次被害の防止に抵触と考えるところでございます。
 ギャンブル依存症対策として、例えば消費者金融の公営賭博の敷地内でATMの設置をしない方向が進んでおります。本法案でもカジノの敷地内でのATMの設置が禁止されております。
 借金してギャンブルにつぎ込む、これがギャンブル依存症の実態でございます。例えば大王製紙の井川元社長も、金曜日の夜、日本を立って、マカオ等に行って、日曜日に帰ってくる、二泊三日のコースで、初めは自分の現金、次にはカジノで借りてかける、そこで深みにはまったと述べております。
 ところが、今回の法案ではそこが推進されると言うべきであります。
 本法案の八十五条以下で、特定資金貸付業務として、カジノ事業者に貸付けの業務を認めております。同条二号で、借入れができるのは、カジノ管理委員会規則で定める金額以上、当該カジノ事業者の管理する口座に預け入れている者で、八十六条一項では、カジノ管理委員会規則で定めるところで、顧客の収入その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査し、その結果に基づいて貸付けの金額の限度額を顧客ごとに定めなければならないとし、信用情報機関の利用が義務づけられております。
 カジノ管理委員会規則にもよりますが、貸金業法の総量貸付けの適用外となりかねないことだけでなく、これまで、日本の公営ギャンブル、パチンコで事業者が現場で貸付けすることはないし、あってはならないと考えられてきたものでございます。ギャンブル依存症に直結するからにほかなりません。
 この部分が、これまでの公営ギャンブルの違法性阻却との関係で、射幸性の程度、副次的被害の防止について大きく逸脱していると考えるところでございます。
 法務省は八要件を総合的に判断するとの立場でございますけれども、違法性阻却ができるかは、これまでの法務省見解との整合性が求められるところであり、私としましては、違法性は阻却できないのではないかと考えているところでございます。
 最後になりました。国民の理解の得られないカジノ実施法案には反対させていただきます。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 新里宏二

speaker_id: 12250

日付: 2018-05-31

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会