常見陽平の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(常見陽平君) 常見でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、会社員を三十八歳までやっておりまして、それから大学の教員になりました。五年前から妊活を始めまして、五年という歳月と五百万というお金を投じて、昨年、やっと第一子を授かりました。今日もいわゆる保育園に送ってからこちらに来たんですけれども、保育園ですとか書店の子供コーナーの本棚を見ていると、昔の物語をつい思い出します。その中に「マッチ売りの少女」という物語がございました。幼い頃から、あの物語を初めて読んだときから僕は疑問を抱いていました。何かというと、何でライターを売らないんだろうと、そういうことでございます。もっと言うならば、みんながたばこを吸わなくなったら、税金が上がったら、マッチ売りの少女は大変になるんじゃないかと思いました。
 この「マッチ売りの少女」というのは、実は我が国の現状そのものじゃないでしょうかということです。いつの間にかもうからない産業だらけになっていないか、いつの間にか疲弊する働き方になっていないかということがあります。非常に、最近ではよく若者は元気がないと言うんですけど、そもそも世の中に、例えば若者にお金がないんです。若者のお酒離れ、車離れと言いますけれども、実際に起こっているのはお金の若者離れでございます。まあ、元気があれば何でもできると叫ぶ参議院議員の方がいて、国会中継のときに丸川珠代さんが映り込んで苦笑いをしている様子がいつも楽しみなんですが、元気だけでは何もならないんです。
 ということで、我が国の生産性向上、競争力強化のための労働者が疲弊しない稼ぎ方改革をということでスピーチをさせていただきます。
 二ページ目をちょっとゆっくり話させていただきます。シートがたくさんありますけど、私が言いたいことはここに凝縮されています。「「生産性向上」「競争力強化」のために」ということで、働き方改革だけでなくて稼ぎ方改革が大事だということです。
 元々は今回の国会は働き方改革国会となっていたんですけど、なかなか残念な進み具合になっております。ちょっと国民の意見を代弁させて言わせていただきたいんですけれども、国民は今日も真面目に働いております。汗水流して働いております。十八日間にわたって国会が空転したことについては与野党とも反省をしていただきたいです。
 その上で、いわゆる稼ぎ方改革ということで、いかにもうけるかという発想が大事なんです。実は、日本人がなぜ忙しいのか。その答えの一つは、産業の競争力がなくて収益率が落ちているからということです。だから非常に厳しい働き方をしないといけないのだということです。
 そして、今回の法案ですとかを見させていただきましたけれども、非常になりふり構わない本気を感じた次第なんですけれども、いつもこの政策を見るたびに私が気にすることがあります。何かというと、この国はいつまで戦術の話をするんだろうという、そういう問題でございます。どちらかというと、オペレーションの話中心になっているかと思います。この「オペレーションの効率化は、戦略ではない」、これは戦略論の大家マイケル・ポーターが約二十数年前に残した言葉であり、これはまさに日本企業に対する警鐘です。もちろん、IoT大事です。ビッグデータの活用大事です。AI大事です。だけど、その上でどんな産業を動かすのか、どの産業でもうかるのかということが考えていかないといけないことだと思います。
 そして、私が声を大にして言いたいのが労働者に生産性向上を強要するなということです。いわゆる生産性向上については後ほどお話ししますけれども、要するに生産性向上ということを真面目に考えた場合、実は労働者の努力によってなし得る部分って少ないんですよ。簡単に言うと、もうかる産業をつくること、さらにはいかに設備投資などで効率化していくこと、そして労働者の活躍を期待するんだったら人材育成にちゃんとお金と時間を掛けること、これが大切でございます。
 その上で、先ほどの松田先生からの御意見でもありましたけれども、アウトプットの提供価値を上げるためのトライ・アンド・エラーといいますか、僕はエラー・アンド・エラーぐらいでもいいと思います、なりふり構わずやらなければならない。
 そして、「ものづくりは人づくり」ということで、これは実はトヨタ自動車に伝わる言葉でございます。もっと言うと、今年百周年を迎える松下といいますかパナソニックという会社には、松下は人を育てるところでございますという松下幸之助の言葉が残っております。人づくりに力を入れないといけないんではないかということが問題意識です。
 めくっていただいて四ページ目、このページもちょっとゆっくりめに話させていただきます。
 生産性という言葉がいろいろ話題になるんですけど、私は、政官財そしてメディアも、労働生産性という言葉を、積極的に誤解して誤読して誤用して、ミスリードしていないかということです。労働生産性とは、付加価値を労働投入量で割ったものです。必ずしも効率を表現するものではないです。ましてや、労働者の勤勉さを表現するものでもないんです。産業構造や労働力人口などが関係しております。設備投資の充実度も影響します。付加価値の高い産業をつくることができるかどうかが鍵です。そして、人が張り付くという意味でサービス業中心の国、我が国はGDPベースでも就業者ベースでも七割がサービス業なんですけど、こういう国は元々不利なんです。
 一位や二位に入っている例えばルクセンブルク、六十万人の人口があって、六十万人の人口、これは船橋市や八王子市と同じぐらいです、そこに重工業があって金融センターがあって人々が国境を渡ってやってくる、で、その人たちをカウントしていない。これは生産性高くなるわけですよ。ノルウェーも昔は貧しい国でした。でも、石油が見付かって潤ったんです。もっと言うと、これはOECDでの比較であって、実際これOECD以外の国を含めると、産油国が上に来ます。やっぱり石油は強いんですよ。掘れば石油が出る国と掘っても温泉しか出ない国、これが違いでございます。なので、もうかる産業をつくらないといけないということです。
 そして、五ページ目、六ページ目は飛ばしますけれども、働き方改革ということが叫ばれる中、八割のビジネスパーソンは働き方改革を実感していない。そして、企業側の認知度は九六・三%もあるんですけれども、取り組んでいる企業は六割弱だと、就労者側の認知度が四一・三%だということです。
 そして、七ページ目ですね。残業が発生する根本的な原因ということで、よく、だらだら会議をしているだとか、付き合って残業をしているだとか、いろいろ言われますけれども、根本的なところは人に仕事を付けるという雇用システム。要するに、いわゆるメンバーシップ型でジェネラリスト型の雇用システム、労働市場の問題。そして、仕事の絶対量がそもそも多いんですよね、こなし切れないだけの量がある。そして、神対応などの過剰品質ということでございます。非常に過剰に対応していないかということです。まあ、一回作った文書を書き換えたりだとか日報が見付からないとか、そういうことがあったら生産性は落ちるんですけれども、そういうことで過剰品質というのが良くないんじゃないかということです。
 メディアの論調も変わってきています。働き方改革疲れしていないかということで、ビジネス雑誌などでも働き方改革を批判する特集が組まれるようになってきましたということです。
 九ページ目をゆっくりちょっと話させていただきますけれども、その中で、私のところには講演依頼が殺到しております。労働組合からが一番よく来ているんですけれども、民間の企業ですとかメディアが主催する講演会、さらには、実は経済団体からも来ております。東京経営者協会ですとか、先日は関西財界セミナーという関経連と関西経済同友会が共催するセミナーでも登壇したんですけれども、なぜ私に講演依頼が殺到するか。それは、みんな働き方改革に疑問を持っているからにほかなりません。
 そして、彼らとの意見交換及び私の取材の下、聞き取り調査の下で働き方改革が進んでいる企業の特徴として挙げるのはこれらの例です。
 一つは、社内でプロジェクト化して各部署に推進役を置いている。よくトップのリーダーシップが大事だと言うんですけれども、トップを従業員は選べないわけですよ。そのトップのリーダーシップに過度に依存する改革は危険です。各部署に推進役を置いてプロジェクト化すると。トップ営業マンが働き方改革をしようと言ったらみんな従うわけですよ。これはある企業の事例ですけどね。
 その二、人事だけでなく、総務、IT、法務、広報など、スタッフ分野の全体で連携しているということです。人事だけが叫んでいちゃ駄目だと。
 人材、これは採用も育成もですけれども、とITとオフィスに具体的に投資をしているということで、働き方改革にはお金が掛かるんですよ。
 そして、人材の確保において課題に直面している。実は、改革が進んでいる企業はIT企業なんですけど、これはなぜかというとエンジニアが採れないからなんですよ。良い労働条件を用意しないと人が採れないということでございます。
 そして、ブラック企業と呼ばれるなど社会から批判されたことがあって、今進んでいる企業は、実はブラック企業として社会的にメディアにたたかれた会社が実は進んでおります。
 そして、仕事のクオリティーの基準だとか、やらないことを決めている。
 さらに、役割分担を見直している。
 福祉的な意味ではなく、合理的なダイバーシティー推進。これはどういうことかというと、語弊がありますけど、女性を活躍しないとかわいそうだとか、高齢者や障害者の方に活躍していただかないとかわいそうだという論理だけではなく、彼らが活躍した方が会社はもっともうかるよね、労働力も確保できるよねという観点でやっている企業が強いなということでございます。
 そして、現状把握に力を入れていて、失敗事例をうまく共有している。
 そして、うまくいっている会社は、労働組合が建設的な提案を行って意味のある労使対話を行っている。今回も働き方改革春闘と言われましたけれども、一部の会社は、労組が、これがチャンスだということで積極的に提案した次第でございます。
 そして、社内外に進捗を発信する。若干これずるいんですけれども、メディアに出ることによって社内の抵抗勢力を潰すということも含めてやっているということでございます。
 今まさに働き方改革関連の法案がこれから、審議が進んでいるわけですけれども、これはやっぱり役割分担を促すことですとか、ちゃんと投資をすることということがないとうまく進みません。今回の法案の中には中堅・中小企業の設備投資推進ということがうたわれていて、これはすばらしいことだと思うんですけれども、人間が頑張るだけでは改革は進まないんだということを御認識いただければと思います。
 その次、次のもうけ方を考えようという話をさせていただきます。
 次のもうけ方を考える上で私が注目しているのは、いや、私だけじゃなく全世界的に注目されているのはデザイン的思考という考え方でございます。これは現状の閉塞感を打破するための思考アプローチ法でございまして、別にすばらしいデザインをつくるというわけじゃなく、物事のいわゆる目的だとか問題解決の在り方を根本的に考えてみようというものでございます。
 その成功事例とされているのが、これは新潟県の越後湯沢の北の方にある里山十帖という宿でございます。御覧のとおり数々の賞を受賞しております。百数十年続いた宿泊施設を改装して造ったものなんですけれども、めくっていただいて、あっという間にビジネス誌の宿ランキングで星のやですとか二期倶楽部だとかに続いて第三位に入っていると。そして、御覧のとおり驚異的な稼働率を示しているということでございます。彼らがこだわったのは何かというと、これは本当に寂れた温泉街にある一つの宿なんですけれども、本質的にユーザーの方が喜ぶものは何なのかということを捉え直して、新潟でしか取れない食材を提供するですとか、そこでしかできない体験をするということで価値を提供しています。
 こういった新しい価値を生み出している人たちに私がインタビューに行ったんですけれども、彼らはこう言います。まず、里山十帖の岩佐氏は、肌感覚、スピード、徹底的なコミット、これが必要だと。
 その二、これはリクルートでずっと新規事業コンテストを統括していた方で、今新規事業インキュベーターをされている方なんですが、不の解消、そのための国語、算数、理科、社会ということを言うんです。これだけちょっと説明させてください。
 今回の政策もそうなんですけれども、あるいは企業でのビジネスプランも数字から入りがちです。数字、今これだけ高齢者が増えている、だからこうしないといけないだとか、いや、ここにビジネスチャンスがあると。違うんです。国語から入らないといけない。国語とは何かというと、文脈を読むことと相手の主人公の気持ちを考えることです。例えば、だから、これだけ介護に困っている人がいるから介護ビジネスだというんじゃなくて、いやいや、介護に困っている人の気持ちって何だろうねと。そこに実は本質的なユーザーのニーズがある、これをつかむと。
 そして、アイデアの数を、これは無限プチプチという、全世界で三百五十万個ぐらいヒットした商品を手掛けた方のコメントなんですけど、アイデアを可能な限り多く出すということです。
 特に若者を中心に、先ほど松田先生の話からもありましたけれども、社会を変えたいと思っているんですよ。オープンイノベーションのために、実は私は、いろんなことの効率化もそうなんですけれども、意味のある無駄を積極的に生み出すことが大事だと思っています。
 その一事例として、一つは異業種交流型プロジェクトに期待しようということで、「One JAPAN」という取組がありまして、これはパナソニックの濱松さんという若手社員が声を掛けているんですが、様々な企業の社内勉強会、交流会をまとめたもので、よく若者経団連と呼ばれているんですけれども、ここが積極的にアイデアを提供しているということなんです。そういったようなところにどんどんアイデアを出させようということ。
 そして、プレミアムフライデー、まあプレミアムフライデーというものがうまくいっていないことは誰の目から見ても明々白々なんですけれども、これを、実は推進協議会の方ともお話をしました。様々な関係者とも話をしたんですけれども、これは別に悪いとは言わないんですけれども、今のは単なる飲み会キャンペーンになっていないかということです。早く帰って飲みに行こう、これも社会に活性化をもたらすんですけれども、飲み会のために早く帰るのかと、帰りづらいという声もあります。そうじゃなくて、みんな勉強したいんですよ。企業の枠を超えた、飲み会から勉強会、プレミアムフライデーからイノベーションフライデーに変えることはできないかと。
 さらには、シェアオフィスという、人々が交わる場をつくるということで、トキワ荘というのは、藤子不二雄先生の自伝的漫画「まんが道」というのに出てくる漫画家たちが切磋琢磨をした宿、宿といいますかアパートなんですけれども、官製のシェアオフィスですとか官製のいわゆるシェアハウス、そういったものをつくってオープンイノベーションを起こせないかということを考えます。
 最後に、「ものづくりは人づくり」ということで、「生産性向上のための人材育成を」ということで、時間なのでこのページだけ御説明しますが、石川県が非常に面白い取組をしています。生産性を上げろという声掛けだけでは変わりません。石川県は何をしたかというと、県の予算で、トヨタ自動車で四十年間活躍した物づくりのプロたちを先生役として企業に送り込むと、そこで改善の指南をしていただいて生産性を上げるという取組をしました。県内企業は、これ実験的に昨年やったんですけど、四社無料で受けることができ、在庫削減だとか大きな効果を生みました。それをお手伝いしたのがトヨタとリクルートの合弁会社のOJTソリューションズという会社なんですけれども、この後に事例がまとまっていますけれども、十四トン分の在庫を処分して非常に効率的になったですとか、そういった事例ができていて、要するに何が言いたいかというと、生産性向上のために声掛けだけじゃなくて具体的に人づくりのための投資が必要なんじゃないかということです。
 二十七ページに今までのまとめが入っていますが、最後にこれだけは言いたいのが、国民の安全が第一でございます。過労死、過労自死ゼロということと、職場で人が倒れない、傷つかない、一億総安心労働社会をつくるために、是非、生産性向上というものの下で国民が苦しむことがないことを、ここで皆さんにお伝えしたいと思います。
 お時間いただきまして、ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 常見陽平

speaker_id: 12959

日付: 2018-05-15

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会