川上資人の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(川上資人君) 川上と申します。本日はどうもありがとうございます。
このような法案の審議にお招きいただいて、本当にありがとうございます。この法案が通って、その向こうにある、私も含めて国民の生活がいかなる影響を受けるのかということをよく考えた上で、真に私たち国民のためになるような法律ができることを希望して、本日意見を述べさせていただければと思います。
私は、弁護士として二〇一六年の一月から開始したわけですけれども、当初、一月に、私の所属事務所が労働組合との付き合いが多いものですから、労働組合の旗開きという一月の新年を祝う会に招かれました。その際に、タクシー労働組合の方で、労働組合の人たちがライドシェア絶対反対とかウーバー絶対阻止という気勢を上げておりまして、私は、そのときまだ弁護士になったばかりで、何でこの人たちはライドシェアに反対するんだろうと。つまり、タクシー会社で勤務してタクシー運転手をしていれば、水揚げ、売上げの幾らかは、何割かはタクシー会社に持っていかれるわけです。それに対して、ライドシェアということで直接お客さんを取ることができれば自分で売上げを取れるということになりますから、反対する理由はないんじゃないかと思っていたんです。
ただ、私の所属している事務所が労働組合と付き合い長いということもありまして、頭ごなしに彼らの主張を否定するのは良くないと思いまして、自分でもうちょっと勉強してみようと思いまして、ライドシェアという片仮名でグーグルで検索してみたところ、シェアリングエコノミー、新しい経済、これは非常に社会を便利にするもの、いいものだという報道がNHK、朝日新聞、いろんなところで検索ヒットしました。それに対して、本当にそうかなと思いまして、例えばridesharingとかUberみたいにアルファベット、英語で検索してみたところ、そういった報道は皆無でした。労働が破壊されてタクシー運転手さんの生活が破壊される、それだけではなくて、ウーバードライバーも、例えば最初は年間九万ドルの収入を約束されたと思ったら、働いてみたら三万五千ドル、時給にしてみたら例えば十ドルとか、中には三ドルしか稼げないという報道が多数で、ほぼ全てそういった報道だったんです。
英語で検索するとそういった情報が出てくるのに、日本語で検索するとそういった報道が全く出てこない。それは、日本においてまだライドシェアが始まっていないという理由もあるかもしれませんが、とにかく、そういった情報のみによって、ライドシェアが行け行けどんどんでシェアリングエコノミー便利だと、国民の生活を便利にするから取り入れればいいということで進んでいくということは、これは私たち国民にとってもマイナスなんじゃないかと思いまして、二〇一六年のその頃から八月まで、大学の先生とかジャーナリストとか市民活動家等々と相談しながら、そういった労働に与える問題というのもあるんじゃないかという情報を発信できるような団体をつくりたいということで相談して立ち上げましたのが、皆さんに資料を配らせていただいていますこの「生産性向上特別措置法に対する意見書」、この意見書に名前を記載させていただいている、交通の安全と労働を考える市民会議というものになります。
この市民会議を二〇一六年の八月五日に発足させまして、それから十四回ほど、この二年弱の間に各地でシンポジウムを開催したり、アメリカのニューヨークからウーバードライバーとタクシードライバー、両者を呼んで生の声を日本、東京で伝えてもらうというのを、シンポジウムを企画したり行ってまいりました。
その中で、やはりこのライドシェア、シェアリングエコノミーの問題点というのは、簡単に申し上げると、配付していただいている資料の中に、一番最後に、「季刊・労働者の権利」という雑誌にライドシェア問題とは何かという論考を寄せたんですけれども、その五十八ページに政府のシェアリングエコノミーというものに対する定義が載っているんですが、「「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービス」であるというふうにされておりまして、遊休資産の貸出しを仲介するサービスであればいいんですけれども、今の括弧書きのところに入っているように、スキルのような無形のものも含むということになると、それは、簡単に言えば労働力なり人になるわけであります。
そういった人と労働力をこのプラットフォームにおいて企業又は個人が直接物のように取引することになるとどういうことになるかというと、本日配らせていただいた「「ライドシェア」の問題点について」という冊子の開けると一ページ目に、契約関係というものが書いてあるんですけれども、この図二というのは「ライドブッキングの契約関係」ということで、これは、シェアリングエコノミーにおける労働者と利用者、それからプラットフォーム事業者の契約関係においては全て当てはまる図ですので、これを見ていただければ一目瞭然ですけれども、この緑の枠の運転者というのは労働者に当たるわけですが、に対して、例えば雇用保険、労災保険、労働基準法、労働組合法、各種労働法制の保護が全く何も及ばないということになります。これがさらに、タクシーという事業においては利用者との関係においてもう直接契約を結ぶわけですから、例えば事故に遭ったときに、利用者からの損害賠償追求の責任を一手に引き受けるということになって、労働者が全ての責任を負い、プラットフォーム事業者は全く責任を負わないという契約関係が生まれるわけです。
そうすると、このシェアリングエコノミーにおける問題点というのは、シェアリングエコノミーというふうに十把一からげにするのは適切ではなくて、アメリカの例えばプライスクーパーアンドウォーターズでしたっけ、という会計事務所なりモルガン・スタンレー研究所なりも提唱しているんですけれども、シェアリングエコノミーというそのターミノロジーは誤解を招きやすいと。シェアというのが経済のその特徴を表しているんじゃなくて、プラットフォームがあることで、そこで取引が行われるのが経済の特徴であるということで、つまり、その名前は適切ではないので、プラットフォームエコノミーと呼ぶべきだというふうに提唱してます。その中で、人、労働のやり取りをするプラットフォームについてはレーバープラットフォーム、そして、物のやり取りをする、例えばエアビーアンドビーのような、民泊のようなプラットフォームについてはキャピタルプラットフォームと呼ぶべきだと、そのようにプラットフォームを分けて考えることで適切な規制なり法律を考えることができるというふうに言われております。
そのレーバープラットフォームの典型例として挙げられているのがライドシェア、ウーバーなりのライドシェアなわけですけれども、このライドシェアが進むとどうなるかというと、冒頭にも申し上げたように、当然、台数規制がまずなくなりますので、一気に車が市場に流入してしまいます。これが端的に非常に分かりやすい事例として生じたのが現在のニューヨークです。
ニューヨークでは、二〇一一年にウーバーが事業を開始しました。それまでは、ニューヨークのタクシー台数というのは一万三千台ほどでした、何十年もの間。これが今では十三万台になっています。十倍に台数が増えたことによって、タクシー運転手さん、それからウーバードライバーの営収もがた落ちになってしまい、十二時間働いても五千五百円稼ぐのがやっとという状況にタクシー運転手は今置かれておりまして、昨年の十二月から先月四月まで、毎月一人ずつタクシー運転手さんが自殺しております。特に、三月に自殺したダグラス・シフターさんという人は、ニューヨーク市役所の前で、あなたたちが台数規制を行わなかったこと、ウーバーの営業規制を行わなかったことで我々の生活は一気に破壊されましたと、私はこのまま生活していって働き続けても、自動車のローンだったり借金を返すだけで精いっぱいで、豊かなまともな生活ができませんと、まともな生活ができないのであれば、今、私の命を抗議のために使ってこの問題に光を与えたいということで亡くなられた方もいました。
そういった事態になることは、例えば日本においては、二〇〇二年にタクシー事業の規制緩和が行われました。その後一気に台数が増えまして、その台数増加の中で運転手さんの営収の低下が起き、労働条件の悪化が起きたと。二〇〇七年には、NHKの「クローズアップ現代」でタクシー労働者の労働条件の劣悪な状態というのが報道されました。そのような社会問題化した報道等を受けて、二〇〇九年にはタクシー適正化特措法というのができて、台数をまた削減しようという流れになってきたわけです。この際には、行き過ぎた規制緩和、市場の失敗ということを国側も認めて、二〇〇九年にタクシー適正化特措法ができたわけです。そうすると、今回、もしこのライドシェアというものをよく検討もしないで認めるようなことになると、このように旅客事業の規制という中でやってきた国の政策の流れと全く整合性がないという事態にもなるわけです。
そういったいろんな点を含めて、今回の「生産性向上特別措置法に対する意見書」というのをまとめさせていただいたんですけれども、少しお手元に取っていただいて見ていただければ幸いですけれども、そもそもこの生産性向上特別措置法というものについて、目的条項が一条にありますが、その目的については、新技術等実証を促進して革新的事業活動を支援することで生産性を向上させて我が国の健全な発展を企図するものと言えて、妥当なもの、いい法案だと目的規定においては考えられます。けれども、同法が、この認定を受けた事業について規制の適用を免除するという重要な作用を持つものであるにもかかわらず、対象事業範囲に何ら限定を設けていないという点は極めて問題だと考えております。また、新技術等実証それから革新的事業活動というのがこの認定の要件となっているようですけれども、その認定を、何らそういった事業に該当しないにもかかわらず、ただその規制を潜脱して事業をしたいという事業者がこのような名目的な認定を受けてはならないという、その二点が問題だと考えております。
その一点目からもう少し詳しく説明させていただくと、例えば諸外国においてはこの規制のサンドボックスの対象事業はフィンテック等の場合が多いと。そういった場合には、新技術に基づく金融の革新的事業活動を試みる事業者が、規制が金融新技術に追い付いていないために事業機会を逸することを回避する効果があると言え、そういった場合には意義があると考えられます。しかし、規制のサンドボックスという制度の下で対象事業に何ら限定を設けていない場合には、人命を保護するような規制さえも潜脱して事業を行うことが可能となるという点において問題と考えております。
例えば、道路運送法は、旅客自動車運送について、人命を保護するための各種の安全管理規定を設けております。それを守れるというふうな証明をした業者に限って国土交通大臣が免許を交付するわけですけれども、そういった制度を受けないということになれば、結局その安全管理を行わない事業者が旅客運送事業に参入できて、そうすると当然そこでコストは削減できるわけですから、安全管理規定を行うためにその分運賃にコストを反映せざるを得ない既存のタクシー事業者と、そうではない、コスト削減によって運賃を安く抑えられるライド事業者による非常に不公正な競争が同じ、同一市場で起こってしまう。その場合には過当競争になって、結局、平成二十八年一月に起きたような軽井沢スキーバス事故のような事態になるというのは目に見えていると言えるのではないかと考えます。なので、我々市民会議としては、旅客運送事業等人命を扱う事業はこの法律の適用除外としていただきたいと考えております。
最後に、この三という点について簡単に御説明させていただきたいのですけれども、新技術等実証それから革新的事業活動というこの要件、この名目の下に、何ら新技術でも革新的事業活動でもない事業者が、単にインターネット上でプラットフォームを介して取引を促進しているとか、スマートフォンのアプリを介して取引を促進しているとか、そういった理由で新技術、革新的事業とされてこの事業認定を受けて、その規制を潜脱して営業を行うようなことがあってはならないと考えておりますので、その認定は厳格にするような法運用なり法の立て付けにしていただきたい。
それから、最後に、同法はこの新技術等の定義として、「実証に参加する者(当該実証により権利利益を害されるおそれがある者があるときは、その者を含む。以下「参加者等」という。)」の範囲を特定して、その者の同意を得ることを必要とするとしております。したがって、この権利利益を害されるおそれがある者には同法の認定を受ける事業と同じ事業分野において規制を遵守して適法に事業を行っている同種の事業者も当然に含まれると考えられますので、この事業認定を受ける事業者は、そういった同種の事業者の同意を得るというこの要件を厳格に認定されるような法の立て付けにしていただきたいと考えております。
以上です。