立谷秀清の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(立谷秀清君) 私は福島県の相馬市長ですが、御案内のように、東日本大震災の被災地でございます。あわせて、四十キロ離れた福島第一原発からのセシウムの飛散という、そういう状況に見舞われまして、地域医療を維持するのに大変苦労した。私は、市長であり医師でありますので、その辺の指揮を執った立場なんですが、いろんな方々にお世話になりながら、また我々も汗をかきながら今日まで何とか生き延びてきた。そういう経験を踏まえて、いろいろと話をさせていただきたいと思うんですね。
 震災の後、これ全国からボランティアの先生方が集まってくれたんですが、特に学生さんの中で、この相馬地方の悲惨な状況に対して、例えば南相馬市立病院ですとか公立相馬病院ですとか、これは両方とも研修指定病院です。研修医としておいでになって、そこで何がしかの手伝いをしながら被災地医療のために、相馬地方のために頑張ろうという、そういう志のある先生が出てきたんですね。全部ではないんですが、そのうちの何割かは、何人かは地元に残ってくれたんです。地元に後期研修医として残ってくれまして、救急医療ですとかそういうことに従事してくれた先生方がたくさんいました。まあ、たくさんというか、数名ですが、いました。
 その方々の将来のことも我々は考えなきゃいけないなと。勉強の体制をどうするか。ですから、研究機関とタイアップしながら、あるいはその研究に精通していた人を我々のところに招聘して論文の指導をする等々、いろいろやってきながら、そういう若い志のある人たちを支えてきたんですね。
 そんなことをしながら、私はどちらかというと被災地の対応に夢中だったんですが、そんなときに、この日本専門医機構という組織が新しくできる、その組織が専門医の在り方についていろいろ協議している、どうもそういう方向になりそうだというような話が入ってきまして、最初、私が話を聞いたときは、これはもうとてもじゃないけど話にならぬと思った。例えば、女医さんがその専門医研修を受けているときに御結婚なさって妊娠して半年休んだら、今までの実績がふいになる。これは話にならぬなと思いました。そういうことを、若い研修医たちがこんなことでいいのかという声を上げたんですね。これは相当不備があるから、しばらく、一年遅らせて考えようということになったんですが、そもそもの考え方が国民不在、地域医療不在の考え方だったんですね。
 プロフェッショナルオートノミーという発想から出発しているんです。プロフェッショナルオートノミーって何なのかというと、まあ聞き慣れない言葉だったんですね、医者の私がそう思ったんですから。専門職自律、つまり、研究者ですとかあるいは大学の教授ですとか、あるいは医師会の団体もそうですが、そういう医療に関する専門家たちが、外野の話を聞かないで、あくまでも純粋に医学という見地で専門医の資格認定を決めていこうという考え方なんですね。
 このことに対して、我々、全国市長会として非常に問題にいたしました。というのは、医療は何のためにあるか、もっと言えば医学教育も全てそうです、学術教育もそうだし、学会もそうだし、国民医療のためにあるんですね。国民医療にとって学会というのは、まあ言っちゃ悪いが、方法論にすぎないわけです。医学教育も方法論なんですね。最終目的は国民医療なんです。それもほとんどは、国民医療の、まあ全部ではないんですが、相当の部分が地域医療なんですね。その地域医療の、それに対する悪影響、あるいはプラスの影響もそうだけれども、そういうことを無視した中で専門家たちが決めていく。
 決めていこうとした内容はとんでもないものでした。何がとんでもないかというと、全ての初期研修修了した若い医者が、全ての医者が専門医の資格を取らないといけない、全ての医者が。それも最低三年掛かる。ということになりますと、医学部六年行って、初期研修二年やって、それから三年やって、十一年たたないと社会に出られないんですよ。日本の医師国家試験って何なの、医師免許って資格は何なの。私は、後で言いますが、初期研修も相当問題だと思っているんですが、三年乗っけて、それが医療の質の向上のためである、まあそういう側面はあると思いますよ、医療の質の向上向上ばっかり言って、国民生活が、特に国民医療が置いていかれるんでは、私これ本末転倒だと思いました。
 それから、その研修機関も、研修する場所も大学病院という、まあ大学病院とか基幹病院、ほとんど大学病院なんですけどね、そこで専門医研修しないといけない。さらに、論文出しなさいとか倫理教育もう一回受けなさいとか学会で発表しなさいとか、そういうことが条件付けられたんです。やめろと言ったんですけど、今でもあるかもしれませんけどね。そうなると、南相馬市立病院に志を持って初期研修修了して終わった医者たちは専門医になれない。全て専門医というのであれば、彼らは将来働けない。それは南相馬市立病院だけじゃなくて、地域医療で頑張っている若い医者たちがみんなそのコースから外れてしまうんですね。こんな理不尽なことあるかと。私が全国市長会の皆さんと話をしながら、あの反論の、ここに資料あります、後でお読みになってください、出したのはそういうことです。
 これでは地域医療が崩壊してしまうというか、地方の小規模病院の医者たちが、全部が全部、専門医そろえてやれるところなんてないわけですよ、医師免許持ったら一般の診療できるんですから。それをもうちょっと精度を高くしようと、もうちょっとできるようにしようというのがこの初期研修だったはずなんですね。
 ところが、初期研修終わった人に三年間の専門医研修義務付けてどうなるかというと、その先生、多分、自分の専門のことしかやらないですよ。これは病院の名前は言いませんが、相馬地方のある公的病院なんですが、循環器の医者が三人いるんですね。そのうちの二人は患者三、四人しか診ていないんです。外来もやらない。俺は専門家だから、循環器の専門だから一般患者診ない、そういう傾向はどこにでもあります。ですから、私は、この専門医取る、皆さん専門医教育を受けるのは本当にいいことだと思うし、そうやってスキルアップしていかなきゃいけないと思うんだけれども、それが前のめりになる反面、地域医療が成り立たなくなるのではこれはもう何にもならない、本末転倒だと。
 いろんなことを専門医機構も考えるようになりまして、まず義務付けというのを外そうと。それから、基幹病院というのもできるだけ地方の病院にしようと。ところが、私が南相馬市立病院の後期研修医のことで申し上げたのはこういうことなんですね。専門医取るためにはこれこれこれだけのことしなさい、学会発表もしなさい、論文発表もしなさい、こういうことを、プログラム研修というんですが、そういうことをやらぬで、地方にいて症例を積み上げて経験積んだ医者はそれで専門医の受験資格を取れるようにしようと。これはカリキュラム方式といいます。カリキュラム研修という言い方をするんですが、症例の積み上げですね。
 ところが、専門医機構ではそれを管理するだけのノウハウもなければ金もなければ人もいない。私申し上げたのは、そういうことだったら厚生省が何でも支援してくれればいいと、クラウド上で管理できるように人もお金も支援しないと駄目だと、そうしないと地方で頑張っている医者たちが浮かばれないでないかというようなことをずっと申し上げてきたんですね。それ機構はやりますと言いながら、いまだにその方法論が明確に示されていないんで、地方の医者たちが不安になっていると思いますね。ここのところをしっかり詰めていかないといけない。
 というか、何よりも根底にある考え方として、地方で頑張った医者が専門医を取りづらくなるなんてことじゃなくて、むしろその逆に、これは評価されないといけない。地方で地域医療に従事した医者たちが評価されて報われるような医療でないと、みんな東京に集まって、私は専門家です、私は専門のことしか診られなくていいんですと。そう言えるのはごく少数の大病院だけ。和歌山県の病院で何軒ありましょうかね、そういう状況です。福島県には大体、福島医大病院とあと二つ三つしかないですね。
 そんなことをしているうちに見切り発車みたいにしてこの専門医機構は始まったんですが、いろいろ修正していかなくちゃいけないところが今後出てきます。それは厚労省に頑張ってもらうしかないと思うんですね、国民医療ですから。我々も委員としていろいろお話をさせていただきたいと思いますけれども、これ、しっかりと目配りをしながら、国民医療のマイナスにならないようにやっていかなきゃいけない。とにかく国民医療を守るためにはみんなで頑張っていこうやというのが全国市長会の共通認識です。
 というのは、何回も言いますけど、必要なのは国民医療なんですね。国民医療の大部分は地域医療なんですよ。その地域医療の責任持っているのは、学会の教授たちではないんです。我々市長たちなんです。我々市長たちからすると深刻な問題なんですね。市民から訴えられるのも我々、頼られるのも我々。医者がいないじゃないか、産婦人科の医者がいないじゃないか、お産できないじゃないか、全部我々が受ける。ですから、市長会としては極めて深刻な問題というふうに思っていますので、今まで余り私この厚生労働委員会に呼んでいただかなかったんですが、今日初めて呼ばれたのでこの際思いざらい申し上げますけど、一番の責任者は我々市長なんです、市町村長なんです。我々が責任持ってやっているということなんですね。そういうことで、地域医療のマイナスにならないような後期研修をしてもらわないと困る。
 それから、ちょっと書きましたけれど、総合臨床専門医という制度があるんですよ。そうすると、その総合臨床専門医を取らない普通の医者たちは一般診療できなくなるんじゃないかという心配があるんですね。ここのところが、医師国家試験というのをもう一回見直して考えないといけないと思っています。医師国家試験合格した段階でちゃんと総合診療できるはずなんですね。それに初期研修なんかやったらもっとできるはずなんですが、現実はそうでないんですね。
 これは、ちょっと話飛びますけど、研修制度に問題があるというか、そうですね、今回の専門医制度もそうなんですが、さっき私、プロフェッショナルオートノミーというのが、これはふざけた話だと申し上げましたけど、ふざけたと言っちゃ失礼だけれども、国民不在の議論になったらふざけた話。国民の立場をしっかり踏まえてやるんだったらいいんだけど、まあプロフェッショナルだけでするような話ではないです、国民医療ですから。
 そこで出てくる話なんですが、この初期研修制度が始まって十三年、十三年ですね。最初は、医学部卒業しただけではやっぱり弱いんじゃないか、もうちょっと現場踏ませてやった方がいいんじゃないかということで始まったんですけれども、私が管理している公立相馬総合病院で初期研修指定を取ったんですけれども、指導医が大変ですね。それから、書類いっぱい作らなくちゃいけないから事務方が大変。何よりも、黙って見ているだけの研修医はもっとかわいそう。つまり、余り役に立っていないということなんですね。その挙げ句の果てに、何で公立相馬総合病院で研修指定を取ったかというと、やっぱり残ってほしいから取ったんですよ。だけど、残ったやつは誰もいない。みんな東京へ帰っちゃう。東京から来て東京へ帰っちゃう。これが一つの大きな問題だろうと思っています。
 それから、そういった意味では初期研修の在り方についてもう一回考え直していかないといけない。ですから、初期研修が保険診療ができないというところに大きな問題が出てきているということなんですね。
 ああ、ごめんなさい、余り時間がなくなって。話まとめに入りますけど。
 それからもう一つ、東京一極集中の問題が起きましたね。これは真剣に考えないといけない問題。八千六百二十二人の初期研修対象者のうち一千八百二十五人が東京に集まっています、二一%です。東京の人口比でいくと倍ですね。それから、他県で研修した人たちが東京に集まるという傾向も起きている。つまり、福島県とか宮城県で研修した人が専攻医として専門医研修のために東京に集まる。集まって増えた人が五%になるんですね。ですから、これ一つの問題。ただ、東京の医学部の先生たちは何をおっしゃるかというと、東京に集まれば東京から地方に医者派遣できるんだと。ここに大きな間違いがあります。医師派遣するときの旅費も医療費ですから。その先生のところに、学生というか研修医いっぱい持っているところに病院長たちが日参して頼みに行くわけですよ。その旅費も医療費に掛かってくるんですね。ですから、東京に集まれば分配できるという考え方は私は詭弁だと思っています。
 市長会の中でもう一つ出てきた、今村さんに大変失礼な話になるんですけど、現実に出てきた話ですから申し上げますけど、市長会の中で、地域別診療単価あるいは診療科別診療単価、そういう話が地方の市長たちから出てきています。要するに、岩手県の産婦人科の少ないところで産婦人科の医者を開業するとか始める人の診療単価高くしたらいいんではないかと、そういう話ですね、産婦人科、まあ少ない科では。ただ、財務省は反対するでしょうね、その財源どうするのと。私、ジェネリックを普及させればいいだろうと思うんです。医者が多いところはじゃ下げるのかと。下げる必要はないですよね、少ないところを上げればいいんであって。患者負担はどうするのかと。患者負担は三割を二割八分にするとか、そういう調整が知恵があったらできるんでないかと私思っています。
 それから、地域医療協議会の話ちょっと出ましたが、これ、明確に申し上げますと、私は福島県のことしか知りませんが、地域医療協議会が医者を派遣する、分配するような能力を持てるとはとても思えないんです。現実的には無理です。ですから、地域医療協議会は全国組織として考えていく必要がある。
 ただ、地域医療協議会で地元枠とか地元枠の入学とか、そういうことで地域医療協議会がいろいろイニシアチブを取っていくという方法はあろうかと思います。時間ないので言いませんけれども、地元・地域枠というのは非常に必要。それも、ローカルな、例えば相馬市みたいなところから入学しようとする人にはいっぱいげた履かせないといけないというふうに思いますね。
 私からは以上です。長くなって失礼しました。

発言情報

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発言者: 立谷秀清

speaker_id: 32260

日付: 2018-05-15

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会