逢見直人の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(逢見直人君) 御指名いただきました連合の逢見です。
本日は、このような場で私ども連合の意見を表明する機会をいただき、ありがとうございます。
連合の今回の法案に対する考えは、先月行われた衆議院厚生労働委員会の参考人質疑で会長の神津が述べさせていただいております。若干重複する点もありますが、そのポイントを申し述べます。
第一に、政府提出法案に盛り込まれている罰則付きの時間外労働の上限規制は、早期にそして確実に実現すべきということです。
過重労働による心身への影響や、仕事と生活の両立の困難さなど、長時間労働の弊害が顕在化している中で、長時間労働に依存する働き方を社会全体で見直していくことが求められています。罰則付きの時間外労働の上限規制の導入という労働基準法七十年の歴史の中で特筆すべき大改革を今こそ実施すべきです。
また、三六協定を締結して認められる時間外労働の上限は月四十五時間、年三百六十時間であること、その上で、特別条項を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、原則的上限に近づける努力が労使双方に求められていること、そうした法改正の精神を世の中に対して周知していくことが必要です。
第二に、同一労働同一賃金の法整備も欠かせません。非正規雇用比率が四割近くに達する中、非正規雇用労働者の処遇は総じて正規雇用労働者に比べて低く、低賃金層を増やす結果となっています。この現状を直視すればこそ、同一労働同一賃金の法整備を実現することは政治の責任であると思います。
そして第三に、法の実効性確保のためには、使用者、労働者共にルールを知り、守ることが不可欠です。そのためにも、ワークルール教育を社会全体で広げていくための法整備を進めていただくことを強く要請いたします。
その上で、本日は、法案審議で更に議論を深めていただきたい点、法の実効性確保のために必要な点、さらには、現在の職場の状況に鑑みて必要な施策についてお話し申し上げたいと思います。
まず、中小企業でどのように働き方改革を進めていくかということです。連合に集う仲間の中には、中小企業で働く労働者も多くおります。また、中小企業の使用者団体との意見交換の場も設けていますが、その中でよく耳にするのは、何から手を着けてよいか分からないといった悩みです。法整備が行われたとしても法の理解が進まなければ、それは絵に描いた餅になりかねません。法の正しい理解と定着に向けた施策が必要です。
この点、立憲民主党が衆議院に提出した働き方改革の対案には、同一労働同一賃金の専門調査機関を設置して中小企業で働く者も相談できる体制の整備をすることなども盛り込まれております。単に法律を整備するだけではなくて、職場の取組を後押しする施策を充実させることが必要です。
そして、取引慣行の是正も重要です。下請いじめの撲滅などの取引慣行を是正しなければ、中小企業で働き方改革が進まないばかりか、むしろそこにしわ寄せが行くことになります。その防止に向けた総合的な施策を政府一丸となって取り組んでいただくことを強く求めます。
続いて、高度プロフェッショナル制度について申し述べたいと思います。
一日は誰にとっても二十四時間、どのような仕事、どのような職種であっても、いかに高度な専門的業務、いかに高年収であろうとも、過重労働により心身の健康がむしばまれることはあってはなりません。改めて、高度プロフェッショナル制度の創設は実施すべきではない、この点を強く申し述べておきます。
参議院の審議では、制度の問題点について具体的な議論がなされていると承知しております。例えば、制度の対象労働者の健康管理時間を把握する措置について、客観的方法で把握しなければ働き過ぎを防止する措置として機能しないことや、対象労働者にどれだけの裁量権が確保され得るのかなど、大変重要な指摘です。また、高度プロフェッショナル制度も、当然、労働基準監督行政の対象であるわけです。これらの問題点について更に審議を深めていただくことをお願いいたします。
次に、自動車運転業務の問題です。
自動車運転業務は、これまでの例外扱いをなくす一方で、改正法の施行期日の五年後も年間九百六十時間以内という水準の規制が適用されることとなっています。過労死の最も多い自動車運転業務こそ長時間労働の是正に向けて真っ先に取り組まなければなりません。衆議院で改善基準告示の見直しという道筋も示されたところですが、やはり五年の適用猶予後には一般則を適用すべきだと思います。
また、自動車運転業務の中身は多様です。貨物自動車運転業務といっても、宿泊を伴う長距離運転もあれば近距離の日勤の業務もあり、また運ぶものも危険物の輸送である場合もあります。それら勤務実態や業務特性を踏まえた規制とすることが必要です。
さらに、教職員、建設事業、医師など、長時間労働の業種、職種についても実効性のある長時間労働是正策を講じ、着実に前進させることが重要です。そして、公務の現場の長時間労働是正も大きな課題である点も強調しておきたいと思います。
続いて、同一労働同一賃金の法整備です。
この点についても、事業主の待遇説明義務の履行の在り方など、法の実効性をいかに確保するかという点ではまだ課題があります。また、一昨年十二月に公表されたガイドライン案には、改正法案についての国会審議を踏まえて最終的に確定するとされているものの、まだ具体的に中身のある審議がなされているようには思えません。
連合が二〇一八春季生活闘争の結果をまとめた中では、働き方改革を先取りして労使が取り組んだケースも報告されています。個別労使でも、均等、均衡、処遇格差の是正の認識が高まりつつあります。また、労働契約法二十条あるいはパート法九条に関する裁判例も増加しており、労働者が司法的解決を求める際の根拠規定の整備は政治の責任であると思います。
加えて、法案では、派遣労働者については、派遣先労働者との均等・均衡処遇と一定の要件を満たす労使協定のいずれかを選択することとしておりますが、派遣先からの待遇に関する情報提供義務が適正になされるのか、情報提供項目などの議論が必要です。一方、労使協定は一定の水準を満たすとなっておりますが、一定の水準を測る物差しが必要です。不適切なデータが使われることがないよう、これも議論の深掘りをしていただきたいと思います。
最後に、もう一点、職場でのいじめ、いわゆるハラスメントの問題です。
連合の労働相談には、上司にすぐどなられる、仕事でミスをしたら殴られた、このような相談が数多く寄せられています。さらに、連合の構成組織で流通業やサービス業で働く仲間を組織しているUAゼンセンが行った調査でも、本日資料をお配りしておりますが、お客様から土下座を要求されたなどの悪質クレームの実態が明らかになり、その経験者は七割にも及んでいます。労働災害においても精神疾患は増加しており、職場におけるハラスメントもその要因の一つです。
誰もが生き生きとその能力を最大限発揮して働き続けられるようにすることが働き方改革の目的であるならば、ハラスメントのない職場をつくるための施策も同時に行うことが必要です。しかし、ハラスメントを防止する法律がない、これが実態です。
そうした中、民進党、希望の党の合同チームがまとめられたパワハラ規制法案が四月に国会に提出されております。安心して働くことができる職場環境の整備に向けては、ハラスメント防止の法律は必要不可欠です。
折しも、五月末から六月にジュネーブで開催され私も参加してきました第百七回ILO総会においても、条約と勧告による補完を内容とする「仕事の世界における暴力とハラスメント」基準設定委員会の報告が採択されました。条約制定は一年後となりますが、国内法の整備に向けた議論を早くスタートさせて、是非ともハラスメントの防止に関する法規制の一刻も早い実現に向け、建設的な議論を行っていただくことを求めます。
以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。