小室淑恵の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(小室淑恵君) 株式会社ワーク・ライフバランスの小室でございます。本日は貴重な機会を賜りまして、ありがとうございます。
 十二年前に企業の働き方改革を支援するコンサルティングの会社を起業しました。これだけの少子化社会だというのに女性が育児と仕事を両立できないような長時間労働の社会、それから多くの真面目な方が健康を壊してしまう長時間労働社会、これに対して強く憤って起業しました。
 また、介護に直面しまして、ヘルパーの資格も持っていますが、団塊世代が昨年から一斉に七十代に突入しています。今、親の介護を理由に離職される方が年間十万人を超えていますが、ある大手の建設業では、もう既に二〇一四年から、育児で休んでいる女性の数よりも介護で休んでいる男性の数の方が逆転して超えているという状態になってきています。
 つまり、今までですと、休むだとか短時間勤務になるというのは女性の話で、一部の人に配慮をしてあげるというような話になっていましたが、今や男女共に自分のキャリアを一度も時間制約を持たずに走り切るという人の方が奇跡というような状況になってきています。
 そうした中で、今回、労基法七十年の歴史において初めて労働時間の上限が設定されると、罰則付きで設定される今回の法改正には賛成の立場で参りました。もちろん、まだまだ一歩目というところで早急に次なる一手を打っていく必要があると思っていますが、労働時間に明確な上限が設定されることは、これまで過労死ラインを超えて働かされてきた人たちの健康と幸せを確保するだけでなく、時間制約があっても誰もが働きやすい環境を整備する第一歩になると考えるからです。
 今日は、この法案が今後更に働き方改革を加速させていくことへの期待と、既に参考になっている好事例がたくさん出てきていますので、それを知っていただきたくお話しさせていただければと思っております。
 起業して十二年間で約一千社の企業をコンサルティングしてきました。経営者の認識が昨年辺りから急速に変化してきています。いよいよ本当に上限設定がなされそうだなというような政府の本気度を感じているというのを私たちも感じています。
 今日、お手元に私の資料を配付させていただきました。一枚目の下にありますけれども、三年間コンサルティングさせていただいたリクルートスタッフィングという企業では、評価形態にも深く踏み込んで変革を行いました。
 上から二行目に、業績MVPのブルージャケット表彰というふうに表記しましたけれども、この表彰制度を新しい評価制度では、チームの中で一人でもある労働時間を超えたらチーム全員が表彰対象外になるというような制度変更をしました。すると、限られた時間内での勝負になりますので、育児女性が何と一位を取ったりというようなことも出たり、また、チーム内で誰か一人でも長時間労働にならないようにということで、ノウハウを共有するようになりまして、若手も積極的に育成するようになりました。それまで個人商店型だったこの同社が、チームみんなで仕事を助け合うというような風土に変化しました。
 結果として、スライドの一番下に書きましたが、深夜労働を八六%削減し、女性社員の出産が一・八倍になりました。業績も極めて好調になっています。
 一枚おめくりいただきまして、百四十人のセントワークスという企業の事例が下のスライドに入っております。
 介護支援システムの会社なんですけれども、こちらでは徹底的に意識改革を行うために、右上に写真が入っていますが、これは定時以降になったら、定時以降に残っていることを恥ずかしいと感じるように、恥ずかしいマントというんですけれども、これを定時以降に皆さんでかぶって、その結果、意識が大幅に改善されて、左下に書きましたけれども、全社の残業時間四九%削減、経常利益一五五%、従業員の出産数が二・七倍、女性の管理職比率が八倍になったという事例です。
 また、次のスライドに三重県の事例を入れました。こちらは、たった五十八人のエムワンという調剤薬局の会社さんです。
 スキルアップなどを通じて働き方改革を徹底的に行ったところ、医薬部外品の売上げが前年比で二三〇%へ、そして有休の取得数が三五二%、そして従業員の出産数が二・五倍、結婚数は二倍になりました。こうした変革を翌年の採用で学生にPRしたところ、それまで採用のエントリー数は年間三十三名だったのが、百六十八名にまで増えました。そして、十一名に内定を出したんですけれども、内定を辞退した人はゼロ人。そして、三名は大阪の企業を蹴ってこの五十八人の三重県の企業に就職をしたという、これ、今後、中小企業においては人材獲得が極めて重要ですので、こうした好事例が参考になるかなと思いました。
 また、下のスライドは愛知県警です。四年間コンサルティングさせていただいています。右上に示しましたように、少年課や暴力団対応の刑事部門でも取組を行いました。
 それまで、夜勤明けでもそのまま周りも気付くことなく一日勤務させてしまうというようなことがよく起きていたので、右側に写真を入れましたが、夜勤明けであることが分かる札を付けさせて、きちっと周りも声かけをして帰らせる、ジョブローテーションを行う、仕事の見える化、共有化を行う、こうしたことを徹底して行ったところ、下のオレンジの枠の中のところですが、事案の処理件数が四割増しながら、夏季休暇が七・〇日から九・九日へ増加。こうした特殊な組織においても働き方改革に取り組むことができ、検挙率なども抜群の成績を収めたという成果が出ました。最も残業が減った部署では、最大で六〇%減ったという成果になりました。
 さらに、次のスライドですが、私が個人的に一番驚いた事例です。
 三菱地所プロパティマネジメントという会社なんですけれども、こちらでは左側の真ん中にグラフを入れましたが、残業時間が三〇%削減することができ、営業利益が一八%増加した。これももちろんすばらしいのですが、下の枠の中に書きましたように、そこで浮いた利益というのを、一億八千六百万円、これ全額なんですけれども、社員に還元をいたしました。このときの社長である千葉社長がおっしゃっていたのは、残業代を払いたくないから働き方改革をしているんではないんだと、社員が生活を取り戻して新しい発想で仕事をしてもらいたいんだということを社員に説得をしました。
 そして、四月に就任した新しい川端社長が先日、社員と家族を招いてイベントで発表したのが真ん中の右側のグラフになります。これは何と、今の時点を指標として二〇二二年まで残業時間を減らし続けていくが、浮いた残業代は全額ずっと還元し続けるよということを社員の前で宣言したというものになります。こうした事例というのは大変すばらしいなと思いました。
 また、右下にコトフィスというのが、写真が入っていますけれども、この働き方改革をしたことで社員の発想が変わってきました。この企業さんはビルのテナントに入っていただく営業の会社さんなんですけれども、今後、働き方改革を進める企業が増えると子連れで出勤する方が増えるのではないか、であれば、ビルの真ん中に子連れで勤務ができるスペースをつくるといいんではないかということでつくりました。そうしたところ、テナント料が多少高くても入ってくれるような企業が増え、高付加価値型の仕事をすることができた。こうした商品、サービスのイノベーションにまでつながったという本質的な事例です。
 また、残業代をきちんと個人に還元していくことにより消費力を高めていくことが今後日本社会のデフレ脱却にとっても重要な観点ではないかと感じました。
 次のスライドから、少し考え方の部分も追加しておきたいと思います。
 スライド七番目ですけれども、日本は六〇年代半ばから九〇年代半ばまで人口ボーナス期でした。右側に書きましたが、人口ボーナス期というのは人口構造がボーナスをくれるようなおいしい時期という意味合いなんですが、若者がたっぷりいて高齢者がちょっとしかいないという時期です。この時期には、男性ばかりで長時間労働をして均一な同質性の高い組織をつくると、早く安く大量に商品、サービスをつくって世界を凌駕することができます。そうした時代でした。このときに日本は強い成功体験を積んだ国です。
 しかし、現在の日本はもう明らかに人口オーナス期です。右下に書きましたが、オーナス期は人口構造が経済に重荷になる時期です。高齢者が多く、生産年齢人口は少ししかいない。こうした段階では、男女両方が活躍することができ、なるべく短時間で仕事をし、多様性に満ちた組織をつくることが勝つための条件というふうになってきます。
 この人口オーナス期は、人件費が高騰するため、高付加価値型の商品やサービスにイノベーションを起こして転換せざるを得ません。イノベーションを起こそうとすると、その条件は、職場の中に多様な人材がいて、上下関係ではなく、フラットに意見を交わして、全然自分とは違う考えの人とも対等に議論することになります。これができて初めて化学反応が起きて、斬新な商品やサービスが生まれます。
 これまでは、長時間労働という働き方があることによって育児や介護や体調不良の方たちを働き方によって門前払いしてきました。二十四時間型の人だけで意思決定をしてきました。これからは、働き方の門前払いをなくし、職場に多種多様な人が排除されずに活躍できる働き方改革、これが必要だと考えています。長時間労働の是正はとにかく急がれると考えています。上限規制は一日も早く施行していただきたいと思っています。
 そして、日本の社会保障を考えると、この深刻な少子化問題がありますが、団塊ジュニア世代、私が今まさにそうなんですけれども、団塊ジュニア世代は四十代の後半に入ってきています。日本の女性の出産点をプロットしていくと、四十四歳で〇・〇何%という状態になります。つまり、人口のボリュームゾーンが出産年齢を完全に終えてしまう前に二人目、三人目を考えられるように、夫婦が共に助け合って育児も仕事もできるような、男性が家庭に参画できるような、両立できる社会に進んでいただきたいというふうに考えています。
 そして、今回、インターバル規制が努力義務として明記されました。このことに対しては高く評価をしています。インターバル規制は、メンタル疾患、過労死の防止に有効です。スライドの八番に入れさせていただきましたが、それの真ん中に書きましたが、慢性疲労研究センターの佐々木センター長によると、人の睡眠は前半が体の疲れ、後半が精神の疲れを取るという役割になっているので、七時間睡眠の後半が取れないと、前日受けたストレスの上に翌日のストレスが積み上がっていってしまいます。これがメンタル疾患や過労死の大きな要因になってくるので、一日ごとにリセットしていくことが大事です。そうすると、この十一時間を空けるということが非常に重要になってくるわけです。このインターバルを導入してきている企業が出てきていますので、これをもっと支援して実績をつくっていただき、早急に義務化に進んでいただきたいと思っております。
 最後に、今回の労基法の改正では対象にならない教員や国家公務員の働き方改革にも是非上限設定できる段階に進んでいただきたいと思っています。今、岡山県や静岡県、埼玉県の教育委員会に御依頼いただいて学校の働き方改革もやらせていただいていますが、残業時間が半減するような成果もたくさん出てきています。
 また、多種多様な業界をコンサルティングして気付いたことは、残業の多い企業に共通しているのは、行政と何らかのやり取りがある企業、これが非常に多いんですね。つまり、民間の残業の震源地は霞が関である。そして、その霞が関の残業の震源地が永田町だというふうに感じるんですね。やはり大臣答弁のために、一国会につき約二十億円の残業代が掛かっているんです。
 議員という仕事は特別なんだというふうによく言われます。ですが、是非考えてみてください。なぜここまでの少子化社会になったのかということです。政治の中心に育児をしている女性の議員さんたちがいればそういったことにはならなかったのかなと考えると、やはり議員の働き方が二十四時間を前提としていること、それによってやはり働き方の門前払いが行われてきたこと、こうしたことが大きな要因かなというふうに考えています。男性の議員の方も含め、ここから働き方改革にまず努めていただきたいというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 119614260X02020180612_007

発言者: 小室淑恵

speaker_id: 28859

日付: 2018-06-12

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会