寺西笑子の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(寺西笑子君) 全国過労死を考える家族の会代表世話人をしています寺西笑子でございます。本日は、貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。
 全国家族の会は、一九九一年結成以来、過労死の根絶を願って、遺族の救済と過労死防止活動に取り組んできました。本日は、これまでの遺族の実情を踏まえた経験に基づき、働き方改革関連法案の反対の立場で問題点を指摘し、一部削除を求めて意見を述べたいと思います。
 私たちは、愛する家族をある日突然に過労死で亡くしました。私の夫は、二十二年前に、年間四千時間の長時間過重労働とパワーハラスメントが原因で過労自殺しました。本日の随行席には、エンジニアだった御主人を四十歳で裁量労働制の勤務で過労死された渡辺さん、報道記者だった三十一歳の娘さんを裁量労働制的勤務で過労死された佐戸さん、同じく四十三歳だった御主人が過労自死された小林さん、また、高度プロフェッショナル制度を先取りした働き方でもある学校の教員だった御主人が過労死された中野さん、最後に、飲食店店長だった二十四歳の息子さんが長時間過重労働とひどいパワハラを受けて過労自死された古川さんです。
 それぞれ仕事の内容は違っても、共通しているのは、真面目で責任感の強い人が長時間過重労働の末に理不尽な過労死に追い込まれ、尊い命が奪われたことです。私たちは、大切な家族を突然に亡くしたことで、地獄に突き落とされた衝撃を受けながらも、なぜ死ななければならなかったのか、その温床になっている長時間労働はなぜ起こっているのかを考え、せめて懸命に働いたあかしになる過労死を認めてほしい思いで労災申請をしました。
 そこで大きく立ちはだかるのが、申請者側に立証責任があることです。会社側の協力がない中、正しい情報を得られず、遺族が労働時間と仕事の内容、職場の出来事を証明しなくてはならないために、血のにじむような苦労をしながら、労力、財力、精神力を尽くして闘います。しかしながら、労災認定基準に阻まれ、認定されるのはその一部にすぎず、国が公表する認定者は氷山の一角にすぎません。たとえ労災認定されても、死んだ人は二度と生き返ってくることはないことで、人生は狂わされ、普通だった一家団らんはなくなり、いとしい家族との触れ合いも言葉を交わすこともなく、ただ遺影をじっと見詰めながら、喪失感にさいなまれ、生きているときに救えなかった自責の念に苦しみます。私たちは、このような悲劇を二度と繰り返してはならないために、国や企業へ改善を求め、過労死の教訓を予防に生かせるように考え、行動してきました。
 では、どうすれば過労死等をなくせるのか。一番の原因は、長時間労働とハラスメントをなくすことであります。そこで、現在問題になっている政府の働き方改革関連法案について、私たちはこれまでも、残業時間が過労死ラインの上限規制と裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度の創設、この三つの問題点を再三指摘し、批判してきました。
 裁量労働制の拡大についてはデータ問題で削除されましたが、労働者の根幹を揺るがすスーパー裁量労働制と言われている高度プロフェッショナル制度も働き方関連法案から削除すべきと考えます。
 なぜなら、高プロ制度は、労働時間規制をほぼ全面的になくすもので、長時間労働に陥り、過労死の発生を促進する危険性が非常に高いと考えます。今は年収要件や職種を限定していますが、一旦通ってしまえば、省令で変えることがいとも簡単、アリの一穴も堤も崩れることが目に見えているからです。つまり、これまで違法と言われているような定額働かせ放題の長時間労働を完全に合法化し、その挙げ句に、過労死をしても自己責任にされる仕組みになっているからです。過労死なのに自己責任とされ、労災認定されなくなり、過労死を出した企業は、勝手に働いて勝手に死んだ、会社は責任ないという、このようなひどいことがまかり通る社会になっていくことが目に見えています。
 高プロ制度は、労働時間も使用者に把握義務がなくなるので、過労死しても過労死の労災認定はほとんど無理になり、賠償も無理になります。そうすると、遺族は、過労死と認定されないので補償も受けられず泣き寝入りし、路頭に迷う遺族が増えることになります。
 このように、高プロ制度になれば過労死が必ず増えることなのに、過労死しても過労死と認められなくなるのは、遺族にとっては地獄です。こんな恐ろしい高プロ残業代ゼロ制度は絶対に削除してほしいです。実際に過労死は増えても労災申請も認定もされないことは、泣き寝入りする人が増え、数字の上では過労死は減ったという最悪の現象になりかねません。私たちは、過労死の被害者として、命に関わる危険な働き方の創設を認めることはできません。
 そもそも、働き方改革の関連法案は、安倍総理大臣が委員長になり、政府主導で推し進めてきたものです。法案採決する前に是非私たちの遺族の声を聞いていただきたく思い、この度、五月十六日に安倍総理大臣へ面談依頼をしましたが、いまだ安倍総理との面談はいただいていません。
 世論調査で国民の約七割が反対している法案を強行する暴挙はやめてください。先進国日本と言われているその政府の先頭に立っている方が、まさか命に関わる法案を、丁寧な審議をせず、過労死遺族の声も聞かず、教訓を学ぼうとしない、世論の大半が反対している法案を強行するという暴挙はやめていただきたいのです。
 私は、四年前の六月、この参議院厚生労働委員会で意見陳述し、過労死防止法を通過させていただきました。六月の本会議で、安倍総理も賛成され、一人の反対もなく全会一致で過労死防止法は成立しました。まさか四年後に、国民の命を奪ってしまうような過労死を促進する法案について参考人意見陳述するとは、夢にも想像できませんでした。国民の命を奪うような高プロ法案は削除してください。そして、過労死防止法に逆行する働き方改革関連法案の強行は絶対にやめてください。
 参議院厚生労働委員会の皆様、万が一、来年四月から施行されるようなことになり、一人でも犠牲者が出てからでは遅いのです。賛成された議員の責任は重大です。それでも人が死ぬ法律に賛成されるのでしょうか。ここで立ち止まっていただくことをお願いしたいです。そして、高プロ制度を削除し、過労死根絶へ方向転換していただきたいと思います。過労死遺族から切にお願いを申し上げ、私の意見陳述といたします。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 寺西笑子

speaker_id: 32881

日付: 2018-06-12

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会