長谷川一男の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(長谷川一男君) このような機会をいただき、ありがとうございます。長谷川一男と申します。
 私は、日本に十一ある肺がん患者会の連合体、日本肺がん患者連絡会の代表であり、加えて、全国がん患者団体連合会にも加盟しています。そして、肺がんの患者でもあります。喫煙歴はありません。受動喫煙によって病気になったのではないか、そう思っている人間です。今回は、そんな肺がん患者の立場から申し上げたいと思います。
 まず初めに、私は、今回の政府案、そして参議院提出案、どちらにも共通する基本的な考え方、そこに違和感を感じています。そこには、望まない受動喫煙をなくすとあります。政府案が今までの経緯の中で合意してきたことはよく存じ上げています。しかし、この基本的な考え方に対し、いま一度申し上げたいと思います。国民の健康と命を守る、なぜこの言葉が入っていないのでしょうか。
 日本における受動喫煙による年間死亡者数は、交通事故による死者四千人を大きく上回るおよそ一万五千人と推計されています。年間で一万五千もの命、人生を奪っています。本人だけではありません。周りの家族や友人たち、多くの人が苦しみます。今回、私はこの与えられた機会を、受動喫煙でどのような苦しみを経験するのか、当事者として具体的にそれをお伝えする場とさせていただきます。
 私が罹患したのは八年前です。突然せきが出始めて病院に駆け込んだところ、肺がんと分かりました。進行度を示す数値は最も進んだ四です。臓器内にがんはとどまっておらず、転移した状態でした。五年生存率は五%ほど、月刻みのいわゆる余命というものも言われたのをよく覚えています。青天のへきれきとはこのことを言うのだと思っています。
 そして、もう一つある思いが自然と湧き上がってきました。私には喫煙歴がありません。なぜ肺がんなのかということです。たばこを吸わなくても肺がんになることがあります。幾つか原因があるのですが、なかなかそこに私は当てはまりません。しかし、一つだけぴたりと当てはまるものがありました。受動喫煙です。発症前、受動喫煙を多く経験していました。
 私が受動喫煙を経験したのは、まず親からです。父親は一日二箱吸うヘビースモーカーでした。母親は、台所に換気扇というものがあると思うんですけれども、私の家にはリビングに換気扇が付いていました。母親がそのたばこの煙を嫌ってリビングに付けたということです。畳には焦げた跡もありましたし、本を開くとたばこの灰が舞い上がることもありました。最近母から聞いたのですが、たばこの誤飲も私は経験していたようです。そういう中で育っています。そして、その父は肺がんを患い亡くなっています。なぜたばこの害をきちんと教えてくれなかったのか、そういう言葉を残して亡くなりました。
 大人になり、働くようになると、職場においても受動喫煙を経験しています。私が就職したのは二十五年ほど前です。職場ではほとんどの方が吸っていました。
 がんを患って知ったことがあります。それは、人は苦難を乗り越えようとする強さを持っているということです。自分ががんになったことにどのような意味があるのか。全てのことに意味があるならば、自分自身ががんを患うことにも意味があるはずです。そう考えて一日一日をきちんと生きようと、前を向くようになっていきます。運命を受け入れて自分の命を全うしようとしていきます。しかしながら、この考え方には前提があります。それが運命ならばということです。もし自分のがんが何らかの外的な要因で起こったとするならば、もし避けられることだったとすれば、話は違います。
 想像してみてほしいです。もし他人の行為が原因で自分の命に限りがあると告げられたら、そしてその原因として目に浮かぶのが自分の身近で大切な人たちです。家族であり、友人であり、職場の同僚です。気持ちを持っていく場はどこにもありません。想像してみてほしいです。もし自分の周りの大切な人が肺がんを患い、命を落とすかもしれない状況になったら、その原因にもしかしたら自分が関わっているかもしれないという疑念が出てきます。
 科学的に健康被害が明らかになっています。本当に受動喫煙は体に悪いんですか、そんなふうに言うことはもうできません。私はこれを地獄の状態だというふうに思っています。
 続けて、山梨県の健康増進課が平成二十八年に中高生およそ八千百人に受動喫煙の状況をアンケートした結果をお伝えしたいと思います。
 家族に喫煙者がいる学生で、調査の一か月以内に受動喫煙したと回答していたのは六割ほどでした。そして、その場所は、受動喫煙した場所ですね、学生さんが受動喫煙した場所は家庭内が一番多く、飲食店、路上と挙がってきます。私のような人間が今もなおつくられ続けている、そういう現実があるのかもしれません。
 一万五千もの人が受動喫煙で亡くなっている、その一人一人にある苦しみの声を是非想像していただきたいです。大事なことは、これは救える命であるということです。それを放置し、苦しみを生み出すのはもう終わりにする、そんな法律であることを患者として強く思います。
 終わりです。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 長谷川一男

speaker_id: 14926

日付: 2018-07-10

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会