福永正明の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(福永正明君) 今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。岐阜女子大学南アジア研究センターの福永でございます。よろしくお願いいたします。
 レジュメが小さな字で四ページ、ぎっしり詰まっておりまして申し訳ございません。全部を読み上げるつもりもございませんが、一応事実関係なども含めましてここに書き込んでございます。
 これに従いましてお話しさせていただくんですが、まず一つは、本年の一月十八日にインドがICBM、アグニ5という長距離のミサイルの核弾頭搭載可能なミサイル実験をやりまして、これを成功いたしました。これは、インドにとりましてはほぼ実験最終段階まで来て、現地報道によりますと年内実戦配備ができると。この五千キロという、あるいは六千キロというところを見ますと、ほぼ中国の北側のところまで射程距離にすることができる。インドは既に百二十発から百三十発の核兵器を、核弾頭を持っておりますので、更に強固な核兵器あるいはミサイル保有国ということになります。
 この実験成功というのは、インドにとりましては、やはり中国との全面戦争を抑止する、あるいは核戦争を抑止するという形において非常に大きな強化となるというふうに考えております。しかしながら、なかなかこの問題については報じるところがないんですけれども、これは非常に大きなインドの一歩であろうと思います。
 ところが、インドは核拡散防止条約あるいは包括的核実験禁止条約などなどには入っておりません。ということは、このミサイル実験に対して余りメディアが報じていないというのは、まさに特別扱いを受けているという、逆の意味で非常にインドに対する期待が強くなっているということでございまして、例えば、そこに書きましたけれども、ミサイル技術管理レジーム、これは自発的な参加国によるミサイル管理ですけれども、そういうものにも入っています。
 これはもう、ひとえに対中牽制策、中国を牽制するためのインドというところを重要視した国際社会が後押ししていくということがございます。当然のことながら、中印関係につきましては次に申し上げますけれども、この実験につきましては環球時報がもう速報で反発しました。それから、同日夜にかなり長い論評記事を出しまして、ICBMというのは八千キロ飛ばなきゃいけないんだけど、インドのはたかが五千キロ飛んだんだから、そんなものはICBMじゃないみたいな論評でしたけれども、やはり中国にとりましては全土がインドのミサイルの射程範囲となっていくということへの懸念と反発というのは非常に強くございます。
 そして、隣国パキスタンは九八年に核実験をやりまして、同時に、中国と密接な関係を持っているわけですけれども、核兵器、ミサイル開発というのを更に今後進めていくであろうと。隣国同士で敵対して、一九四七年から三回戦火を交えているインドとパキスタンの中で、こういう核兵器とミサイル開発の競争が続いている、そして、そこにプレーヤーとして中国が入ってきているということは、やはりインドをどのように考えていくか、あるいは南アジア全体地域をどのように考えていくかということにおいて非常に重要な問題であろうと思っております。
 二番目に参りまして、南アジアという、あるいは南アジアと中国というふうに考えますと、当然のことながら一帯一路あるいは真珠の首飾りという問題がずっと出てくるわけですけれども、もうはっきり端的に申し上げれば、インドを包囲するような形での中国海軍のプレゼンスが強化されている。この地図で申しますと、黒の線がいわゆる真珠の首飾りというところでございます。青がいわゆるシーレーン、オイルシーレーンというところでして、原油をマラッカ海峡を通って東アジアに運んでくるルートである。そこを中国が何とかして港湾拠点を造ってインドに包囲網を敷いていこうという。
 次のページでございます。
 幾つかの地点を確認いたしますと、バングラデシュにおきましては、チェッタゴンというところで中国が港湾工事、これは日本も積極的に関与を強めております。
 スリランカに関しましては、南部のハンバントゥータという港がもう既に完成しております。あるいは、首都のコロンボ港の改築工事というのに中国が巨額の借款を出しまして、既に中国の原子力潜水艦、あるいは通常型の潜水艦が寄港したということが過去三年間ぐらいにあります。しかしながら、政権が替わりまして、スリランカにおいては中国の対中負債、巨額の借金をどうするんだという問題が今一番大きくなっております。
 そして、最近、非常事態宣言でメディアで取り上げられておりますけれども、モルディブ、これはもう小さな島が数千ある小国ですけれども、小さな島を借り上げることによって中国専用の港湾を造る。これは、将来的に言えばどこの港も中国海軍の寄港地としたいということがございます。とりわけ、モルディブというのは中国人観光客の急増というのが非常に問題になっておりまして、昨年十一月統計で一年間で十二万人。モルディブの人口というのは四十万人ぐらいですので、物すごい数の中国人観光客が中国の直行便で入っております。それから、非常事態宣言が一月に出されまして、政権が非常に微妙な時期にあるんですけれども、中国あるいはインドの駆け引きの対象になっている。
 そして、パキスタンに関しましては、一帯一路の最終地点として、あるいは最重要基幹事業である中パ経済回廊というものに総額六百三十億ドルをパキスタンに出すということが計画として発表されております。カラコルム・ハイウエーでして、これは既にできているものを改修するということになりますが、新疆ウイグル自治区からグワダール港まで約三千キロを延ばしてアラビア海に抜けると。グワダール港につきましては、イラン国境から約百二十キロぐらいのところにありますホルムズ海峡の喉元と言われるところに港を造り、二〇一五年に既に中国が四十三年間借款を得ましてここを利用できるという、将来的には中国海軍が入るのではないかということが言われております。また、二〇一六年十月にはチャシュマ原発というのが稼働しまして、これは中国の合弁事業でして、中国が原発輸出をしているという。
 そうしますと、今までのお話ですと、お話しさせていただいたところでいいますと、中国とインドというのは、インド亜大陸あるいはインド洋をめぐってかなり長い国境線も接しておりますので緊張した関係にあるだろうという一つの認識があるんですけど、実は非常に緊密な経済関係がございます。
 まず一つは、インドは上海協力機構のフルメンバーになっております。それから、アジアインフラ投資銀行、AIIBのこれはもう理事メンバーとなっております。そして、インドにとりまして最大の貿易相手国は中国です。しかも、インドにとりましてはマイナス三百六十九・九億ドルの貿易赤字ということになっておりまして、あらゆるものが今中国から入っているのがインド。非常に密接な関係にある。輸出が中国は第四位、輸入は第一位。これは何が入っているかといいますと、非常に安価な日用品からヒンドゥー教で使いますお祭りの道具であるとか花火であるとか、そういう非常に安い日用品がどんどん入っていまして、今デリーのいわゆる高級ホテルに泊まりますと、石けんを裏返してみますとメード・イン・チャイナということがございます。ですから、そういうことが、非常に密接な関係が経済関係である。インド側にとりましては、当然、この貿易赤字を何とかしていかなければならないという重要な問題があるんですけれども、一方で、厳しい軍事的な対立というのもございます。
 例えば、昨年の五月は、一帯一路国際協力サミットというフォーラムというのがございましたが、インドは唯一この参加を拒否いたしました。実は、この四月にダライ・ラマ法王がアルナーチャル・プラデーシュというところを訪問したことに対する反発なんですけれども、それに対して、言いがかりを付けられたということに対するモディ側の、インド側の反発なんですけれども、公然と拒否する。
 そして、昨年、三枚目に参りまして、昨年の六月から二か月半、これはブータンを巻き込んで高地でインド軍と中国軍が対峙するということがございました。インド軍と中国軍は、ほぼ統計的に見ますと毎日一回ぐらい何かあるんですね。ですから、そんなに緊張関係が非常に高いというよりは、よく分からない実効支配線を踏み込んじゃったとか、あるいは間違えて道に迷っちゃったというような報告としてはもう年間四百件ぐらいあるんですけれども、この一七年六月、昨年の二か月半というのは非常に緊張いたしました。九月五日のBRICSサミットで一応の手打ちというのが行われております。
 最近の、先ほど申し上げましたけれども、アルナーチャル・プラデーシュというところが一番の紛争地点です。もちろん、カシミールの方にも中国は拠点を持っておりますけれども、一つ大きな地点はこのアルナーチャル・プラデーシュ州のタワンというところが争点となっております。この地図でいいますと赤いところです。左側のドクラム高地というところが、グーグルの地図でさえも点々々で破線で囲ってありまして、国境線は不明という状況になっているんですが。
 タワンがなぜ重要かといいますと、これはもう中印間の最大の問題の一つであるダライ・ラマ法王の問題と絡んでまいります。一六八二年にダライ・ラマ法王第六世がこのタワンというところで誕生、生誕いたしました。中国側の主張によれば、ダライ・ラマ法王というのは中国のダライ・ラマなのだから、その生誕地も中国に属するべきであると。だから、このタワンというのは中国のものであるという主張を行っております。
 一つの要件として、今後の中印関係では、このダライ・ラマ法王の、八十歳を超えられた法王の今後、つまり、その生まれ変わりを、既に中国側は規則を定めましてどのように探し出すかということは決めております。で、果たして、ダライ・ラマ法王が次にどういう形にするのかというのは様々な発言を、世界のどこかで生まれてくるかもしれないとか、女の人かもしれないとか、いろんなことをおっしゃっていますけれども、この中印間の中では、一つの大きな問題としてダライ・ラマ法王の将来、今後という問題がございます。
 インドの外交ということをぱあっと見ますと、とにかく世界の大国になりたいというのがインドの願望であり、それを目掛けて進んでまいりました。核武装であり、ミサイルであり、宇宙開発であり、そのために九一年以降の親米路線というものがございます。しかしながら、インドを見ますと、一言で申し上げて状況対応型の外交である。新しい国際外交を創造し発展するような力、つまり国際秩序を新しく形成していくような能力、それは、例えば一九五〇年代の非同盟外交のような、世界をリードするような外交というのはなかなか今見られていない。その大きな足かせになっているのが、独立後七十年を経過しますけれども、インドを取り巻く諸国とどことも仲よくできない、できていないという問題がございます。インドが諸外国となかなかうまくできていない、それがゆえにそこに中国が付け込んでいく隙がある。それが真珠の首飾りとしてなっていく。
 中国から見ますと、対インド外交というのはインドをとにかく南アジアに封じ込めるということですので、様々な問題があるんですけれども、周辺諸国に対する中国の真珠の首飾り、つまりバングラデシュ、スリランカ、モルディブ、パキスタンというインドを囲むような地域に拠点を持っていく。それに対して、インドが今まで周辺諸国となかなかいい関係をつくれてこなかったところで、諸国が中国になびいていってしまう、それをどう立て直すかというのは非常に重要な問題です。実質的に申し上げますと、中国とインドは九三年に国境問題は棚上げということになっておりまして、全く話合いは開かれておりません。
 では、どういう外交をすればいいのかというのがインドの識者の中でも分かれております。それが大きな四番の自由で開かれた太平洋戦略の問題とつながってくるわけですけれども、インド側は、次のページへ参りまして、こういうインド洋と太平洋を結ぶような構想というのを是非ともつくってほしい。ですから、米印日という形での協力関係というのを求めております。あるいは、逆に申し上げますと、南シナ海の問題ではベトナムと非常に友好な関係をつくっております。
 それに応じるかのように、日本とインドの間で申しますと、安全保障協力は非常に進んでおります。とりわけ海上自衛隊とインド海軍の間での協力関係というのは、これは緊密と言っていいと思います。八〇年代以降の海賊対策の問題から始まりまして、マラッカ海峡から向こうはほぼインド海軍しか頼るところがないという中で、二〇一五年からはマラバールという海上共同訓練に共同参加しております。このベンガル湾には中国海軍が拠点を持っておりまして、偵察を続けているということがありますので、このベンガル湾での共同訓練というのは非常に大きな意味がございます。
 では、日本はどうしたらいいのかというところですけれども、これは今日の御質問のあるお話だと思うんですけれども、まず一点は、日印関係というのは、一言で申しますと善意の相互誤解というふうに私申し上げているんですけれども、お互いが余りよく分からないんだけれども、相手の国は自分に親しく感じてくれている、あるいはいい国だと思っている。例えば、日本ではよく聞かれます、仏教であるとかお釈迦様の国で、カレーで、歴史的な、ネガティブな問題がないんだというようなことがあります。インド側からは、広島、長崎から復興して、こういう世界企業ができてきて日本はすごいという、そこから一歩抜けて、どういう真の友好連携国へつくっていくかというところで、やはり出発点になるのは、インドがサンフランシスコ平和条約を締結しないで単独講和として平和条約を結んだという歴史的事実というのは、やはりそこに立脚しなければならないというふうに思っております。
 そして、ステレオタイプでの、私、先ほど申しました幾つかの、カレーであるとか仏教とかというところに落とし込めないで、現実として日本とインドの関係というものを考えていく。そうしますと、日本にとりましては、インドをただ単に、あるいは南アジア全体を中国に対する牽制策として考えるというよりは、もっと広い意味で世界に対して協力できるような協力関係というものをつくっていった方がいいだろうと。
 これは二番目に移りますけれども、例えば、インドが中心になって近隣諸国と手をつないで、南アジア地域全体の発展であるとか民生向上に向かうような助力をしていくとか、あるいは貿易、域内貿易の拡大であるとか、あるいは、最近そういう発言がございましたけれども、インドは太平洋戦略と一帯一路の連携を図るであるとか、何よりも、いろいろなレベルで便宜的な友好関係という今の関係から、将来を見通した次なる関係というものへやっぱり発展させなければならないだろう。
 そのためには、様々なレベルでの対話が必要でしょうし、地球規模での大きな様々な問題についても共に解決する、そして、ただ称賛するだけではなくて苦言も呈するという、これは自由と民主主義という部分に関わるものは私の論考としてありますけれども、その中で成熟した関係へ進んでいくということが、目指すことができたらと思っております。
 今日はどうもありがとうございました。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 福永正明

speaker_id: 12831

日付: 2018-02-21

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会