田中秀明の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(田中秀明君) 本日は、国際観光旅客税という新税の導入に関する国会審議におきまして意見を述べる機会をいただきまして、深く感謝申し上げます。光栄に存じております。
私は、明治大学公共政策大学院で、財政や税制、社会保障など公共政策の問題を研究し、主に社会人を対象に授業を行っています。新税の導入は公共政策の観点からも極めて興味深いテーマであります。
それでは、お手元に配付させていただきました資料に基づき、説明させていただきます。表紙の次のスライドを御覧ください。
これは、目的税、特定財源について一般論としてメリット及びデメリットを整理したものです。メリットといたしましては、受益と負担の関係が明確である、応益性にかなう。それから、厳しい財政事情の中で、また増税が難しい中で財源の確保に努力している。それから、増税について納税者や国民の理解が得られやすい。他方、デメリットといたしましては、必要性が低下しても制度が維持されるなど既得権益化しやすい。歳出全体で優先順位を考えないため、無駄な支出、費用対効果の低い支出となりかねない、財源があるから予算を使い切るインセンティブを与える。それから、応能性とは言えない。
補足になりますが、これまでも目的税や特定財源については問題が指摘されています。例えば道路特定財源、現在では一般財源化されていますが、過去におきまして、道路特定財源を国交省の公務員がレクリエーション費用やミュージカル開催費用、タクシーチケットに流用されていたことが発覚されています。それから、原油、輸入石油製品等に課せられる石油石炭税につきましては、石油特会の決算状況を検査しました会計検査院の平成十四年度決算検査報告では、剰余金が出ている、それから、毎年度多額の石油税収入が一般会計から繰り入れられている一方で、石油安定供給対策費を中心に相当額の不用額が生じている状況が長期間継続して繰り返されている、こういった問題が指摘されているわけです。
政府の資料では、行政事業レビューの活用、PDCAの循環などを図るとしております。この目的税、特定財源は決して否定されるべきものではありませんが、過去の事例を見ると、現実には理論どおりには機能するとは限らないということが言えると思います。
次のスライドを御覧ください。
今般、この審議の対象となっております国際観光旅客税法には税金の使途などは規定されていません。それは、長い法律名ですが、外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律という、こういう別の法律に規定されているわけです。一般国民には、こう分かれているというのは非常に分かりにくいですね。
それから、同法の目的は、ここに書いてございますように、幾つかあります。今回のこの税金は国際観光振興施策に充てるということになっているんですが、この施策がこの目的の達成にどう寄与されて、まあ寄与されていることは想定されているんですが、具体的にはよく分かりにくいと。また、この法律が全体として想定している施策とこの旅客税の対象となる振興施策がどのような関係にあるのか、例えば同じなのか、包含されるのかということもよく分からないわけです。目的そのものは否定しないわけですが、この国際観光旅客税による個別の施策がどのようにこの第一条の目的に寄与するのか、費用対効果が高いかをどうやって検証するのか、それから、いわゆるKPI、重要成果指標は何なのかというのが、残念ながら政府の資料にはよく分かりません。
次のスライドを御覧ください。
法律では、この国際旅客観光税の使途は三つ規定されています。このうち、一のCIQの充実については必要性は非常に理解できると思います。
去る三月、オーストラリアに出張する機会がございました。シドニー国際空港を利用したんですが、早朝、シドニー国際空港に着いたときに、ほとんど待たなかったんですね。昔、オーストラリアに住んでいたことがありまして、大体夜行便が朝に集中して、非常に長く待たされていたんです。今回はほとんど待つことはありませんでした。それは、自動化ゲートができたおかげで多くの利用者は自動化ゲートを活用していると。私自身は自動化ゲートは使わなかったんですが、ほとんど並ばなかったという状況でした。
他方、この使途として考えられている二番目と三番目の施策については、この法律の規定では、読んでいただければ分かりますが、何でも含まれるわけですね。例えば政府の観光ビジョンを見てみますと、いろんな施策が書かれています。例えば国立公園のナショナルパークとしてのブランド化、滞在型農山漁村の確立・形成、東北の観光振興、民泊サービスへの対応、訪日プロモーションの戦略的高度化、観光教育の充実と、いろいろ書かれているわけですね。こうした無数の施策について必要性や費用対効果をどうやって評価して優先順位を付けるのか、それから、既に国や地方自治体の施策というのはあるわけで、それとどうやって区別するのかということが疑問に思うわけです。
次のスライドを御覧ください。
目的税や特定財源を説明する際に強調される一つのメリットは、受益と負担が明確であるということです。しかしながら、この国際観光旅客税は本当にそうなのかという疑問が湧くわけです。
繰り返しになりますが、CIQに関する施策については、場所ですね、空港とか港は限られているわけで、受益と負担の関係が比較的明確だと思います。しかしながら、他の施策、例えば日本人、税金を負担する全体の約四割と想定されていますが、日本人にとっては、例えば情報の取得であるとか、必ずしも恩恵が来るというわけではありません。それから、外国人の場合も、観光で来られる方にとってはいろいろメリットがあると思いますが、ビジネスで来られる方にとっては必ずしもその便益が明確だというふうには言えないわけです。つまり、こうした人たちにとっては今回の新税は負担だけを負うことになると、そうした人たちにも、納税者にも合理性や必要性、妥当性をどのように説明するのか、そうした疑問が湧くわけです。
最後のスライドになります。全体をまとめたいと思います。
第一に、財源確保に向けた努力、観光振興の必要性といったことは高く評価できると思います。他方、政府の資料を見る限りは、この国際観光旅客税の負担者が納得できるような制度設計になっているか、残念ながらよく分からない。これは既に申し上げましたように、全てがそうだということを申し上げているわけではありませんが、必ずしもそうとは言えないというふうに申し上げることはできます。それから、一番大事なことなんですが、個別の具体策がこの目的達成に寄与しているのか、あるいは費用対効果が高いのか、こうした点について不断にチェックする必要があるということで、国会がその役割を果たす必要があるのではないかなと思います。
補足しますと、国際観光旅客税は、理論としては評価できます。ただし、その実際の運用においては、これまでの目的税や特定財源の経験を踏まえると大きな懸念があるということが言えます。まだ実際に導入されているわけではありませんが、懸念については大体分かっているわけで、それに対する対策を講じる必要があるというふうに思うわけです。税金は取りやすいところから取るとしばしば言われますが、この国際観光旅客税が納税者の期待に応えられるように対策を講じるべきであり、繰り返しになりますが、国会の監視機能が最も重要だというふうに考えております。
以上で私からの説明は終わります。御清聴ありがとうございました。