渡邊頼純の発言 (内閣委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(渡邊頼純君) 御紹介いただきました慶應義塾大学の総合政策学部教授をしております渡邊頼純と申します。今日は、この非常に重要な会議の席に参考人としてお呼びくださり、心から感謝申し上げます。大変光栄に存じている次第でございます。
私の話の前に、少し私自身について先生方に御紹介申し上げたいと思いますが、私、今は慶應義塾大学の教授をしておりますが、実は長い間、国際貿易の問題にずっと関わってまいりました。古くは一九八五年から九〇年まで、ジュネーブにございます日本政府代表部で、ウルグアイ・ラウンドの立ち上げからちょうど中間地点ぐらいまでを見ることができました。また、その後、外務省の専門調査員としまして、EU代表部、これブラッセルにございますが、そちらの方に参りまして、日・EUの経済関係も見てまいりました。そして、二〇〇二年から二〇〇四年は外務省経済局参事官ということで、日本とメキシコとのEPA交渉に首席交渉官として関わることができました。
そういう私にとりましては、ウルグアイ・ラウンド以来の国際貿易の流れ、まさにTPPあるいはTPP11ですね、これは私にとりましても、日本が国際貿易の世界に本当に積極的に関わっている非常に大きな象徴的存在だというふうに考えておりまして、そういう意味では、ある意味でTPPの議論を締めくくる今回のこの参議院の会議に出席できたことは、本当にこの分野を専門にやってきた人間としては非常に幸せに、また光栄に存ずる次第でございます。
そのようなことを申しまして、早速お話を始めたいと思います。
この最初の、私が用意させていただきました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、いわゆるTPP11の意義と展望という資料を御紹介申し上げながらお話を進めていきたいと思います。
最初にこの一つの大きなポンチ絵みたいなものが出ておりますが、これは何を示しているかといいますと、現在の世界貿易が三つの大きな成長の極、これから成り立っているというふうに考えているということをまず示しております。
一つは、EU、欧州連合を中心としたヨーロッパですね。
それから、大西洋を渡りまして、北米自由貿易協定、NAFTA、アメリカ、カナダ、メキシコからできております。さらには、セントラルアメリカのFTAということでセントラルアメリカFTA、そして、南の方へ更に下りますとメルコスール、さらには、近年、メキシコ、ペルー、チリ、コロンビアという四か国がつくっております太平洋同盟といったような地域の経済統合体がございます。
そして、太平洋を渡りますと、私どもの東アジアがございます。この東アジアでは、ASEAN十か国、それに日中韓三か国、さらにはインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた東アジアの枠組みであります包括的な経済連携の枠組み、いわゆるRCEPというのがあるわけでございます。
この三つは、世界の経済あるいは経済成長というものを引っ張る三つの大きな成長の極というふうに申し上げていいかと思います。そして、その成長の極では、それぞれ域内の統合というのが進行しているということでございます。
非常にこの二十一世紀に入って興味深いのは、地域と地域の間で地域間協力の枠組みが育ってきていることでございます。一九八九年にスタートいたしましたAPEC、アジア太平洋の経済協力会議、APECが一つその大きな代表でございます。また、一九九六年にスタートいたしましたアジア欧州会議、あるいはアジア欧州会合、ASEMというのもございます。そして、この大西洋を挟んで、EUと北米との間では環大西洋のパートナーシップというのもございます。
そういうわけでして、今、成長の極を結ぶ地域間の協力の枠組みがそういうわけで三つ、APEC、ASEM、そしてこのトランスアトランティックの枠組みと三つあるわけですが、二〇一〇年以降、それが更に進化してきております。それが、アジア太平洋におきましては、APECから出てきましたTPPでございます。このAPECの二十一の国と地域の中から、まず四か国ですね、チリ、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイという四か国が最初のTPPの原型をつくりました。そこからTPPが出てきております。現在では残念なことにアメリカが撤退をいたしまして十一か国でございますが、そのTPP十一か国でも、世界の貿易の相当部分、あるいはGDPで申しますと一五%弱を占めているという状況でございます。そして、この欧州連合と日本との間には、日・EUのEPAというのも合意ができております。
そういうわけでして、日本を軸に見ますと、太平洋におきましてはTPPあるいはTPP11、そして、欧州との関係でいいますと日・EUの経済連携協定ができているということでございます。これに更に欧州連合と北米地域との間の何らかの経済連携、何らかのFTAというものが加われば、非常に強い世界の貿易体制を支える軸ができてくる、あるいは面ができてくるというふうに考えることができます。
そういう形で、日本が関与している二つの大きなメガFTA、TPP、そして日・EU、さらにそこにRCEPというのもございます。そういうものをベースに、日本としてWTOを軸とした国際貿易体制というものを強化していく、これが非常に、今の日本のこれからの二十一世紀の通商政策の基本構図ではないかというふうに考えるわけでございます。
一枚この資料をめくっていただきますと、三枚目でございますが、アジア太平洋における地域統合ということで、今申し上げましたRCEP、いわゆる東アジア地域包括的経済連携、あるいはそのTPPの加盟国がそれぞれ出ておりますので、御参照をいただきたいと思います。
更に一枚めくっていただきますと、四枚目のスライドでございます。これは私が作成したオリジナルな図でございますけれども、左の方から右の方へフローチャートとして考えております。日本の二国間のEPAは、既に日・EUを含めますと十六件、この十五件のEPAについては既に発効を見ております。その日本の二国間のEPAをベースに、今後、日本はこの東アジア、そして環太平洋、その両方向に大きな経済連携の歩みを進めていくものと確信しております。
東アジアにつきましては、先ほどから言及しておりますRCEP、さらには日中韓のFTA、そして環太平洋ではTPPというのがあると思います。これらを行く行くはこのアジア太平洋の貿易圏である、つまりAPECの枠組みであるFTAAPの方へ流し込んでいくというのがこれからの大きな意味でのアジア太平洋地域における日本のEPA戦略というふうに言うことができると思います。
幸いなことに、日本はRCEP、日中韓のメンバーであると同時にTPPのメンバー、それも中心的なメンバーでございます。そういうわけで、このTPPにおきましてはより野心的、より高度なルール作りを行い、そしてRCEP、日中韓では、特にASEANの中でも発展のレベルが少し低いカンボジア、ラオス、ミャンマーといったような国々を含めた諸国に対する包摂的な統合といいましょうか、インクルーシブなインテグレーションというものを日本が中心になって進めていく。カンボジア、ラオス、ミャンマーに対してはいわゆるキャパシティービルディングであるとかあるいは貿易円滑化を通して彼らの成長というものを引っ張っていくということがとても重要だと考えているわけでございます。
このRCEP、日中韓と、そしてTPPというのは大いに補完的に機能し得るものでございまして、そして、それをもってこのFTAAP、つまりAPECワイドの自由貿易圏というものにつなげていく、これが非常に大きなグランドデザインではないかというふうに考えます。
そのAPECあるいはFTAAPについて一言申し上げます。
次のページを御覧ください。五枚目でございます。これを御覧になっていただきますと、関税撤廃、あるいは関税撤廃に加えて非関税障壁の削減というものを入れると、徐々に経済成長への寄与、あるいはGDPの成長率を高めていくことが可能であるということがお分かりになっていただけると思います。
もちろん、FTAAPはそんなに簡単にできるとは思っておりませんが、その言わば出発点としてTPPがあり、そしてそこにRCEPや日中韓を加えていって、そして行く行くはこのFTAAPというAPECワイドの自由貿易地域をつくっていくと、これがAPECで現在議論されているところのものでございます。
こういうふうに考えてまいりますと、TPPとRCEPというのは決して相対する関係ではなく、むしろ相互に補完的な役割を果たすということが考えられるわけでございます。
次、もう一枚ページを送ってください。六ページ目でございます。
六ページ目は、このFTAAPで鍵を握るメンバーエコノミーということで、GRIPSの川崎研一教授がはじき出した数値でございますが、御覧のように、このAPECワイドのFTAであるFTAAPをつくった暁には、実は中国が非常に大きく裨益をします。そして、アメリカが二番手に付けていて、日本は五番目というところに位置付けているわけでございます。これから御覧になっていただきましても、このFTAAPへ向けての動きというのは、中国ももちろん裨益いたします、日本もそうなんですが、アメリカも二番手に付けているというところがポイントでございます。
現在、アメリカはTPPから離脱をしておりますが、実はそれはアメリカにとって非常にマイナスのことでございまして、次、一枚めくっていただきますと、このTPP12の評価ということで、元々のTPPの評価が出ております。
高いレベルの自由化、そして新たな通商ルールを規定していく、その中には、国有企業に対するルール作り、労働、環境についての一定の規律を提供する、政府調達市場を開放していく、さらには、電子商取引などのように、現在WTOにおきましてはまだルールができていないところにルールを作っていくということがあったわけでございます。
さらに、TPPは、このビジネスに優しいルールということで、完全累積制度というものを原産地規則の中に織り込むなど、非常にビジネスがしやすい、日本の企業が東南アジアに多く進出しておりますが、彼らにとって非常に良好な関係をつくっていく、そういうルールを提供しております。また、中小企業への配慮、そしてその投資の促進、投資における最恵国待遇や内国民待遇の保障といったようなことも入っております。そして、非常に具体的なこととしては、この税関手続の簡素化あるいは迅速化で、急ぎの場合には六時間で貨物を引き取ることができるといったようなルールも作られたわけでございます。
そういうTPPだったわけでございますが、このTPPの地政学的意義は何だったのかというのが八枚目の紙でございます。
ここでは、グローバルな覇権交代が起こりつつあるということで、ブレトンウッズ体制の変容のプロセスの中でアメリカがどのようにその変容のプロセスを受け止めているかということで、TPPというのは、まさにそういう覇権国が移転していく中で、移り変わっていく中で、どのようなルールを作るかというところが問題だったということでございます。
さらに、中国にとってということで考えますと、中国にとりましても、実はこのTPPの問題というのは中国の発展のモデルをどうつくっていくかということと密接につながっております。中所得国のわなにはまったままの中国でいるのか、あるいはそこから更に伸びるのかというところが中国にとっても重要で、そのためには、RCEPとTPP、この両方を中国はにらんでいるというふうに考えます。もちろん、今すぐ今の中国にTPPに入るということは、これは不可能でございます。しかし、RCEPで投資について、あるいは競争政策について、あるいは国営企業についていろいろ交渉をしていく中でTPPに行く行く入ってくる、そういう発展的なパターン、あるいは段階的なパターンというのを中国の識者も考えているようでございます。
日本にとりましても、この三つ目のポイントですが、これは、日本がグローバルパワーにとどまるのか、あるいは太平洋地域、アジア地域のミドルパワーになってしまうのかということで、この選択を迫られている日本にとりまして、日本のプレゼンスを維持していく上で非常に重要というふうに考えるわけでございます。
もう一枚めくっていただきまして、九枚目でございます。日本の対応といたしましては、TPPから離脱をして損をするのはアメリカ自身であるということを先ほど申しましたが、そういう中で、日本としては、アメリカのTPP復帰を周到に準備してあげるということが重要だと思います。そのときの言い方としては、まさに今アメリカは日米FTAというのを日本に対して言ってきているわけでございますけれども、しかし、考えてみれば、TPP12というのはまさに事実上の日米FTAであるということでございます。この点をアメリカにしっかり分かっていただいて、早急にTPP12に戻ってくるということをアメリカに説得をしていく。
そのためにも、二つ目のポイントですが、TPP11というものを早急に発効させるということで、本委員会の役割も非常に大きいわけでございます。
そしてさらには、日本企業……