山川秀正の発言 (内閣委員会)

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○参考人(山川秀正君) それでは、最後に私の方から意見を述べさせていただきたいと思います。
 お二人は大学で専門的にTPPを研究している、そういう立場からの発言でしたけれども、私自身は現場で実際に農業を行っている農民の立場から、TPPについて反対の立場で意見陳述をしたいと考えております。
 私自身は、北海道十勝管内、帯広市の隣ですけれども、音更町で畑作農業経営を営んでおりまして、経営内容は、十三ヘクタールの小麦、大豆五ヘクタール、てん菜六ヘクタールなど、四十ヘクタール耕作をしております。
 今、北海道の販売農家戸数は約三万八千戸となっておりまして、私自身が農業を継いだときには十三万五千戸もありました。この十年間で一万五千戸、四十年間で十万戸も減少したことになります。今頑張っている北海道の農業者は幾多の試練を乗り越えてきた言わばつわものと言える農業者ですが、TPP11で更に大きな網のふるいに掛けられるのではないか、多くの農家が懸念を抱いております。
 政府の試算でも、TPP11によって農産品だけで六百二十億円の関税収入が減少し、その対策も示しておりません。関税収入の減少の内訳は、牛肉が二百七十億円、国家貿易によるマークアップは、麦で二百二十七億円、乳製品は二十五億円、砂糖調整金十六億円となっており、北海道農業に及ぼす減収は百五十億円以上になると予測されております。
 これらの関税やマークアップの財源によって、牛のマルキンや麦やてん菜の数量支払、生乳生産者補給金の財源に充てられてきました。私自身も、経営に大きなウエートを占める小麦のマークアップが四五%削減されることになれば、小麦の販売価格がその分引き下げられるのではないか、強く危惧を抱いております。北海道では約十二万ヘクタールに小麦を作付けしていますが、TPP11が発効して、現在の作付面積や生産量が確保できる法整備を明確にすべきであります。
 また、牛肉の関税収入の減少が最終的には二百七十億円と試算していますが、これでも牛マルキンが維持されるのか。九割補填にすることはTPP11発効前にも措置すべきと考えますが、果たして財源が確保されるのか。牛・豚マルキンの維持と経営安定対策の交付金の維持を担保するのであれば、法制化を図ることを提案したいと思っております。さらに、TPP12で示された牛肉などのセーフガードや乳製品の低関税輸入枠も凍結されないまま承認されており、その影響は避けることができません。
 北海道では十万ヘクタールの水田があります。アメリカが抜けたことから約七万トンの米の輸入が回避され、オーストラリアのみとなりました。しかし、米の生産国で国際的にも最も価格の安いタイが参加を表明しております。タイ産米の輸入拡大を拒否できるのか、明確にできないのであれば、関連法案は判明するまで採決すべきではないと考えます。
 さらに、食の安全についても、検疫時間の短縮や遺伝子組換え表示の変更など、心配は尽きません。
 また、TPP受入れを前提に体質強化策が講じられてきていますが、支援の対象が規模拡大一辺倒であり、現状維持で経営を続けようとしている私たち農業者は、大きな支援、これを受けることは全くありません。現状維持で経営を続けようとしている農家も支援の対象にすべきではないでしょうか。
 また、牛肉の関税収入の減少が最終的に二百七十億円と試算していますが、これでも牛のマルキン制度が維持されるのか。九割補填にすることはTPP11発効前にも処置すべきですが、果たして財源が保障されるのか、大変不安であります。
 さらに、私たちが生産した小麦の国内価格、六十キロ三千円であります。これは国家貿易品目であることから、国が一元的に輸入し、その輸入差益としてキロ当たり十七円を徴収しています。この輸入差益分が四五%削減されますと、六十キロに換算して四百六十円となります。この分が道産小麦の価格に連動することになれば、生産者にとっては大きな打撃です。輸入差益の上限はキロ四十五円となっていますから、上限の四五%にすべきではないかとも考えます。
 現在の小麦の販売価格は政府の輸入小麦販売価格と同じような水準ですから、約三千円の販売価格では生産費を維持することはできません。生産した小麦は農協で調製をし、その経費が約千円、販売経費や価格変動猶予金を含めると千円になります。農家の手取りは出来秋には千円程度しかなく、これでは経営が成り立つはずがありません。それを補填するために、経営安定対策の数量支払で六十キロ六千八百九十円の交付金を受けています。
 この交付金の主要な財源は、輸入差益、マークアップであります。政府の試算であれば、TPP11が発効すれば初年度で二十五億円減少し、最終年度には二百二十七億円の減少としています。財源が減少しても現在の経営安定対策が維持される、交付金が維持されるのか、そのことが極めて心配するところであります。政府は措置すると言いますが、小麦生産の減少を見込んでいるのではないかと思わざるを得ません。
 北海道農業は今、農業を輸出産業に、その典型としてもてはやされております。しかし、食料自給率三八%の国が目指すべき方向でしょうか。EUとのEPAも暫定発効が心配でありますが、EUでは昨年十一月、共通農業政策、食料と農業の未来の中で、家族農業経営、食料安全保障、農業の多面的機能の維持、そして農業には完全な自由貿易化に耐えられない部分があることを強調しております。日本の農政理念の根本的転換にかじを切る議論も求めておきたいと思います。
 最後になりますが、TPP事後対策の一環として出されたと、このように私は受け取りますが、今年四月、米や麦、大豆の種子法、これが廃止されました。そういう現状の中で、今、北海道では、パン向けの秋まき小麦、キタノカオリの採種が困難となり、生産が危機に立たされております。種を農家が手に入れるまでには原原種、原種、採種と三年費やしてようやく四年目で私たちが播種することができるわけでございますけれども、その根本が、法律が廃止され、キタノカオリにこだわった製造店からも不安の声が上がっており、種子法の復活、このことも最後に求めて、私の意見とさせていただきます。
 大変御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 119614889X02020180619_009

発言者: 山川秀正

speaker_id: 24053

日付: 2018-06-19

院: 参議院

会議名: 内閣委員会