渡邊頼純の発言 (内閣委員会)
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○参考人(渡邊頼純君) 和田先生、どうも御質問ありがとうございました。
確かに、私は、TPPに戻ってこないで困るのはアメリカであるということを申し上げております。
幾つかございますけれども、まず一つは、TPPの持っているその戦略的意義というのがあると思います。やはりこのTPPというのは、ある意味でTPPの議論の中で隠されたアジェンダの一つは、中国をどう取り扱うかということ、あるいは中国との関係をどうするかということであったかと思います。
先ほど少し申し上げましたが、中国自身も、当初はTPPが中国を除外するものだというような懸念を持っておりまして、このTPPに対して相当反発する部分がございました。そして、自らはTPPではなくてRCEPでいくんだと、こういうようなことも言った時期もございました。
ただ、アメリカが徐々に、その後、二〇一四年、一五年というふうに交渉が進んでいきます中で、当時のアメリカの国務次官であった、ブリンケンスという国務省のアメリカの幹部の一人が、決してTPPというのは中国を囲い込むものではない、新たな中国囲い込み政策ではないんだと、中国もそのメンバーとして迎え入れる用意はある、それは全て中国次第であるといったような言い方をするようになりました。
このことは非常に中国にもいいメッセージとして伝わりまして、私どもが日頃から交流のある中国のFTA政策の識者、貿易政策の識者たちも徐々に、RCEPとTPPというのは決して対立するものではない、そして、今すぐは無理だけれども、中国もいつかTPPに入ることによって中国を更に発展させることができるということを考え始めました。
また、アメリカの方でも、やはり中国のような国がTPPの厳しいルールに従うことによって、そして中国のマーケットを開くことによって、あるいはハイスタンダードなルールに従うことによって、アメリカにとっても利益があるというふうなことを考えるようになったわけでございます。
ですから、そういう意味で、戦略的なTPPの価値ということになりますと、アメリカが抜けたことによって、実は、中国の中でより高度なルールとかより高度なマーケットアクセスに移行していかなければならないと考えていた進歩的な中国の人たちを、むしろ中国国内で抑え込む結果になってしまっている。そして、現在の中国は一帯一路でありますとかそういうところに邁進していっているわけなんですね。そのことは、アメリカのやはりグローバルな存在感というものを非常に低くしてしまうことになります。ですから、やはりTPPから離脱したというのは、そういう戦略的な意義において一つアメリカにとってマイナスだったということであります。
それからもう一つは、実利的な意味で非常に損だと思います。
既に先生方も御案内のように、今、日本のワインの市場で数量ベースで一番売れているのはチリワインになりました。これは、日本とチリとのEPAが二〇〇七年に発効して十年間の間にワイン関税がゼロになっているわけですね。そういう中で、従来強かったフランスワインを抜いてチリワインが先頭に躍り出ました。これはやっぱりEPAの効果だと思います。同じようなことが、もしEUとのEPAが発効すれば起こりますし、オーストラリアとのEPAは既に二〇一五年一月からスタートしていますので、徐々にオーストラリア産のワインに対するワイン関税も落ちていっています。それがオーストラリアワインにとっては追い風になっている。
そういうふうに考えましたときに、アメリカのTPP復帰が遅れれば遅れるほど、それはアメリカの農業にとって、例えばワインであるとか、例えば今申し上げました牛肉もそうだと思いますし、その他の産品においてアメリカが後塵を拝するというような状況になります。これは非常に実利的な意味でアメリカにとって損でありまして、そのことが、アメリカ国内でも農業団体をしてトランプ政権に対してTPPへの復帰を促す、そういう契機にもなっているわけでございます。
以上でございます。ありがとうございました。