佐々木一彰の発言 (内閣委員会)
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○参考人(佐々木一彰君) ただいま御紹介にあずかりました東洋大学国際観光学部の佐々木一彰でございます。このような意見を述べる場所を設けていただきまして、誠に感謝しております。
それでは、特定複合観光施設区域整備法案につきましての私の意見を述べさせていただこうかと思います。それでは始めさせていただきます。
基本的に、私の観点と申しますのは、経済的観点と社会的観点で論争点を御紹介し、その後に、どうあるべきかという話をさせていただく形になるわけであります。
経済的観点からでございますが、もう既に日本は人口減少社会に入ってきております。二〇四七年には一億人程度になる見通しでありまして、定住人口一人当たりの年間消費額は、旅行者の消費に換算しますと、外国人旅行者八人分、国内旅行者、これは宿泊でありますけれども、二十五人分、国内旅行者、これは日帰りに当たりますけれども、八十人分に当たるわけであります。
人口減少社会に入っている中で、新しく経済振興をしなきゃいけないという形になっておりますので、その点を鑑みまして観光立国推進基本法といいますものが作成されたわけであります。この法律は、御存じのとおり、昭和三十八年に制定されました旧観光基本法の全部分を改正いたしまして、題名を観光立国推進基本法と改めることによりまして、観光を二十一世紀におけます日本の重要な政策の柱として明確に位置付けているものでございます。実際のところは、先ほど申しましたとおり、人口減少分を補うためのものとして観光を一つの基幹産業と見ていこうという考え方の下に作成された法律であります。
先ほども、定住人口一人当たりの年間消費額は旅行者の消費に換算しますと外国人旅行者八人分という話をさせていただきましたけれども、インバウンド振興といいますものがかなり重要になっているということでございます。
二〇一六年三月三十日策定の明日の日本を支える観光ビジョン、世界が訪れたくなる日本へ、概要によりますと、二〇二〇年には訪日外国人旅行者四千万人、二〇三〇年には六千万人と、最も重要な消費額と思われるわけでありますが、二〇二〇年には八兆円、二〇三〇年には十五兆円を目指しているという形になっております。このような数値目標を出して、先ほど申しましたように人口減少分を補おうという考えであります。
産業としての観光でありますが、二〇一七年の観光庁によります訪日外国人消費動向調査によりますと、訪日外国人は二千八百六十九万人、消費総額は四兆四千百六十二億円で過去最高であったわけでありますが、一人当たりの消費額は十五万三千九百二十一円で、前年比としましては残念なことに一・三%減となっているわけであります。
これは、一つには物消費、事消費ということから考えられるわけでありまして、日本でなければ購買できないという比較優位性が崩れているということも原因のうちの一つとして考えられているわけであります。したがいまして、事消費の重要性が着目されてきておりまして、なおかつ、より高額な物消費を向上させるためには、物にプラスしてその場でしか提供できない事の提供が比較優位を保つために必須という形になっているわけであります。
しかしながら、事消費を拡大するには、必ずしもそうとは言えないんですが、器が必要な場合が多いわけであります。事消費の器を建設するためには莫大な費用が必要となっております。代表的なものとしましてはMICE施設であるわけでありますけれども、MICE施設は建設に莫大な資金が必要であります。
現状、地方自治体等の公的セクターの財政状況を考えた場合でありますが、税金を投入することによって世界規模の大規模なMICE施設を建設しまして、そして維持、投資を回収をすると、その費用を負担し続けることは不可能のように思われるわけであります。そこで考えられますものが、民間の資本によりましてMICE施設を建設することであるわけでありますが、それにも困難が付きまとうわけであります。
これは、都市再生の推進に係る有識者ボードMICE施設機能向上ワーキンググループによります検討結果がもうこれは既に出ておりまして、二〇一三年三月二十八日に第三回参考データ集としまして内閣官房地域活性化統合事務局より公表されております。そこには、MICE施設の建設を民間が全て請け負い、そしてなおかつ運営することは、採算ベース上不可能だという結論が出ているわけであります。
そして、オリンピック、二〇二〇年にオリンピックが開催されるわけでありますけれども、その二〇二〇年に開催されるオリンピックといいますのは第二回目のオリンピックであるわけです。
第一回目東京オリンピックでありますが、一九六四年の第一回東京オリンピック後でありますが、オリンピック終了後、需要の急減ですとか過剰在庫といったことが主な原因となりまして、一九六五年には、山陽特殊製鋼が倒産、そして山一証券は日銀特融を受けるなど、記憶に残っていらっしゃる方残っていらっしゃると思いますけれども、一気に日本の景気は冷え込んだわけであります。しかしながら、当時の内的、外的要因、国債の発行などにより、そしてなおかつ当時は高度経済成長の真っただ中にあったわけでありますので、不景気は一年ほどで収束しまして、再び高度経済成長に戻ることとなったわけであります。
次の、第二回二〇二〇年の東京オリンピック後の話であります。この件につきまして様々な機関等々が検討をしているわけでありまして、けれども、日本銀行統計調査局は、報告書、二〇二〇年東京オリンピックの経済効果におきまして、東京オリンピックがインバウンド観光客に与える影響と直接的、間接的投資が及ぼす影響等について分析を中で行っているわけでありますが、その中で、規制緩和ですとか様々な対策を取ることにより、一層のインバウンド観光客を東京のみならず日本各地に回遊させることが可能であるとしております。ただ一方で、関連する建設投資は、二〇一七年から二〇一八年頃にかけまして増加しますけれども、二〇二〇年にかけてピークアウトする可能性があることも予想しております。
一九六四年の第一回の東京オリンピック後でありますが、当然のこと、当時は景気の落ち込みが見られたわけでありまして、二〇二〇年以降もその傾向が見られる可能性は極めて高い、なおかつ当時の日本と比べまして勢いとしましては現在はないと私は見ておりますので、それらを一つの緩和する材料としての特定複合観光施設というのは、経済的には効果があるものと考えるわけであります。
しかしながら、今回も様々な論点が上がってくると思われるわけでありますけれども、社会的観点であります。
そのことにつきましては、依存症の問題につきまして一番関心が高いということでありますけれども、二〇一七年の全国調査によりますと、成人の三・六%、三百二十万人程度が生涯のいずれかの一年間でギャンブル障害を疑われる状態と推計しているとなっております。これは、二十年前、三十年前に一時的にギャンブルにはまった人たちの数字も含まれているわけです。ただし、直近一年間では、ギャンブル障害を疑われる状態の成人は〇・八%、これは七十万人、〇・八%に減少をします。
従来、それはいいことではなかったわけでありますが、日本では本格的な依存症教育、介入等は行われていなかったわけでありまして、そのような状態でも、生涯から直近一年間で二百五十万人が自然治癒などで回復している可能性が存在するということであります。直近一年間の他国比較を見てみました場合でありますが、米国が一・九%、英国が〇・八%と、直近一年間でいえば他国と変わりない状態になっているという現状が存在するわけであります。
今自然治癒という言葉を使いましたが、これには研究論文等々が多く出ております。河本先生という精神科医の先生が書かれた論文でありますけれども、モデルで考えるギャンブル障害、臨床精神医学第四十五巻第十二号におきましては、様々なギャンブル依存症に関する論文のレビューを行っております。その中で、ギャンブル障害の疑いのある者の中で、コントロールギャンブル、小遣いの範囲内でのギャンブルを取り戻す者も少なからずいると、事によれば八割にも及ぶ可能性があること、そして疫学調査においても一年を超えるギャンブル障害継続率は二〇%から三〇%にすぎない報告もあることに言及されております。
ただ、比率ですとか自然治癒の問題があるといえども、ギャンブル依存症の問題は放置していい問題ではないわけであります。それで、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議というものが、今回のテーマとなっております特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、整備法の段階、の成立を契機に、幅広くいわゆる既存のギャンブル産業まで包括したギャンブル等依存症全般について、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって包括的な対策を推進するために開催されておりました。回数的には、二〇一六年末から二〇一七年まで年三回開催されております。同時に、ギャンブル等依存症対策関係閣僚会議幹事会、これは実務者レベルというか局長レベルの会議でありますけれども、それも四回開催されております。
したがいまして、既存のゲーミング、ギャンブル産業に対する依存症対策につきましてもしっかりと向き合っていこうという姿勢が出ておりまして、その中で、いわゆる既存のゲーミング産業、ギャンブル産業に対しましての依存症対策等々も今現状では整えられつつありまして、実行されつつあるというのが現状であるわけであります。
それをもちまして、もう少し強い規制を与えようという形でありまして、つい最近のことでありますが、ギャンブル等依存症対策基本法が二〇一八年七月六日に成立したわけであります。ギャンブル等依存症でありますが、本人、家族の日常生活、社会生活に支障を生じさせるものであり、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせているギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことができる社会の実現に寄与すると、そのような法律でありまして、今、既存のギャンブル産業も含めまして、将来もし法律が通った場合でありますが、特定複合観光施設区域が日本に現れるわけでありますけれども、その中を含めまして対策をしていくという制度は整えられつつあるというのが現状であるわけであります。
そして、そのことにつきまして、同じような経路を取ったというものが海外の事例に数多くあるわけであります。それは、ギャンブル依存症対策でありますけれども、やはりどのような国におきましても、新しいゲーミング産業、ギャンブル産業を導入する場合には、様々な対策が新しく取られたり、若しくは既存のギャンブル産業に対して依存症対策が取られたりということがあるわけでありますけれども、日本政府がベンチマーキングしていると言われておりますシンガポールでは、国、規制当局による有効な対策の結果、国民のギャンブル依存症有病率は、IR開業前よりはるかに減少しているわけであります。シンガポールにつきましては、IR、いわゆるカジノを駆動部分とするカジノができる前におきましても、競馬ですとか宝くじ、一種のスロットマシンが存在した状態の中で、いわゆるIRを導入するという状況にあったわけであります。
そして、失敗した事例としましてよく取り上げられる韓国江原ランドでありますけれども、IR開業当初は、明確な対策を講じてこなかった結果、国民のギャンブル依存症の社会問題がIR開業後顕在化したと。しかしながら、対策後、有病率は減少しているという現状があるわけであります。
これらの論点から鑑みますと、現時点では、特定複合観光施設区域整備法といいますものは、今の時点では必要なものと私は判断するわけであります。
以上をもちまして、私の報告は終わらせていただきます。