小此木政夫の発言 (予算委員会公聴会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○公述人(小此木政夫君) 最近の朝鮮半島情勢の著しい変化というのは、私が説明申し上げなくてもよく御認識のとおりだと思います。しかし、それがどのような性質のものなのかということを率直にお話し申し上げ、日本国としてもそれに対備していくということをお考えいただきたい、このように思う次第でございます。
南北の間の平昌オリンピックを媒介とする交流の始まり、そこから北側そして南側の特使が相互に訪問するというような事態になったわけで、その結果をもって、鄭義溶国家安全保障室、大統領府のですかね、大統領府の国家安全保障室長が情報院の院長とともにワシントンを訪問するというようなことになったわけであります。
それから先のことは御承知のとおりですが、この性質、この時代の流れの性質はどういうものかといえば、南北間で話合いが先に進展して、そのためには北朝鮮側の政策の転換というものがなければいけません。ですから、北朝鮮側では、去年の十一月の末に火星15というICBMを試射して、その後、ミサイル体系が完成したんだといって、そして新年に入ってからこれまでの瀬戸際外交のようなものを一気に転換して対話の方針に転じたわけでありまして、そのやり方を私は先南後米と言っています。まず南、後から米ですね、まず南との対話を推進して南北関係を改善した後、米朝関係の新しい展開に向けて突き進むというやり方であります。
そういう意味で、去年までの北の外交と今年の外交は質的に違うんだというふうにまず認識する必要があろうかと思います。つまり、瀬戸際政策から先南後米への変化というものがあったということなんですね。そして、平昌オリンピックを経て南との関係を著しく改善した後、今回の動きというのは、南北の共同のプロジェクト、米朝首脳会談という共同プロジェクトをワシントンで売り込んだということなんですね。売り込みは成功したと、一旦成功したと見なければいけないと思います。
もちろん、様々な留保は必要だろうと思いますが、しかし、四月の末に南北首脳会談が行われ、その後五月に、これは五月ですから五月の初めなのか後なのかによって随分違いますが、かなり連続的な形で米朝の首脳会談が開催されるというふうに考えた方がいいと思います。ですから、大変な衝撃が、この時期に外交的な衝撃が訪れるだろうというふうに私は想像しております。
伝えられたメッセージを見ますと、幾つかのポイントがございますが、しかし、余り注目されていない重要なポイントがございます。例えば、北側から南を通して伝えられたものの中には、非核化の協議をアメリカと行いたいんだ、ここが注目されている部分ですね。もう一つ、それから、米朝関係の正常化に向けての協議も行いたい、つまり米朝関係正常化を非核化の過程で実現したいと彼らは考えているということなんですね。この二つが大きなテーマになってくるわけであります。
それから、もう一点、余り注目されていない部分ですが、対話が持続している間には追加の核実験や弾道ミサイル発射試験など行わないと言っているわけですが、ここで言っているのは戦略的挑発を再開することはないと言っている。戦略的挑発という意味は、例えば、核兵器はもちろん戦略兵器ですね、ミサイルは、戦略的ミサイルといった場合は通常短距離のミサイルは入りません。ですから、IRBMからICBMまで、つまりハワイ、グアムから西海岸、東海岸に届く火星シリーズですね、いわゆる火星シリーズの実験はやりませんと言っているだけであります。
我々が最も警戒しているスカッドERというのは西日本をカバーするもの、まあ境界線にあるのは北極星2号と言われるものですが、これはまあ戦略ミサイルの部類に入れてもよろしいかと思うんですが、日本列島全体をカバーする、あるいはノドンミサイルと、こういったものの実験をやらないとは言っていないということなんですね。
彼らがここで言っていることは、つまり、アメリカとの協議の対象になるのも多分戦略的なミサイル、核であって、それよりも短いスカッドミサイルのような類いのもの、例えば、我々は経験したわけですが、三発、四発のスカッドERを続けて発射するような映像が御記憶にあろうかと思います。あれはこの北朝鮮側の約束には入っていないということでございます。
しかし、そのようなことを気を付けなければいけないわけですが、南北が今回行った共同のプロジェクト売り込み作戦みたいなものは、トランプ大統領によって受け止められているわけです。なぜ受け止めたんだろうかということに関しては、これまたいろいろな推測が可能になります。
しかし、重要なのは、これが南と北の共同のプロジェクトであった、共同の提案であったということですね。ですから、もしこれを拒絶すれば、北朝鮮の提案を拒絶しただけでなくて韓国の提案も拒絶したことになります。そうなると、残された選択肢というのは、結局軍事的なオプションと言われるようなものにかなり限定されてしまうわけであります。あるいは、拒絶された韓国が、韓国の世論がどう反応するかとか、つまり米韓同盟というものにひびが入ってしまうわけでありますから、そういったことを考えると、合理的にも受け入れなければいけないというふうに考えたと思います、これは瞬間の判断でしょうが。
もう一つの理由として、私は、トランプ大統領、最大限の圧力ということでこの間やってきましたけれども、しかし同時に、最大限の関与ということもちらほら言っていたわけでありますし、ツイッターでささやいている中には、金正恩委員長との会談を望むようなことも時々言っていたわけであります。それから、最も印象的なものは、今年の一月の十七日でありますが、トランプ大統領が記者の質問に答えて、そんな質問に答えることはできない、なぜならば、私は今重要なポーカーゲームを金正恩委員長との間でやっているんだ、手のうちを見せるわけにはいかないという趣旨の反応がありました。
私はそれを聞いて、はっと思ったわけですよね。あっ、この大統領はポーカーゲームをやっているのかと、それならば分からないではない。多分、そういった種類のもの、言葉に語弊があるかもしれませんが、ワンマン経営者特有のそういう取引のようなものをやってのけるという気質のようなものが双方にあったんではないか、あるんではないかと思うんですよね。それが今回の合意に至る背景にあるような気がいたします。
もしこれが会談が続けて行われるということになれば大変な衝撃だろうと申し上げましたが、失敗したらどうするのかということになると、これまた大変な衝撃でして、先ほど申し上げたようなこと、つまり即決した理由が逆の方に裏返ってくるわけで、軍事的なオプションしかないような状況がたちまち生まれてしまうわけですから、それはそれでまた大変な事態だと言わざるを得ないわけですが、多分、双方の間で、北側から伝えられた特別のメッセージというようなものというものは、トランプ大統領の心証に大きな影響を与えたんだろうというふうに私は思います。例えば、非核化は本当にやりますとか、裏切りませんとかというようなメッセージというのは、金正恩委員長からトランプ大統領に伝えられた可能性というのは十分にあるだろうと推測しております。
そんなわけで、今、日本外交が直面している事態というのはそれなりに深刻なものだと思います。これからまだ時間があるとはいえ、そうそう長い時間があるわけではありませんから、そのような外交的な衝撃に備えて、そしてそれにどうやって対応していくのかということが真剣に検討されなければならないと思います。
少し大げさに申し上げますが、一九七二年のニクソン訪中ですね、上海コミュニケが出て米中関係が正常化しました。この年のこれは二月のことですが、七月に南北共同声明というものが出ました。当時の朴正熙大統領と金日成主席、首相でしたね、まだ、の間で密使が交換されて共同声明が出されたわけですが、自主、平和、民族大団結という、こういう共同声明が出ました。そして、九月に田中首相が訪中されて日中関係が正常化したことは御承知のとおりです。
これは大げさ過ぎるかもしれませんが、そういう類いの衝撃、つまり、南北首脳が会談して、米朝首脳が会談した後、次に残ってくるのは、次に浮上してくるのが何かと言われれば、私は、日朝関係正常化とか日朝首脳会談というようなテーマが、こちらが望むか望まないかに関わりなく、浮上してくるだろうと推測しているわけであります。
その辺りのことをまだ、質問の過程でいろいろお答えしたいことはございますが、時間が参りましたので、私の公述はこの辺りにさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。