藤井克徳の発言 (厚生労働委員会)
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○藤井参考人 日本障害者協議会の藤井と申します。
障害者を締め出す社会は弱くもろい、これは、一九八一年の国連障害者年、ここでの国連決議の一節であります。これになぞらえれば、今回の問題というのは、障害者を締め出す政府は弱くもろい、こうなってしまうわけであります。
今度の問題の最初の報道、そして続報、これに接して次のようなことを感じました。
まず最初の報道に関しましては、まさかという思いでありました。そして、次第に怒りの気持ちが込み上げてまいりました。
次の節目は、検証委員会の報告の報道でありました。やはり唖然としました。と同時に、その内容が、検証ということよりは経過報告書に私には見えてきました。これについては後でまた詳しく述べたいと思います。
そして三つ目のポイントは、この第百九十七臨時国会での所信表明です。政府を挙げての、ある面では今度の水増し問題であります。政府の代表がどうおっしゃるのか、全国の障害者、関係者が注目をしていました。残念ながら、一言も触れられることはなかったわけです。
今般のこの発覚した水増し問題は、余りにも大規模であり、余りにも長期間であり、そして余りにも悪質です。
大規模といいますのは、政府の八割強の機関で関与していた。長期間といいますのは、これが二十年余りという見方もあれば、一九六〇年の法制定以来という見解もあるようです。また、悪質さでいうならば、裸眼視力をそのまま障害者の範囲に含める、また、百人に近い亡くなった方や退職者を現存する障害者としてカウントする、こんなことが行われたわけであります。
よく、役人は数字をつくるということを言われますが、まさにそれは決してオーバーではないという感じを持ちました。
ここで、この水増し問題の構図を私なりに簡単に述べたいと思います。五段階で説明がつくと思います。
第一段階は、外部から新しい障害者を雇用したくない。第二段階で、しかし、法定雇用率は遵守する必要がある。第三段階で、そうであれば内部から障害者を探し出そう。そして第四段階で、なければ障害者をつくり出そう。第五段階で、やれやれ、ことしもうまくクリアできた。こういう五段階を毎年繰り返してきたように思います。
最大の問題は、今述べた第一段階であります。すなわち、外部から障害者を採りたくない。実は、ここに今度の問題の本質があり、また検証のポイントもあろうかと思います。
結論から言えば、障害者排除、こう言ってもいいのではないでしょうか。少しそこで考えるならば、現在表面化しています優生保護法のあの被害問題の本質とも通底するものがあります。つまり、共通しますのは、官製の障害者排除と言ってもいいと思います。
それでは、なぜこれが長く続けられたかということについて言及したいと思います。
やはり、我が省庁の、うちの部署の労働力の全体的低下を防ぎたい、あるいは職場のバランスを守りたい、崩したくない、こんな声が聞こえてきそうです。労働力を低下させないためにも、どういう支援があればそれが可能なのか、どういうふうな条件があればバランスを崩さないのか、ここに考えがなぜ及ばなかったでしょうか。
さて、今度の水増し問題は幾つか問題がありますが、五点ほどに絞って問題点を列挙したいと思います。
第一点目は、おびただしい数の障害者が国の機関で働く機会が奪われたということであります。つまり、固有名詞なき被害者がどれくらいに累計値で上るのでしょうか。
第二点目としましては、誤ったデータで国の障害者雇用政策がずっと論じられてきたことであります。これは、立法府も労政審も私たち障害者団体も翻弄されたことになります。もしかしたら、取り返しがつかない、大きいものがあったかもわかりません。
第三に、民間の企業の障害者雇用、ここにも影響が生じていると思います。国の指導力は、この件では低下すると思います。実際にも、次期通常国会で準備されていました障害者雇用納付金制度の対象拡大、これが見送られたやに報道されています。
そして四点目、各省庁の関連する政策にも影響があると思います。つまり、政策の源流というのは、多くは審議会の事務局、つまり各部局、課、係から発信されます。この段階で障害者がいるのといないのとでは、障害者の目線があるのとないのとでは、大きく政策に影響があると思います。
そして第五番目の問題点は、障害者政策にかかわっての基礎的なデータ、これが信頼をなくしたことであります。
次に、検証委員会の報告並びに基本方針について言及したいと思います。
三つの問題点を提起します。
第一点目は、余りにも両方とも拙速であったように思います。これほどの大きな問題であり、そして積年の課題、これをたった一カ月余で結論を出すというのは余りにも乱暴ではありませんか。
第二点目としましては、この問題に関しまして、これが提起された、つまり示された時期、これの不自然さです。つまり、一日早く検証委員会の報告書が出されました。一日後に基本方針が出されました。考えてみれば、基本方針がそう簡単に出るんでしょうか。まさにこの検証委員会の結果ありきではなかったんでしょうか。検証委員会の軽視が懸念されます。
そして第三番目は、障害者の不在であります。この検証委員会にしろ、基本方針をつくる過程にしても、やはり私は、何をつくるかよりも、誰がつくるかが決定的な意味があると思います。障害者不在は、やはり大きな弱点を残したように思います。
そこで、次に、この検証委員会の報告書の中身でありますけれども、私が思うには、非常にそういう点でいうと不十分だというふうに思っております。
簡単に言えば、通読して思うことは、意識が低かった、関心が低かった、あるいは、積極性がなかった、恣意的であった、ずさんであった、つまり感覚用語が並んでいるんですね。とても政策の総括とか政策の検証とは思えません。私たちが求めていますのは、意識やあるいは関心という場合に、なぜ意識が低かったのか、なぜ関心が低かったのか、これが検証のポイントだったと思います。それには言及されていません。そういう点では、もう一度再検証するべきかと思います。
もし検証の結果が正しいとすれば、国を動かす公務員が、無意識のうちに、無関心のうちに法に触れる行為が繰り返される、こうなってしまうわけです。これはおかしいというふうに思うわけですね。
最後に、この問題の今後のことについて言及して、おしまいにします。
私は、この問題を考えていく上で、やはり国際規範を学ぶべきであると。ILOの百五十九号条約、障害者の職業リハビリテーション及び雇用、そして権利条約の第二十七条の労働及び雇用、ここに多くの視座とヒントが含まれています。
これに加えて、少しばかり列挙します。第一点目は、法定雇用率。これをやはりドイツ、フランス並みに引き上げるべき。そして、障害者の範囲。手帳とは連動しません、労働の障害というのは。これを確立すべき。そして、公的部門におけるペナルティー。これについては、納付金制度を含めて考えるべき。さらには、法的な根拠を持つ監視システムの構築。そして、試験制度。現在の能力検定では、知的障害者は立つ瀬がありません。さらには、合理的配慮を含む、働きやすい環境をどうするのか。このとき、同じ厚労省の福祉施策と労働施策とのジョイントですね、関係性。例えば、行動援護あるいは移動支援、これがどうして通勤支援には使えないんでしょうか。最後に、現在の雇用問題を考えていく審議システムの改善。もっと多様な意見を入れるべきかと思います。
最後に、権利条約をもう一回触れて終わります。
障害者権利条約の第二条にはこう書かれています。差別とは、障害を理由とするあらゆる排除であると。また、その第八条にはこうあります。障害者に関する定型化された観念、偏見、有害な慣行とは戦うこと。
ぜひ、立法府としても、もちろん政府としても戦ってほしい、このことを述べて、意見陳述を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)