有村秀一の発言 (厚生労働委員会)
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○有村参考人 トヨタ自動車の特例子会社でありますトヨタループスの有村でございます。
また、私が理事をしております障害者雇用企業支援協会は、通称SACECと呼んでおりますが、本日ここにもおられます全国重度障害者雇用事業所協会とともに、障害者を雇用する企業を支援する団体でございます。当方SACECが主に大企業の特例子会社を会員とし、サポート、全重協様は、それに加え、中小企業を幅広く会員とし、支援されておられます。
さて、本日は、私の方から、障害者雇用の現状と現在の課題について意見を述べさせていただきます。
お配りしました資料一を御参考にごらんください。これは、日本の法定雇用率の推移及び法改正等の推移を記載しております。
もう御存じのとおりと思いますが、法定雇用率制度は、一九七六年に、身体障害者雇用を企業に義務化するとともに、一・五%でスタートいたしました。その後、十年ほどのスパンで二回ほど雇用率が改変され、一九九八年に、身体障害者に加え、新たに知的障害者を雇用義務に加えることで一・八%に改変されました。
ここで、企業は、今までの身体障害者、見える障害と我々は定義しておりますが、と異なり、見えない障害である知的障害者の雇用に対して取り組むことになりました。
身体障害者の方は、その障害部分、配慮点がはっきりしております。そこさえクリアすれば、健常者と遜色のない職務遂行能力を発揮される方が多くおられますが、知的障害の方は、配慮点が見えず、その対応に相当苦労いたしました。身体と異なり、ハード的な配慮、いわゆる身体障害者、下肢障害の方に段差をなくすというようなハード的な配慮ではなく、ソフト的な配慮が必要で、また、その度合いも個人個人で異なります。仕事も細分化し、なるべく簡易な形で組みかえるなど、さまざまな工夫をしてまいりました。
その一事例でございますが、私どもの会社には数を数えることが苦手な社員もおります。そのときにどうするかということです。名刺を例えば十枚つづりで一まとめにしてほしいという作業があるとすると、私どもは、このように紙に十個の升を書きます。この升の上に一枚ずつ名刺を並べてくださいと言います。これはトランプ並べのように誰でもできます。全部の升が埋まったら輪ゴムをかけてくださいと言うと、必然的に十枚つづりの単位が整います。この升を十五にすれば十五枚つづりができるということで、このようにすることによって、数を数えることが苦手な人にもこのような仕事ができる、これがいわゆるソフト的な配慮、対応でございます。
その後、二〇一三年に再び雇用率が改変され、それからわずか五年後、ことしでございますが、精神障害者の雇用義務化とともに、二・二%に改変されております。
ここで、再び企業は、知的障害者と同じく見えない障害で、更に雇用管理が難しい精神障害者の雇用に取り組んできております。
精神障害者の方々は、知的と同じように見えない障害に加え、時間軸で変化する特性があり、その雇用管理は更に難しく、各企業は支援体制として精神保健福祉士や臨床心理士などの専門職を雇用し、サポート体制を構築して対応し始めております。
さらに、もう一つ大きな変化点がございます。今までの障害者雇用は、雇用すれば雇用するほど雇用障害者はふえてまいりましたが、ここ五年ほどは、障害者の高齢化により退職者が増大してきております。企業は雇用率の維持すら難しい状況に置かれております。これは、一九七六年に始まった雇用率制度から四十二年たっておりますので、当時十八歳で雇用された方も今は六十歳です。
高齢化は当然ですが、それ以外にも大きな課題がございます。
お配りしました資料の裏面、参考資料二をごらんください。これは、日本の障害者数とその年齢構成をあらわした図でございます。特に右側のグラフをごらんください。通常、雇用対象とされていますのは、六十五歳未満、十八から六十五歳と言われておりますが、その障害者数の割合が、身体障害者では二六%しかありません。
今まで日本の障害者雇用を牽引してきました身体障害者の方々が高齢化で大量の退職者を迎えておりますが、そのかわりに雇用対象となる障害者に身体の方がほとんどおられません。年齢構成的には、知的と精神の雇用にシフトしていかなければならないという点が大きな課題でございます。
身体障害者の方々が行ってきた仕事をそのまま知的、精神障害者の方々にシフトすることは難しいことです。そのため、企業では、新規業務の切り出しや雇用管理、支援体制の構築等、さまざまな対応が必要とされております。
また、障害者の数でも大きな課題がございます。身体障害者約四百四十万人、精神障害者四百万人と数的には同規模でございますが、障害者雇用の対象は、障害者であっても手帳保持というのが必要になります。その保持者が精神では非常に少なく、約五分の一、八十万人ほどです。
このように、民間企業は、四十年かけてさまざまな努力により障害者の受入れ体制を進めてきている中で、非常に厳しい局面にあります。今、二重苦、三重苦のような状況にございます。この中で、受入れ体制、支援体制、業務の切り出し準備を整えずに、単なる数合わせでの、地方、中央での八千名もの障害者雇用を短期でやることは、絶対にやめていただきたいと思います。これは、やれば大量の離職者を生む結果になり、障害者に多くの悪影響を及ぼすことになると思われます。
また、行政側が求めております多くの対象障害者の業務は、このまま進めますと、必然的に身体障害者が中心となると思われます。現在、身体障害者の高齢化により、ただでさえ非常に少ない雇用現場がパイのとり合いとなり、非常に混乱することは明らかでございます。
また、それ以上に、我々民間企業は、私どもが長年かけて雇用してまいりました障害者の流出が起きることを非常に危惧しております。
現時点、私どもの会社でも既に退職者が出ておりまして、就労支援事業者のところに移るなどの傾向が出てきております。民間の就労支援事業者は、この大量採用に向けて、紹介人材を集めているという傾向も出てまいっております。このように、我々が四十年かけてせっかく戦力になってきた人たちをとらないでほしいというところがお願いでございます。
ただし、障害者にも職業選択の自由がありますし、本人の意向で移るところをとめるわけにもいきません。それはまた、ある意味ではいいステップアップ雇用になっているかもしれませんので、我々としては、そこでまた非常に厳しい状況に置かれております。
これらのことより、八千名もの障害者雇用を短期で行うのではなく、離職を生まない、しっかりした受入れ体制や業務の切り出し等、準備を行った上で、また、できれば民間企業の雇用にも配慮していただいた長期雇用で進めていただくことを強く望みます。
私からの意見は以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)