野村豊弘の発言 (文部科学委員会)

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○野村参考人 それでは、レジュメに沿って意見を述べます。
 最初の「原子力損害賠償制度との関わり」というのは、私の発言の趣旨を正確に理解していただくというために、これまで私が原子力損害賠償制度とどのようにかかわってきたかを示すものでございます。
 ごらんのとおりですが、まず、前回の原賠法の改正のもとになりました検討会に座長として加わっておりましたほか、経済協力開発機構の原子力法委員会、それから国際原子力機関のINLEX会合にも専門家として加わっております。そしてもう一つは、民間の団体ですけれども、国際原子力法学会というところに理事として長い間運営に加わっております。特に福島事故以後は、これらの海外の諸機関において、日本における損害賠償の状況について報告してまいりました。
 次に、(2)基本的視点ですが、これは、私の陳述においてどのような視点から何を述べるかというものを示すものでございます。一言で言えば、これまでの原賠法の改正の経緯、CSCの条約への加入とこの問題に関する国際動向を踏まえて、今回の改正案を概括的に検討するということでございます。
 それでは次に、二に移りますが、まず、原子力損害賠償法の変遷ですが、昭和三十六年に原賠法が制定されました。この法律には、無過失責任、責任集中、無限責任の原則等、原賠制度の骨格が含まれておりまして、このときに損害賠償の措置額が五十億円に定められております。その後、政府補償契約と国の援助に関する規定の延長のために、おおむね十年ごとの改正が行われてまいりました。すなわち、昭和四十六年、五十四年、平成元年、平成十一年の改正ですが、主な改正点は、賠償措置額の引上げが中心でした。
 ところが、平成二十一年の改正では、そのために設置されたあり方検討会では、ジェー・シー・オー事故の経験を踏まえた議論がなされました。その結果、改正法では、損害賠償措置額が六百億円から千二百億円に引き上げられるとともに、紛争審査会の役割として原子力損害の範囲に関する指針の策定が追加されました。
 このような状況において福島事故が生じたのですけれども、円滑な賠償のために追加的な枠組みの整備が行われました。すなわち、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じた事業者相互扶助の枠組み、紛争審査会のもとでの和解仲介実施体制、特例法によるADR手続中の時効中断及び時効期間の延長、政府による仮払金の立てかえ払い等の措置が講じられました。
 そして、実際の賠償実務では、紛争審査会の指針に基づいて東京電力が自主払いするということが中心でしたが、窓口体制と請求管理、処理体制の必要性、避難者等を対象とした仮払いの必要性が顕在化しました。そして、東京電力による仮払いも行われております。
 他方、三ですけれども、原子力損害賠償に関する国際的な枠組みに目を転じますと、パリ条約、ブリュッセル補完条約、両条約改定議定書というヨーロッパ中心の枠組みと、ウィーン条約、改定議定書という世界的な枠組みとが併存しております。そして、この二つを統合しようとするのが、一九八八年のジョイントプロトコール、それから原子力損害の補完的補償に関する条約、いわゆるCSC条約ですが、後者は日本の加入によって発効するに至りました。
 これらの国際的な条約に基づく枠組みにおいては、以下のような原子力損害に関する原則がとられております。すなわち、原子力事業者への賠償責任の集中、原子力事業者の厳格責任、原子力事業者の賠償責任の最下限、保険を中心とした損害賠償措置の義務、事故発生国の裁判所による専属裁判管轄、被害者の平等な取扱いなどです。
 日本の原賠法はこれらの諸原則を取り入れた内容になっていて、CSC条約に加入したときにも大きな改正はなされておりません。
 そしてさらに、諸外国では、国内法についてさまざまな動向が見られます。例えば、賠償措置額の引上げの模索については、保険市場における対応の困難さが指摘されるところです。また、米独において既に存在する事業者の相互扶助による追加的措置の枠組み、保険の機能にかわる代替措置又は追加的措置の議論、それから日本の取組を参考にする円滑な賠償金支払いのための方策の検討などが見られるところでございます。
 そして、今回の改正についてですけれども、今回の改正の主な内容としては、損害賠償実施方針の作成、公表の義務づけ、仮払い資金の貸付制度の創設、和解仲介手続の利用に係る時効中断の特例の三つが挙げられております。
 既に述べたように、東京電力福島原発事故の経験を踏まえて、今後の賠償対策に必要な措置としては、賠償措置額を超える損害について、原子力損害・廃炉等支援機構による支援、それから個別、多様な損害への対応として、ADRを安心して利用できる体制の整備、それから第三に、事業者自体の賠償への取組体制として、窓口の整備、賠償方針、事務処理方法等の事前検討、避難者への賠償などが考えられます。
 今回の改正内容は、こういった措置に必要な法整備を行うものと評価できるのではないかと考えております。
 最後に、今後の課題としては、既に専門部会で指摘されておりますように、賠償措置額及び賠償措置のあり方、原子力事業者の法的整理における課題の整理、クラスアクション制度の導入、ADRにおける仲裁制度の導入などがありますが、いずれも検討しなければならない多くの問題を含んでいると言わなければなりません。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 野村豊弘

speaker_id: 20178

日付: 2018-11-20

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会