安冨潔の発言 (法務委員会)

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○安冨参考人 ただいま御紹介をいただきました安冨でございます。
 本日、外国人受入れに関する諸問題につきまして、この場で意見を述べさせていただく機会を頂戴いたしまして、大変光栄に存ずる次第でございます。
 外国人受入れに関する諸問題と申し上げましても、いろいろな観点があろうかと思います。私の専攻いたしますのは刑事法でございますが、出入国管理政策懇談会の座長代理あるいは難民審査参与員を務めておりますことから、外国人の受入れが日本の治安、安全、安心な社会の維持に与える影響、これを最小のものとするという観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に申し上げたいと思っておりますのは、外国人の受入れ拡大に係る制度の創設に当たっては、日本の治安や安全、安心な社会に与える影響を考慮しつつ、制度の悪用がなされないように検討なされなければならないということでございます。
 もとより、私は、外国人の受入れ拡大に反対という立場では決してございません。地方、都市部を問わず、現在、人手不足が深刻化している状況にあることは御案内のとおりでございます。
 そうした中にあって、規模の大小を問わず、事業者を中心とした経済生産性の向上というのは重要でございます。そのために、労働条件の向上を前提とした国内労働者の確保をまずもって行う必要があると考えております。
 しかしながら、これらをもってしても補い得ないような、そういう労働需要があれば、一定の範囲と一定の能力、条件をもちまして外国人労働者の方を受け入れるということも、我が国における経済社会基盤の維持にとって必要であるというように考えております。
 こうしたことを前提といたしまして、外国人労働者の受入れに当たっては、まず厳格な入国管理に加え、的確な在留管理を実施する、こういう仕組みを構築した上で、これを適切に進めていくことが重要だというふうに認識しております。
 まず、外国人を受け入れるに当たっての厳格な出入国管理につきまして申し上げたいと思います。
 空港におきまして、空港だけではありませんが、空港等におきまして、厳格な出入国管理、これは国民の平穏な生活を確保するため、極めて重要であります。
 今後、日本への外国人入国者数というのはますます増加することが見込まれます。こうした中におきまして、我が国にとってハイリスクのある者の流入を厳然と阻止するというためには、空港等で入国審査を担当する入国審査官に頼るだけでは足りないというふうに思います。外務省あるいは警察を始めとする法執行機関を含めて、世界的に関係機関による必要な情報共有をより一層強化することが必要であります。
 また、入管組織そのものの体制も、厳格な出入国管理の遂行にふさわしいものとするということも必要であると考えます。
 こうした厳格な出入国管理行政の強化、徹底ということは、我が国の治安、安全、安心な社会の確保という面にとって、外国人受入れを拡大するための大前提というふうに言えると思います。
 さて、今国会におきまして委員の皆様方により御審議を賜っております入管法、さらに法務省設置法の改正案についての主要な骨子は、以下四点にあろうかと思います。
 第一は、外国人の受入れ拡大のための新たな在留資格として、特定技能一号と特定技能二号を創設するということ。
 第二に、受入れ機関の届出事項を拡充するとともに、受入れ機関に対する改善命令や報告徴収等の規定を整備するということ。
 第三に、特定技能一号で在留する外国人の方に対しては、受入れ機関等が主体となって在留支援を実施するということ。
 そして第四に、入国管理局を組織改編をし、法務省の外局として出入国在留管理庁を設置するということ。
 これらのことを内容とするものと承知しているところでございます。
 まず、新たな在留資格を創設し、外国人の受入れを拡大することにつきまして申し上げたいと思います。
 今般、入管法の改正によりまして新たに受入れを拡大することで、外国人が我が国に在留することとなる見込み数につきましては、現在、受入れが検討されております十四業種における向こう五年間の累計人員が、最大三十四万五千百五十人と推計されているとのことでございます。
 この受入れ拡大に伴いまして、我が国の治安が悪化するのではないか、外国人犯罪がふえるのではないか、こういった漠然とした不安や懸念を抱いておられる方がいらっしゃるかもしれません。
 もちろん、外国人犯罪など治安の問題を殊さらに取り上げて偏見を助長するようなことがあってはならないこと、これは言うまでもございません。国民の不安や懸念に対して、今般の制度改正でどう対処されているのか、それが果たして十分なのか、こういった観点を踏まえて、外国人の受入れについて検討がなされなければならないというふうに考えます。
 このことは、民間で受け入れる事業者だけに任せるのではなく、入管を始めとする国の法執行機関が中心となり、外国人が居住し生活する自治体とも連携協力をし、外国人を取り巻く社会全体が取り組むべき課題、このように受けとめるべきではないかと思います。
 こういう観点からしますと、今般の特定技能で在留する外国人の在留資格に係る制度改正を見てまいりますと、入管による在留管理については、これまで以上に、より一層強化されているものと理解されます。
 すなわち、他の就労を目的とする在留資格においては、入管法に基づく受入れ機関からの届出は努力義務とされていたのでありますが、今回はこれを法的義務とすることとし、届出を要する事項についても拡充されております。これによって、特定技能で在留する外国人の方の在留状況については、入管が的確に把握できる仕組みとなっているというふうに言えます。
 この拡充されている届出事項では、特定技能で在留する外国人の方を受け入れる機関は、その外国人との間で雇用契約の変更をしたり、新たな契約の締結をしたときなどには、その旨を入管に届け出なければなりません。また、受け入れている特定技能で在留する外国人の活動状況等についても、入管に届け出ることとされているのであります。
 これらの届出規定によりまして、入管は、我が国に在留し、又は在留しようとする特定技能で在留する外国人が、どこの受入れ機関で、どのような内容の雇用契約に基づき、どのような就労活動をしているのか、さらに、受入れ機関や雇用契約が法令で定める基準に適合しているのか、こういったことをチェックできるようになっているのであります。これは、入管にとりまして、特定技能で在留する外国人の在留状況を的確に把握することを可能にするものでありまして、雇用の面も含め、適切な在留管理を実施できる仕組みと言えます。
 加えまして、これまでの入管法体系の中では、受入れ機関を直接に規制するという仕組みはとられておりませんでした。受入れ機関は外国人を雇用して就労させ、また、日常生活面でも外国人と密接にかかわるものであります。この果たすべき役割が不適切ですと、外国人の安定した在留活動に悪影響を及ぼすことになってしまいます。
 そのための一つの方策として、不適切な受入れ機関に対して直接的な規制をかけるという仕組みは効果的であります。この点は、今般の改正で、受入れ機関に対する報告の徴収、立入検査、罰則で担保される改善命令、こういうことが定められております。これは外国人の受入れに伴うこれまでの課題を是正し、必要な在留管理を適切に行うこととなるという意味で評価できるところでございます。
 また、今般の出入国在留管理庁の設置は、人員の拡大にとどまらず、抜本的な組織体制の強化と言えます。この組織改編により、これまで法務大臣の権限であったものの多くが、出入国管理庁長官の権限に移行するものと理解しております。これにより、入管業務、つまり外国人の入出国と在留管理に係る業務が大幅に拡大している現状にありまして、出入国在留管理庁長官のもとで多岐にわたる入管業務を機動的かつ一体的に遂行することに資することになる、このように考えられます。
 次に、我が国の不法残留者の問題について触れたいと思います。
 本年、平成三十年七月一日現在、不法残留者の数は約六万九千人となっております。ただ、その一方で、近年は、偽変造文書や虚偽文書を行使するなどにより、身分や活動目的を偽って在留資格を手に入れ、あたかも正規在留者であるかのように装って在留するという、いわゆる偽装滞在者が増加しているというように承知しております。また、留学生の資格外活動の問題、つまり、入管法令上定められた一週二十八時間という制限時間を大幅に超過して就労する、あるいは、日本語教育機関が学校ぐるみでそうした就労をさせるといった問題も顕在化しております。
 我が国に不正に入国し、在留しようとする外国人が一定数存在するということは事実であろうと思われます。入国審査や取締りの手を緩めれば、そうした外国人が多くの善良な外国人に紛れて入国を果たそうとしてやってくることは否定できないと思われます。また、入国審査や取締りを厳しくすれば、その網をかいくぐって入国したり、あるいは在留しようとする、こういう新たな手口を考える者も出てくるものと思われます。
 我が国の治安や安全、安心な社会を守るためには、こうした新たな手口に対しても、迅速かつ的確に対応することが求められると思われます。
 こうした不法残留者や偽装滞在者、違法な資格外活動に従事する留学生等の問題への対応については、今後は出入国在留管理庁が担うことになりますが、新たな組織体制により、一層厳格な在留管理がなされることが求められると考えているところでございます。
 さて、在留支援について簡単に申し上げておきたいと思います。
 今般の改正におきましては、特定技能一号の外国人に対しまして、支援計画に基づく在留支援が盛り込まれております。
 外国人にとっては、母国から離れ、文化や風習、生活環境と異なる中で生活をすることになります。外国人を労働者として受け入れるのですから、職業面でのサポートは、その専門性や技能を生かして就労することを支援することとなると考えられます。また、仕事から離れた日常生活や社会生活におけるサポートは、日本での安定した在留を継続することにつながります。これらのことはとても大切なことと思います。
 こうした支援により、外国人の方の在留が安定するようになれば、治安に対する不安や懸念というものはおのずから払拭されていくのではないでしょうか。適切な支援計画に基づく十分な在留支援が実施されることが期待されるところでございます。
 以上、網羅的になりましたが、今般の改正等につきまして、我が国の治安、安全、安心な社会を維持するという観点から、意見を述べさせていただきました。
 グローバルな人材獲得競争が進んでいる中で、優秀な外国人の方に、我が国のよさを理解してもらい、日本に来て働きたいという思いを持って日本を選択してもらうというためには、やはり受入れ環境をきちんと整えるということが必要不可欠であるというふうに思います。
 また、我が国にやってくる、あるいは生活をする大多数の外国人の方は、決められたルールを守る善良な方であります。こうした方々、外国人の方々との社会でのつながり、結びつきをより一層強め、安全で安心な社会を実現していくことが重要だと考えております。
 最後に、外国人受入れ拡大に伴う適切な在留管理ということで一言申し述べさせていただきたいと思います。
 ただいまも申し上げましたが、多くの善良な外国人の方との共生を実現するためには、あわせて、決められたルールに違反した外国人への厳格な対処を行っていかなければならないと思います。
 昨今、一部の収容施設におきましては、在留が認められず、あるいは難民として認定されなかったにもかかわらず、日本での滞在継続を狙って送還を忌避する者が増加し、それによって収容期間も長期化傾向にあります。そのため、処遇にさまざまな問題が生じているということも伺っているところでございます。
 今般の在留資格の新設によりまして、就労が認められる外国人の方の受入れの枠組みがより明確になり、不法就労や送還忌避が結果的に縮減するということが期待されるところでございますが、退去強制令書が発せられている外国人の迅速、的確な送還に向けた適正な手続を推し進めていくことも課題かというように考えているところでございます。
 委員の皆様におかれましては、こうした観点を含めまして、今般の外国人受入れ拡大に係る制度改正について、将来を見据えた充実した御議論を行っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 安冨潔

speaker_id: 13439

日付: 2018-11-22

院: 衆議院

会議名: 法務委員会