鳥井一平の発言 (法務委員会)
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○鳥井参考人 皆さん、こんにちは。
私、実は、きょうこうやってお呼びいただくのは非常にありがたく思っております。
私は移住連の代表理事を務めております。移住連といいますのは、正式名称は特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク、略称移住連といっています。この略称移住連、市民社会からの発言としてきょうこのような場で発言させていただくことに、重ねて、冒頭感謝を申し上げます。
実は私は、この法務委員会で意見陳述をさせていただくのは四回目となります。二〇〇九年の入管法改正、そして二〇一四年、二〇一六年の技能実習法審議、そして今回となるわけですね。ただ、この中で、これまでの三回に比べて、国会での審議がほとんど重ねられないうちにお呼びいただいたかなというのが実感です。このことが、法案審議の問題を象徴している一つでもあるのではないかというふうに憂慮しています。
さて、私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の求めによって急増した移住労働者とその家族、ニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題を取り組んできた全国各地のNGOや団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークで、二〇一五年にNPO法人として再スタートしています。現在、全国の百以上の団体と、多くの研究者、弁護士、地域の活動家などの個人会員に参加していただいております。
また、私自身は、個人加盟の労働組合、全統一労働組合の特別執行委員であり、バブル経済下のニューカマーの外国人労働者とのかかわりは三十年を超えています。直接的に労働問題に取り組んだのは一九九〇年からです。
ここでちょっと、申しわけありません、急遽つくったものですから、誤字脱字、てにをはが少し間違っているところがありますから、御容赦ください。申しわけありません。
そして同時に、外国人技能実習生権利ネットワークの運営委員をスタート当初から務めており、人身売買禁止全国ネットワーク、JNATIPの共同代表として、政府の人身取引対策に関する関係省庁連絡会議との情報提供、意見交換も行わせていただいております。
さて、本法案について述べていきます。限られた時間での陳述ですから、どの程度、私の考え、三十年間の思いを伝えられるのか不安ですが、述べていきます。
まず最初に、ゆがんだ移民政策についてです。
本法案審議は、直接的には本年二月のタスクフォース設置からスタートしているわけですが、移民かどうか、移民政策というのか否かなどの非論理的議論があったことにまず強い違和感を抱きます。
既にこの日本社会には、多くの外国籍住民、そして移民が存在しています。移民の存在や活躍を無視した、移民政策ではないと強弁することは、今この社会にいる移民の人権、人格権、生活権を顧みない、あるいは否定を宣言しているようなものです。今社会問題となっているヘイトスピーチの原因の一つも、移民の存在を否定する政治的リーダーシップにあると考えます。
この約三十年をとってみても、移民政策がないのではなく、ゆがんだ移民政策をこの社会はとってきたのです。
受入れ政策でいうと、まず、一九八〇年代後半から、バブル経済を背景にオーバーステイ容認政策をとりました。一九九三年には三十万人を超える非正規滞在者が働いていたことは、容認政策という以外に説明がつきません。
次に、一九九〇年からの日系ビザの導入政策です。主に中南米に出稼ぎに行った移民に帰ってきてもらえばいいという安直な政策で、来てみたら外国人だったという愚かな政策です。
そして、一九九三年からひたひたと拡大させてきた外国人研修・技能実習制度です。二〇一〇年には、国際社会からの奴隷労働、人身売買との批判をかわす意味も含めて、研修制度を分離し、労働者受入れ制度として、外国人技能実習制度を活用することに大きくかじを切りました。さらに、留学制度を悪用した労働者受入れも拡大させてきました。
お手元の絵解きをごらんください。パワーポイントの絵解きになっておりますけれども、この絵解きの中で数字としてあらわれています。めくって、二ページ、三ページになりますけれども。
労働者としての在留資格で入国し働いている外国人労働者が、外国人労働者全体で一九%しかいません。働くことを目的としないはずの技能実習生と留学生で四〇%を超えています。これを、おかしい、ゆがんでいるとなぜ言えない、言わないのでしょうか。農業では外国人労働者のうち七九・二%が、そして建設では六六・三%が技能実習生です。おかしいのです。留学では、在留数との単純比較で八三%の留学生が働いていることになります。
こんな国は、世界じゅう探してもどこにも見当たらないでしょう。おかしいのです。ゆがんでいるのです。目的外の在留資格に偽装しているのは、外国人労働者ではなく、私たちの社会であること、私たちが偽装しているのです。
かつて、興業問題で、興業名目でシンガーやダンサーとして、実際には性関連産業、風俗業で働かせていたという厳しい国際社会からの批判がありました。それは、絵解きの三ページの下に、興業のビザがこれだけ減じたことにあらわれています。
また、その上のところでは、研修から技能実習に転じた途端に、研修が、JITCO関連の研修だけでも七万から六百六十九に減ったという、一%も本当の研修生はいなかったということになるわけです。こんなことを私たちの社会はやっているわけですね。
ゆがんだ移民政策、受入れ政策は、人権侵害、労働基準崩壊をもたらし、民主主義を壊しています。その象徴的なゆがみが外国人技能実習制度です。奴隷労働構造のもとに、これは絵解きの真ん中あたり、六ページの上の絵解きですけれども、外国人労働者を置いています。開発途上国への技術移転など、みじんのかけらもありません。今なお続く時給三百円や強制帰国など劣悪な労働条件、人権侵害にも、残念ながら、私たちの社会は、私たち自身はなかなか、おかしい、ゆがんでいると言わずに来ました。
残念なことに、まずおかしいと声を上げたのは国際社会でした。二〇〇七年のアメリカ国務省の人身売買年次報告書での指摘に始まり、国連などから厳しい改善の勧告が重ねられてきました。
この技能実習制度については、後ほど詳しく述べられる参考人もおられるようですので、それに譲ることにしますが、百害あって一利なしの技能実習制度の速やかなる廃止を強く求めます。
お手元のニュースには、直近のいろいろな事件についても記載されております。
昨日の審議を見ていますと、昨年十一月以降の旧と新の間で何か違いがあるかのように審議がありましたが、全く変わっておりません。いまだに時給三百円、パスポートの取上げというのが起きています。そのことは改めて強調しておきたいと思います。
さて、移住連としての本案に対する基本的な考え方です。お手元にあります意見は後ほど御参照ください。
新たな外国人材の受入れについて。
まず申し上げたいのは、外国人材ではないということです。おかしいことの一つが、いつの間にか、外国人労働者が外国人材に単語として置きかえられてきたことです。第二次安倍内閣の発足以降、外国人材という表現が政府内で用いられるようになりました。このことは、労働力を商品として捉え、その有用性のみを活用しようとする姿勢を端的にあらわしています。労働者、生活者としての権利を保障し、同じ社会でともに生きる人間として迎え入れるという大前提のもと、外国人材という用語の使用はやめるべきです。
これは、こぼれ話として言いますけれども、私、長く政府との意見交換をやってきておりますけれども、それまでずっと外国人労働者と言っていた官僚が、突然外国人材と言い出しました。ですから、当初は、外国人労と言いかけて、外国人労、あっ、人材と言い直すような、こんなことが起きてきたわけです。
次に、外国人労働者に家族帯同の権利の付与を求めます。
法案では、深刻な労働力不足に対応し、日本社会の経済社会基盤の持続可能性に寄与するために、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動、つまり特定技能一号ですけれども、家族帯同が認められていませんが、最長五年間家族が離れ離れになる可能性があることは、人道的に極めて問題です。また、担い手を求める善良な経営者たちからも、安定的に働いてもらうには家族帯同をとの声があることに傾聴すべきです。見直しを強く求めます。
技能実習制度の廃止を。
法案には明記されていませんが、既に公然と、技能実習制度において技能実習二号修了者が特定技能一号へ無試験で移行することが可能とされています。こんなおかしな話はありません。技能実習制度は、開発途上国への技能等を移転することを本来の目的としてきましたが、実際には人手不足対策に利用され、さまざまな人権侵害を引き起こしてきたことは既に述べてきました。
私たちの批判に対して、厚労省や法務省は、開発途上国に移転をするという目的を盾に詭弁を弄してきましたが、技能実習から特定技能への移行は、建前、看板を放り投げ、技能実習制度が労働力補充システムであることを認めたことを意味します。技能実習制度は直ちに廃止されるべきです。
雇用の調整弁として外国人労働者を活用すべきではありません。
新たに受け入れる外国人労働者の雇用形態について、法案には明記されておりませんが、政府基本方針骨子案では、原則として直接雇用としながらも、分野の特性に応じて派遣形態も可能としています。
外国人雇用状況の届出によれば、外国人労働者の二一・四%が間接雇用であり、日本の労働者全体の三%程度と比較して間接雇用比率が高くなっております。そのことが、外国人労働者の就労の不安定さの原因にもなっています。新制度における受入れは直接雇用に限るべきです。
さらに、法案では、特定産業分野において必要とされる人材が確保されたと認めるときには、一時的に受入れ停止措置をとることとされています。これは、新たに受け入れる外国人労働者を雇用の調整弁として利用することを容認するものです。見直しを強く求めます。
外国人労働者への支援は国や地方自治体が行うべきです。
受入れ機関や登録支援機関に、新たに受け入れる外国人労働者に対する一次的な支援を担わせるべきではありません。
受入れ機関と登録支援機関の役割は、技能実習制度における企業単独型の実習実施者及び団体監理型の監理団体のものに類似しています。技能実習制度において見られたように、支援の名をかりたブローカーの介在を許してはなりません。支援は支援として国と地方自治体が行うべきです。新たに受け入れる外国人労働者に対する生活のための日本語習得の支援についても、受入れ機関や登録支援機関に任せるのではなく、国や自治体など公的機関が責任を持って行うべきで、そのために必要な予算措置を講じるべきです。
悪質な紹介業者の介在を排除する仕組みの構築をしてほしい。
悪質な仲介業者等の介在の防止策は、法案には明記されていません。技能実習制度の経験、教訓が示すように、民間の送り出し機関に頼っていては、悪質な紹介業者を実質的に排除することは不可能です。新たな外国人労働者の権利を保障するためには、技能実習生や留学生の送り出しと切り離し、公的な送り出し機関と国レベルで契約することが求められます。
ブローカーというのは、ブローカーの顔をして登場しないんです。支援としてブローカーが登場し、そこに入り込んでくるという、この三十年間の実態にぜひ目を向けていただきたいと思います。
法務省には司令塔的役割を果たすことはできません。
骨太の方針には、外国人の受入れ環境の整備は、法務省が総合的調整機能を持つ司令塔的役割を果たすとありますが、法務省設置法の改定案では、法務省の任務は、「出入国及び外国人の在留の公正な管理を図ること」とされています。そして、当該任務を担うことを目的として、法務省の外局として出入国在留管理庁が設置されることで、管理強化のみが進行することが懸念されます。
実際、既に、事実に反したデマの健康保険ただ乗り論で、医療現場、自治体窓口での入管との連携による外国人管理が強化されようとしています。
この際、はっきり申し上げますが、この三十年を限って言っても、外国人労働者が税金や社会保険料、労働保険料を払いっ放しです。見合った行政サービスを受けていません。また、外国人労働者を社会保険加入させない派遣会社など、事業主の問題がずっと続いています。外国人労働者は社会保険に加入したいんです。
外国人労働者の新たな受入れに当たっては、管理よりも支援や共生が優先されるべきであることから、総合的調整機能を持つ司令塔的役割は、既存の省庁においては内閣府が担うべきです。内閣府において対応が難しい場合には、専門的省庁が別途設置されるべきです。
外国人労働者とその家族は、既にこの社会において、事業の担い手、産業の担い手、地域の担い手として活躍しています。この事実を直視した移民政策こそが求められています。
外国人労働者の受入れとは、人間の受入れです。移住者とその家族を始め日本社会に生きる全ての人々が対等な立場で社会に参加し、主体的に議論することで、真っ当な移民政策を確立していかなければなりません。
そのためには、出入国管理及び難民認定法だけでは不十分であることは、少なくとも、この三十年間に引き起こされた外国人労働者とその家族の人権問題、労働問題の事実からも明らかです。これらを教訓とし、よりよい多民族・多文化共生社会に向けた包括的な移民基本法と、実質的な差別解消を担保する差別禁止法を制定することを改めて提言したいと考えます。
最後に。
私は、一九九三年三月八日の外国人春闘以降、毎年、各省庁と交渉、意見交換を行ってきました。ことしで二十六回目になっています。一九九八年には、千葉県銚子事件で外国人研修・技能実習制度に出会い、二〇〇五年に時給三百円の実態を知らされ、強制帰国にも遭遇しました。この約三十年、現場でさまざまな事件と向き合ってきました。
百の相談に百の物語がありました。労働問題だけではありません。生活全般にわたる事件です。子供の教育、差別に苦しむ子供たち、恋愛や結婚、妊娠や出産、病気、交通事故、住宅ローンやクレジットカードなど、日々の生活にかかわるさまざまな事柄です。さきにも述べましたが、この社会の一員としての見合った行政サービスや、参加する権利が保障されていません。
ただ、もう一方で、外国人労働者とその家族こそが、私たちのこの社会の労働基準、福祉、行政、教育などの課題を顕在化させたことも事実です。外国人労働者問題は、外国人が引き起こす問題ではなく、顕在化させたこの社会の問題、課題なのです。二十五年間の省庁交渉で、この社会の課題は明らかとなっています。この二十五年間ずっと、毎回、社会保険加入を求めてきています。
外国籍住民や家族への人権侵害の一番の大きな原因が、移民がいないこととしている政治的リーダーシップにあります。そして、外国人労働者を労働者として正面から受け入れないことにあります。この社会の一人一人に多民族・多文化共生社会の意識を醸成させていない要因です。
外国人労働者を使い捨ての即戦力でなく、この社会、産業の担い手として、働く仲間、同僚、地域の一員、隣人として受け入れることが求められます。
民主主義社会を深化させるのか否か。奴隷労働と対決、決別するのか否か。まやかしの外国人技能実習制度を温存し活用したゆがんだ受入れを続けるのか否か。労働者を名実ともに労働者としてこの社会に受け入れる、真っ当な移民政策こそが求められています。
戦争という大きな失敗を教訓化してきた七十年がある私たち、この三十年の外国人労働者とその家族による活躍と顕在化した課題を知っている私たちにこそ、地球的規模、共通課題である移民政策を正面から議論し、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会、つまり民主主義社会の深化が実現できるはずです。
今、私たちはチャンスです。人手不足、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを契機に実現するべきは、民主主義の深化のはずです。ここ二、三年あるいは五年先の社会を考えるのではなくて、五十年、百年を見据えた議論が求められています。
多民族・多文化共生社会は既に始まっています。移民は既にこの社会で活躍しています。違いを尊重し合う労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会は必ず実現できます。まずは、労働者を労働者として受け入れる制度設計です。
この委員会に出席されている皆さん、あるいは国会におられる議員の皆さん、政治的リーダーの決断で必ず実現できます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)