増田一世の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(増田一世君) 本日は発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、埼玉県さいたま市にありますやどかりの里で働いております。やどかりの里は精神障害のある人たちの生活支援や働くための支援を行って、今、三百七十人ぐらいの方が様々な形でやどかりの里を利用し、地域生活を送っています。
 精神障害は中途障害です。病気や障害を受け止める時間が必要で、その中で働くことへの意欲も生まれていきます。自分の病気や障害に向き合いながら、長く働き続けることを目指している人たちがたくさんいます。
 障害のある人たちはどんな思いで働いているのか、私が代表を務めるやどかり出版で出しているこの本があるんですけど、そこから、「働きたいあなたへのQ&A」という本の中から御紹介をします。
 今回の障害者雇用水増し問題ですけれども、働きたい、働いて生計を立てたいと願う人たちの働く機会を四十年余りにもわたって奪ってきたというふうに私は思っています。
 さて、当事者の声ですけれども、この方はフルタイムで、開示といって、障害があることを会社に伝えて働いている方です。この人は浪人中に幻聴が聞こえるようになりました。大学入学後も幻聴に悩まされ、精神科に入院することになります。そして、退院後、体力も衰えてしまったのでコンビニでのアルバイトも非常につらくて、精神障害者の作業所で体力的、精神的に充電しながら就労準備の訓練を経て、同じ病気の仲間との交流もあって、実習先だった企業に就職をしました。そして、彼は細かいことにこだわる傾向があるので、余計なことを考えないように、無理しないように気を付けて働き続けよう、そんなふうに思って働き続けています。
 もう一人、Bさんの働く上での工夫もとても大事です。朝、精神薬を飲んでいるので薬が抜けなくて困っていると。少し早く出てコンビニでコーヒーを飲んでゆっくりして、職場に三十分前に着くようにしている。あるいは、不眠や、物事を関連付けてしまうことが、それから猜疑心が強くなることが調子の悪くなり始めだから、早めに休養を取るようにする。
 こんなふうに、多くの精神障害の人たちは働きながら自分の生活を整えて頑張っています。
 今回、この水増し問題について、私が関わっている日本障害者協議会、JDというふうに呼んでいますけれども、この問題を非常に深刻に捉えてきました。声明や要望書も提出し、今日の私の資料の中にも入れさせていただいております。
 そして、この障害者雇用水増し問題の検証に障害当事者や関係者の参画を求めてきました。でも、それはかないませんでした。国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会が始まり、四十年以上にわたる違法行為を検証するのに、たった二か月という短期間で報告書が発表されました。その報告書には、亡くなった人や退職者、うつ状態や不安障害を身体障害として算定する、びっくりするような対応がまかり通っていたことを知りました。
 しかし、それらの不適切な対応は、厚生労働省の障害者雇用の実態についての関心の薄さ、対象障害者の計上方法についての正しい理解の欠如、法の理念に対する意識の低さというふうに報告をされました。これでは、長年にわたる法律違反がなぜ続いてきたのか、全く解明されていないというふうに感じています。私たちが知りたいのは、なぜ関心が低かったのか、なぜ正しい理解が欠如していたのか、なぜ意識が低かったのか、このなぜなんです。恣意的だが意図的ではないとなぜ言えるのか、疑問が残ったままです。
 平成二十六年の独立行政法人労働者健康福祉機構による障害者雇用の虚偽報告については、元理事の人たちが罰金刑の刑事処分を受けています。しかし、検証報告では法律違反の事実を曖昧にし、十一月十二日には厚生労働省の違法行為はなかったとの表明があり、そして、他の省庁も職員の処分を見送るとしています。
 しかし、今回の水増し問題は、長年にわたる違法状態であり、障害者排除であったことは紛れもない事実です。雇用されるべき人が雇用されなかった不利益被っています。固有名詞なき被害者がいるのです。その立場に立った政治責任が問われなくてはなりません。この違法状態を長年放置してきた各省庁の大臣や幹部の監督責任も問われるのではないでしょうか。
 改めて、今日を契機に、国会での徹底解明と障害当事者、関係者が参画する徹底的な再検証の場を設けることを求めたいと思います。
 お手元の資料の中に、障害者権利条約の全文があります。日本も締約国です。第三条の一般原則、第四条の一般義務、第五条の平等及び無差別、そして、第二十七条の労働、雇用に記されている「公的部門において障害者を雇用すること。」、これを重く受け止めながら、障害のある人の労働及び雇用制度を抜本的に見直す機会にするべきだと感じています。
 国家公務員障害者選考試験が始まりますけれども、第一次選考の試験には高等学校卒業程度の問題と作文があります。こうした選考方法も一つの方法ではありますけれども、これが全てではないはずです。知的障害のある人、精神障害のある人、中央省庁で雇用されているのはごく少数です。それぞれの障害特性に応じた採用方法や働き方が工夫されなくてはならないでしょう。そして、障害のある人が健康を守って働き続けるには、多様で継続的な支援が必要です。アクセシビリティーの観点での省庁全体の環境整備が求められます。
 もう一つが、個々に応じた支援としての合理的配慮の提供です。通勤時の支援、職場でもジョブサポーターの配置、定期通院時の休暇の保障、障害に合わせた仕事の確保や作業手順の改善、休憩の取り方、また、通勤や長時間労働が困難な人に対しては在宅勤務やテレワークなども視野に入れるべきではないでしょうか。また、障害者雇用と国家公務員定数法の関係も検討が必要でしょう。
 採用を進める、そして同時に職場環境が進まなくては、障害者の雇用は進まないというふうに感じます。そういう準備がどのように進められているのか、数合わせの障害者雇用にならないように細心の注意と準備が必要です。
 今後の障害者の労働及び雇用について抜本的に考えていただきたいことがあります。
 私の資料の三ページ目から四ページ目に詳細がありますが、幾つかポイントを絞って申し上げたいと思います。
 一つは、法定雇用率です。ドイツは五%、フランスは六%です。日本の公的部門の二・五%は余りに低過ぎませんか。そして、重度の障害者をダブルカウントする制度は廃止するべきです。これは事業者側の論理でしかないのです。
 二つ目は、労働及び雇用政策における障害者の捉え方です。現在の障害者手帳に基づく障害等級の判定は医学モデルです。障害の社会モデルの視点を踏まえた障害の判定方法が求められています。
 三つ目には、公的部門にも障害者雇用納付金制度や何らかのペナルティー制度を検討する必要があると考えます。
 最後に、政策審議システムの抜本的な改革を求めたいと思います。障害者の労働及び雇用政策の発展のためには、労働分野と福祉分野を重ねた検討が必要です。現在の労政審の障害者雇用分科会に相当数の福祉分野関係者を加えることや、審議会のメンバーに障害当事者代表の枠を強化するなど、政策審議システム改革も求められることを述べ、私の意見とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 増田一世

speaker_id: 34221

日付: 2018-11-20

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会