満田夏花の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(満田夏花君) ただいま御紹介にあずかりました国際環境NGO、FoEJapanの満田と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 FoEJapanは、国際的な環境NGOとして、二〇一一年三月十一日の福島第一原発事故を契機に、原発事故被害者の支援、そしてその権利擁護のための活動を行ってきました。二〇一二年からは、福島の子供たちを対象とした保養活動に取り組んでいます。また、原発事故被害者の救済を求める全国運動の事務局、二〇一六年からは原発事故避難者の支援を行う避難の協同センターの設立に関与し、現在、世話人及び事務局を務めております。本日は、こういった観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
 主な意見は以下の八つでございます。
 まず、政府案は抜本的見直しからは程遠いのではないか。二番、守られているのは原子力事業者、株主、銀行ではないか。三番、原発事故被害者、また国民がこの見直しプロセスに関与できたのかという点。四番、損害賠償措置額を引き上げるべきという点。五番、原賠法の目的、第一条から原子力事業の健全な発達に資するを削除すべきである点。被害者の保護のみとすべきと考えます。また、国の援助、第十六条については、支援機構における資金の流れを明らかにした上で国民的議論を行うべきという点です。六番、原子力事業者以外への求償ができるようにすべき。七番、原子力事業者に原子力損害賠償紛争解決センター、ADR和解案の受諾義務を課すべきという点。八番、損害賠償実施方針の作成、公表の義務付けについても意見を述べさせていただきたいと思います。
 最初に結論を申し上げますと、私としては、この見直し案は抜本的な見直しからは程遠いと考えております。現在の支援機構を介した賠償資金の実際の流れを精査し、原賠法の目的、賠償措置額の引上げ、原子力事業者の責任、国の責任、援助の在り方、ADRの実効性の確保などに関して、やはり国民的議論が必要だと考えております。
 その趣旨を述べさせていただきます。
 まず最初の、政府案の抜本的な見直しからは程遠いのではないかという点なんですが、御存じのとおり、今回の見直しの出発点は、二〇一一年八月の原子力損害賠償支援機構法の採択の際に、附則六条第一項で原賠法の抜本的見直しがうたわれ、かつ衆参両院の附帯決議において、賠償措置額の在り方など抜本的な見直しを行うこととされたことに始まります。
 しかし、それから七年経過したのにもかかわらず、今回の見直し案はこうした意味で極めて不十分なのではないでしょうか。抜本的見直しとは呼べないと思います。なぜ今臨時国会でここまで拙速に審議、採択するのでしょうか。
 二番、守られているのは原子力事業者、株主、銀行ではないかという点です。
 福島第一原発事故の賠償の状況を見てみましょう。政府は、東電の破綻を避けるため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を設立し、交付国債、政府保証による融資、電力事業者からの負担金などを東電に支払う仕組みをつくりました。結果的に東電は法的整理を免れ、経営者、株主、東電に融資している銀行はその責任を果たしておりません。
 支援機構を通じて交付された資金のうち、東電が負担するのは最大で四割程度というふうにされています。もうけるときはもうけるが、事故を起こしても最後は国が何とかしてくれるというあしき前例をつくってしまったのではないかと懸念しております。
 この支援機構の制度で守られているのは、被害者でもなく、国民でもなく、原子力事業者及びその株主や銀行となってしまっているのが実態ではないでしょうか。賠償措置額の引上げなどの抜本見直しなしではこの構造が固定化されてしまうことを大変心配しています。
 三番、原発事故被害者、国民が見直しプロセスに参加できたのかという点です。
 今、鎌田先生が御紹介ありましたように、原子力委員会専門部会において二十一回の会議が行われました。その中で、福島県とか関係団体からのヒアリングは行われたと承知していますが、少なくとも私が確認した範囲では、原子力事故被害者からのヒアリングというのが直接行われず、被害者の置かれた窮状というのが語られなかったのではないかと考えています。
 実際に今この瞬間にも、ふるさとを失い、コミュニティーを失い、家族とも離れ離れになり、住宅提供などの支援も打ち切られて、苦しんでいる被害者がおります。区域外避難者の住宅提供は二〇一七年三月に打ち切られました。家賃補助なども今後打ち切られようとしています。区域内避難者の住宅提供も来年三月で打ち切られます。私たち支援団体の元には、避難者から、生活苦に直面した避難者から悲鳴のようなSOSが届いています。私たちが知っているのは氷山の一角にすぎないと考えています。これは、そもそも賠償制度の不備の問題ではないでしょうか。このような被害者の置かれた実態というのは検討されたのでしょうか。
 また、国民の意見の聴取という意味でも、形式的なパブリックコメントが一回行われただけであり、その内容はほとんど反映されていないと思います。公聴会も実施されませんでした。
 このように、見直しプロセスに原発事故被害者や国民の声が反映されなかったのは大変大きな問題ではないかと考えております。
 四番、損害賠償措置額を引き上げるべき。
 福島第一原発事故における被害者の賠償費用、除染費用は見込額で総額十四兆円となっています。賠償措置額は現行の法律では千二百億円となっていますが、この百分の一以下にすぎません。原賠法第六条では原子力損害を賠償するための措置というふうに書いてあるんですが、そのための措置としては全く不十分です。
 何よりも問題なのは、原子力事業者が千二百億円を超える賠償については支援機構を通じて国が何とかしてくれるというふうに認識していることです。例えば、島根原発三号機の説明会において中国電力は、支援機構の制度により、上限千二百億円を超えた場合は国が補填することになる、我々も一定額を拠出しているという発言をしています。ちなみに、日本原電も東海第二原発の説明会で同様の発言をしています。
 ただ、この電力会社の説明は間違っていて、現在電力会社が支払っている負担金というのは、将来の賠償のためではなく、福島第一原発事故の賠償に充てるためのものです。また、相当額が、先ほど申し上げましたように交付国債の形で国から交付され、また政府保証による借入れを行っています。
 電力事業者の負担金といっても、これは電力料金に上乗せされ、結局私たち電力消費者に転嫁されているのが実態です。原発を使っていない新電力からも徴収されます。さらに、過去に賠償措置を行わなかったということで、過去分と称して託送料に乗せられようとしています。
 原賠措置を行わなかったのは原賠法の不備であると考えますが、将来の世代も含めた国民にコストが転嫁されているのは大変大きな問題です。政府の報告書もこの点を指摘しています。例えば、東京電力・1F問題委員会では、原発事故への対応に関しては準備不足とし、経済産業省の報告書でも、原賠法の趣旨に鑑みれば、本来、こうした万が一の賠償への備えは1F事故以前から確保されておくべきだった、政府は何ら制度的な措置を講じていなかったというふうな記述をしています。
 今国会で賠償措置額を据え置いて、将来、万が一事故が起こったときに、あのとき十分な備えをしていなかったとして、更なる負担を将来世代や被害者や原発からの電気を選択しない人も含めた国民全体に強いるのでしょうか。それは余りに理不尽だと考えています。
 政府は、賠償措置額を据え置く説明の一つとして、これが一番重要な理由だと思いますが、要は、民間責任保険では保険市場がもうこれ以上は引き受けられないというふうにしております。すなわち、原発というものが保険市場が引き受けることができないリスクを持っている、又は、引受可能だとしている限度額、これが千二百億円なわけなんですが、その百倍以上もの被害をもたらし、今後ももたらす可能性があるということなんだと思います。それをそのまま続けるのかという問いだと思います。
 これについては、原子力委員会の専門部会における議論では明らかに不十分です。幅広い国民的議論が必要ではないでしょうか。そして、仮に原発を続けるとするならば、原子力事業者がそれに見合う額、すなわち十四兆円規模の額をあらかじめ準備し、供託するしかないのではないでしょうか。
 五番、原賠法の目的、第一条から原子力事業の健全な発達に資するを削除し、被害者の保護のみとすべきです。また、国の援助については、支援機構における資金の流れを明らかにした上で国民的議論を行うべきだと考えております。
 原賠法は賠償について定めたものであり、本来被害者保護に重点を置くべき内容です。原子力事業の健全な発達に資するという目的と被害者の保護という目的が同列に扱われるのは明らかにおかしいと考えます。この文言があるがために、前述のように、本来原子力事業者が担うべきコストを将来世代も含めた国民全体で負担するというゆがみを許すことにつながってしまったのではないでしょうか。
 また、第十六条、損害が賠償措置額を超えるときの国の援助についても、現在の支援機構の資金の流れは大変分かりづらく、かつ不透明でございます。これを全て明らかにした上で国民的議論を行って、国民がどこまで負担するのか、どのような場合に国が援助するのか、やはり社会的なコンセンサスが必要だと考えております。
 六番については割愛させていただきます。
 七番、原子力事業者にADR和解案の受諾義務を課すべきという点についてです。
 福島第一原発事故においては、被害者に対する現実の賠償は、原子力損害賠償紛争審査会が策定する指針に沿って東電がそれを実施し、実際の賠償の支払額を決めるのは加害者である東電となっています。これは被害者にとっては大変不利な状況に置かれているというふうに考えております。
 また、賠償指針の内容も、避難区域以外からの避難者の賠償がごく一部しか認められない、ふるさと喪失の損害や放射性物質による汚染などの被害が含まれていないなど、不十分な点がございます。
 このような中、ADRの和解案というのは大変重要な役割を果たすわけなんですが、東京電力はADRの和解案の尊重を約束しながら、実際はそれを再三にわたって拒否しています。
 浪江町住民一万五千七百人のADR集団申立てでは、東電が六回にわたって和解案を拒否しました。申立てを行った住民のうち、高齢者など九百人以上の住民が亡くなっています。東電に対して、十一月二十七日、ついおとといですか、浪江町住民百九人が東電と国を相手取って福島地裁に提訴しました。しかし、長期の時間を要する裁判というのは住民に多くの苦痛と負担を与えるのではないでしょうか。
 政府は、以下の理由で原子力事業者のADR和解案の受諾義務を見送ったとしています。
 ①被害者が拘束力のある手続を望まない場合がある。
 しかし、これは果たして本当にそうでしょうか。むしろ、東電、原子力事業者がADR和解案を拒否するような事態こそ、被害者の苦痛につながるのではないでしょうか。
 ②原子力事業者の裁判を受ける権利が制限される。
 これにつきましては、日弁連あるいは添付させていただきました原子力市民委員会の声明にあるとおり、原子力事業者が一定期間内に裁判を提起しない限り、和解内容を受諾したものとみなすというような規定にすればよいのではないでしょうか。
 ③原子力事業者に義務付ける賠償の実施方針の中にADRの和解案の尊重を盛り込ませる。
 ③については、東電は三つの誓いとしてADR和解案の尊重をうたっています。しかし、実際は和解案拒否を繰り返しております。
 最後に、損害賠償実施方針の作成、公表の義務付けについてでございます。政府案に盛り込まれている内容です。
 法案では、原子力事業者は原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を図るための方針を作成しなければならないとのみ記されており、詳細については書かれておりません。しかし、これでは内容が十分であるかが問われないことになってしまいます。第六条の原子力損害賠償措置についての記述と同様に、原子力事業者は損害賠償方針を作成、公表しなければ原子炉の運転をしてはならないとし、損害賠償方針に盛り込む項目について明記すべきであると考えます。それについて第三者がしっかりと確認し、不十分な場合は原発を運転してはならないというような規定を盛り込むべきではないでしょうか。
 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 満田夏花

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日付: 2018-11-29

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会