文教科学委員会

2018-11-29 参議院 全82発言

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会議録情報#0
平成三十年十一月二十九日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十七日
    辞任         補欠選任
     石川 博崇君     浜田 昌良君
 十一月二十八日
    辞任         補欠選任
     太田 房江君     衛藤 晟一君
     北村 経夫君     橋本 聖子君
     蓮   舫君     杉尾 秀哉君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         上野 通子君
    理 事
                石井 浩郎君
                江島  潔君
                神本美恵子君
                吉良よし子君
    委 員
                赤池 誠章君
                今井絵理子君
                衛藤 晟一君
                小野田紀美君
                大野 泰正君
                橋本 聖子君
                水落 敏栄君
                新妻 秀規君
                浜田 昌良君
                杉尾 秀哉君
                伊藤 孝恵君
                大島九州男君
                高木かおり君
                山本 太郎君
                松沢 成文君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        戸田 浩史君
   参考人
       原子力損害賠償
       紛争審査会会長
       早稲田大学前総
       長        鎌田  薫君
       FoEJapa
       n事務局長    満田 夏花君
       福島原発訴訟津
       島被害者原告団
       副団長      佐々木 茂君
       弁護士     馬奈木厳太郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
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上野通子#1
○委員長(上野通子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、石川博崇さん、蓮舫さん、太田房江さん及び北村経夫さんが委員を辞任され、その補欠として浜田昌良さん、杉尾秀哉さん、衛藤晟一さん及び橋本聖子さんが選任されました。
    ─────────────
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上野通子#2
○委員長(上野通子君) 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、参考人として原子力損害賠償紛争審査会会長・早稲田大学前総長鎌田薫さん、FoEJapan事務局長満田夏花さん、福島原発訴訟津島被害者原告団副団長佐々木茂さん及び弁護士馬奈木厳太郎さんに御出席をいただいております。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、大変御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見を頂戴いたして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方でございますが、まず、鎌田参考人、満田参考人、佐々木参考人、馬奈木参考人の順でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、参考人、質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず鎌田参考人から御意見をお述べいただきます。鎌田参考人。
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鎌田薫#3
○参考人(鎌田薫君) おはようございます。ただいま御紹介いただきました鎌田薫でございます。
 私は、平成二十三年四月に原子力損害賠償紛争審査会が設置されて以来、東京電力福島原発事故に対する損害賠償の指針の策定に関わり、平成二十八年四月からは会長を務めてまいりました。さらに、平成二十七年五月に設置されました原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会の部会長代理として、濱田純一部会長を補佐して、原子力損害賠償制度の見直しに係る報告書の取りまとめに携わりましたので、本日はこの専門部会における審議状況等について御説明をさせていただきます。
 お手元に専門部会報告書とその要点を記した三枚物の資料をお配りしておりますが、時間も限られておりますので、三枚物の資料を用いて説明をさせていただきます。
 一ページ目に専門部会の審議経過を記しておりますが、平成二十七年五月から約三年半、計二十一回に及ぶ審議を重ねて、本年十月末に報告書を取りまとめました。
 次のページを御覧ください。
 原賠制度の見直しに当たりましては、東電福島原発事故の経験等を踏まえ、被害者保護に万全を期す必要があるため、原子力損害について被害者が適切に賠償を受けられるための制度設計の検討が必要であるという点を基軸にいたしまして、原子力事業者及び国の役割分担を考慮し、被害者への賠償に係る国民負担の最小化や原子力事業者の予見可能性、すなわち賠償リスクの予測可能性の確保にも留意しながら、適切かつ迅速な賠償を実施する制度の在り方について検討を進めてまいりました。
 原子力損害賠償制度における官民の適切な役割分担に関し、まず国の役割について、専門部会では、現行の原賠法に国の責務に関する規定を追加すべきといった意見が示されました。責務という語は多義的でありますが、国が賠償の負担を負うべきであるという点については、国が原子力政策を進めていることから直ちに国に損害賠償責任があるということは難しいといった意見、国は原賠法第十六条の具体的な措置として原賠・廃炉等支援機構法による支援を行っているといった意見がありました。また、国は紛争審査会における中間指針等の作成やADRセンターにおける和解仲介手続の実施など、迅速かつ適切な賠償を実現するための体制を整備してきたことも、国が果たしてきた重要な役割であります。
 こうしたことを踏まえ、原子力事業者が万全の被害者の救済や迅速かつ適切な賠償を最後まで行うよう、国は引き続き責任を持って原子力損害賠償制度を適切に運用していくことが重要であり、このことが立地地域を始め国民全体の原子力に対する信頼や理解に資するといたしました。
 次に、原子力事業者等の責任を無過失責任とし責任集中をさせることについては、ほとんど異論がありませんでした。
 また、責任集中に関しましては、関連事業者や製造業者を免責することにより資機材の安定供給に資するといった意見があり、この点は、東電福島原発事故の収束や廃炉作業等に従事する事業者にとっても事業参画に必要な法的条件であると考えます。さらに、保険の引受能力を最大化することが可能になること、被害者にとっては原子力事業者が損害賠償請求の相手方となることが明確になること、原子力損害の補完的な補償に関する条約、CSCでありますが、この条約において原子力事業者への責任集中が求められていることなども考慮して、現行の規定を維持することが妥当であるといたしました。
 これに対し、原子力事業者の責任の範囲に関しては意見が分かれ、時間を掛けて議論をいたしました。
 原子力事業者の予見可能性確保の観点から責任を有限とし、責任限度額を超える部分は国が負担すべきであるといった意見がある一方で、無限責任が不法行為の一般原則であること、責任限度額の水準を設定するのが難しいこと、原子力事業者が責任限度額を超える賠償責任を免れて事業を継続することについて国民の理解を得るのが困難であることなどから、無限責任を維持すべきであるという意見もありました。
 このような議論を踏まえ、法的、制度的に短期間で解決できない課題が多く、現行の原子力事業者の責任の範囲を変更する状況にはないものと考えられる、このため、原子力事業者の責任の範囲については現行どおり無限責任を維持することが妥当であるといたしました。
 次に、原子力事業者の株主あるいは金融機関等のいわゆる利害関係者の責任の在り方や法的整理に関して、東電を倒産させなかったことで、利害関係者が明確な責任を負っておらず原子力事業に対する不信感を生じさせているという意見がある一方で、法的整理のみが公正な利害関係者の負担の在り方とまでは言えないという意見や、実際に法的整理がなされた場合、賠償債務が確定していないと被害者の保護に支障を来すおそれがあるのではないかといった意見もありました。
 このような議論を踏まえ、専門部会としては、原子力事故を起こした原子力事業者の利害関係者に対し、個別の事故の状況に応じて適切に協力、責任を求めることは必要であると考えられるが、当該原子力事業者が負う責任を全うすることを前提とした場合に、法的整理により利害関係者の負担を求めることについては、どの程度の負担をどのような方法により求めることが適当かという点で、個別の事故の状況に応じ様々な考え方、方法があり得るとした上で、法的整理を原子力事業者が選択する可能性を否定できないことから、国は見直し後の原賠制度において対応可能な事項、対応困難な事項を整理し、万が一の事態に備えておくことが重要であるとさせていただきました。
 次に、原子力事業者の免責については、専門部会では、制定当時の立法趣旨、東電福島原発事故の経緯、原子力損害の補完的な補償に関する条約において免責が認められていることなどを確認した上で、被害者の保護という法目的に照らし、免責事由を不可抗力よりも更に狭い非常にまれな場合に限定している立法趣旨等を踏まえ、免責規定を維持することが妥当であると取りまとめました。
 続きまして、三ページ目を御覧ください。
 賠償資力確保のための枠組みに関しましては、最も長い時間を掛けて検討を進めました。
 議論の過程においては、原子力事業者の予見可能性を確保しつつ、今後あり得べき事故に備えるためには賠償措置額を大幅に引き上げるべきという意見が示された一方で、現在の責任保険契約における最大の賠償措置額である一千二百億円は国際水準に照らして十分高い水準にあるという意見、国内外の保険市場の引受能力を考慮すると持続的に運営できる限度にあるといった意見や、安全確保に関する取組が強化されており、その評価を見極める必要があるといった意見がありました。
 その結果、本年一月にまとめられた報告書の素案におきましては、今後の損害賠償措置の在り方について、第一に迅速かつ公正な被害者への賠償の実施、第二に国民負担の最小化、第三に原子力事業者の予見可能性の確保といった観点も踏まえつつ、現行の原賠法の目的や官民の適切な役割分担等に照らして、引き続き慎重な検討が必要であるとさせていただきました。
 これを受けて、本年八月に開催された第二十回専門部会におきまして、原賠法を所管する文部科学省より、今後の損害賠償措置の在り方については、第一に国内外の保険市場の中長期的な見通し、第二に電力システム改革の進展による原子力事業者の事業環境の変化、第三に原子力発電所の安全性向上に向けた東電福島原発事故後に導入された新規制基準への対応や事業者の自主的な取組の状況などから、現時点においては損害賠償措置額の見直しを行わず、今後、迅速かつ公正な被害者への賠償の実施、被害者への賠償に係る国民負担の最小化、原子力事業者の予見可能性の確保といった観点に十分留意しつつ、文部科学省を中心に引き続き検討を行うこととする旨の説明がなされ、この内容を報告書の別添として盛り込みました。お手元の報告書本体の二十ページでございます。
 次に、被害者救済手続に関しましては、原子力損害賠償が有する特殊性、東電福島原発事故の経験等を踏まえ、何よりも適切な賠償が進められるよう被害者救済手続の実効性を確保することが必要であると考えました。
 これに関連して仲裁手続の導入の是非が議論され、これに賛成する意見がある一方で、司法判断を経ずに賠償義務を負うことを事業者が忌避する可能性が高いとの意見や、迅速かつ柔軟な紛争解決という観点から、当事者間の交渉とそれを補完するADRセンターによる和解仲介という現行の紛争解決手続は十分に機能しているとの意見、さらには、強制力のあるADRの導入が被害者の迅速かつ適正な救済につながるかどうか慎重に見極める必要があるとの意見がありました。
 また、ADRセンターの示す和解案を東電が受諾拒否しているとの苦情があることから、原子力事業者に片面的な受諾義務を負わせることの是非についても議論がなされました。これについても、法的に実効性のある片面的受諾義務を将来的に検討するべきという意見があった一方で、憲法で保障されている裁判を受ける権利の制約になるおそれや、拘束力のある手続を利用することを望まない紛争当事者が和解仲介手続の利用をちゅうちょし、紛争解決の迅速性及び簡易性が損なわれるのではないかとの懸念が指摘されています。
 これらを踏まえて、報告書では、和解の仲介について、現行の規定を維持することが妥当である、また、適切な賠償を進めるためには和解仲介手続の実効性を確保する必要があることから、原子力事業者の賠償への対応に係る方針の整備の中で適切に対応することが妥当であるとしました。
 次に、迅速に賠償手続が開始されるよう、国が賠償指針を速やかに策定し、和解の仲介を行う原賠ADRセンターを速やかに設置したことが大きな役割を果たしてきたことを踏まえ、和解の仲介について現行の規定を維持することが妥当であるといたしました。
 その後ろに記しております和解仲介手続に係る時効中断、原子力事業者の賠償への対応に係る方針の整備、国による仮払い、立替払の三つにつきましては、原賠法改正法案に盛り込まれており、委員の皆様も御承知のことと思いますので、ここでの説明は割愛させていただきます。
 少々長くなってしまいましたが、専門部会で示された論点と意見の概略を説明させていただきました。多岐にわたる論点を多様な関係者の御意見を伺いながら取りまとめることは、多くの時間を要する困難な作業でありました。参議院文部科学委員会の皆様の真摯な御審議と賢明な御判断に御期待を申し上げて、私の説明を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
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上野通子#4
○委員長(上野通子君) ありがとうございました。
 次に、満田参考人にお願いいたします。満田参考人。
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満田夏花#5
○参考人(満田夏花君) ただいま御紹介にあずかりました国際環境NGO、FoEJapanの満田と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
 FoEJapanは、国際的な環境NGOとして、二〇一一年三月十一日の福島第一原発事故を契機に、原発事故被害者の支援、そしてその権利擁護のための活動を行ってきました。二〇一二年からは、福島の子供たちを対象とした保養活動に取り組んでいます。また、原発事故被害者の救済を求める全国運動の事務局、二〇一六年からは原発事故避難者の支援を行う避難の協同センターの設立に関与し、現在、世話人及び事務局を務めております。本日は、こういった観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
 主な意見は以下の八つでございます。
 まず、政府案は抜本的見直しからは程遠いのではないか。二番、守られているのは原子力事業者、株主、銀行ではないか。三番、原発事故被害者、また国民がこの見直しプロセスに関与できたのかという点。四番、損害賠償措置額を引き上げるべきという点。五番、原賠法の目的、第一条から原子力事業の健全な発達に資するを削除すべきである点。被害者の保護のみとすべきと考えます。また、国の援助、第十六条については、支援機構における資金の流れを明らかにした上で国民的議論を行うべきという点です。六番、原子力事業者以外への求償ができるようにすべき。七番、原子力事業者に原子力損害賠償紛争解決センター、ADR和解案の受諾義務を課すべきという点。八番、損害賠償実施方針の作成、公表の義務付けについても意見を述べさせていただきたいと思います。
 最初に結論を申し上げますと、私としては、この見直し案は抜本的な見直しからは程遠いと考えております。現在の支援機構を介した賠償資金の実際の流れを精査し、原賠法の目的、賠償措置額の引上げ、原子力事業者の責任、国の責任、援助の在り方、ADRの実効性の確保などに関して、やはり国民的議論が必要だと考えております。
 その趣旨を述べさせていただきます。
 まず最初の、政府案の抜本的な見直しからは程遠いのではないかという点なんですが、御存じのとおり、今回の見直しの出発点は、二〇一一年八月の原子力損害賠償支援機構法の採択の際に、附則六条第一項で原賠法の抜本的見直しがうたわれ、かつ衆参両院の附帯決議において、賠償措置額の在り方など抜本的な見直しを行うこととされたことに始まります。
 しかし、それから七年経過したのにもかかわらず、今回の見直し案はこうした意味で極めて不十分なのではないでしょうか。抜本的見直しとは呼べないと思います。なぜ今臨時国会でここまで拙速に審議、採択するのでしょうか。
 二番、守られているのは原子力事業者、株主、銀行ではないかという点です。
 福島第一原発事故の賠償の状況を見てみましょう。政府は、東電の破綻を避けるため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を設立し、交付国債、政府保証による融資、電力事業者からの負担金などを東電に支払う仕組みをつくりました。結果的に東電は法的整理を免れ、経営者、株主、東電に融資している銀行はその責任を果たしておりません。
 支援機構を通じて交付された資金のうち、東電が負担するのは最大で四割程度というふうにされています。もうけるときはもうけるが、事故を起こしても最後は国が何とかしてくれるというあしき前例をつくってしまったのではないかと懸念しております。
 この支援機構の制度で守られているのは、被害者でもなく、国民でもなく、原子力事業者及びその株主や銀行となってしまっているのが実態ではないでしょうか。賠償措置額の引上げなどの抜本見直しなしではこの構造が固定化されてしまうことを大変心配しています。
 三番、原発事故被害者、国民が見直しプロセスに参加できたのかという点です。
 今、鎌田先生が御紹介ありましたように、原子力委員会専門部会において二十一回の会議が行われました。その中で、福島県とか関係団体からのヒアリングは行われたと承知していますが、少なくとも私が確認した範囲では、原子力事故被害者からのヒアリングというのが直接行われず、被害者の置かれた窮状というのが語られなかったのではないかと考えています。
 実際に今この瞬間にも、ふるさとを失い、コミュニティーを失い、家族とも離れ離れになり、住宅提供などの支援も打ち切られて、苦しんでいる被害者がおります。区域外避難者の住宅提供は二〇一七年三月に打ち切られました。家賃補助なども今後打ち切られようとしています。区域内避難者の住宅提供も来年三月で打ち切られます。私たち支援団体の元には、避難者から、生活苦に直面した避難者から悲鳴のようなSOSが届いています。私たちが知っているのは氷山の一角にすぎないと考えています。これは、そもそも賠償制度の不備の問題ではないでしょうか。このような被害者の置かれた実態というのは検討されたのでしょうか。
 また、国民の意見の聴取という意味でも、形式的なパブリックコメントが一回行われただけであり、その内容はほとんど反映されていないと思います。公聴会も実施されませんでした。
 このように、見直しプロセスに原発事故被害者や国民の声が反映されなかったのは大変大きな問題ではないかと考えております。
 四番、損害賠償措置額を引き上げるべき。
 福島第一原発事故における被害者の賠償費用、除染費用は見込額で総額十四兆円となっています。賠償措置額は現行の法律では千二百億円となっていますが、この百分の一以下にすぎません。原賠法第六条では原子力損害を賠償するための措置というふうに書いてあるんですが、そのための措置としては全く不十分です。
 何よりも問題なのは、原子力事業者が千二百億円を超える賠償については支援機構を通じて国が何とかしてくれるというふうに認識していることです。例えば、島根原発三号機の説明会において中国電力は、支援機構の制度により、上限千二百億円を超えた場合は国が補填することになる、我々も一定額を拠出しているという発言をしています。ちなみに、日本原電も東海第二原発の説明会で同様の発言をしています。
 ただ、この電力会社の説明は間違っていて、現在電力会社が支払っている負担金というのは、将来の賠償のためではなく、福島第一原発事故の賠償に充てるためのものです。また、相当額が、先ほど申し上げましたように交付国債の形で国から交付され、また政府保証による借入れを行っています。
 電力事業者の負担金といっても、これは電力料金に上乗せされ、結局私たち電力消費者に転嫁されているのが実態です。原発を使っていない新電力からも徴収されます。さらに、過去に賠償措置を行わなかったということで、過去分と称して託送料に乗せられようとしています。
 原賠措置を行わなかったのは原賠法の不備であると考えますが、将来の世代も含めた国民にコストが転嫁されているのは大変大きな問題です。政府の報告書もこの点を指摘しています。例えば、東京電力・1F問題委員会では、原発事故への対応に関しては準備不足とし、経済産業省の報告書でも、原賠法の趣旨に鑑みれば、本来、こうした万が一の賠償への備えは1F事故以前から確保されておくべきだった、政府は何ら制度的な措置を講じていなかったというふうな記述をしています。
 今国会で賠償措置額を据え置いて、将来、万が一事故が起こったときに、あのとき十分な備えをしていなかったとして、更なる負担を将来世代や被害者や原発からの電気を選択しない人も含めた国民全体に強いるのでしょうか。それは余りに理不尽だと考えています。
 政府は、賠償措置額を据え置く説明の一つとして、これが一番重要な理由だと思いますが、要は、民間責任保険では保険市場がもうこれ以上は引き受けられないというふうにしております。すなわち、原発というものが保険市場が引き受けることができないリスクを持っている、又は、引受可能だとしている限度額、これが千二百億円なわけなんですが、その百倍以上もの被害をもたらし、今後ももたらす可能性があるということなんだと思います。それをそのまま続けるのかという問いだと思います。
 これについては、原子力委員会の専門部会における議論では明らかに不十分です。幅広い国民的議論が必要ではないでしょうか。そして、仮に原発を続けるとするならば、原子力事業者がそれに見合う額、すなわち十四兆円規模の額をあらかじめ準備し、供託するしかないのではないでしょうか。
 五番、原賠法の目的、第一条から原子力事業の健全な発達に資するを削除し、被害者の保護のみとすべきです。また、国の援助については、支援機構における資金の流れを明らかにした上で国民的議論を行うべきだと考えております。
 原賠法は賠償について定めたものであり、本来被害者保護に重点を置くべき内容です。原子力事業の健全な発達に資するという目的と被害者の保護という目的が同列に扱われるのは明らかにおかしいと考えます。この文言があるがために、前述のように、本来原子力事業者が担うべきコストを将来世代も含めた国民全体で負担するというゆがみを許すことにつながってしまったのではないでしょうか。
 また、第十六条、損害が賠償措置額を超えるときの国の援助についても、現在の支援機構の資金の流れは大変分かりづらく、かつ不透明でございます。これを全て明らかにした上で国民的議論を行って、国民がどこまで負担するのか、どのような場合に国が援助するのか、やはり社会的なコンセンサスが必要だと考えております。
 六番については割愛させていただきます。
 七番、原子力事業者にADR和解案の受諾義務を課すべきという点についてです。
 福島第一原発事故においては、被害者に対する現実の賠償は、原子力損害賠償紛争審査会が策定する指針に沿って東電がそれを実施し、実際の賠償の支払額を決めるのは加害者である東電となっています。これは被害者にとっては大変不利な状況に置かれているというふうに考えております。
 また、賠償指針の内容も、避難区域以外からの避難者の賠償がごく一部しか認められない、ふるさと喪失の損害や放射性物質による汚染などの被害が含まれていないなど、不十分な点がございます。
 このような中、ADRの和解案というのは大変重要な役割を果たすわけなんですが、東京電力はADRの和解案の尊重を約束しながら、実際はそれを再三にわたって拒否しています。
 浪江町住民一万五千七百人のADR集団申立てでは、東電が六回にわたって和解案を拒否しました。申立てを行った住民のうち、高齢者など九百人以上の住民が亡くなっています。東電に対して、十一月二十七日、ついおとといですか、浪江町住民百九人が東電と国を相手取って福島地裁に提訴しました。しかし、長期の時間を要する裁判というのは住民に多くの苦痛と負担を与えるのではないでしょうか。
 政府は、以下の理由で原子力事業者のADR和解案の受諾義務を見送ったとしています。
 ①被害者が拘束力のある手続を望まない場合がある。
 しかし、これは果たして本当にそうでしょうか。むしろ、東電、原子力事業者がADR和解案を拒否するような事態こそ、被害者の苦痛につながるのではないでしょうか。
 ②原子力事業者の裁判を受ける権利が制限される。
 これにつきましては、日弁連あるいは添付させていただきました原子力市民委員会の声明にあるとおり、原子力事業者が一定期間内に裁判を提起しない限り、和解内容を受諾したものとみなすというような規定にすればよいのではないでしょうか。
 ③原子力事業者に義務付ける賠償の実施方針の中にADRの和解案の尊重を盛り込ませる。
 ③については、東電は三つの誓いとしてADR和解案の尊重をうたっています。しかし、実際は和解案拒否を繰り返しております。
 最後に、損害賠償実施方針の作成、公表の義務付けについてでございます。政府案に盛り込まれている内容です。
 法案では、原子力事業者は原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を図るための方針を作成しなければならないとのみ記されており、詳細については書かれておりません。しかし、これでは内容が十分であるかが問われないことになってしまいます。第六条の原子力損害賠償措置についての記述と同様に、原子力事業者は損害賠償方針を作成、公表しなければ原子炉の運転をしてはならないとし、損害賠償方針に盛り込む項目について明記すべきであると考えます。それについて第三者がしっかりと確認し、不十分な場合は原発を運転してはならないというような規定を盛り込むべきではないでしょうか。
 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
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上野通子#6
○委員長(上野通子君) ありがとうございました。
 次に、佐々木参考人にお願いいたします。佐々木参考人。
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佐々木茂#7
○参考人(佐々木茂君) 私は、福島原発訴訟津島被害者原告団の副団長をさせていただいております。
 私は、常日頃から、国は国民の生命や財産を守ることが大きな責任の一つだと考えております。現在、七年九か月ほど福島原発事故からたちました。今、福島県は二本松市の方に災害復興公営住宅を皆さんのお力でお造りいただきましたので、そこで生活をさせていただいております。
 私のふるさとは、浪江町から西側三十キロ、四十キロ圏内にある中山間地域に位置しております。面積は九千五百五十ヘクタールございます。現在、そこに住んでいた人は千四百人、約四百戸です、今回の原発で全て避難を強いられ、全国各地に散り散りとなりました。私たちが住んでいたふるさとは、そんなに豊かな村ではありませんが、自然の恵みを受け、そしてそこで、小さな幸せかもしれませんが、生活を営んでおりました。私たちは、よもや原発事故が起こるなどという、そういう思いはありませんでした。国の皆さんも東京電力の皆さんも、原発は安全であるという神話を私たちに植え付けたはずであります。私たちはそれを信じて生活をしてきたわけでありまして、現在、今置かれている立場からすると、非常に理不尽さを感じる毎日を過ごしております。
 現在、私たちは、原発訴訟ということで東京電力と国を訴えております。原告団員数は六百六十九名です。私たちは、国に対しても東京電力に対しても金銭的な要求はしておりません。一日も早い除染をして平穏な生活に戻してほしい、こういうことを念じております。しかし、私たちの村は高濃度の放射線で汚染されておりますから、帰れるめどが立ちません。どうしたら帰れるのか。それは、国の皆様方が、高線量といえどもそこに突撃をするべきだろうと。そして、東京オリンピック、全ての帰還困難区域を解除するというのであれば、私たちの身になってもう少し急いで除染作業に入るべきだろうと思います。
 今、浪江町では、第一ステージといいまして、復興拠点地域の復興事業が整備が始まりました。今年の四月からです。皆様方から大変大切な税金をいただいて復興、除染が始まりましたけれども、津島の面積九千五百五十ヘクタールのうち百五十三ヘクタールというものです。一・六%です。これを五年を掛けてやる。さらに、町は第二、第三ステージということで住民に対して説明をしておりますが、国の皆さんは私たちの前に出てこようといたしません。私たちはそうした中から財源のそうした措置があるのかという質問をしますと、全くないのが現状であります。
 第三ステージまで含めますと十五年掛かります。今、私たちは避難をしておりますから、高齢化が激しく、どんどん亡くなっているんです。私も六十五でありますから、うちの場合は八十ぐらいで亡くなっておりますから、あと十五年といったら私の命の年限だろうと思っております。それまでこの放射能災害というのは時間が掛かるものであろうと思っております。
 私の家は、除染計画すら示されておりません。私は、国に対しても、町に対しても、県に対しても、村全体のロードマップを作ってほしい、そして私たちに示してほしい、帰れる希望があるなら与えてほしいというお話をさせていただいております。しかし、いまだに回答がありません。こんな理不尽なことが現場で行われているということを先生の皆様にはよく理解をしていただきたいのであります。
 私は、今回の原賠法について知ったのは新聞の記事であります。まあ、無過失責任、無限の責任、これはよいとします。しかし、皆さん、原子力の放射能災害というものは、最初に私たちは国から何も指示もされたわけでもありません。銘々にただ逃げただけ。避難計画すらない中で私たちは銘々に逃げたから、全国各地に放射能が怖いから散り散りになってしまったわけです。あそこに行け、ここに行けと言われたわけではありません。
 そこで、私は、原発というのは放射能をどうしたらいいのか。まず避難をする、そしてその次には避難先での住宅を確保する、そして慰謝料を考える、さらに財物の賠償を考える、除染を考える、さらに廃炉を考える。今言われているのは、この過程の中で二十一兆円が掛かるのではないのかと、こういうふうに言われております。
 今回の千二百億円の据置きは、平成二十二年に六百億から倍にしただけではありませんか。千二百億円ぐらいで免責されるようなこうした原子力事業というのは、私は、覚悟がない業者に対してはこれを認めない、そのぐらいの覚悟のない人、業者は認めないという、国が考えていけばよろしいんじゃないかと、このように考えております。ですから、私の原告団からも町民の方々からも、今の百倍である十二兆円ぐらいのお金が担保されなければならないんだろうと思います。
 改定改定と申しますけれども、いつの間にか、この無過失責任、そういう問題がなくなってしまうんではないんだろうかという不安を抱いております。ですから、電気事業の方々には国が債務保証をすれば、私たちはすぐに安心していけるのかと思っております。
 先ほども、ADR、浪江の問題がございました。五年前に、私どもの亡くなられた馬場有町長を先頭に、一万五千有余名の方々が一斉に提訴をさせていただきました。いつも東京電力は私たちに対して、誠意を持ってお答えします。国の皆さんに陳情やお話をすると、東京電力に言っておきます。四度の仲裁の委員の方々が東京電力に言っても拒否されるという東京電力は暴挙に出ました。それで、今回改めて一万五千有余人の中から第一次提訴として百九名が、昨日、おとといですか、提訴をさせていただきました。
 原子力災害というのは、一日も早く私たちの生活を取り戻す、元の生活を取り戻すために、皆さんに御協力いただいて、早く賠償を済ませてほしい、これが私の願いであります。
 このADRについては、私もADRに提訴をしておりますけれども、東京電力が拒否をし続ける限り、この制度はなくてもいいわけです。強制力のないこういう制度を皆さんが知っているにもかかわらず、なぜ国会で議論をされないのか。こういうADR、片務的な、東京電力が拒否した場合の、私たちは誰に頼ればいいんですか。法律や国会の先生方に頼るしかないんですよ。何としてでも仲裁委員の方々の御労苦に報いるためには、私は、皆さんがしっかりと東京電力に強制力を持たせる。金銭的な問題じゃないんです。和解案を尊重しろ、そのとおりにしなさいということだけなんであります。
 最後に、今回の私たちの裁判で、国は長期戦を目指しております、そういう節がうかがえます。私たちは、国に助けてほしいから国を訴えているのであります。しかし、裁判では、国は責任がなかった、こういうことばかり言っております。高裁、最高裁まで行くぞという方針を私たちに示しております。
 私は、国というものは裁判で負ける権利も与えるべきだろうと、そうでなければこうした問題はいつまでも続くんだろうと思っております。ですから、官僚主権の国ではありません、国民主権の国であります。国民が助けてほしいから訴えるわけでありますから、国は裁判で負けること、これは一番大切なことだろうと思います。そうしますと、先生方の皆さんも、政策の追加や新しい政策、政策の変更、いろいろな形で御活躍できるのではないのかなと、こういうふうに私は考えております。
 どうか皆さん、福島の現状を見に来てください。そして、役人の話を聞くんじゃなくて、住民と対話をして、それを是非とも私たちの救いとして国政で反映させていただくことをお願いを申し上げて、私のお話とさせていただきます。
 ありがとうございました。
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上野通子#8
○委員長(上野通子君) ありがとうございました。
 次に、馬奈木参考人にお願いいたします。馬奈木参考人。
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馬奈木厳太郎#9
○参考人(馬奈木厳太郎君) 東京合同法律事務所に所属しております弁護士の馬奈木と申します。
 今日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
 ペーパーをお配りしておりますので、参照していただければと思います。
 私は、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟という、福島第一原発事故に対する国と東京電力の責任を追及し、原状回復と被害救済を求める裁判で弁護団の事務局長を務めております。この裁判は、避難をした方と現地に今も住んでいらっしゃる方とその両方の方々が一つの原告団を構成しており、原告の数は現在四千四百名を超えております。全国で同種の裁判では最大の裁判、訴訟となっております。福島県内には五十九の市町村がございますが、その全部の市町村に原告の方がいらっしゃる、そういう裁判です。昨年十月十日に福島地裁において、国と東京電力の責任をいずれも明確に認める判決が示されました。現在、仙台高裁において審理は係属している状況です。
 また、私自身は、裁判のほかに、ADRで申しますと、原発事故後に自死された遺族の方の代理人、あるいは第一原発から僅か二十二キロのところで精神科の患者さんを抱えながら避難しないと決断し、事故後も地域のために医療を継続させてきた、そういった病院がございます、その病院の代理人、あるいは福島県内の事業者の方などの代理人として取り組んでまいりました。さらに、直接請求の場面では、事業者団体や農家の団体、さらには浜通りで水揚げされる魚をなりわいとしている方々の組合などについて、東京電力や国に対する賠償請求や交渉などにも関わってまいりました。
 本日は、そうした私のこれまでの経験や関わりに基づき、改正案に対して賠償実務に携わる者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。ただし、既に衆議院の参考人の方々が共通して言及しているものなどについては、私が重ねてなぞるような指摘をすることはせず、衆議院で言及されず、したがって余り審議においてもこの間論点として意識されなかったのではないかと思われるものについて、力点を置いて発言させていただきたいと思います。
 まずは、国の責任についてであります。
 原賠法は、そもそも事業者の賠償責任の枠組みについて定めた法律であって、国の責任の在り方については、必要な援助を行うという後見的な関わりが予定されております。しかし、福島第一原発事故後、損害賠償請求など被害救済を求める集団訴訟は既に三十件近く提訴されており、その多くは国も被告としております。先ほどの津島の訴訟もその一つであります。既に五件について一審判決が出されており、そのうち四件が国の責任を認めています。
 ところで、国の責任と一口で言っても、そのありようは様々です。例えば、放射性物質汚染対処特措法、子ども・被災者支援法、あるいは福島復興再生特措法などにおいて、原子力政策を推進してきたことに伴うといった形で国の社会的責任が法律上規定されています。この社会的責任ですが、法的責任を否定するという趣旨であることは言うまでもありませんし、強調されるべきです。
 しかし、私たちのような裁判で認められたのは、社会的責任のレベルではありません。法的責任、法的義務があるということなのであって、この違いは大変重要であります。つまり、国はもはや当事者ではないという態度を取れないのであって、加害当事者としての責任に向き合わなければならなくなっているということを意味しています。
 裁判はまだ高裁での審理が続いていますが、私は、国に法的責任があるという司法判断が確定することを確信しています。
 今回の改正案では、国の責任の在り方について大きな変更は加えられていません。しかし、早晩この課題から逃れられなくなると考えます。今回の事故に限らず、国策民営と言われる原発政策の性格からしても、また規制権限を有しているという国の関与の在り方からしても、賠償義務について事業者だけが加害当事者としての責任を有するという話では済まされないと考えます。一日も早く、事業者のみならず国の責任を明確にする改正がなされることを願っています。
 今申し上げた国の責任は、今回の改正案が扱っていない、そういった問題についてでした。さて、ここからは、今回の改正案で取り上げられている点について意見を述べたいと思います。特に、衆議院の審議では、事業者や農林水産業の方々の視点というのがほとんどなかったように見受けられますので、営業損害という観点から意見を述べることにいたします。
 まず、今回の改正案では、原子力事業者に対して賠償実施方針を作成、公表するということが義務付けられることになっています。そこには、原子力事業者の内部規則の整備などと併せて、賠償請求手続やADRでの和解仲介への対応なども含まれています。
 本改正案の立案者の方は、東京電力が賠償対応やマニュアル作成などで事故後しばらくの間大変混乱した時期がありましたので、そういったことがないよう、事前準備を徹底させ、事前告知を図らせようというふうに考えているのかもしれませんが、ここには大きな問題点があると考えます。以下、四点にわたって述べます。
 一点目ですが、そもそも賠償実施方針が、どのような内容についてどの程度明らかにしないといけないのかが現段階では明確ではありません。そして、原子力事業者が何らかの方針を決めたとしても、当たり前ですが、その内容は原子力事業者が一方的に決めたものにすぎません。したがって、内容的に妥当ではないものが含まれる可能性も否定できません。作成、公表された方針を誰かがチェックし是正させられるのかも、現段階では不明です。
 仮に是正させられないとしたら、請求する側、つまり被害者の側が原子力事業者の都合に合わせないといけないということになりかねません。例えば、ADRでの和解案への対応について、集団的申立てには一律応じないとの方針を策定し、これがそのまま通用するということになるのだとすれば、被害救済の観点からも大問題であります。そんな身勝手が許されていいはずがありません。作成、公表された方針に対して第三者によるチェックや是正ということが想定されているのかは、実務の立場からして大いに関心が抱かざるを得ないところであります。
 二点目は、方針として是非とも盛り込まれるべきだ、そういった項目もあるということです。例えば、今回の事故直後に特に見られたのは、中小零細の事業者の方などが、どうしても体力がなく、また月々の支払が差し迫ってくる中で、事業者の方が請求している賠償額と東京電力が自ら認める賠償額との間に相当の開きがあるにもかかわらず、直ちに賠償金を得なければ事業継続そのものが困難になるという状況から、泣く泣く東京電力の主張する賠償額で合意せざるを得なかったという事態がありました。これは、事故直後には本当によく見られた光景でした。そして、今後、万一どこかで事故が生じた場合にも、原発立地自治体やその周辺といったところはやはり大きな企業よりも中小零細の事業者が多い地域というのが一般的ではないかと思われますので、このままですと今回の事故と同じような光景が繰り返されることになるのではないかと懸念されるところです。
 そこで、こうしたことを繰り返さないためには、原子力事業者も損害を認めている場合にはその範囲での合意を先行させる、つまり、請求する側が一千万円の損害があると言い、東京電力はいやいや四百万円でしょうと言った場合、差は六百万円開きがあるわけですが、少なくとも、合意している東京電力も認める四百万円については一部和解、部分和解といった形で応じさせる、そういったことが必要だと考えます。中小零細の事業者は体力がないため、早期の支払は必須です。ですから、賠償額の総額には争いがあるとしても、原子力事業者も認める部分は早期に支払がなされるべきです。しかし、残念ながら、東京電力はそうした一部合意という対応を取ってきませんでした。こうした点を改善させることが必要だと考えます。
 三点目ですが、今回の事故に際しては東京電力が、平成二十七年に入ってから、営業損害に関して将来損害を含めた一括賠償という方式を取りました。ある程度まとまった賠償金を一どきに入手したいという人にとっては、将来の損害も含めて一括して支払うという方式は望ましい方式だったと言えるかもしれません。しかしながら、この方式は、事実上の賠償打切りであるとして多くの批判を集めました。特に問題なのは、この一括賠償方式を採用して以降、東京電力はこの方式での請求でない限り賠償請求を受け付けない、合意しないという態度を取ったことです。私自身、東京電力との交渉の場で、賠償請求の方式まで加害者側が決めてしまうというのはどういう了見なのだと何度も追及しました。文部科学省や経済産業省の方々も同席していましたので、東京電力の回答をお聞きになっていると思います。
 東京電力は、仮に将来の損害がお支払いした額を上回ることが後に判明するような、そういった特段の事情がある場合には更にお支払いをする用意があるということで、こうした方式での対応を正当化しようとしましたが、どの損害をどの期間について請求するのかを請求する側が決められないというのは、賠償のそもそもの意味合いからしても大変問題だと考えます。要するに、被害が続く期間を原子力事業者が決め、請求方法までも原子力事業者が一方的に決めるという話なのであって、これでは誰が加害者で誰が被害者なのかも分からなくなってしまいます。したがって、一括賠償といった賠償方式や一括賠償での請求しか合意しないといった賠償姿勢は認められるべきではなく、一律の請求方法でしか対応しないといった方針は明確に禁じられるべきだと考えます。
 四点目ですが、請求手続の方針を事前に策定したとしても、実際には原子力事業者が中間指針など国の指針が策定されるまでは支払わないという態度を取ることも考えられます。今回の事故の場合、国の指針が初めて策定されたのは事故から一か月以上経過した平成二十三年四月二十八日でした。しかも、取り上げられたのは避難指示が出た地域の損害や出荷制限指示があったような場合についてでありました。避難指示が出ていない地域の営業損害に関して指針が策定されたのは同年五月三十一日、その内容も、農林水産業や観光業を主としたもので、限定的な内容にとどまりました。
 実際、東京電力が避難者に対する仮払いに着手したのは四月に入ってからですし、避難指示が出た地域の事業者に営業損害の仮払いを始めたのは閣議決定があった後の五月末からでした。それも、請求を受け付けたのが五月末からなのであって、実際に仮払いを受領できたのは六月以降ということになります。つまり、原子力事業者が自らの判断で支払を開始しないのであれば、幾ら立派な方針を事前に作成していても何の役にも立ちません。
 今回の事故では、原子力損害賠償紛争審査会が立ち上がってから約一か月で最初の指針は出されており、審査会においても相当の努力はされたのだろうと想像しますが、それでも被害者には現実の生活と現実のなりわいがあるのであって、被害救済の観点からも早期の賠償支払は不可欠だということを強調したいと思います。
 原子力事業者だけでなく国の指針についても、損害の類型化や考え方の整理などを事前に行うことが必要ですし、国の指針の策定時期の更なる早期化が不可欠だと考えます。もちろん、このことは原子力事業者が国の指針を待ってから支払うという態度を取ることを是認するわけではありません。原子力事業者が国の指針の策定を待たずに自らの判断で賠償支払を開始することも、当然求められるところであります。
 次に、国の仮払い資金の貸付けについてであります。
 これは、仮払いが迅速な賠償金の支払に役立つならば意味のある話だと思います。ただ、改正案では賠償措置額を超えない範囲で貸し付けるとされており、つまり千二百億円の範囲内で貸し付けるということになりますから、これだと金額としては不十分だと考えます。
 今回の事故に際し国が賠償支援機構を通じて支払った第一回目の資金援助額、これは平成二十三年十一月の話ですが、このときで五千五百億円を超えています。千二百億円では、福島並みの事故があった場合、到底対応できません。あるいは、賠償措置額と連動しているので、賠償措置額の据置きの議論に収れんすることになるのかもしれませんが、貸付けの金額はこれでいいのかという点は問題だと思います。
 この仮払いについては、払い過ぎとなった場合のリスクが衆議院でも議論になっており、過去の食品公害の例も参考人から紹介されていましたが、原発事故の場合は一定期間の被害の継続が想定される、そういった性質を有する事故なのであって、仮払いとしてどれほどの金額を想定するのかにもよりますが、一般的に言って、払い過ぎるというリスクは無視し得る程度の確率でしか生じないのではないかと思います。今回の事故から教訓を導くのであれば、払い過ぎのリスクではなく、いかに早く被害者に賠償を行うかが圧倒的に重要なことだと考えます。
 最後になりますが、今回の改正案では原子力事業の健全な発達という第一条の目的規定については削除も変更も加えられていませんが、仮に文言上は残るのだとしても、健全な発達という文言の意味合いは、福島第一原発事故の前と後とでは大きく変わらざるを得ません。原子力発電という事業について、その生成、発展、消滅という段階を考えたときに、今日の段階は既に発展から消滅の段階に移行しているのであって、発達という文言も廃炉に向けたその時間軸におけるものとして理解されるべきです。
 何より強調したいのは、原子力事業というものは被害者の保護が十全になされることが大前提なのであって、被害者の保護なき原子力事業とか被害者の保護なき発達などというのはあり得ないということです。被害者の保護が確保されないところでは一日として原子力事業は成り立たない、国民的理解が得られないということを肝に銘じるべきだと考えます。
 今回の改正案をめぐってもそのことが改めて徹底されるべきですし、被害者の保護に遺漏がなきよう万全の施策が取られるべきであることを再度強調して、私の意見としたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
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上野通子#10
○委員長(上野通子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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小野田紀美#11
○小野田紀美君 ありがとうございました。
 まず、鎌田参考人にお伺いをしたいんですけれども、今日お配りいただいた原子力損害賠償制度の見直しについての二十ページにもある、今後の損害賠償措置の在り方検討についてのところでして、この③なんですけれども、事故後、とにかくもっと安全性を高めなくてはということで、投資をしてしっかりとその安全性を世界最高レベルというまで上げてきたと言われる中で、この事故発生リスクの低減が見込まれていて、評価を見極める必要があるという、こういった視点というのは諸外国の原子力損害賠償制度の中でどういう議論があるのかとか、またその議論にもし結果が出ていたらどういうような意見が多いのかと、その辺り教えていただけますでしょうか。
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鎌田薫#12
○参考人(鎌田薫君) ただいま御質問いただきました点につきましての諸外国の動向について、申し訳ありませんけど、私はつまびらかにするところではございません。
 ただ、ここにこう書かれていることの一つは、福島原発事故後にも安全水準について非常に規制が厳しくなってきた、それによって仮に事故発生率の低減が予測されるとなると、保険の引受率が大分変わってくると。そういうことを前提にすると、今は千二百億を超えての保険の引受けあるいは再保険が難しいと言われているものが少し変わるかもしれないという、そういう点を、何といいますか、しっかりと見ながら、賠償措置額についての対応を考えていくべきであると、こういう趣旨で文科省からは述べられたというふうに理解しております。
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小野田紀美#13
○小野田紀美君 ありがとうございます。
 諸外国ではそういうのがあるのかなとちょっと、済みません、気になったもので。ありがとうございます。
 今回、私、法案質疑もさせていただきたいなと思っている中で、いろいろその細部を、例えばこの条文がこの条文がというのを見ているうちに、どんどん何か堂々巡りに自分の中で考えがちょっとなっている部分がありまして。例えば、今日、満田参考人からいただいた資料の二ページにも、もうけるときはもうけるけど、事故を起こしたら国が何とかしてくれると、それはおかしいんじゃないかと、あとは国がやるんでしょうというのはおかしいんじゃないかという、そのお怒りというか御意見もすごくよく分かるところでありまして、でも、じゃ事業者が払いなさいよというと、この四ページにもあるように、結局、電力消費者に転嫁されていて、原発を使っていない新電力、極端な話言うと、新電力の方からも徴収されて、国民の負担になっていると。
 じゃ、事業者が支払いなさいよといっても国民負担になっていて、じゃ、国が払えばいいじゃないと、国が補償しなさいよとなったら、今度、それこそ国民の、国のお金というのはいわゆる全部国民のお金なので、国民の税金、一人一人の税金なので、そうなったときに国が払うようになっても結局は電気料金のときのように国民負担というか、むしろ電気を使っていない国民がいたとしてもそれも国民の税金で国が払うとなったときに、果たして結局何が一番公平公正な負担先なのかが、その基本に戻ってきたときに何かちょっとこんがらがってしまって、その点に対してちょっと、それぞれの参考人のもし御意見があれば、全員の先生にお伺いしたいなと思います。
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鎌田薫#14
○参考人(鎌田薫君) 今御指摘の点はそのとおりだというふうに思っておりまして、電力料金に上乗せして電力利用者から回収していくのか、あるいはもっと薄く広く全国の国民が税金で担保するのかと、こういうふうな形になりますし、満田参考人は電力会社がもうけっ放しはけしからぬというふうにおっしゃいましたし、馬奈木参考人は国はもっと直接責任を負えというふうなことで、ここの見解の対立のようなものは我々の部会でも重ねてあったところです。
 ただ、原賠機構が、支援機構がそれを十分に果たしているかどうかについては御意見分かれるかもしれませんけれども、電力会社の中に何がしかの留保が残るということについては多分いろいろと御批判のあるところですから、そういう意味で、電力会社の相互扶助的なもので、そこに電力会社から拠出したものが部分的ではあれ賠償原資として使われるというものとの組合せという現在の制度も、それなりの合理性を持っている部分はあるのかもしれないというふうに考えております。
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満田夏花#15
○参考人(満田夏花君) 私といたしましては、先ほど述べさせていただきましたように、やはり原賠法の精神に基づいて原子力事業者がぎりぎりまで責任を負うというふうに考えています。
 国の援助ということも盛り込まれていますが、現在、支援機構法の複雑なメカニズムを使っていろいろなお金が流し込まれているんですが、これについては再度精査して全ての情報を出して、どういう場合に国が援助するのかというのを将来の事故の備えとしてはきちんと国民的議論を行うべきだというふうに考えています。いや、一見ややこしいように聞こえますが、基本としては原子力事業者が無限責任を負うということに私は賛成しています。
 問題なのは、そこの国の責任と原子力事業者の責任が曖昧になり、原子力事業者は最後は国が何とかしてくれる、千二百億円という非常に、百分の一ぐらいの賠償措置額だけを用意しておけば済むという現在の立て付けというか、千二百億円の賠償措置額が余りに低いというのがかなり問題の根本的なところにあるように感じております。
 以上です。
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佐々木茂#16
○参考人(佐々木茂君) 私は、先ほど申し上げましたように、廃炉まで二十一兆円という大きなお金が掛かるだろうと、こう言われていますけれども、千二百億円で何ができるのだろうかと。事業者が千二百億円ぐらいにしておいてくれよと言うのであれば、原子力災害が仮にこれから起きたとしても、それは全て税金で賄うということになります。
 私は、福島県は東北電力の電気しか使っていないんだ、東京電力の電気なんか一つも使っていない、であるならば、関東圏を中心とした電力会社から電気を受けている受益者がそれを負担すべきだろうと思います。
 私らは、地方から東京が貪るように電気を消費している、それはそれでいいのかもしれません。でも、地方は電気を生産するだけでどんどん過疎化しているわけですから、こうした電気を貪るようなそういう世界であるならば、私は受益者負担、これを求めていく、それが足りなければ国が補填するような、そうした考え方を、二段階、三段階にしていくようなやり方しか方法はないんじゃないかと。沖縄の人にも北海道の人にも負担しろというのはちょっと私は酷ではないのかなと、そう考えております。
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馬奈木厳太郎#17
○参考人(馬奈木厳太郎君) 賠償措置額、それから国民負担のお話だと思いますけれども、私自身、事業者が責任を果たすのはこれは当然の前提だと思っております。したがって、賠償措置額が千二百億円に据え置かれたということは、これはもう大変低額であって、増額が当たり前だというふうには考えております。
 その増額がなかなか難しい理由の一つとして、保険としての引受手がないのではないかみたいな議論がなされているようですけれども、私自身は、それはちょっと全く意味が分からないです。市場原理として成り立たない事業なんだなということはよく分かります。
 そもそも、原発は安全で、新規制基準は世界一厳しい基準だと、そしてコストも安いんだというふうな話が聞かれますけれども、そうだとすれば、なぜ引受手がいないのか。リスクは低いはずだから、賠償措置額を増額させても心配要らないのではないか。引受手がいないから据置きというのは全く理屈が通らないと思います。それは言わば責任を取れない人に運転させるようなものであって、そんなことはあり得ない、事業者としての適格性がないというふうに言わざるを得ないと思います。
 その上で、事業者が責任を取って、それでもなお被害が残るのであれば、それは国民負担、私、やむなしだと思っています。国民負担の最小限化ということがありますけれども、それは国の責任の免責あるいは最小限化であってはならないと思っています。
 なぜならば、先ほど佐々木参考人もおっしゃっていましたけれども、私たちは主権者です。原発政策を変えさせられなかった、ここまで続けてきてしまった、そうして、福島の皆さんたちは次の世代に今のような福島を引き継がせざるを得なくなったという悔恨の思いを持っています。そういった意味でも、国民としてのやはりその限度の責任というのはあるのではないかと。その負担を将来世代にいつまでもツケ回すというわけにいかないと思っています。そういう意味で、国の責任というのは当然最終的には国民の負担になりますが、それは私たちとして引き受けざるを得ないものだと考えます。
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小野田紀美#18
○小野田紀美君 終わります。
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新妻秀規#19
○新妻秀規君 まず、四名の参考人の先生方、貴重なる御意見を本当にありがとうございます。
 私からは、まず最初に、四名の全員の先生の皆様に、損害賠償への対応に係る方針の作成、公表について伺おうと思います。
 この件については、満田先生からも言及があり、また馬奈木先生からは詳しく意見の開陳があったところです。
 今回の法案では、原子力事業者は損害賠償への対応に係る方針をあらかじめ作成、公表することとしています。原子力事業者が作成するこの方針が迅速かつ公正な賠償に資するものとなるよう、やはりその内容について適正性が確保されることが必要ですし、また、その内容が適正かどうか判断する場合、どのような基準が必要なのか、またどういうようなプロセスでそういうことを判断をするのか。さらに、万々が一事故が起こってしまった場合、この方針に従って実際に適切に損害賠償されているのかどうか、これをどのように判断するのか。その運用の適正さ、これも確保する必要があるだろうということで、皆様にお伺いしたいのが、その方針の内容について、どのような内容が盛り込まれるかについて、で、適正かどうかを判断する基準とその望ましいプロセスについて、また、万々が一の場合の、四点目、運用の適正さをどのように確保するのか、この四点について皆さんにお伺いをしたいと思います。
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鎌田薫#20
○参考人(鎌田薫君) これ、一つは、何というんでしょうか、原賠時効が非常に多様な態様が想像されるということで、一律に事前に決めるよりも、それぞれの態様あるいは事業者の性質に応じてきめ細かく決めた方がより現実的かもしれないということでこうした方針を取ることになったわけでありますけれども、しかし、それについてどんな方針を立てるかが全く勝手に任されたのでは意味がなくなりますので、その事業者同士の相互チェックであったり、あるいは社会全体がこの公表された内容についての様々な形での意見を述べていくこと、こういうふうなことで対応していくべきではないかなというふうに考えております。
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満田夏花#21
○参考人(満田夏花君) この法案では、損害賠償実施の方針を作成しなければならないとしか書いておらず、かつ、その罰則規定としては二十万円以下の過料としか書いていないんです。
 御質問のように、詳細については全く明らかになっておらず、これは後で省令で定めるということなんでしょうか。私も、これ余りに簡単過ぎて、先ほど馬奈木先生が非常に具体的に問題点を指摘されましたが、これだけでは何のことか分からないですし、当然内容が問われるのに、原子力事業者が作りっ放しでそれでいいことにされてしまうというのは、余りにちょっと緩過ぎといいますか、意味がないと思います。
 ですから、少なくともこういう項目について盛り込むべきであると、その際、先ほど馬奈木先生がおっしゃったように、支払の迅速性ですとか仮払いの方針ですとか、あるいは体制ですとか賠償措置額に類することですとか、そういう方針について、とにかく原則とその項目について明記して、それを第三者が確認して、不十分な場合は原発を運転してはならないという新規制基準と同様の位置付けですよね、それを原子力規制委員会が審査をするのか文部科学省が審査するのか第三者委員会を立ち上げるのか、それはちょっと分かりませんが、少なくとも第三者がきちんと審査するような体制にならないと全く意味がないと考えて、全くかどうかはちょっと言い過ぎましたが、意味はないと考えています。
 以上です。
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佐々木茂#22
○参考人(佐々木茂君) 原発事故に対する賠償責任、いろいろあると思いますけれども、私は、文科省や経済産業省が車の両輪になってこの政策を推し進めてきた、そう思っています。
 とするならば、やはり今お話ありましたように、やっぱり国会が第三者機関をつくって、この賠償の在り方や方法についてしっかり議論をしていただいて即座に私たちに示していただけるような、そういう体制づくりからスタートをしないと、文言だけこうした方がいい、ああした方がいいとあっても、私たち一般国民には、専門家じゃありませんので、そう簡単に理解できるものでしょうか。
 ですから、私は、是非ともこのチェックをする第三者機関をつくっていただきたい。その中で議論したのを示していただく、そういう過程だと電力側に査察に入るとかいろいろなことが可能になるんだろうと思います。そうすると先生方の活躍する場面も多くできるのではないのかなと、こう考えております。
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馬奈木厳太郎#23
○参考人(馬奈木厳太郎君) 御質問ありがとうございます。
 私、個人的には、この賠償実施方針の作成、公表の問題が今回の改正案の中では一番肝になるのではないかと思っています。時効の問題とか特に皆さん反対されるような話ではないと思いますし、ここの論点が一番大事に今回はなってくるのではないかと思っていて、先ほど来話がありましたけれども、実は、具体的な中身はこれ省令に委ねられています。私、これはあってはならないと思っています。恐らく、省令ということになると、国会議員の皆さんたちも余り耳に入ってこないレベルの話になるのではないか。先ほど誰がチェックすることができるのかというふうに申し上げましたけれども、恐らく国会のチェックというのも相当緩くなってしまうのではないかということを恐れます。
 もちろん、方針を策定したりそれを公表したりするということ自体が駄目だと言っているわけじゃありません、当たり前ですけれども。それは現に今でもやっています、東京電力、例えば。
 ただ、公表も、じゃ、何をもって公表と言うかという問題もあります。実は、東京電力はずっとプレスリリースで、ホームページを見ればこういうふうにしていますというのは載っています。ただ、例えば委員の皆さん方、東京電力のホームページをじゃどれほど見たことがありますか。公表しているんですよ、それは今でも。これを具体的に省令で定めてどうするかというところは、この中身をじゃどうしていくのか。例えば、私どものようにこの間の経験を持っているような人たちからどれほど話を聞いていただけるのか、そういったところを積み上げていかないといけないというふうに思います。
 そういった形でより良いものを作っていく。場合によっては内容に変更を求めることができるような仕組みづくりがないといけませんし、それを考えたときに、省令ではちょっと、とてもじゃないと思っています。私、原賠法に少なくとも大まかな内容は取り込むべきだというふうなのが私の意見です。
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新妻秀規#24
○新妻秀規君 ありがとうございます。
 続いて、鎌田参考人にお伺いをしようと思います。
 今年の七月二十六日、これ河北新報というんですかね、東北地方の方の、仙台かな、宮城県の地元紙だと思うんですけれども、夏、現地を視察されて、インタビューで先生このようにおっしゃっていました。指針の運用については請求から実際の賠償まで時間を要し過ぎてしまっているという課題があると先生お述べになっております。
 これに対してどのような対策案が考えられて、今回の法改正にこうした先生の問題意識はどのように反映されているのか、お答えをいただければと思います。
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鎌田薫#25
○参考人(鎌田薫君) 今引用していただきましたコメントにつきましては、これ実際のむしろ運用の問題であって、直ちに制度で対応できるのとは少し違うのかもしれません。しかしながら、これまでの審査会の経験でありますとか、それからセンターのADR、そして東電の対応と、こういうふうなところでの経験を踏まえて更に効率的に運用できるというふうな体制をつくっていくことが、先ほどの実施方針が中身のあるものにしていくということと相まって、今後更に改善を図るべきところだろうというふうには思っております。
 条文の中で対応できることとは少し違うのかなというのが現時点での印象でございます。
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新妻秀規#26
○新妻秀規君 ありがとうございました。
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杉尾秀哉#27
○杉尾秀哉君 四人の参考人の皆様方、本当に貴重な意見、ありがとうございました。とりわけ、佐々木参考人の御発言には本当に胸が打たれました。ありがとうございました。
 満田参考人がここの中で述べられているんですけれども、今回の改正は抜本的な見直しからは程遠いというふうに書かれています。
 そもそも論ですけれども、前回の原賠法の改正というのはあの福島の事故前の二〇〇九年で、そしてあってはならないあの大事故が起き、今も苦しんでいらっしゃる方が佐々木参考人も含めてたくさんいらっしゃるという中で、本当にあの事故の教訓が生かされたのか、私も全体的に見て、まあ前進した部分もあるんでしょうけれども、僕はあくまでもやっぱり現状追認でしかないと思っていますし、矛盾だらけの改正だというふうに思っているんですね。
 そこで、満田参考人の提起された、今回の改正は本当に抜本的な改正なのかということについて、ほかの三人の参考人の皆様にそもそもそうなのかということを伺いたいと思います。とりわけ鎌田参考人には、最大の問題になっております一千二百億円の賠償措置額の引上げについて、本当に専門部会でどこまでぎりぎりの議論がされたんだろうかということも含めてお願いいたします。
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鎌田薫#28
○参考人(鎌田薫君) 御質問ありがとうございます。
 私ども、この部会の報告書を取りまとめた側からすれば、抜本的な改正案を作ることが要求されて、それなりに現時点で可能な限り応えたというふうに考えているところでございます。
 先ほど御紹介申し上げましたように、この賠償措置額の問題が一番大きいし、それをまた、賠償措置額を超える部分についてどう事業者に具体的に責任を負わせていくかと、ここのところは重要なところだと思っておりますけれども、千二百億を大幅に上げるべきだというのは部会の中でも非常に強い意見としてございました。
 この部会の最終段階での審議が飛び飛びになっているのは、一つは、やっぱりそれをどれだけ上げられるかについて、関係各方面との折衝をしながら、可能な範囲で、これは保険の仕組みですけれども、それを上げられる、その上に今度は相互扶助的な仕組みをつくると。ただ、それでも間に合わないときにはもう国が出てこないと被害者救済ができないというふうな、こういう三段階のことも考えて、様々な形での実現可能性というのを探ってきたところでありますけれども、それぞれに現実的な問題が残りました。
 これを解決するまで最終案ができないということになると少し時間が掛かり過ぎるので、先ほど申し上げたように、こうした部会の報告書としては非常に異例な形ですけれども、文科省に今後の継続的検討を約束していただいて、部会報告書の中にも盛り込むということでとどめざるを得なかったわけでありますけれども、その点も含めて現時点ではなし得ることはなし得たというふうに考えているところでございます。
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佐々木茂#29
○参考人(佐々木茂君) 私は千二百億円のその算出の根拠が分かりません、正直申し上げて。
 私は、最初の意見で、廃炉まで二十一兆円ぐらい掛かるのではないのかというお話を差し上げました。この千二百億円というのは、私は、とてもじゃないけれども、税金を、最初からその損害を当てにしたような法律の中身になるんだろうと思っています。私は、一歩譲るとするならば、せめて一兆円ぐらいは措置額として計上していただきたいなと、こう思っています。
 皆さんは事故なんて想定しなかったからこそ、これで済んだんです。この金額でも多いなと思われている方もいらっしゃると思います。電力会社も巨大企業でありますから。今、国立競技場だって千五百億ですよ。豊洲の市場も六千億掛かっていますから。そういうことを考えたら、私はせめて、先ほどは百倍と言いましたけれども、この十倍ぐらいの金額を措置額としておかないと、これから原発事業者が、事故は起こさないと思いますけれども、仮に起きた場合、最低でも必要になるのではないのかと、こう考えています。
 税金の無駄遣いはやめてください。
 以上です。
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