多賀谷一照の発言 (法務委員会)
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○参考人(多賀谷一照君) 千葉大学名誉教授多賀谷ですけれども、今回国会に上程されている入管法改正案等について、参考人として意見を述べさせていただきます。
それでは、レジュメは簡単なものですが、それに従って陳述させていただきます。
改正入管法の趣旨、目的ですけれども、従前の入管法での外国人労働者の状況というのは、既に御存じと思いますけれども、狭い意味での就労資格、例えば教授とか経営管理、高度専門職といったような狭い意味での就労資格で在留している外国人はおよそ二十三・八万人であります。これは、平成二十九年末の外国人労働者数総数百二十八万人の約五分の一にすぎません。他方、就労資格以外での資格の外国人労働者としましては、日本人配偶者等、日系人などの定住者から成るいわゆる身分に基づく資格者が四十五・九万人、全体の三五・八%、技能実習生が二十六万人、全体の二〇・二%、留学生、家族滞在者などの資格外活動三十万人、二三・二%であります。
有効求人倍率等からも人手不足は深刻で、外国人材受入れの社会的ニーズは高いところから、このように、狭義の就労資格以外の在留資格を用いての労働に我が国は大量に依存している実態であります。日本人配偶者、日系人など身分に基づく資格者には就労職種に制限はありません。また、留学生などの資格外活動についても時間的制限等があるのみです。それゆえ、これらの外国人は、単純労働を含め、様々な職種で外国人人材として働いております。
次に、逸脱的な利用ですけれども、このように、狭い意味での就労資格以外の在留資格での外国人が労働力不足の社会的ニーズを受け止めるために変節的に使われていることから、御存じのように、教育機関としての実態が希薄な日本語学校の問題、日本人配偶者との関係で偽装結婚、あるいは偽装中国残留孤児などのゆがみが顕在化しつつあります。
また、技能実習制度も、技能の実習ではなく、主として就労人材の導入目的で逸脱的に利用されてきた面があることは、最近の技能実習生の失踪問題が示すところであります。
次に、新制度の必要性ですけれども、新制度は、労働力不足を正面から受け止めるために外国人に特定技能なる新たなる在留資格を認めると、ただし、無制限に受け入れるのではなく、上限を設け管理をする制度を設けるという趣旨であります。
すなわち、人材が不足する一定の産業分野においてその産業が必要とする人材として一定の専門能力を有する外国人の登用を図ることとし、その意味においては、人材不足が客観的指標で評価される分野においてのみ受け入れると。受け入れる人材は、ある程度以上の日本語能力を有し、日本人労働者と互いに連携を取り、チームの一員としてその産業分野で必要とされる多様な諸業務をこなしていく能力が必要であるとされます。
五年間で上限値を最大三十四万五千人として受け入れるとのことでありますので、その点で急速な拡大は回避されると思います。また、特定技能一号の場合、通算五年を上限とすると。他の狭義の就労資格の場合には更新の仕組みがありますけれども、特定技能一号の場合、特定技能二号にランクアップする場合を除いては滞在期間に上限があります。すなわち、そのことは、特定技能資格一号は、通算五年間我が国で働いて、一定の収入を得て本国に戻ってもらうという趣旨の資格であり、いわゆる移民を認めるものではありません。
本国に戻るのを原則とする資格である以上、家族の帯同は認めないということになります。ただし、途中帰国の可能性を認めることにより、後で述べますけれども、外国人が家族生活を過度に犠牲にしないように配慮をするという趣旨も入っております。
このように、労働者としての就労資格で在留を認め、最大三十四・五万人受け入れるということで、人数として従来の外国人労働者数を三割程度拡大するという制度改正であります。このような制度改正は省庁レベルでは踏み出せなかった新たな一歩であり、私が見るところ、それは政治的な決断と言えます。私もこれ、従来そういう問題について携わってきましたが、省庁レベルではそこまではとてもできなかったということです。それゆえ、閣議決定である骨太の方針二〇一八で方針として制度の骨組みが示され、法案としてなってきたという経緯があります。
そして、そのことは、現行法制の下で、上記のような実態、すなわち、就労資格でない資格による逸脱的な労働者の確保というものが批判の対象になっているという、そのことをいつまでも放置することはできないだろうと。その意味において、新たな導入の一歩を踏み出したという、そういう政治的判断があったと私は推察いたします。今後は、省令でそれを具体化していくということになるのでありましょう。
第二、技能実習制度と新しい制度の比較。
従来の技能実習制度の問題点は、固有の意味での労働者としても受け入れていないのに、実質的に労働力確保的に用いられている面があることでありますけれども、そのほかに、いわゆる監理団体に、支援のみならず本来は公的機関が行うべき受入れ機関の監理を委ねたこと、また、転職や一時帰国を許さず、事実上実習生を受入れ機関での実習に拘束したこと、それは逃亡の原因になりましたけれども、また、外国の派遣団体と監理団体が民民で連携し、一部でブローカー的な活動を行い得る可能性があったことが指摘されております。
従来、技能実習制度についても、二年前の平成二十八年の法改正で、このような批判を踏まえて特別法を定め、監理団体を許可制にし、技能実習計画の認定を行い、外国人技能実習機構という認可法人を置くなど、その適正化を図っているところでありますけれども、今回の法改正は、そのような技能実習制度とは別に就労を正面から認める新しい仕組みを求め、問題点を抜本的に改めようとするものであります。
新しい制度は、そもそも就労目的での一定の専門性のある外国人材の受入れを拡充するものであり、転職可能、一時帰国可能とする点で技能実習制度とは明確に異なるものであります。
転職可能性につきましては、転職を例外にしか認めない技能実習制度とは異なり、日本人労働者と同じように、受入れ企業等のニーズと外国人労働者の希望に沿って同一産業分野内で転職することができるようにしてあります。また、出入国在留管理庁という新たに定められるとする機関は、外国人管理のために転職の届出を求めるけれども、一定の要件の下、転職を可能とし、転職そのものを制約することはしないということだろうと思います。
次に、一時帰国ですけれども、技能実習の場合、プログラムどおりに技能実習するため、一時帰国は事実上困難であります。一年若しくは三年継続して在留することを原則とする場合は、このようにして家族との離反を招く人権問題となりかねないことがアメリカ等で指摘されているところであります。これに比べ、特定技能の場合、期間途中、一時帰国することを可能とするとなっております。また、農業や何かの場合で需要がある季節労働的な業務の場合には、一年に数か月のみ滞在して本国に毎年帰り、滞在月数が通算五年に達するまでは五年だろうと十年だろうとわたって入国するという、何度も入国するという、そういうパターンもあり得るだろうということになります。
次に、受入れ機関、登録支援機関による支援が実施されます。
登録支援機関は、生活ガイダンス、日本語の習得支援、相談、苦情対応、各種行政手続の情報提供など支援をする役割に徹し、監理機能は有しないと。技能実習制度における監理団体のような監理機能は有しませんと。受入れ状況の適正さ、その監理的な機能は出入国在留管理庁を中心に公的機関が責任を持って担保するという、そういう区分けになっております。そのようにして、それがうまく機能すれば、技能実習制度で起こったような問題は回避されるだろうと思います。
現在、技能実習生として入国している者については、本来の意味での技能実習をしている者はそのまま技能実習資格に残留するということになるでしょうけれども、逸脱的な利用を行うブローカー的な監理団体の下での、本当は労働目的、労働をすることが目的で入ってきたような技能実習生はおのずと特定技能に移行することになろうと。この移行を円滑にするというのが今回の制度の一つの注目点、重要な点であります。
第三に、新しい制度と在留管理等ですけれども、一定数の外国人材を労働力として適正に受け入れるため、出入国在留管理庁という新たな庁を設け、在留管理を公的機関が主体的に行うこととしております、この法律は。入国時だけではなく、在留期間中も継続的に管理するという、点の管理から線の管理への移行を図るものであります。入国時のみならず、五年後にチェックするのではなく、毎年更新するということになります。具体的には、受入れ機関からの届出についても、契約変更、締結、活動状況等届出を要する事項を拡充し、届出義務を努力義務から法的義務へとしております。
また、技能実習制度のように監理団体経由ではなくて、受入れ機関を出入国在留管理庁が直接規制するという仕組みになっております。具体的には、受入れ機関に対する報告の徴収、立入調査に係る規定、改善命令を罰則で担保していること。
また、受入れ人数のコントロールも、これも正面からは書いてありませんけれども、法七条の二で認定証明書新規交付の停止という仕組みがあります。外国人の上陸許可は在留資格認定証明書の交付を受けてなされるのが通例でありますけれども、七条の二によりますと、産業分野単位で労働人材不足という状態が解消した場合には、その分野については資格認定証明書の交付を行わないという定めになっております。この仕組みを使えば、言わば蛇口を閉めることになり、人数制限が事実上可能となるということになります。
最後に、実効性確保のための課題ですけれども、受入れ機関と外国人のマッチング、新しい特定技能で入国する外国人に対してはブローカーの関与を排除し、日本人の就職、転職と遜色のないような就労環境をつくることが望ましいわけです。転職可能とすることにより、劣悪な就労環境からの離脱可能性を外国人に認める必要はありますけれども、そのためには、就労先についての情報提供、ある種のハローワーク的な仕組みをこれらの者に対しても認める必要があります。
第二に、支援体制の実効化。事業者組合等が登録支援機関として中心的な役割を果たし、営利目的でのブローカーの参入を抑止すべきだと思います。例えば農業分野においては、北海道で若干先例があるそうですけれども、農協などの協同組合が全国的に責任を持って支援する必要があると思います。
また、地方公共団体などの地方組織も支援の一翼を担うべきであります。地方単位で地方公共団体とも連携して外国人を支援する仕組みをつくり、地域に外国人をつなぎ止める方策を講じる必要があると思います。
最後に、制度的な担保。現在、外国人を受け入れている事業所は二十万弱、そして、五年間の上限値を最大三十四万五千人受け入れる可能性があるわけですから、これらに新しい制度で付与された権限等を活用するためには、受入れ事業所に調査に赴く等、書類審査でない方策が重要であります。そのためには、調査人員の増強等、体制整備が不可欠でありますし、関係省庁の情報連携、情報活用による不法就労の把握が必要であります。
また、制度の運用について、地方単位で省庁の地方支分部局、地方公共団体が連携していく必要性があります。特にまた、技能実習生から特定技能への移行においては、二年前に定められた特別法により整備されている外国人技能実習機構との間で重複規制にならないように相互連携を密に行う必要があります。
以上が新法案についての私の意見であります。
これで一〇〇%問題が解決するということにはならなく、今後も運用の改正が必要であるかもしれませんけれども、この法案は、我が国の外国人法制の問題点を改正する新たな一歩を踏み出すものであり、その意味で意義のあるもので、是非とも成立するべきだろうと考えます。
以上であります。