山本隆三の発言 (原子力問題調査特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○山本参考人 大学の教員をしておりますものですから、私は、環境エネルギー政策と環境エネルギー経済学の観点から、少し、規制と原子力発電というものをどう考えるかという話をさせていただきたいと思います。
 お手元にパワーポイントを配らせていただいたんですけれども、これだけでは多分余り何のことかわからないと思いますので、少し詳しくお話しさせていただきます。
 最初に、二ページ目なんですけれども、規制の種類というページがあります。原子力発電に関する規制は社会的規制というふうに一般的には理解されておりますけれども、規制には、実は、経済的規制、こちらの方が多いと思いますけれども、こういうものがあるんですね。
 例えば、鉄道運賃、これは規制されていますね。ただ、グリーン車については規制ではなくて申請制ということです。これは、社会に大きな影響を与えるものは価格規制が行われる。かつて電気料金も規制されていました。総括原価主義というものですね。
 それから、その下に参入規制とかあります。これは、例えば銀行、勝手に誰でも銀行をつくったらえらいことになりますので、銀行をつくるには当然許可が要るということですね。これは経済的規制と呼ばれるものなんですけれども。
 社会的規制、ここには原子力発電も入るんですけれども、社会的規制がなぜ行われるかというと、ここに書いていますように、環境の保全、国民の安全、そういうふうなものを考えると、社会的に規制しなければいけないものがあるということになります。
 三ページをちょっとごらんいただきたいんですけれども、社会的規制が必要な理由というふうに書いてあります。社会的規制というのはなぜ必要なのか。これは、私たちが選択することができない。外部性と経済学で呼んでいますけれども、市場の外にある、市場を通してコントロールできないということなんですけれども、簡単に言うと、第三者が行うことの影響を受けてしまうから。
 例えば、工場から排煙が出ます。それを我々は避けることができません。それで、排煙の影響を受けて健康被害が起こる。それはまずいから、当然、国あるいは地方自治体が排煙に対する規制を、規制値を設ける。あるいは、温暖化問題。これも我々は避けることができない、選択できないので国が規制する、こういうことになります。原子力というのも当然その一つということになりますね。
 それから、規制の中には、もう一つ、下に情報の非対称性ということを書いていますけれども、例えばこれは、我々が車を買うときに、自動車会社はちゃんとつくっているだろうなと思いますけれども、自動車会社は実はつくっていないかもしれない。でも、買う消費者はわかりません。事業者と消費者には情報量に大きな差があるわけですね。したがって、国が自動車会社に対して安全規制というものをつくらなければいけない。それは最近、時々破られているということがわかったりしますけれども、そういうものが規制ですね。
 その次に、四ページに適切な規制基準というふうなものがあります。これが最大の問題です。我々はなぜ規制をつくるのかということなんですね。それは、規制を行うことによって国民の厚生が増すから。これを我々は社会的厚生と呼びますけれども、社会的厚生がふえるから規制をするんですね。規制を行うことによって社会的厚生がふえないのであれば、やっても意味がありません。それは、規制をすることの意味がない、規制をしてはいけないということにもなりかねないですね。
 したがって、例えば原子力発電の場合であれば、原子力発電を規制することによるコスト、それと、国民が受ける社会的厚生をよく考えなければいけないということです。
 私、きょうの新聞なんかの報道を見て、マスメディアの報道に少し疑問を感じるんですけれども、原子力発電の問題については、事業者の収益が減るという形で報道するマスコミが非常に多いわけです。事業者の収益が減るのではなくて、国民が受ける社会的厚生に影響があるんだということを我々は考えなければいけないんです。事業者の収益対規制というマスメディアの捉え方は、かなり間違っているんだろうというふうに思います。
 1に費用と便益と書いてありますけれども、やはり、規制にかかる費用、それと国民が受ける便益、便益というと何かややこしそう、難しそうですけれども、利益ですね、これを比較して、その規制は適切かどうかということを考えなければいけないということが非常に大事です。
 規制を行うとき、今の原子力規制もそうだと思いますけれども、全部のことをあれこれ一遍にできません。優先順位が高いもの、費用対効果が高いものから規制は進めなければいけない。これも規制を行うときの常識だろうというふうに思います。
 それと、関係者の関与と透明性の確保。
 それから、規制は、最初決めたからそれをずっとやっていくということではなくて、状況が変われば、当然規制のあり方も見直さなければいけないということになりますね。これも適切な規制基準の中では求められることだと思います。
 五ページに、これはアメリカの例ですけれども、規制審査の陥りやすい誤謬というふうにあります。
 実は、規制審査を行うときに、やはり間違いが起こる。どういう間違いが起こるのか。これは、統計学で使われるエラー一とかエラー二という間違いの分類があるんですけれども、それを規制審査で利用しているものです。
 これは、最初に、選択する誤謬とあります。間違ったものを選択してしまう。二番目は、選択しない誤謬というのがあるんですね。どちらの間違いが起こるか。これは圧倒的に二の間違いが起こるというふうに米国では言われています。
 例えば、故障するロケットを発射するという間違いは、ほとんどの場合、これは起こらないわけですね。そんなことをやると大問題になります。したがって、こういう間違いが続けて起こるということはない。ところが、問題のないロケットを置いておく、これは非常に慎重に物事を考えるからこういうことが起こるんですけれども、こういう間違いは非常に多いだろうというふうに言われています。
 例えば、その次に薬の問題というのが出ていますけれども、テストが行われていない薬害のある薬を発売させてしまう、許可する。こんなことは普通起こりません。ただ、非常に効能のある薬を発売させないという誤謬は非常に起こり得るというふうに言われています。
 それはなぜかというと、規制を行う立場としては慎重になるから。慎重になり過ぎて、本来国民に社会的厚生をもたらすものを認可しないという誤謬がアメリカでは指摘されています。これは、我々日本でも同じ問題があるのではないかと考えなければいけないことだろうと思います。
 こういうふうに、規制を行うときには、我々は、リスクと便益、その規制がもたらす社会的厚生を比較して考えなければいけないんですけれども、その問題をちょっと残りの時間で考えてみたいというふうに思います。
 その次のページに、原子力発電のリスクと便益というふうに書いてあります。
 リスクというのは、当然、事故のリスクですとか、あるいは、今、積立てを行ってその積立金を運用していますけれども、廃棄物処理の費用が積立金を大幅に超えるというふうなリスクというのもあるかもしれません。
 一方、便益は、ここに書いていますように経済性、これは明らかにあります。原子力発電をなぜ世界で四十カ国も利用しているのかということを我々はよく考えなければいけないです。それは、リスクに比べて便益の方が大きいからということですね。
 その便益というのは何かというと、経済性に続いて安全保障、供給の多様化、それから三番目に温暖化対策とあります。
 一つずつ、少し見ていきたいと思うんですけれども、失われた二十年、平均年収推移とあります。私たちの平均年収が一番高かったのは一九九七年、もう二十年以上前です。平均四百六十七万円ありました。一番最新のデータは二〇一七年で、四百三十二万円です。一割近く減ったままです。
 ただ、二〇一三年以降、賃金はずっと上がってきています。これは、ちなみに厚労省のデータではありません、国税庁のデータです。国税庁が税金を取るベースにしているデータですので、間違いはないというふうに思います。これを見ると、アベノミクスに対していろいろな批判はありますけれども、アベノミクスが始まってから、初めて給料は連続して上がっている。九七年に給料が下がり始めて、二年連続して上がったことは一度もないんです。これが失われた二十年間ということなんですね。それが、今ようやく少し解け始めたかな、こういうことなんです。
 ただ、給料が下がった理由というのは、我々はよく考えなきゃいけないんです。その次のページに、産業別労働生産性とあります。これは、一人当たりの付加価値額、どの業種がもうけているかということです。
 付加価値額の高い業種が成長しないと、日本経済は成長しません。この失われた二十年間はなぜ起こったか。実は、稼げる業種の人が減っているんです。稼げる業種というのは何か。電気・ガスというのは特別で、ほんの三十万人ぐらいしか働いていませんからちょっと別としても、製造業、依然一千万人以上の人が働いています。これは、バブル経済が崩壊した直後、我々の給料が一番高かった九〇年代半ばには一千五百万人いたんです。五百万人減っています。こういうふうに、稼げる業種の人が大きく減った。その分ふえたのが、付加価値額が低い介護、医療・福祉、こういう分野の人がふえているんです。これを変えないと、残念ながら経済は成長しないんですけれども、その次に、製造業の電気料金と人件費の推移とあります。
 製造業の電気料金は、原子力発電所が停止することによって大きく上がりました。この経済センサスの対象になっているところだけでも、一兆二千億円電気代の負担がふえています。一兆二千億ってどれぐらいのインパクトか。横に人件費を書いています。この対象になった製造業が払っている人件費は二十八兆円ぐらいなんですよ。一兆二千億ということは、四%の賃上げです。四%の賃上げ相当分が、海外に燃料費として流れている。これは、日本にはもう戻ってきません。我々のもとには全く影響がないということなんですね。マイナスの効果しかないというふうなインパクトがある。製造業が衰退している中で、こういうふうな影響があるというのは非常に大きな問題だろうと思います。
 その下に、米独日韓の電気料金比較をしています。日本の電気料金は、韓国のほぼ二倍ぐらいになっている。これは、韓国が石炭火力で四五%、原子力で三〇%の電気をつくっているというのが非常に大きな理由の一つですね。もちろん、韓国は政府が赤字を補填しているということもありますけれども、これは、産業の競争力には非常に大きな影響を与えているということです。よく考えなければいけません。
 それからその次に、原子力と火力の燃料費とあります。これは、二〇〇九年のデータしかありませんので二〇〇九年度の電力各社の情報をもとに作成していますけれども、原子力の場合は、実は国内に落ちるお金が非常に多いんですね。火力発電の場合は海外に行く燃料費が非常に多いということで、これは、国内経済に与える影響を考えると、非常に大きな差だろうと思います。
 次に、アメリカと日本の電源別発電量とあります。アメリカは、原子力発電をまだ二割使っています。なぜ、エネルギー自給率が九〇%あって、天然ガスも石炭も輸出しているアメリカが原子力発電をしつこくやるのか。いまだに、まだ新規で建設中です。なぜなのか。
 それは、その次のページにありますように、電源多様化の理由とあります。アメリカは、実は何年かに一度大寒波に見舞われます。ことしの初めも大寒波がありました。中西部で北極より寒いというふうな寒波があったんですね。ことしの場合、そういう寒波が来ると、風力発電、太陽光発電、使えませんということなんですね。天然ガス火力とか石炭火力も稼働率が落ちる。そういう中で、稼働率が落ちないのは原子力。これはアメリカのエネルギー省が言っていることなんですけれども、アメリカは数年に一度必ず大寒波とか異常気象に見舞われる、そういうときに原子力発電がなかったらアメリカは停電しますということを、エネルギー省の研究所ははっきりレポートで書いてあります。だから、アメリカは電源を多様化しているということなんですね。
 最後に、温暖化の問題なんですけれども、その下に何かすごい地球の図がありますけれども、この大寒波というのはなぜ起こるのか。実は、これは温暖化です。これはカリフォルニア大学の研究者が発表しているんですけれども、北極の上に暖かい空気がなだれ込むと、北極の上にある極渦という大寒波が押し出される。それが北米におりてくると、北米が大寒波に襲われるということなんですね。それで、非常に大変な異常気象になる。
 したがって、その寒波を防ぐには温暖化を防がなければいけないということなんですけれども、次のページをごらんいただくと、世界の電源、まだ四〇%が二酸化炭素を出す石炭火力です、世界全体では。IEA、国際エネルギー機関は、これを、二〇六〇年にはほとんど全て二酸化炭素を出さない電源にしないと、温暖化は食いとめられないと言っています。この説が正しいかどうかは別にして、そのときに、国際エネルギー機関は、原子力発電の量は今の三倍になる必要がある、世界全体でですね、そういうふうな数字を出しているということです。
 私の説明は以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119804194X00320190425_006

発言者: 山本隆三

speaker_id: 18965

日付: 2019-04-25

院: 衆議院

会議名: 原子力問題調査特別委員会