萬屋育子の発言 (厚生労働委員会)
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○萬屋参考人 愛知から参りました萬屋と申します。
私は、愛知県の社会福祉職として採用され、五カ所の児童相談所に二十七年間、二カ所の福祉事務所に十一年間勤務しました。退職後はCAPNAで活動しております。今でも養子縁組親子家族とおつき合いがあります。養護施設の暴力、性暴力の問題で、養護施設にも定期的に出かけております。さらに、個人的には、児童相談所長時代に親権喪失を申し立てた子供の未成年後見、引き続き成年後見を務めています。
私は、三点お話ししたいと思います。まず、虐待対応についてですが、これは日々奮闘している児童福祉司のことについてお話ししたいと思います。二つ目は、家庭養育推進です。三つ目は、養護施設内の暴力、性暴力の問題についてお話ししたいと思います。
私は、児童虐待の死亡事例、深刻な事例をなくするために法律を整備し、児童相談所の権限を強化することは重要であり、必要不可欠のことと考えています。児童相談所の権限を使い子供を守る、その最前線にいるのは児童福祉司です。新しい年度が始まりましたが、既に退職者が出ている、育児休業などの補充職員がいないまま出発した児童相談所があると聞いています。
児童相談所の権限が強化されればされるほど、児童福祉司に大きな責任が出てきます。虐待の通報を受け、子供を保護するかどうかも決めて、受入れを探し、子供を移送する傍ら、親に連絡をとり、面接の手はずを整える。親がすんなり認めることはめったにありません。夜遅くまでの面接もしばしばあります。最近は警察からの身柄つき通告もふえ、子供の受入れに苦慮していると聞いています。最初の通報から、一時保護、施設入所、退所も児童相談所が決めます。親子関係の修復ができたと判断して子供を家庭に帰した後も児童相談所がかかわります。
そういうことを担っている児童福祉司は、現状としては卒業したばかりの新人、経験年数二、三年の若い人たちがやっています。女性も多くいます。とても長続きしません。経験を積んだ女性が、自分の子供はネグレクトしている、子育てができないと退職に追いやられています。せめて、私は、任務についての最初の一、二年を研修に充てていただきたいと思っています。訓練、見習期間が必要だというふうに思います。
そして、もう一つは、児童福祉司の処遇の改善だというふうに思います。
児童相談所は、ブラックな職場としてささやかれ、愛知県では社会福祉の採用枠があるんですけれども、その採用枠で入りながら児童相談所を希望しない職員がふえているとも聞いています。志を持って児童相談所に来た若い人たちが、仕事に愛着を持ち、やりがいを感じ、長続きできるような環境整備をお願いしたいと思います。
二つ目は、家庭養育推進についてです。
里親、養子縁組も、児童相談所の業務と明記されました。愛知県は、児童相談所の業務と明記される前から、赤ちゃん縁組、特別養子縁組を社会的養護の重要な手法と考え、取り組んできました。
虐待死で最も多いのは、ゼロ歳児、ゼロ日児童です。遺棄された場合に、報道も少なく、行政は責任を問われることはめったにありません。遺棄された子供の中で、運よく生きている赤ちゃんがいます。この赤ちゃんの場合に、愛知県の児童相談所は、特別養子縁組の親に直接つなぎます。赤ちゃんにとってはいい方法だと思いますが、なかなかこれも広がりません。
乳児院、児童養護施設に入れっ放しになっている赤ちゃん、子供たちについても処遇を考えなければならないと思います。子供時代の大半を乳児院、養護施設で生活し、家なし、親なしで社会に出る子供たちがいます。衣服のクリーニングでも引取りの期限がありますが、子供についてはありません。年齢に応じて入所期間の期限を決め、親が引き取る見通しがなければ、親権喪失、停止について考えるべきだというふうに思います。
子供たちが求めているのは、ずっと家族であること、一生親子であることです。安心、安全で安定した親を用意することは、最大の子供の福祉であり、児童相談所ができることというふうに思います。大きくなった養子たちの言葉を聞いて、そう確信しています。
最後に、児童相談所が送り込んだ児童養護施設の問題です。
児童養護施設内の暴力、性暴力について、最近、厚生労働省の調査が行われ、発表されました。施設の実態を一部明らかにしたという点では評価できます。初めての調査です。養護施設入所中の小学校女児が中学生男子から性的被害を受け、引き取った女児の母親が訴えた裁判が、この調査のきっかけになりました。
養護施設内の暴力、性暴力は、以前からありました。大人から子供へ、子供から大人へ、子供間、死亡事例も出ています。愛知県では、数年前に、自立支援施設で入所児童が職員を殺害した事件があります。養護施設の職員も、この暴力問題、性暴力の問題の対応に苦慮し、さまざまに工夫しながらやっていますが、繰り返されているのが現状です。有効な手段が見出せず、手をこまねいています。
施設内暴力、虐待は、長い間放置されてきました。この問題の解決に尽力されている田嶌誠一氏は、施設内の暴力、性暴力はかくも長き間ネグレクトされてきた、施設内暴力、虐待への対応なしには虐待からの保護さえ終わったことにはならないと言います。
今回の調査は、性的問題についてのみでした。施設内で起きている出来事は、性的問題ではなく、性暴力であるということ。さらには、子供間の性暴力だけが注目されているということでは不十分と言わざるを得ません。施設の小規模化、家庭養育推進だけでは、この問題は解決不能です。里親宅でもファミリーホームでも、そこのおうちで暴力、性暴力の問題が起きて、児童相談所が子供を引き揚げている現状があります。
私は、児童相談所がせっかく保護した子供たちを、被害者にも加害者にもしてはならないと思います。現役のころ解決の手法がないと諦めていましたが、退職のころに、田嶌誠一氏の考案した安全委員会方式に出会いました。この方法なら施設内の暴力、性暴力問題を解決できると思い、県内の養護施設に導入を進めました。資料を添付していますので、ごらんください。
愛知県内では五つの施設が導入をしまして、成果を上げています。合い言葉は、たたくな、蹴るな、口で言おう、優しく言おう、相手が悪くてもたたいてはいけないというのを、大人も子供も守っています。安全委員会を導入した養護施設では、養護施設の中の雰囲気が大変落ちつきましたし、子供たちの関係がよくなりました。
このように、いろいろな施策が必要だというふうに思っています。全ての赤ちゃん、子供が、安心、安全で安定した家庭、家族のもとで育つことを願っています。そのために、子供をめぐるさまざまな施策がより充実されることを望みます。
以上で終わります。(拍手)