山本和彦の発言 (文部科学委員会)

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○山本参考人 一橋大学の山本でございます。
 本日は、法科大学院、司法試験制度の改正のあり方について意見を述べさせていただきます。
 私は、現在、本務校で法科大学院長の職を務めておりますが、本日の意見は、中教審法科大学院等特別委員会の委員として審議に関与してきた立場、さらには、何よりも、十五年間にわたり法科大学院及び法学部において実際に教育に携わってきた一教員の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 法科大学院制度を総体として見るならば、司法制度改革審議会の意見書が提言した理念、すなわち、理論と実務を架橋した教育、少人数で多方向的、双方向的な密度の濃い教育、厳格な成績評価、修了認定といったものを実現し、制度改革時に期待されていたような法曹を養成してきたものと考えております。
 実際、司法修習生や若手弁護士に多く接している法律家の方々のお話を伺えば、旧制度下の修習生等と比べても、判例、文献等の情報調査・分析能力が高いとか、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力にすぐれているとか、また、民法等の基本科目だけではなく先端的な法分野にも通じているなどの評価を受けてきているように思います。
 例えば、私の専門分野である倒産法では、この十数年の間に、従来は破産管財人の人材が不足していたため破産手続の開始と同時に手続を終了していた同時破産廃止の事件が九割以上を占めていたのが、最近では六割弱まで減少をしておりますが、これは、全国に倒産法を勉強してきた法科大学院出身の弁護士が管財人の受皿として安定的に確保できるようになったことが一つの要因であり、まさに法科大学院教育の成果と言えるのではないかと思います。
 また、私は原子力損害賠償のADRにもかかわっていましたが、原発事故直後、緊急にADRを発足させるため、多数の若手弁護士を調査官として起用する必要があるとの要請がありました。それに迅速に対応することができたのも、法科大学院制度において多数の若手の法律家が養成できていたことの成果ではないかと考えております。
 また、とりわけ、多様なバックグラウンドを有する法曹の養成という点で、法科大学院の成果には大きなものがあったと思います。例えば、システムエンジニアを退職して未修者で一橋の法科大学院に入学し優秀な成績で弁護士になった学生が、現在はシステム開発契約などの分野で大活躍をしております。このような学生は、法科大学院という制度が仮になければ、なかなか法曹の道には踏み切れなかったように思われます。同様に、発展途上国における法整備支援に取り組むことを希望し、その希望を現に果たした学生や、弱い立場の人の味方になりたいと考え、現在は児童相談所に常勤弁護士として勤務している学生など、多くのユニークな人材を法科大学院は輩出できたのではないかと思っております。
 もちろん、法科大学院教育にも問題がなかったわけではありません。私が見るところ、いわゆる既修者と未修者で問題状況は異なるように思いますが、既修者については、やはり法曹になるまでの時間が長くかかり、その間の経済的負担が余りにも大きいという問題があるように思います。現状のように、高校卒業から法曹資格の取得まで最短で八年近くを要するということでは、医師など他の専門職と比較しても、高校生などにとって十分な魅力がある進路とは映らないように思われます。
 その意味で、今回の政府提出法案において提案されていますように、法科大学院と司法試験を連携させたプロセスとしての法曹養成の理念は堅持しながらも、それに要する期間を可及的に短縮する方途を一つのパッケージとして提示することは、法曹への道を考えている高校生や法学部の入学者に対して極めて大きなメッセージになり得るものと考えております。
 現在、法学部入学当初の学生は、実際かなりの割合で法曹という進路に興味を持っているように思います。ただ、それらのうち、時間的、経済的に十分な余裕のない学生は、合格率四%の予備試験を目指すか、あるいは法曹を諦めるかという選択になっているように思われます。そこで、法曹コース及び法科大学院在学中の司法試験受験によって最短六年程度で法曹になることができる道が開かれるとすれば、相当数の有為な法学部生が真剣にそのような進路を考えるのではないかと思っております。
 もちろん、そのためには学部段階からより効果的な教育を行う必要があり、法曹コースは相当濃密なものにならざるを得ません。ただ、私がゼミの学生等を見ている印象からすれば、そのような教育にも十分に対応できる学部学生が相当数いるように思います。そして、そのような形で法曹コースが実際に運用できれば、司法試験の在学中受験にも十分対応できるものと思われます。また、仮に司法試験が夏ごろに行われるとすれば、法科大学院三年の後期は臨床系の実務科目やそれぞれの学生の関心に即した先端科目を集中して履修することができるようになり、司法修習との架橋や、より多様な法曹の輩出という観点からもメリットがあるものと考えております。
 以上のように、私自身は、今回の政府提出法案は法曹養成の現状を踏まえた現実的かつ妥当な方向のものであるというふうに認識をしております。法科大学院発足前の旧司法試験時代を知る私のような者にとって、やはりあの時代に戻すべきではないという思いが強くあります。もちろん、当時法曹資格を取られた方々の頑張りは大変評価すべきものと思っておりますが、その陰で、法曹への道を諦めた学生も多くいます。私のゼミ生などでも、頑張れば司法試験合格の可能性があると思う者でも、経済的な事情等がある学生に対して、当時二%の合格率しかない試験に向けて頑張ってみないかと声をかけることは、当時、教師としては到底できませんでした。今ならそれも可能でありますし、今回の改革により、このような道もあるからと、法曹への選択肢を勧めやすくなります。この違いはやはり大きなものがあると思っております。
 今回の改正が実現したとしても、もちろん、それで法曹養成に関する問題が全て解決されるわけではありません。各法科大学院においては、教育のさらなる改善、充実を図っていく必要があることは当然であります。とりわけ重要であるのは、未修者教育の改善の問題であります。この点は、いわゆる共通到達度確認試験が本格実施されるところでありますが、引き続き、今期の中教審においても具体的な議論が必要になるものと思っております。
 また、制度的な問題としては、やはり予備試験の問題について、将来的に検討の必要があると考えております。現在の予備試験の実情が制度当初想定されていたものとは大きく乖離していることは明らかであり、今回の改革によって時間的、経済的負担の問題が相当程度改善されていくとすれば、次の段階では、予備試験についても本来の制度趣旨に即した方向に向けた改革が期待されるところであります。
 以上、甚だ雑駁なものでありましたが、法科大学院の教師の立場から意見を申し述べさせていただきました。法曹に向けた強い志や目的意識を持った学生に日常的に接している立場の人間としては、今回の改革が一日も早く実現し、希望にあふれた学生の夢がよりよく実現するとともに、プロセスとしての体系的教育を受けた法曹を多数社会に供給する役割をよりよく果たすことができればと考えております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 山本和彦

speaker_id: 32734

日付: 2019-04-23

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会