三澤英嗣の発言 (文部科学委員会)
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○三澤参考人 おはようございます。私は弁護士の三澤といいます。
本日は、このように大変貴重な機会を頂戴し、心より感謝申し上げます。
冒頭、簡単に私の立場をお話しさせていただきます。
私は、東京弁護士会が司法制度改革実現のために設置しました四つの都市型公設事務所のうちの一つであります三田パブリック法律事務所の所長をしております。
当事務所は、渋谷パブリック法律事務所を前身とし、一貫して法科大学院における法曹実務教育、特に臨床法学教育でありますリーガルクリニックという実務実践教育を行ってまいりました。当事務所の教育手法につきましては、本日配付しました東京弁護士会のLIBRAをごらんになってください。
さて、私はそのような立場から、昨年九月ごろから、政府が提出するであろうと想定されていましたこの法曹養成制度関連改革法案、特に在学中受験の導入について強く異議を唱えてまいりました。本日は、その立場から、本法案の問題点を強く御指摘したいと思います。
ちなみに、私の考えの詳細は、皆様のお手元に配付しております3+2+ギャップターム解消論(在学中受験)に関するメモと、それを形にした問題点一覧表に記載しておりますので、それらをごらんになっていただけますと助かります。
なお、そもそも法学部三年プラス法科大学院二年という法曹コースにおいて、法学部と法科大学院は十分な教育連携ができるかという、3+2自体が抱えている問題点もありますが、お時間の関係で、本法案の最大の問題点である在学中受験の問題点のうち、三つに絞ってお話しいたします。
まず第一の問題は、3+2が在学中受験が実施される前提できちっと議論されていないという点です。
在学中受験が実施されますと、法曹コースの場合は、3+2の教育プログラムだとうたいながら、実際は3+1の教育プログラムにならざるを得ません。となりますと、法科大学院に入学した学生は、入学した途端、翌年には司法試験受験が控えているという状況に置かれます。
このような状況の中で、法科大学院は学生に対して、入学後の一年間、いかなるカリキュラムを組んで授業実施するのでしょうか。入学した法科大学院生の立場に立てば、法科大学院の授業と定期試験にさらされながら、一年後に来る司法試験の受験への対策もすることになり、学生の負担感は非常に重くなります。
のみならず、本法案に関連し、司法試験の選択科目相当科目の履修義務まで課せられたために、学生の負担は尋常なものではありません。
ひっきょう、学生は司法試験受験に直結すると思われることしかできなくなり、これに符合するように、法科大学院側もいわゆる受験勉強の対策をするようになりかねません。
当事務所は、三田パブリーガルクリニックという教育手法をしており、学生三人と指導担当弁護士一名がチームを組んで、民事、刑事、行政、外国人等の生の事件にかかわり、みずからが学んでいる法律学が紛争解決事件にどのように活用されるのかを知り、さらにそれをみずからの学修にフィードバックすることを目指しており、やや手前みそになりますが、学生からの評価は極めて高いカリキュラムだと思っております。
しかし、在学中受験導入後は、恐らく誰もこれを受講しなくなると思われます。
実際、この五年間、当事務所は、慶応と中央の学生と一緒にリーガルクリニックを実施してきましたが、本来、法科大学院三年生を予定していたこのカリキュラムのところ、毎年三年生が減り、昨年は、慶応、中央二十八人参加中、二十七人が二年生という状態になりました。なぜ三年生ではなく二年生がこんなにふえているのかを学生に問うと、皆、口をそろえて、三年生になったら翌年の司法試験の準備をしなければなりませんから三年生で受講するのは無理ですと答えます。
ですので、在学中受験が導入されれば、今受講している二年生は、翌年司法試験が控えている以上、当事務所が実施しているようなリーガルクリニック教育を敬遠することになると思います。在学中受験導入は、実務系のカリキュラムにとっては極めて厳しいことになると思います。
なお、一部には、法科大学院三年の夏に在学中受験が実施されれば、むしろ受験が終わったという三年生が後期の授業でリーガルクリニック等の臨床系の科目をとるから心配要らないと言う方もいらっしゃいます。しかし、実際には、受験後、司法試験合格に手応えのある者は事務所訪問等の就職活動に時間を割き、他方、手応えを感じなかった者は翌年の司法試験に向けて試験勉強を始めることになると思われ、リーガルクリニックが充実するというには余りに楽観的に過ぎると思います。
次の問題点は、本法案の目的です。
やや誤解を恐れずに申し上げれば、本法案が狙いとしている真の目的、いわば裏の目的とでも申し上げた方がいいかもしれませんが、その目的は、3+2に加えて在学中受験を導入すれば、法学部四年生で予備試験合格するレベルの学生の層を法科大学院に取り込めるという狙いがあるという点です。つまり、法学部四年で予備試験に合格し翌年司法試験に合格するレベルの学生はトータル五年で司法試験に合格するわけですが、3+2+在学中受験は実質3+1+司法試験受験となりますので、そういう司法試験に早期合格するような学生が法科大学院に入学しやすくなるということです。
確かにその可能性は否定しませんが、他方で、予備試験に受験資格制限は全くありませんから、3+2の法曹コースで法科大学院に入学しても、法科大学院一年目で予備試験に合格してしまえば、それで司法試験受験資格を得られる以上、引き続き法科大学院に在学する可能性は高まると思えません。ですので、本法案は、今申し上げた裏の目的の実現も期待できないわけです。
最後に、本法案の手続的な問題点を御指摘したいと思います。
私は、昨年九月より、3+2+在学中受験の制度導入の情報をキャッチし、ここに同席している須網教授らとともに法務省や文科省を訪問し、3+2+在学中受験の制度設置は、関係者や有識者等の国民を交えた審議会等を設置して、多くの問題について平場でちゃんと議論すべきだというふうに申し上げてきました。
しかし、実際には、法務省も文科省も残念ながらそのような行動は全くとらず、中教審でも3+2+在学中受験について全く議論していません。中教審では、在学中受験が導入されカリキュラムへの影響があることがわかっていながら、五年一貫コースの議論しかしていなかったというふうに私は思います。極めて驚きです。しかも、現実にはまだ法案が成立していないのに、既に大学の一部では3+2+在学中へのカリキュラムの変更作業が進んでいるやに聞いております。
まとめに入りますが、司法制度改革は選挙制度改革と並ぶ平成史における大改革です。
司法制度改革は、法曹や研究者だけではなく、当時、経済界や労働界、さらには主婦連からの参加等、国民参加で広く議論され、その中で法科大学院制度は生まれました。法科大学院制度はそれだけ重要な制度なわけです。法科大学院を修了しなくても在学中受験ができる制度に変更するのであれば、司法制度改革審のような重量級の審議会ではなかったとしても、広く国民の意見を反映できるような会議体を設置し、そこで十分な国民的議論をして法案をまとめるべきだと思います。
これで私の意見陳述を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)