鈴木準の発言 (予算委員会公聴会)
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○鈴木公述人 おはようございます。
大和総研で経済政策などの調査をしております鈴木準と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、大変光栄に存じます。
平成三十一年度総予算の御審議に御参考としていただきたく、当該予算に賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
まず、経済状況について簡潔に申し上げます。私の資料の一ページ目をごらんくださいませ。
二〇一二年十二月から始まりました景気回復、現在もそうですけれども、時折踊り場的な様相を見せつつも、戦後最長になった可能性があると言われております。
二〇一三年第一・四半期からの六年、二十四四半期の経済成長率は、年率で実質一・二%、名目で一・八%でございまして、長期的に目指すべきと考えられます実質二%、名目三%以上には届いていないわけでありますけれども、以前と比べて相当な明るさと活力が感じられる状況であると認識しております。
それは、失業率ですとか有効求人倍率に見る雇用情勢で顕著でありますし、企業の設備投資や業況判断、生産動向、株価、中小企業や地方への波及状況など、総合的、客観的に見てそう言えると考えております。
消費も言われているほど悪いとは見ておりませんで、この姿というのは、二〇一四年四月に消費税率を三%ポイント引き上げることをこなしながらの実績でございまして、国民生活基礎調査によりますと、暮らしぶりが苦しいとする人の割合はここ数年連続して低下をしているということは、正当に評価されるべきではないかと思っております。
今後については、特に海外リスク要因、これに目配りが必要でございますけれども、二〇一九年度、二〇年度、ならしますと、実質一%弱、名目一%強ぐらいの成長は見込めるのではないかと思っております。
もちろん、楽観しているわけではございませんで、二ページにお進みいただきたいと思いますが、二〇一三年以降の経済の展開が、果たして、循環的なものではなくて構造的なものなのかどうか。あるいは、経済のメカニズムとして民間の新陳代謝が活発になっているのか、それとも海外経済要因とかあるいは一時的な政策の下支え、これの寄与が大きいのかどうか。さらには、名目ベースでよくなっているのか、それとも生産性の向上を伴った実質ベースでよくなっているのか。
ここは、私は、構造的なもの、内生的なもの、実質的なものに向かっているというふうに思っておりますけれども、その度合いはどのぐらいなのかというのは、まだ見きわめられておりません。
といいますのも、内閣府さんから示されている中長期の経済財政に関する試算を見ますと、潜在成長率の上昇は想定よりも後ずれをしております。これは、だから問題と言いたいわけではありませんで、今何か官民が取組をすれば来年から潜在成長率がいきなり上がるというものでは本来ないわけでありまして、潜在成長率というのは、労働と資本の量、それから労働と資本の質、それから労働と資本の組合せ方の巧拙、うまい下手、これによって決まるものでありまして、その引上げには時間がかかりますし、上がったかどうか見きわめられるのは五年や十年かかる、そういうことであります。
その意味では、人づくり革命だとか生産性革命と言われている政策を絶え間なく続けることが必要でございまして、三十一年度予算というのはそれに即した予算であろうと思います。
構造的によい方向に向かっている度合いが十分わからないという点では、財政も同じでございます。
国と地方を合わせた基礎的財政収支、PBは、一三年度、一四年度、一五年度とかなり改善を見せましたが、一六年度から一八年度にかけましては改善ペースが鈍りました。
もっとも、一六年度から一八年度というのは、経済財政諮問会議を中心に、経済成長と財政健全化を両立させるための集中改革期間ということで、各府省がさまざまな改革の種まきと水やりを相当にやってきております。
新しい経済政策パッケージの策定もあって、PBの黒字化目標は二〇年度から二五年度へ先送りされましたけれども、今後は、その種まきと水やりをしている改革の進捗ですとか、あるいはその効果のあらわれ方を見定めつつ、一九年度から二一年度の基盤強化期間で改革の深掘りをしていく必要があると思っております。
一九年度予算というのは基盤強化期間の初年度予算ということで、歳出改革の取組が継続されている予算であると一定の評価ができると思っております。
さて、改めて、三ページでございます、我が国の財政状況でありますが、九二年以降、国、地方を合わせたPBが黒字になったことはありません。政府債務の残高が小さい状況でPBが黒字と赤字が循環的であれば問題はないわけでありますが、長期的、構造的にPBが赤字ですので、債務残高はGDP比で見て積み上がる一方であります。
仮にPBが均衡しているとすると、財政赤字は金利分だけになりますので、金利と成長率の関係を考えながらPBをコントロールすれば債務残高GDP比をマネージすることができるわけでありますが、日本の場合は、バランスシート調整下で資金需要が非常に停滞した、あるいは国債管理政策が浸透するプロセスだった、あるいはデフレ脱却のための金融政策がずっと行われているということで、債務残高の巨額さの割に金利負担が小さい状況が続いているために、金利負担のことは余り考えずに済んできたということもございます。
しかし、今後は、デフレ脱却が進めば進むほど、成功すればするほど、それから民間経済に活力が戻れば戻るほど、債務残高が巨額であるだけに金利負担が大きなものになるおそれがございます。
つまり、PBを均衡、黒字化させたとしても、金利負担で財政収支赤字が思ったほど小さくならないという心配がありますので、経済の実力以上の金利上昇なんかが起きないように、財政の構造を持続可能なものにしていく必要が非常に高いというふうに考えております。
この点、よく経済がよくなれば税収がふえて自動的に収支が改善するということを期待する向きもあるわけでありますが、例えば、物価が上がれば、これは年金のマクロ経済スライドを除けば、政府支出も物価分ふやさざるを得ません。それから、物価でなくて実質所得がふえた場合も、例えば、公務員賃金ですとか、医療や介護に従事される方の賃金も上げていかないといけないということでありますから、実質成長で財政問題が解決するというものではないと思います。
もちろん、経済成長がないと、必要な歳出改革ですとか、場合によっては必要な国民負担増ということも行うことができませんので、その意味では経済成長は絶対に必要ですけれども、成長してもしなくても財政改革は必要だということだと思います。
四ページにお進みくださいませ。
債務残高GDP比が上昇し続けると、なぜ問題なのか。
一つは、上昇し続ければ、これはどこかで破綻するということであります。ただ、破綻しなくても、高水準の債務というのは家計も企業も持続可能ではないと疑いますので、問題であると思います。
どういうことかといいますと、その必要があるのに債務残高GDP比の上昇を政府が本気で食いとめようとはしていないというふうに人々が考えるときには、それ以外の政策もどこまで本気なのか疑われるということでありまして、成長戦略にしろ、規制緩和にしろ、FTAの拡大にしろ、それは一時的に今の政権が言っているだけだというふうに企業経営者が考えたとすれば、これはリスクをとった投資が起きません。
投資が起きなければ生産性が上がりませんので、潜在成長率も上がりません。低い潜在成長率に見合う金利も当然に低いままでありますので、生産性を上げる主体ではない政府だけがお金を使って債務残高がふえ続けるけれども、金利は一向に上がらない、こういう非常に陰うつとした状況が続きかねないということであります。
五ページにお進みください。
なぜ日本の財政が悪化が続いているのかということですが、最大の要因は社会保障費の増大であろうと思います。
五ページで、税の会計から社会保障の会計へ大規模な資金の繰り出しが制度的に行われていて、いわば、何か投資しているわけではなくて、その日その日の支払いで税の会計が経常的な赤字に陥っている状況であります。
六ページでございます。そのことを示しております。右の図は、国と地方の財政収支のこれまでの改善と悪化の要因をGDP比で分解したものでございまして、格子柄になっているところが社会保障への公費負担であります。九〇年代以降、常に収支悪化要因となっております。
社会保障は必要なことを行っているのだということではありますけれども、社会保障というのは、資金的には財政制度を通じて運営されている以上は、財政が破綻すれば社会保障も破綻することになります。今の時代、やった方がいいということはもう無限にあるわけでありますから、人々が求める社会保障の水準と、その財源、国民負担と組み合わせて検討しませんと、超高齢社会は乗り切れないだろうというふうに思います。
七ページでございます。
これはまさに過去の財政改革では社会保障費の取扱いが難しかったということでありまして、財政構造改革法のときには社会保障関係費の歳出上限を緩めたり、あるいは、骨太方針〇六のときは国費の二千二百億円カットというのが行き詰まりを見せたりしました。社会保障費をいかに合理的に、また多くの納得を得ながら改革を進められるかどうかが鍵だと思います。
八ページにお進みいただきたいと思いますが、社会保障費は今後もふえ続けると見込まれております。
ここに幾つかの長期試算を載せておりますけれども、上から二段目、昨年五月に四府省合同で出された成長実現ケースの試算を見ますと、年金、医療、介護の名目給付が、現在の百兆円前後から二〇四〇年度には百九十兆円近くになる。ここに子供、子育てなども含めますと、現在、GDP比で二一・五%の給付が最大二四%ぐらいまで増加するということでありますので、現在のGDPでイメージすると、毎年十三兆円くらいの給付増が恒常的に、毎年生じる見通しになっているということであります。
団塊世代の後期高齢者入り、それから団塊ジュニアの高齢化、こういったものが大きな要因ですが、医療の高度化なんかが更に進めば、給付増の幅はこれよりも大きくなる可能性があると思います。
そこで、九ページでありますが、さまざまな改革が社会保障の各分野で必要ということなのですけれども、九ページで、経済が成長してもしなくても必要ということをちょっと御説明させていただきます。
これは直近の内閣府の中長期の経済財政に関する試算でありますが、二〇二五年度のPB赤字が、成長実現ケースで一・一兆円、GDP比〇・二%、ベースラインケースで六・八兆円、GDP比一・一%というふうに試算されています。
これについて、成長実現ケースは楽観的だという評価があちこちで聞かれるわけでありますが、この六つのグラフのうち、上段の左と下段の、下の段の左、上下で見ていただくと、成長実現ケースでは物価や賃金がより上昇しますので、社会保障関係費が名目でかなりふえているように見えます。
しかし、それぞれ真ん中の、今度、上下の真ん中をごらんいただきますと、このふえ方というのは、消費者物価で実質化しますと、成長実現ケースでは二〇年度以降はほぼ横ばい、逆にベースラインケースでは少しずつふえています。
ここで、成長実現ケースで実質の社会保障給付を長期にこうやってふやさずにいられるものだろうかというふうに疑問が湧きますし、それから、ベースラインケースでは実質でふやしていることが収支が改善しない一因であろうというふうに思います。
さらに、上下の右側でございますけれども、これは生活水準で実質化したもので、国民一人当たりのGDPでデフレートしています。考え方として、物価プラス生産性上昇分ですから、賃金で実質化していると言いかえてもよいと思います。
実は、成長実現ケースでは、賃金で実質化しますと、社会保障関係費を長期に削減しているという結果になっています。高齢者数がふえる中で総額を減らしているわけですから、いわば年金、医療、介護全体の所得代替率を下げている、そういうことでありまして、ここまでサービスの抑制を行うというのはかなり厳しいものであるようにも思うわけであります。
つまり、地方交付税もその他の歳出も全部そうですけれども、物価ベースにしろ賃金ベースにしろ、成長してもしていなくても、一定の実質的な給付抑制となるような改革を進めませんと財政の持続性は確保できないだろうということであります。先ほど申し上げたように、経済成長は絶対に必要ですけれども、成長すれば改革をしなくてよいというのは幻想に近いのではないかと思います。
そこで、十ページでございますが、二〇一五年夏ごろから進められているのが、経済成長と財政健全化の二兎を追う経済財政一体改革であります。
政府は毎年借金を重ねているわけですが、それは、誰かが貯金をしているか、誰かが借金返済をしていることと両建ての関係になっているはずであります。
ことしの借金を小さくするために歳出を単純にカットしますと、これは国民の受益水準が下がるばかりか、需要が減って誰かの消費や投資を減らしかねない。結局は、輸入が減って経常黒字がふえてしまうとか、あるいは税収が減って政府の赤字がふえるかということに帰着する可能性が高いと思います。
政府が財政収支の赤字を小さくしようとするならば、したがって、政府が支出を減らす分、企業の投資や家計の消費をふやす必要がある。
これは、社会資本整備の分野で申し上げれば、PPP、PFIを強力に推進するですとか、メンテナンス産業を育成していくとか、あるいは、地方行政でいえば、住民サービスのアウトソーシング、これは民間にいろいろなことを委託していくとか、これはわかりやすい例だと思います。社会保障の分野でも、医療や介護の供給サイドの改革というのはもっともっと進める余地があると思いますし、予防、健康ビジネスを拡大させる、年金分野では民間の金融機関の役割を拡大させるなどなど、さまざまなアイデアがあり得ます。
一言で申し上げれば、公共、公的サービスの産業化でありまして、歳出の抑制は必要なんですけれども、単純な歳出カットではなくて、公共、公的サービスを成長の一つのエンジンにするという発想であります。
もちろん、そこでは政府自身の、あるいは自治体自身の生産性向上も大きな課題ですので、自治体や保険者などの現場が、ほかの自治体や保険者とどう違うのかという課題を認識できるように状況を見える化して、改革に頑張った現場が報われる、そういう制度設計、インセンティブの設計が改革の鍵の一つであります。
十一ページをごらんいただきたいと思いますが、サービスの改革だけではなくて、社会保障改革というのは、保険料抑制というチャネルで成長戦略としての性格を有しているとも考えております。
この十一ページの左側の図表で示しましたように、最近ようやく額面の収入がふえたり、減り方がモデレートになったとしても、保険料がふえてしまって、可処分所得はその分ふえない。せっかく賃上げしても、それでは消費が活性化しないということであります。
後ろの方に参考資料を載せておりますが、今、家計の負担額とか負担感が強い、大きいのは、消費税ではなくて社会保険料であります。年金保険料は一応法律上の上限に達しましたので、今後は医療や介護の保険料をどうしていくかが大きな課題であります。
というわけで、十二ページから十五ページには昨年十二月にまとめられた新経済・財政再生計画の改革工程表の概要を載せさせていただいております。
十二ページでございますが、この改革工程表というのは、ざっと百二十以上の個別具体的な改革事項の方向性ですとか進め方、あるいは検討の期限などについて、百八十ページにわたって、ちょっと厚過ぎると思うんですけれども、記述されております。この私の資料の十二ページでは、それらの取組がどのようなロジックで政策目標につながっていくのかを定量的に把握するKPIの見直しを行ったということなどが書かれております。
十三ページは非常に重要な見取り図でございまして、下半分の、主な取組というところをごらんいただきますと、まず最初の一年、つまり、ことしは雇用改革を行いつつ、それから、ことしを含む今後三年間で全世代が安心できる社会保障制度への改革を行うとありまして、その下に、具体的に、二〇二〇年度にそれまでの改革のレビューを行った上で政策をまとめて、それを基盤強化期間内、つまり、どれだけ遅くとも二〇二一年度から順次実行に移すということが明確にされております。
もちろんこれは政府の方針であって、必要な法律改正事項があれば、これは立法府でもちろん御議論をいただくということになるわけでありますが、団塊世代の後期高齢者入りのタイミングなどを考慮しながら、各府省の皆さんが利害関係者とさまざまに御調整されながら頑張っておられる、そういう状況だと思います。
予算は単年度主義であるわけですが、平成三十一年度予算というのは、こうした数年先までの構想の中で、一つの哲学も持たせた予算であるというふうに思っております。
十四ページと十五ページは、主要分野ごとの改革の主な取組でございますので省略をさせていただいて、最後、ちょっと結びにかえて、来年度予算で裏打ちされた政策を進めていただくためにも、留意点を数点申し添えたいと存じます。
第一に、政府経済見通しの二〇一九年度は名目成長率二・四%と民間の予測と比べて高目でございますので、税収が予想どおりになるか、注視する必要があると思います。
第二に、一九年度予算では、恐らく一時的と見られる税外収入が比較的大きいように見えます。二〇年度以降は、ですから、それはなくなるということを考慮した予算編成が次の年は求められるというふうに思います。
それから第三に、消費税増税に伴う臨時特別の措置、これについてはやはりテンポラリーなものとするということが条件だろうと思います。
それから第四に、来年度予算を拝見しますと、社会保障費の自然増からの抑制、これは、薬価引下げですとか、あるいは既に決まっていた介護納付金の総報酬割の導入、これなどで捻出されておりまして、今後は、より広範な給付と負担の見直しについて、今後、着実に御検討を進めていただく必要があると思います。
それから最後、第五に、EBPMを推進する観点からも、今揺らいでおります統計の信頼性回復、これに努めていただきたいというふうに思います。
以上、私の公述とさせていただきます。御清聴大変ありがとうございました。(拍手)