明石順平の発言 (予算委員会公聴会)

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○明石公述人 皆さん、おはようございます。弁護士の明石と申します。
 それでは、私からは、賃金とGDPについてお話をさせていただきます。
 この資料をごらんください。
 まず賃金についてですが、二〇一八年一月に毎月勤労統計調査における賃金の算出方法が変更されまして、賃金が大きくかさ上げされました。要因は下記の三つです。ここにあるパネルは、長妻先生が国会で使用されたものをそのまま引用させていただいております。
 一番目がサンプルの一部入れかえ。二番目がベンチマーク。ベンチマークというのは、これはちょっと難しい概念なんですけれども、賃金を算出する際に使う係数のようなものだと思ってください。それから三番目、復元処理。これは、東京都における五百人以上の事業所について三分の一しか抽出していなかったため、それを三倍して復元した、そういうものです。
 例えて言いますと、一番目のサンプル一部入れかえというのはちょっと背の高い別人に入れかえて、二番目のベンチマーク更新がシークレットブーツを履かせて、三番目が頭にシリコンを入れた、これで身長を伸ばしたということですね。
 しかし、三は、残念ながらばれましたので、さかのぼって修正したんですね。
 しかし、ここが重要なんです。一と二については、さかのぼって修正せず、そのまま二〇一七年と比較しています。つまり、ちょっと背の高い別人に入れかえて、シークレットブーツを履かせたままなんですね。普通はさかのぼって改定するんですが、それをなぜかしていません。そのため、賃金が異常に伸びる結果になってしまいました。
 三ページ目、ごらんください。
 これは、毎勤の公表値における前年比伸び率ですね。二〇一三年から二〇一七年までの五年間で一・四%しか伸びなかった名目賃金が、二〇一八年のわずか一年間で一・四%伸びるという異常な結果になっています。なお、実質賃金については前年比〇・二%のプラスになっています、二〇一八年が。
 算出方法の異なるものを比較した伸び率は、これは端的に言って、うその数字であると思います。
 統計法六十条二号は、「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」を「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」としています。公表値は真実に反するんですから、これに該当して、統計法違反になるのではないかと私は思っています。
 次、四ページ、ごらんください。
 こんなにかさ上げしたんですけれども、それでもしょぼい結果になっているんですね。アベノミクス前との比較がしやすいように、二〇一二年を一〇〇とした賃金と物価の推移を見てみます。左側のグラフですね。
 別人の身長を比較するような手段を講じても、二〇一八年に消費者物価指数が一・三ポイント伸びていますので、結局、実質賃金は〇・一ポイントしか伸びていないんです。ほぼ横ばいです。
 アベノミクス以降、二〇一四年の消費税増税に加えまして、無理やり円安にして円安インフレを起こしたため、物価は急上昇しています。それが名目賃金の伸びを大きく上回った結果、実質賃金が大きく落ちているんです。二〇一八年はアベノミクス前より三・六ポイントも低いです。
 なお、以前は原油価格の下落により、ある程度円安インフレが相殺されていたんですが、二〇一七年ごろから原油価格が上がってきましたので、物価が再び上昇傾向になっています。
 ところで、新規労働者がふえて平均値が下がったから実質賃金が下がったというよくある反論はデマです。平均値の問題なら、名目賃金も下がらなければいけませんが、ごらんのとおり、名目賃金は下がっていません。ただ単に、名目賃金の上昇を物価上昇が上回ったから、実質賃金が落ちているんです。
 こんなに悲惨なので、実質賃金マイナスという結果を出したくないのかなというふうに思ってしまいます。
 五ページをごらんください。
 統計委員会は、賃金の伸び率については共通事業所同士を比較した参考値を重視せよと言っています。しかし、厚労省は、なぜか参考値の名目賃金伸び率のみ公表し、実質賃金伸び率についてはかたくなに公表しません。ちなみに、年平均についても公表していません、名目値について。
 ところが、実質賃金の伸び率というのは、名目賃金の伸び率と物価の伸び率がわかれば簡単に出せます。
 実質賃金指数というのは、名目賃金指数を消費者物価指数で割って、百を掛けます。これで算出しています。ここで言う指数というのは、ある時点の数値を一〇〇とした数です。なので、前年同月からの伸び率に単純に百を足すと、前年同月を一〇〇とする指数になります。
 そして、名目賃金指数と消費者物価指数の前年同月からの伸び率は公表されていますので、それぞれの前年同月を一〇〇とする指数を算出できます。
 二つの指数がこれでそろいますから、前年同月を一〇〇とする実質賃金指数も算定可能になるんです。
 このように、前年同月を一〇〇とする実質賃金指数を計算することにより、実質賃金伸び率、参考値の実質賃金伸び率を算定したのが次のページの表です。六ページです。
 この計算表については、野党合同ヒアリングでも出したことがありまして、計算すれば同じような結果になるであろうと厚労省の官僚も認めています。
 これを見ますと、参考値の実質賃金伸び率の年平均は、右下をごらんください、マイナス〇・三です。これが実態です。
 七ページ、ごらんください。
 グラフにするとよりわかりやすいんですけれども、参考値の実質賃金伸び率がプラスになったのは、去年、たったの二回しかないんです。あとは、ゼロが一回、マイナスが九回です。プラスになったのは六月と十二月で、これはボーナス月だからです。
 このように、非常に悲惨な状況なので、公表したくないだけだと思われます。名目は参考になるが実質は参考にすべきではないなど、あり得ません。参考値の実質賃金伸び率も早急に公表すべきです。
 そして、公表値の伸び率は、先ほど申し上げたとおり、異常にかさ上げされたうその数字なんですから、公表をやめるべきだと思います。
 では次に、実質賃金の下落が何を招いたかについて説明します。
 これは実質民間最終消費支出といいまして、我が国の実質GDPの約六割を占める数字なんですけれども、実質民間最終消費支出は、二〇一四年から二〇一六年にかけて、三年連続で減少しました。これは戦後初の現象です。
 二〇一七年はプラスに転じたんですが、四年も前の二〇一三年を下回っています。この四年前を下回るという現象も戦後初です。
 実質賃金の大きな下落は、戦後最悪の消費停滞を引き起こしています。これは、国民の生活が全然向上していないことを意味します。景気回復の実感がないのは当たり前です。
 しかし、GDP改定のどさくさに紛れて行われた異常な数字の調整がなければ、もっとひどい数字になっていました。これは、物すごくかさ上げされた後の数字なんですね。
 次はそれについて述べます。次のページをごらんください。
 次は、GDPの改定についてお話しします。
 二〇一六年十二月八日、内閣府はGDPの算出方法を変更し、それに伴い、一九九四年以降のGDPを全て改定して公表しました。
 要点は下記の四つです。一、実質GDPの基準年を平成十七年から平成二十三年に変更。二、算出基準を一九九三SNAから二〇〇八SNAに変更。これは国際的な算出基準でして、これに変更することによって、研究開発費などが上乗せされますので、大体二十兆円ぐらい上乗せされます。三番目、ここが最も重要です。その他もろもろ変更しているんです。これは、国際的な算出基準とは全く関係ありません。そして四番目、一九九四年までさかのぼって全部改定しました。
 次のページをごらんください。十ページです。
 左側のグラフ。改定前、二〇一五年度の名目GDPは、ピークだった一九九七年度と二十兆円以上も差がありました。
 しかし、右側を見てください。改定後の差は、わずか〇・九兆円になっているんです。二十兆円あった差が、ほとんど消えているんですね。
 次のページをごらんください。これは改定前後の差額を抽出したグラフです。
 ごらんになるとわかるんですけれども、かさ上げ幅は、アベノミクス以降が突出しています。ウナギ登りですね。金額でいうと、二〇一五年度は、アベノミクス直前、二〇一二年度の一・五倍もかさ上げされています。
 そして、九〇年代との差が異常ですね。二〇一五年度、三十一・六兆円かさ上げですけれども、例えば一九九四年度を見てください、六・八兆円しかかさ上げされていません。異常な差なんですね。
 次、十二ページをごらんください。これは名目GDPの改定前後の差額の内訳です。
 注目していただきたいのは、この表の一番下にある「その他」ですね。改定要因は、大きく分けると、一番目、「二〇〇八SNA対応」によるものと、二番目、「その他」の二つなんです。
 「その他」については、この一行がぴいっと書いてあるだけで、「その他」の更に詳細な内訳というのは、この資料ではないんですね。これは改定当時に内閣府から公表されていた資料なんですけれども。
 次、十三ページをごらんください。
 まず、二〇〇八SNA対応部分のかさ上げ額と率を示したグラフです。かさ上げ率を見ますと、一位から三位までを全てアベノミクス以降が占めているんですね。これもちょっと怪しいんですけれども。
 ただ、次のページをごらんください。
 「その他」については、もう比較になりません。すごいことが起きています。「その他」のかさ上げ額を見ますと、アベノミクス以降だけが急激にかさ上げされています。アベノミクス以降のかさ上げ平均値は五・六兆円です。
 他方、九〇年代は全部マイナスなんです。平均値を出すと、マイナス三・八兆円もかさ上げされています。
 つまり、この「その他」の部分だけで、九〇年代とアベノミクス以降で約十兆円も差がついているということになります。
 次、十五ページをごらんください。では、一体この改定値から「その他」を引くとどうなるのか。これを示したのが、このグラフです。
 平成二十三年基準から「その他」を引きますと、右の図ですね、二〇一五年度は一九九七年度に遠く及ばない結果になります。その差は十三・四兆円。「その他」で数値が大きく調整されたことで、二〇一五年度が一九九七年度にほぼ追いついたということがわかります。
 この「その他」によってアベノミクス以降のみ異常にかさ上げされて、九〇年代は逆に大きくかさ下げされる現象を、私はソノタノミクスと言っています。このソノタノミクスによって歴史の書きかえが行われているというふうに思っています。
 では、十六ページですね、次。
 「その他」は一体どこに充てられたのかなんですけれども、改定前後の名目民間最終消費支出の差額と「その他」のかさ上げ額を比較しますと、アベノミクス以降のみ、三年度連続でほぼ一致します。「その他」で異常にかさ上げされた数値が、アベノミクスで最も失敗した民間消費に充てられたように見えるわけです。
 ですから、先ほど見た実質民間最終消費支出というのは、こういうふうに思いっ切りかさ上げされた後の数字なんですね。思いっ切りかさ上げしても、あんな悲惨な結果になっているということです。
 次、十七ページをごらんください。
 ここで引用しているのは、さきの総選挙の際に自民党広報のアカウントがツイートしていたツイートですね。ソノタノミクスによって二〇一六年度の名目GDPはめでたく史上最高を更新し、二〇一七年度はそれを更に更新しました。自民党広報のツイートは、これを「過去最高の水準です。」と自慢しております。まさに大本営発表と言っていいのではないかと思います。
 では、最後に、これは私の著書の画像なんですけれども、アベノミクス全般の失敗については、私の「アベノミクスによろしく」という本で詳細に書いてありますので、ぜひお読みになってください。そして、最近発売した「データが語る日本財政の未来」では、このソノタノミクス現象についてより深い分析をしております。
 ソノタノミクス問題は、この一連のアベノミクス偽装の本丸ですから、今後も国会で追及を続けていただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 明石順平

speaker_id: 34004

日付: 2019-02-26

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会